○仁比聡平君
 私は、日本共産党を代表して、国家安全保障会議設置法案に反対の立場から討論を行います。
 本法案によって設置される日本版NSCは日本の外交・安全保障の司令塔だとされますが、検討されている国家安全保障戦略の中身を見れば、首相の下に戦争、軍拡の司令塔をつくろうとするものです。秘密保護法と一体で、主権者国民を罰則で禁圧し、あらゆる情報を隠しつつ米国との情報共有を行って政策決定を進めようというものであり、集団的自衛権の行使に向けた検討と併せて、憲法に反する海外で戦争をする国への体制整備にほかなりません。
 政府の国家安全保障戦略において、名実共に武器輸出国になるための検討がなされていることは重大です。紛争当事国への輸出につながることを承知で米国等との共同開発に乗り出すばかりでなく、首相自らがトップセールスまで行い、トルコ軍との戦車の共同開発のために合弁会社まで設立することは、武器輸出三原則を掲げてきた立場を公然と投げ捨てるものです。武器輸出三原則は単なる政府方針ではありません。国会が決議を上げ、政府も国是だと答弁してきたものであり、国際的にも日本の平和国家としてのありようを具体的に示す理念として広く認められてきたものです。これを一内閣の判断で根本から覆すことなど、断じて許されるものではありません。
 さらに、国家安全保障戦略では、ジブチの基地の拡充を始め国際平和協力活動のためとして、自衛隊の海外基地の整備を図ることが検討されています。日本防衛とは全く無縁であり、世界の警察を自任する米軍をまね、それに付き従って海外での軍事行動を広げるための検討にほかなりません。今や外国に軍事基地を置く国は、巨大な基地ネットワークを持つ米国のほかにはイギリス、フランスなどが僅かに持つだけです。軍隊の外国駐留が縮小の道をたどった第二次世界大戦後の世界の流れにも逆らうものであり、このような検討は直ちにやめるべきです。
 NSCにより米国との情報共有を強化するとしていますが、日本政府がイラクの大量破壊兵器保有の証拠だとする米国の捏造情報をうのみにし、国際法違反の戦争を支持したことについて、まともな検証を行う意思も反省もないことが審議を通じて改めて明らかになりました。さらに、米国が日本を通信傍受の対象としていた問題では、米国との意思疎通を図っているなどと述べるだけで、主権侵害に対する徹底した事実解明の要求も抗議もしていません。同盟の強化だとして情報共有の強化を図ることは、米国への従属を深め、同じ過ちを繰り返すだけです。
 政府には、イラク戦争への対応について正面から誠実な検証を行うとともに、同盟ありきの外交判断と政策を根本的に改めるよう強く求めるものです。
 本法案は断固廃案にすべきことを重ねて申し述べ、反対討論を終わります。