熊本県八代(やつしろ)市の県営荒瀬ダムについて、蒲島郁夫知事は2月3日、「存続」方針を撤回し、2年後に撤去に着手する考えを明らかにしました。県庁で記者会見し、発表しました。実現すれば、全国で初めての既存ダム撤去となります。
蒲島知事は撤去の理由について、今年3月末に失効する発電用の水利権を新たに取得できるか不透明なことなどをあげ、存続は困難と判断したと説明。「前知事の判断を凍結・存続へ転換し、(再び)撤去に変えたことに関して、県民に大変申し訳なく思っている」と述べました。
撤去事業は2年後の2012年度から着手。費用約92億円。県財政・県民に支障がでないよう交付金など国の財政的支援、環境などに配慮した技術的支援を求めるとしています。ただ、蒲島知事は「最大限努力する」などとし、撤去までの具体的な道筋は示せませんでした。一方、地元漁協関係者などからは “即時撤去”を求める強い声が上がっています。
昨年11月14日には、球磨(くま)川流域の住民ら900人以上が結集し、ダム撤去などを求めた集会を開催。「球磨川・川辺(かわべ)川の流れがダムで留まることなく、清流のまま八代海に届く日を目指す」とした集会宣言を採択していました。流域住民らの長年の撤去運動が結果として、知事の「存続」姿勢を転換させたものといえます。
川・海再生に全力
日本共産党の仁比そうへい参院議員・比例予定候補の話
潮谷前知事の撤去決断を撤回した蒲島知事が、流域住民の声についに応えざるをえなくなった。球磨川流域と八代海の再生へ全力をあげたい。
荒瀬ダム
1955年、球磨川下流の坂本村(現八代市坂本町)に建設された県営の発電ダム。流域住民は長年にわたり、水害や水質汚濁、悪臭、放水時の振動、下流の藻場や干潟の消滅にともなう八代海の魚介類の減少などに苦しみ、撤去を求めて運動をしてきました。
02年に潮谷・前知事が、住民の願いに応える形で「撤去」を表明。しかし後任の蒲島知事は08年11月、財政難などを理由にダム「存続」を決定、住民から厳しい批判を受けていました。(2010年2月4日(木)「しんぶん赤旗」)