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 「今年はとれると楽しみにしていたのに…」。8月、長崎県・諌早市小長井で漁業を営む松永秀則さん(56)の養殖アサリが全滅しました。赤潮です。潮受け堤防をのぞむ養殖場で、口を開けたまま死んだ貝を見つめ、肩を落とす松永さん。「調整池からの排水が原因」と悔しさと憤りをにじませます。

 かつて、「宝の海」と呼ばれた有明海。諌早湾が閉め切られてから異変が続いています。ノリの色落ち、養殖アサリの大量死。たくさんとれていた魚や二枚貝のタイラギもとれなくなりました。漁業者の生活は困窮し、自殺者も20人を超えています。漁業者は、異変は堤防閉め切りによるものだとして、開門を強く求めています。

 開門を求めて裁判をたたかう漁業者や支援者はこれまで繰り返し県庁前や繁華街で宣伝してきました。9月14日、松永さんは県庁前でマイクを握り、堤防を閉め切ってからの有明海の異変と漁業被害、かたくなに開門を拒む県を告発。新政権に「ムダで有害な公共工事にストッフをかけてほしい」と訴えました。

 新政権に漁業者は開門への強い期待を抱いていますが、民主党の対応はどうかー。

 佐賀県選出の同党国会議員らが開門を求める一方、長崎県連は防災効果を損なうとして開門に反対。地元党組織の意向を反映して民主党のマニフェストに開門は盛り込まれませんでした。

仁比議員対策迫る

 諌早湾干拓地周辺の農民・住民には開門に反対する声があります。長年、農地が浸水する湛水(たんすい)被害に苦しみながらも放置されてきた住民にとって潮受け堤防は待ち望んだものでした。「堤防のできてほんに助かっとります。つからんし、潮もかからん」。諌早湾に面した雲仙市吾妻町の旧干拓地で農業を営む男性は、日本共産党の仁比聡平参院議員との懇談でそう語りました。

 仁比参院議員は、さっそく国会で取り上げ、こうした後背地の防災とかんがい排水事業のすみやかな実現を迫り、森山地区ではいま、具体化がすすんでいます。

 「よみがえれ!有明海」訴訟弁護団は、7月に発生した湛水被害や農業に使えない調整池の水質問題などを指摘。湛水被害を防ぐための排水機場の設置や調整池に代わる農業用水の確保など具体的な開門のための対策を示し、「これらの対策をとれば「すぐ開門はできる」し、そうすることが農業を続ける道でもあると訴えてきました。

市民との対話進め

 同訴訟を支援する会が14日開いた決起集会で馬奈木昭雄弁護団長は、「漁民はまったなしの状況」だとして、急いで新政権に来春の開門のための予算を組ませる必要があると述べ、その実現を迫るために長崎県での世論の喚起を強く呼びかけました。

 農業と漁業の両立と有明海再生へ、「よみがえれ!有明海訴訟」を支援する会では開門反対の声が多い諌早市で市民と対話を進めています。

 弁護団の一員でもある仁比議員は先の集会でこう発言しました。「有明海再生にこそ自民党政治に代わる新しい政治の試金石がある。新政権に開門の政治決断を迫るため力を尽くす」(しんぶん赤旗2009年10月9日)