○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今回の活火山特措法の改正は、昨年九月二十七日の御嶽山の噴火災害で五十七人の方が亡くなられ、行方不明になおなっておられる方が六名、負傷されている方が六十九名という本当に深刻な犠牲を生み出してしまった、その痛恨の教訓を踏まえたものです。改めて、この法案の審議に当たって、心からの哀悼と、そして再開される捜索において、行方不明になられている方々が御家族の元に帰れることを心から祈りたいと思います。
私、三月三十一日のこの委員会の質問で、三月の二十六日に火山噴火予知連から出された、この御嶽の教訓を踏まえた提言を引用しながら、大臣とこの教訓について御議論をさせていただいたんですけれども、ちょっと通告と順番が違うかもしれませんが、まず大臣にお伺いをしたいと思います。
同日、三月二十六日に、今日もお話のあっております火山防災対策推進ワーキンググループの報告が出され、言わば我が国の火山防災に関わる全面的な深い課題の検討がなされた上で今回の改正を行い、そして内閣府に火山防災対策推進検討会議を置くこととされていると思うんです。
これは、今回の改正にもちろんとどまらずといいますか、これを踏まえて、それぞれ厳しく指摘をされている課題をどう具体化していくのか、どう現実化していくのか、そこが本当に問われる重い会議だと思うんですけれども、その構えと、恐らく主管をされるんだろうと思うんですが、大臣の決意をまずお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(山谷えり子君) 中央防災会議火山防災対策推進ワーキンググループの最終報告の提言でございますが、火山に関するプロジェクト研究の促進、各火山防災協議会への火山専門家の参画の促進、気象庁における火山活動評価について、大学等を退職した火山研究者の参画の促進等について御提言をいただきました。
火山研究人材の育成のためには活躍できる場所を確保することが大事でありまして、また専門家の知見というのが非常に大事であります。関係省庁と連携してしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○仁比聡平君 今お話をいただいた体制の強化やあるいは専門家の育成を柱に、様々なハードの問題あるいは周知の問題などもこの火山防災対策推進検討会議でどう具体化されていくのか、ここが問われていくと思うんです。その中で幾つかの点について今日は尋ねておきたいと思うんですが、まず観測体制についてです。
御嶽山の噴火活動の兆しについて、九月の十日から十一日にかけて火山性地震が五十回以上観測をされました。これは、噴火警戒レベルを二に引き上げる判断要素の一つであろうかと思います。ですが、現地調査は行われなかったというこのことが、十分ではなかったのではないかということが問題になってまいりました。この教訓も踏まえて、機動観測、これどのように行っていくのか、長官、いかがでしょうか。
○政府参考人(西出則武君) 中央防災会議の火山防災対策推進ワーキンググループにおいて、機動観測の実施体制の強化及び速やかな現地調査の実施について御提言をいただいております。気象庁では、この御提言を踏まえ、火山活動が活発化した場合等において、火山の状況をより詳しく把握するため、直ちに現地に機動観測班を派遣し、観測を強化しております。
例えば、口永良部島につきましては、三月二十四日から二十七日にかけて火映が観測されたことから、機動観測班を現地に常駐させ監視を強化しておりました。五月二十九日の噴火以降も、機動観測班により地震計を増設したほか、適時、上空からの火口観測、船上からの火山ガス観測などを行っております。
気象庁では、今後も、火山活動が変化した場合においては、機動観測班による現地調査をしっかりと行ってまいりたいと思います。
○仁比聡平君 この提言には、今おっしゃった火山活動に変化が生じた場合には、現地でないと把握できない地温や噴気、火山ガスの変化の有無の確認のためなどという要素を挙げて、機動観測が絶対に必要だと、そういう提言がされているわけで、これができる体制をきちんと確保していく、つくっていくということがこれからの政治の課題だと思うんですね。
山頂の地震計などの観測装置が極めて重要だという指摘もあるんですが、御嶽では、県の砂防課が設置する地震計がかねてから壊れていた、そうした事態がありました。この火口付近の観測機器については、これは気象庁、どんなふうに整備をしていくんですか。
○政府参考人(西出則武君) 気象庁では、全国に百十ある活火山のうち、現在四十七の火山において地震計や監視カメラなどの観測機器を設置し、二十四時間体制で監視し情報発表を行っております。
昨年九月の御嶽山の噴火を踏まえまして、火山の観測体制の在り方について、火山噴火予知連絡会の下の検討会において提言をまとめていただきました。具体的には、水蒸気噴火の兆候をよりよく捉えるため、火口付近への観測施設の設置が必要であるとの御提言をいただきました。この提言に沿って、御嶽山を含む全国の常時観測火山について、火口付近への立入りが難しい桜島と口永良部島を除きまして、火口付近への観測施設の強化を進めております。
現地の状況を踏まえて、速やかに整備してまいります。
○仁比聡平君 この常時観測の火山について、今回の法案は、つまり五十の火山を対象としようとしていると思いますけれども、ここについて速やかに、例えば今年度中にやるといった取組が当然だと思いますし、百十の活火山全体についてどう進めていくのか、あるいは設置する機器のメンテナンスなどをどう維持していくのか、これも極めて重要な課題だと指摘をしておきたいと思うんです。
