○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、法案に反対の討論を行います。
 三・一一東日本大震災から二年八か月余りが過ぎました。この間も甚大な災害が次々と列島を襲い、南海トラフ地震、首都直下地震など巨大地震が必ず起こると指摘される中で、大規模災害から国民の生命、財産を守り抜き、人々の営みを守りたいという思いは誰しも同じであります。
 しかしながら、反対する第一の理由は、本法案が防災・減災と国際競争力の向上を結び付け、それをそのまま基本理念に掲げた結果、国民の命と暮らしを守るための防災・減災対策がないがしろにされるからです。
 審議において、国際競争力の向上とは、我が国の安全性に対する国際的な理解と評価を高め、その結果、諸外国からの投資を呼び込むことだと説明がなされました。諸外国からの投資を呼び込んで国際競争力を強化することと、大規模災害から国民の命や暮らしを守るための防災・減災対策を結び付けなければならない必然性はありません。
 大規模自然災害等からの被害を最小限にし、国民の生命、財産を守るためには、建物やライフラインの耐震化、木造建築物密集地域の解消、地すべりや液状化など危険箇所の指定と対策などを思い切って進めるべきです。住民に最も身近な地方公共団体には待ったなしの課題ですが、これには財政保障が明確ではありません。また、地方公共団体が作る国土強靱化地域計画は、国の定める国土強靱化基本計画との調和が求められます。これでは、国民のための身近できめ細かい対策が結局後回しにされかねません。
 第二は、国土強靱化が巨大開発事業の復活、拡大を進める根拠を与えるものだからです。
 基本方針には、国家及び社会の重要な機能の代替性の確保、地域間の連携の強化、国土の利用の在り方の見直し等という表現が盛り込まれていますが、これまでも代替性や大規模災害対策といって、外環道や圏央道、新名神高速道路、一万四千キロもの高速道路網、そしてリニア新幹線建設などが進められてきました。十月には、二〇〇八年に調査が中止された六海峡横断道路の一つ、関門海峡道路について福岡県が調査再開を表明するなど、四全総の復活を思わせる状況です。
 提案者は、脆弱性評価が前提だから公共事業促進にはならないと言いますが、国際競争力が重視される一方、市民や第三者がチェックする手続がないため、不要不急の公共事業促進になりかねません。
 第三に、防災・減災の取組は自助、共助、公助の適切な組合せとあるものの、国民生活を守るために国のやるべきことが抜け落ちているからです。
 東日本大震災で浮き彫りになったのは、医療、介護の資源の決定的な不足、行革や合併推進による行政機能、体制の低下であり、ここにこそ国が正面から取り組むべきであります。
 また、複合的で大規模な被害が予想される石油コンビナートのように、民間企業の敷地、施設については、単に協力を要請するにとどまらず、企業自ら施設のリスク評価を行い公表することが不可欠です。
 以上、理由を申し上げまして、反対討論といたします。