日本共産党の仁比聡平議員は5月26日の参院予算委員会で、入管施設での死亡事件の根源には「“送還ありき”というわが国の入管収容あるいは行政の人権侵害の構造がある」と主張し、入管がノルマを定め、事情により帰国できない人の送還を強制してきたことを厳しく批判し、政府案の撤回を求めました。 (質問動画はコチラ)

 仁比氏は、2年前に名古屋入管で亡くなったスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんの妹ワヨミさん、ポールニマさんが岸田文雄首相宛てに書いた手紙を紹介。手紙は、飢餓状態にあったウィシュマさんが病院での点滴を懇願しても聞き入れられずに死亡したとして、「姉は入管に殺された」「姉の死の真相を明らかにして、入管の責任をはっきりさせて」と訴えています。

 岸田首相は「このような事案、二度と起こさないために、法務省においてしっかりと改善策に取り組んでもらいたい」と答えました。

 名古屋入管はウィシュマさんが亡くなる前月、ウィシュマさんが求めた収容施設からの一時的な解放(仮放免)を却下し、その理由に「仮放免を不許可にして立場を理解させる」ことを挙げていました。

 仁比氏は、さまざまな事情で帰国できない人がひとくくりに「送還忌避者」とされ、入管の判断だけで帰国意思を示すまで自由を奪われ続けてきた「拷問のような人権侵害」を批判しました。

 法務省は2018年以降(19年から入管庁)「送還忌避者」の縮減目標を定め、各入管に毎月目標を設定させ達成状況を報告させるという“送還ありきのノルマ”を課してきました。

 仁比氏が22、23年には縮減目標に関する通知文書が出されてないと指摘すると、入管庁の西山卓爾次長は「各地方官署から本庁への報告等は行わせている」「引き続き重要な課題だ」と答弁し、今もなお縮減目標を立てて取り組んでいることを明らかにしました。

 仁比氏は、22年以降、通知文書が出ていないのは、21年にウィシュマさんが亡くなり、今回と同じ骨格の入管法改悪案が廃案に追い込まれたことで「ノルマを課す取り組みが明るみに出るのを恐れたのではないか」と追及。斎藤健法相は、こうした入管の取り組みは「行政上の義務だ」などと開き直りました。(しんぶん赤旗 2023年5月27日)