○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 法案は、裁判官が外国勤務に臨む配偶者と別居して職務を続けるか、生活を共にするために辞めるかを迫られる事態を解決するものでございまして、我が党としても賛成です。
 そこで今日は、関連して、裁判所職員の労働環境の改善についてお伺いをしたいと思うんです。
 国民の裁判を受ける権利を保障する上で、裁判実務を第一線で支えている裁判所職員の人的充実は不可欠の条件だと思います。導入から四年が経過をした裁判員裁判を始め、労働審判あるいは成年後見、被害者保護など多くの手続が導入をされており、こうした制度を安定的に運用していくためにも人的体制が極めて重要です。
 特に、まず裁判所にお尋ねしたいんですが、近年、成年後見事件が増加をしていると思うんですが、その事件数の推移はどうなっているでしょうか。加えて、成年後見人による悪質事案も社会問題となる中で、家庭裁判所の後見あるいは監督機能のありようも改めて問われる中で、家裁のより専門的な適切な対応も求められて、現場は繁忙化、あるいは事件は複雑化しているんではないかと思いますが、いかがですか。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。
 人事訴訟を含む家事事件の新受事件数は過去最高を更新し続けておりまして、平成二十四年には約八十五万七千件に達しております。特に、後見等の開始の申立ては約四万四千件ということで、これに伴いまして、成年後見等の事務について監督を行う後見等監督処分事件も増加しているところでございます。
 裁判所としては、増加しております家事事件、成年後見関係事件を適切に対応するため、運用上の工夫をしてまいりました。あわせて、裁判官、裁判所職員を増員いたしまして、平成二十五年には二十人を超える裁判官を家庭裁判所に増配置するなどの人的体制の整備をしてきたところでございます。
 最高裁といたしましては、今後とも必要な人的体制の整備に努めてまいりたいと思っております。

○仁比聡平君 数字を拝見しますと、例えば成年後見の開始件数で見て、二〇〇八年度からの五年間の間に三三%開始件数増なんですよね。平成十三年からの昨年度までの成年後見関係事件のトータルの件数見ますと、十二年間で事件数が九倍を超えるというとんでもない増加ぶりで、それだけこの制度の社会の中でのニーズを示しているわけですけれども、先ほど最高裁から御紹介のあったような裁判官も含めた増員が行われてもなお、調査官も含めた大変な繁忙というのを背負いながら頑張っていただいているというところかと思うんですね。
 地裁でも複雑な事件が増えていると思います。労働事件についてちょっと伺いたいと思いますが、労働審判の手続は、労働事件の当事者からも大変歓迎の声も聞くわけですが、事件数としても急増していると思います。また、労働関係の訴訟も増えていると思いますが、どんな状況でしょうか。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) お答えいたします。
 まず、労働審判でありますけれども、労働審判事件の申立て件数も年々増加しております。平成二十一年には三千四百六十八件ということで、前年比の約一・七倍というふうに急増しております。昨年、平成二十四年には、三千七百十九件ということで、過去最高の件数になっております。また、全国の地裁の労働関係訴訟の新受事件につきましても増加傾向にありまして、平成二十六年には二千五百十九件ありましたけれども、二十一年に三千三百二十一件と、過去十年間で最高の事件数を記録し、二十四年には三千二百二十四件ということで、依然として高い水準を保っているということでございます。

○仁比聡平君 そうした下で、過去五年間の裁判所職員の定員を見ますと、この当委員会で定員法で議論をしているわけですが、二〇〇八年度は百十五人増員になりました。先ほど、最高裁からも御紹介があった時期ですよね。二〇〇九年度から一一年度までの三年間は四十五名の増員なんですが、昨年度はプラス・マイナス・ゼロと。この二〇一三年度は一名減員というふうになっているわけですね。
 しかも、この間の職員の増員も、従来、速記官や事務官としての定数を書記官に振り替える、そうした形で行われていることも考えると、こうした、一時期増やしたんだけれどもこれを減らしていくぞと、で、マイナスになっちゃったよというこの傾向がもし続くみたいなことになったら、これは裁判所の機能充実に逆行するものであって、私は、増員こそ最高裁は強く声を上げるべきなんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(中村愼君) 委員御指摘のとおり、裁判所といたしましても、司法需要の増大に的確にこたえるため裁判所の機能を強化する必要があると考えておりまして、そのために人的体制の整備が必要だと考えております。
 先ほど御指摘ありましたけれども、昨年、今年の二年間で裁判部門に従事している職員、裁判官につきましては六十二人、振替も含めまして書記官については百二十八人の増員を行ったところでございます。プラスマイナスの数字を先ほど委員御指摘になりましたけれども、これは政府の定員削減計画に協力いたしまして、庁舎管理業務等の合理化によって技能労務職員を減員したという、プラスマイナスの結果ということでございます。
 裁判所といたしましては、今後とも、予想される司法需要を踏まえまして、計画性を持って人的体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 今、御答弁の中で政府の計画に協力をしてという御発言もあったんですけれども、言わばこれまでの裁判所内部でのそうした切り詰めといいますかね、もう私、限界だと思います。
 人は城という言葉がありますけれども、裁判の手続あるいは裁判所の運営というのは、建物が人を裁いているんじゃなくて、裁判所職員に支えられて裁判官、裁判体がそうした適正な手続を進めていくわけですから、この人を減らしてしまうというやり方は裁判所を壊すことになりかねないわけですよね。
 実際、裁判所職員の病気休職、中でも精神疾患による病休が大変増えています。私がちょっと資料を先にいただいて、御紹介をしますと、この平成二十年から二十四年度の五年間を見たときに、全体で二百六十五名の書記官が精神疾患による病休を取っておられるわけですけれども、この数字というのは、例えば平成二十四年度、二〇一二年度の五十七名というのは、全体の書記官の中に占める割合というのは〇・六%に上るんです。その前の年度は〇・六五%に上っているわけですよね。
 これ、大臣あるいは副大臣や政務官も、学校の教員のメンタルヘルス、中には自殺というような深刻な事態が社会問題化していることも御存じかと思いますけれども、この教員の精神疾患による休職者率というのは平成二十三年度で〇・五七%なんですね。教員のメンタルヘルスによる休職者率に匹敵するというよりも更に多い裁判所職員が精神疾患によって休職をしていると。もちろんこれは休職に至っているというのはよほどのことなのでありまして、氷山の一角だと見るべきだと思うんですね。
 最高裁としては、こうした職員の疾病の状況についてどんなふうに認識をしておられますか。