そのようにして収集した情報をどう評価して、そしてどう発信するのか、ここが大きな課題なんですね。御嶽の地元、信濃毎日新聞が、御嶽山噴火を検証する「火山と生きる」という連載記事、特に第二部、「できなかった予知」というシリーズを今年の三月一日から連載をされまして、私、これ極めて克明な取材に基づくもので、大変教訓的なものだと思います。この中で、この御嶽を監視する火山監視・情報センターの幹部が、噴火が起こってしまった九月下旬に、大勢の登山者が御嶽山の景色を楽しんでいるとは知らなかったという記事がございます。
臨調行革以来、測候所の廃止を始めとした現場の体制を壊してくることがなかったなら、そんなことはあり得なかったんじゃないかと、私は痛恨の思いがするんですね。長野の気象台は、この気象台の仕事は本庁の発表の伝達というのが主で、現場で独自に解説を加える材料はありませんというふうにもコメントをしておられるわけですけれども、私はこうした点を踏まえてだと思うんですよ。
このワーキンググループの提言では、火山活動の監視は気象庁火山監視・情報センターにおいて実施しているが、火山活動の評価をより的確に行うことのできる人材が必ずしも十分ではないという課題を提起をしています。この提起に気象庁、どう応えていくんですか。
○政府参考人(西出則武君) 気象庁において、火山の観測や監視、そしてその評価といった業務を的確に遂行するためには、火山分野の専門人材の確保と、その育成や能力の向上が大変重要であると認識しております。
気象庁においては、基礎的専門知識を持つ人材を採用するとともに、気象大学校や噴火が続く桜島での実践的な研修、大学や海外の研究機関への派遣等、能力の向上に必要な様々な機会の提供等によりまして人材の育成を図っております。
今後、関係省庁や研究教育機関とも連携しつつ、選考採用制度なども活用しながら、火山分野の専門人材の確保及びその育成に努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 火山専門家、例えば大学の研究機関などを言わば退職をされた方とか、ポストドクターで、その知見があるのに、けれどもパーマネントな職がないというような方、こうした方々が現にいらっしゃるわけですから、気象庁でそうした皆さんをすぐに活用するということができると思うんですが、気象庁、いかがですか。
○政府参考人(西出則武君) 火山活動の的確な評価や職員の人材育成を行うに当たり、大学を退職した火山研究者でありますとか、場合によっては気象庁の退職者にも有能な人材がございまして、その知見を活用させていただくことは大変重要であると考えております。
中央防災会議防災対策実行会議の下に置かれた火山防災対策推進ワーキンググループが平成二十七年三月二十六日に取りまとめた提言におきまして、気象庁は火山活動の評価を的確に行うため、大学等の火山研究者、大学等を退職した火山研究者、ポスドク等大学において専門的な知見を習得した人材などに定期的あるいは随時火山活動の評価に参画してもらうなど、火山研究者の知見を活用し、火山活動の評価体制の強化を図るべきであると御報告いただいたところでございます。
この中で、気象庁の退職者の中で火山専門家がおりまして、それにつきましては、今年度一名を再任用し、職員の人材育成等に当たらせているところでございます。今後、大学等を退職した火山研究者の人材活用についても、関係省庁や研究教育機関とも連携しつつ検討してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 はっきりおっしゃらないですが、採用して、実際にそこに座ってもらったらいいんですよ。そこを、こうして昨日のレクとは、少し曖昧なことをおっしゃっているんですけど、具体的にどんどん進めていくということをやらなかったら、今のこの火山観測体制の危機的な状況というのは打開できないと思うんですね。
このワーキンググループの提言では、先ほど大臣からも指摘をされた人材の問題について、提言の冒頭部分でこう述べています。
噴火に伴う現象の種類や噴火の規模は多様であることから、火山ごとに詳細な調査研究に基づいた検討を行う必要があるが、火山研究者の人数は十分でなく、火山防災に資する研究は必ずしも進んでいないといった実態もある。これらのことは火山防災対策を推進していく上で、必ずしも短期的には解決することができない根幹的な課題となっていると考えられるというんですね。私、この短期的には必ずしも解決することができない根幹的な課題だと、これ極めて重要な指摘だと思うんですよ。
ですから、御指摘が今日もありましたが、四十七人しか火山の専門家がいない。四十七人のうちにはポストドクターの方も含まれるというんですよね。火山研究者の方、もうちょっと裾野を広げても八十一人しかいない。そうした皆さんで五十火山を中心に百十の活火山をどう取り組んでいくのかという、これ、かねてより、今日お配りした、藤井予知連会長が危機的な状況だと繰り返しおっしゃってこられたとおりの状況なんですよね。まず、気象庁がしっかりとそうした知見のある方々を採用して、評価やあるいは対策に生かしていただきながら、やっぱり、この根幹的な課題にどう取り組むのか、そこが今問われていると思うんです。
