金木犀(きんもくせい)の香る季節。還暦を迎えました。

 「国家にとって好ましくない外国人の在留を禁止し強制的に退去させる」(5月18日参院法務委員会入管次長答弁)という差別と排斥の歴史を終わらせ保護と共生ヘ――若者たちを先頭に入管法改悪NO!のたたかいは「こんな人権後進国のままでいいはずがない」という日本社会の根本問題をうきぼりにしました。

 通常国会後の夏、SNSで「角川『短歌』8月号で仁比さんが謳(うた)われている」と知らされ、驚いてめくってみると確かに、巻頭作品28首に「一票を投じたりし仁比聡平の不意の涙声 花のごとしも」「『国家にとって好ましくない』わたしならいづへの山へ送還されむ」「心尽くして応援スピーチしたりしは六月の雨の橘通り」「本会議に法務委員会に街宣に仁比聡平の働きたふと」と詠まれているのです。参院選を全力で応援下さった宮崎の歌人・大口玲子さんの作品でした。ご両親を介護する孤独な重圧のなか、国会のたたかいに注目していただいたことがうかがわれ思わず涙がにじみました。

 さらに驚かされたのは、吉川宏志さんが「国へ帰れ、国へ帰れと肉体を締めつけてゆく暈(ぼ)けた映像」

 「〈痛いです 帰れません〉と字幕あり悲鳴に文字は付けられぬまま」「ぼかされし映像なれど肌のいろ黒きは見ゆる 膝を潰しおり」「しろき部屋しろきベッドの映されて虐める声に笑いの混じる」とウィシュマさんの拷問死を詠まれていたことでした。

 権威ある歌壇誌にこうして憤りがほとばしるほど深刻な人権侵害のもと、どれだけ多くの人たちが「せめてささやかな人生を全うさせてくれ」と願っていることか。

 盆明け、つれ合いに激痛を伴う厳しい病が判明し、皆さんの全面的応援に支えられて二人三脚の闘病生活が続いています。幸い劇的な改善で一度は諦めかけた長女の結婚式に出席できたことを励みに、なんとしても元の生活をとり戻そうと頑張っています。

 励まし励まされ。新たな日々か始まります。(しんぶん赤旗 2023年10月18日)