○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) お答えいたします。
 裁判所職員の病気休職者の原因の中には、内科系疾患や委員御指摘のメンタルヘルス系のものなど様々ございます。そのうち、メンタルヘルス疾患の職員につきましては、職場環境をめぐる問題のほか、自身の健康面での不安や家庭事情等を原因とするものもあったりいたしまして、その原因は様々で、かつ各種要因が複合していることも多く、プライバシーにわたる部分などがありまして、メンタルヘルス疾患の原因分析というのはなかなか容易でないところがございます。
 しかしながら、裁判所といたしましても、これまでも全ての職員が心身共に健康で職務に精励できるよう職員の健康保持に取り組んできたところではありますけれども、このメンタルヘルス対策を含め、引き続き職員の健康保持に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 分からないとか本人の事情だというふうに、職員の側に言わば責任を全部押し付けてしまうようなやり方では問題が解決しないというのは、もう大前提で考えておられるのだろうと思うんですけれども。そういう中で、やっぱり負担増が、現実に事件数も増えている、複雑だと。これ、事件にちゃんと向き合うとか当事者に向き合うというためには、その職員自身が健康でなきゃいけないというのはこれ当然のことだと思うんですね。
 そこで大臣、定数が減らされてそれが職員の負担増に直結して裁判所の機能低下につながるようなことは万が一にもあってはならないと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 私のところ、法務省は裁判所職員定員法というのも所管しております。ただ、裁判所の要するに人的充実といいますか人的構成をどうしていくかというのは、すぐれて司法権の問題ですから、最高裁判所において適切な判断をされると思うんです。それで、私どもはその裁判所の意向を踏まえて、この法律所管しておりますから、やっていくと、こういうことだろうと思っております。

○仁比聡平君 最高裁が充実のために思い切って声を上げて、大臣がそれを支えるという形で頑張っていただきたいと思うんですね。
 時間が迫りましたので、最後一問、先ほども御指摘がありましたけれど、裁判所職員の中には全体として女性職員の比率が高いです。三七・五%という御紹介が先ほどありましたが、書記官でいいますと三二・九%、事務官で四〇%、家裁調査官は四七%、ほぼ半数が女性で占められているわけですね。そういう中で、私、育児休業の取得をしやすくするように、そのためにも繁忙を和らげる定員増が必要だというふうに考えておりますが、これはちょっと今日はもう要望にしておきます。
 それで、女性の管理職登用なんですよね。政府は、二〇二〇年までに少なくとも三〇%程度という目標を掲げているんですけれども、最高裁は一体どう考えているのか。実態はどうなのか。私、ちょっと勉強で伺うと、どうも二〇一五年度までに少なくとも三%程度は増加させることができるようにという目標をお持ちのようなんですが、これはちょっとささやかなんじゃないですか。裁判所職員の中での女性の占める割合というのは大変高いんだから、これは先頭に立って、政府の言う三〇%というのを目標にして達成をしていくということで頑張ってもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(安浪亮介君) 委員御指摘のとおり、最高裁におきましては、平成二十七年度、すなわち二〇一五年度に向けまして、管理職員に占める女性職員の割合を平成二十二年、二〇一〇年時点における現状値からの上積みを図る方向で、各高裁別に少なくとも三%程度増加させることができるよう具体的な取組を進めるとの目標を設定して現在取り組んでいるところでございます。ささやかに過ぎるとの御指摘でございますけれども、私どもとしては現実的でかつ計画的な取組を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
 いずれにいたしましても、これまでも意欲と能力のある女性職員の登用促進に向けた取組を進めてきたところでございまして、今後とも引き続き積極的に進めてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 もっと頑張ってください。