今回の法案で火山防災協議会が必置をされますけれども、法案の条文に言う「火山現象に関し学識経験を有する者」、この言葉を火山専門家というふうに大臣は御答弁しておられると思うんですけれども、これ、統括官、どんな知見を求めるわけですか。
○政府参考人(日原洋文君) 火山を研究されている大学の研究者等を想定しておりますけれども、火山の研究というのは、地震ですとか、あるいは地質でありますとか、あるいはもう少し化学的なというんですか、火山ガスのようなそういった専門家、いろいろおられますので、そういった方の中から、基本的にある程度特定の山をずっと研究されている方がおられますので、そういった方を御紹介する、あるいは場合によっては複数の専門家の方を協議会にあっせんするようなことも含めて検討してまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 私はどんな知見が求められるのかというお尋ねをしているんですけれども。
この提言では、火山防災協議会の位置付けについて、複数の噴火シナリオ、そして火山ハザードマップ、噴火警戒レベル、具体的な避難計画の作成、緊急時の情報伝達等の対応など一連の警戒避難体制の整備に関する計画の作成が、これは法案でもそうですが、火山防災協議会の任務になっていて、この複数の噴火シナリオというのは、これ、参加する火山専門家によってその議論がリードされるということになるわけでしょう。統括官、いかがですか。
○政府参考人(日原洋文君) お答えいたします。
火山の災害の現象といたしましては、噴石によるもの、それから溶岩流あるいは火砕流、それからあと火山性ガスと、大きくそのようなものが対象となりますので、そういったものがどういうように発生し、どの範囲に影響が及ぶのかということについて火山の専門家が助言をするというのが求められている機能でございます。
○仁比聡平君 そうした専門家が、この現状、裾野をちょっと広げても八十一人しかいないわけですよ、我が国には。ですから、あっせんするとおっしゃるけれども、お一人の研究者の方が、あるいは複数の体制、チームで研究しておられる方々が、幾つもの活火山についてこの火山防災協議会に参画せざるを得ない。これはもういっぱいいっぱいという状況じゃないですか。この中で、どこまでそんないっぱいいっぱいが続くのかということが、今の残念ながら我が国の現状だと思うんですね。
この専門家の育成の問題について、そのお配りしている新聞のインタビューで藤井先生は、「人材不足は、火山学の人気がないからですか。」という問いに、「就職口が少ないんですよ。大学ぐらいしかないのに、国立大学の法人化以降、ポストも減っている。もう一つ、地震には調査研究推進本部があり、研究費もある。しかし、火山はその推進本部がないから、先行きを不安視して火山学を専攻する人がいなくなってしまう。」。こうした御指摘は、もう十数年前から藤井先生は発信しておられると思うんですが、文部科学省、こうした指摘に対してどう応えていきますか。
○政府参考人(森晃憲君) 火山研究者の育成、確保につきまして、先ほど来お話がございます平成二十七年三月の中央防災会議火山防災対策推進ワーキンググループの報告書におきましては、即戦力となるポスドク人材を始めとする火山研究人材の確保、育成に向けて、プロジェクト研究を組み合わせた人材育成のプログラムを構築すべきこと、そして、プロジェクト研究と人材育成を連携させて推進することによりまして、火山研究分野全体の活性化を図るために、火山研究人材の育成方針の在り方に関する検討の場を設置すべきことなどが提言されております。
この提言を踏まえまして、現在、省内に藤井副大臣を座長とする局課横断的な検討の場を設け、若手を含む火山研究人材の育成のための方策について検討を進めております。
今後とも、関係機関と協力して火山研究者の育成、確保に努めてまいります。
○仁比聡平君 昨日、今日の御答弁を伺っても、今おっしゃるプロジェクト研究と組み合わせた人材育成のプログラムの構築とはどんなものなのか、あるいは、裾野を拡大するというのは大切なことなんですが、これがどう魅力になり、どう人材が育っていくことになるのか、まだまだなかなか見えないというのが、大臣、私、現状だと思うんですよね。藤井先生が指摘をされるとおり、ポスト、それから、噴火活動の観測というのは長期にわたるわけですから、短期的な視野で論文が書けないとかいうような評価をされてしまったら、これは育たないですよね。
だからこそ、私は、そうしたポスト、あるいは研究の社会的評価のためにも、火山庁という言葉が衆議院の御答弁でありましたけれども、そうした国立の観測研究機関をつくろうという提起を是非今後の内閣府の会議でも検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(山谷えり子君) 火山ごとに特性がありまして、火山の専門家の参画、活用がもう更に更に必要であります。
今回の改正法案において、火山観測のための大学その他の研究機関相互間の連携の強化について位置付けるとともに、今後、内閣府に設置する予定の火山防災対策推進検討会議において火山観測のための総合的な調整を行いまして、関係機関の協力による機器の補完やデータの共有化などをより一層促進してまいりたいと思いますし、また、必要な予算についてしっかりと関係省庁と連携して確保に努めてまいりたいと思います。
火山庁のような火山研究に関する一元的な組織の設置など組織体制の見直しについてでございますけれども、火山防災対策推進検討会議の検討を踏まえつつ、中長期的課題として検討してまいりたいと考えます。
○仁比聡平君 どうぞよろしくお願いします。終わります。