第169回国会 参議院法務委員会 第16号
2008年6月10日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕
まず、法務省の刑事局長に、被害者傍聴による少年のいわゆる萎縮のおそれについて、少年の心理や性格などについてのどのような御検討の上で法案を提出されたのかについてお尋ねをしたいと思います。
今日午前中、参考人にも紹介をしましたけれども、昨年の少年法改定の議論の際にこの委員会でも私紹介をさせていただきました平成十二年の法務総合研究所の研究部報告十一という冊子がございます。これは、少年院在院者のうちに被虐待経験を持っている子供たちがどれほどいて、その実情がどうなっているかということを調査をしたものですけれども、約半数に上るという大変衝撃的な結果でございました。


これを取り上げた私の質問に対して、今日はお呼びしていませんが、梶木矯正局長が、虐待等によって、身体的な影響ばかりではなく、人から愛されあるいは人を愛するという愛着行動への障害を子供たちが持っていること、破壊的な行動を行うパニック行動、自傷行為、こういった感情や行動への影響も出てきている、また、他人に対する基本的な不信感が植え付けられることによって、自分に対する自己イメージが低い、あるいは強い対人不信感があると、こういったことが個々の子供たちの特質として浮かび上がってきたという御答弁をされているんですね。
こうした少年たちの心理や性格などに照らして、審判廷において被害者が傍聴をするということがその心理にどのような影響を与えるのであろうかという、そういった科学的な知見に基づく検討がなされたんでしょうかとこれまで政府、当局にもお尋ねをしてきまして、私ははっきりそのような検討は伺ってきていないんですね。今日、法制審に参加をされた川出先生にもお尋ねをしてみましたら、法制審にそのような検討結果が出されたとは思っていないという旨の御発言だったと私は理解をしていますが、そのような検討は行っていないですね。
○政府参考人(大野恒太郎君) ただいま御指摘がございましたけれども、今回の立案に至る経過におきましては、関係団体あるいは少年審判に関与されている弁護士会、裁判所あるいは刑事法学者等を交えた意見交換会、ヒアリング、パブリックコメント等を中心に様々な御意見や参考になる資料等を集めまして、それに基づいて傍聴制度の導入の可否等についての調査、審議を進めたと、こういうことでございます。
○仁比聡平君 私が指摘をしているような科学的な知見に基づく検討というのはなされていないんです。今、局長がおっしゃった意見交換会あるいは法制審も十二月の中下旬からでしょうか、わずか三か月程度という形でなされておりまして、その間に少年の心理や性格、特質あるいは供述心理、そういったものについての科学的な検証抜きにどうして被害者の傍聴を許可をするという制度の枠組みやあるいはその運用というのができるのかと、私は一人の政治家として大変疑問に思うんですが、そこで修正案発議者にお尋ねをしたいと思います。
〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕

修正案提案者は、少年の健全育成を妨げるおそれがなく相当などの要件を付されるという修正をされたんですけれども、その前提として、少年が審判廷でどのような心理状態にあるのかというような御検討はされましたか。
○衆議院議員(細川律夫君) 特に詳しく検討をしたわけではありませんけれども、この法案が出てまいりましてから、いろいろな専門家の方にお話を聴くということはいたしました。その際、やっぱり傍聴を認めるということは、少年に対していろんな心理的影響を与える、特に萎縮をするんではないかと、そして真実を話さないようになるんではないかというような強い意見が出されました。
そういうことで、具体的な詳しい研究はいたしませんでしたけれども、そういう少年にいろんな影響があるというようなことは、いろんな方から指摘を受けて私なりに知っております。
○仁比聡平君 衆議院における修正の経過というのは、私は関心を持って見ていたつもりですけれども、その私にとっても全く分からない、まあ水面下というんでしょうか、そういった形で、私は中身は全然分からないままこの参議院での審議を迎えたんですけれども、である以上は、私が申し上げているような科学的な検証というものはなかったのではないかなとやはり思います。
今、細川先生からお話を伺いましたので、引き続き細川先生にお尋ねをしたいんですけれども、修正で付された健全育成を妨げるおそれがなく相当というこの考え方について、提案者の皆さんからも、それから政府当局からも、これまでの少年法の理念、目的を変えるものではないんだと、これまでの少年法の理念の上に可能な限り被害者の心情を受け止めるようにするんだといった趣旨の御議論がされてきたわけです。
その少年法の理念を踏まえて、少年法の健全育成に照らして相当と認めるときという要件を付すべきではないかという意見が少年司法に関係をしてこられた方々から幾つも出されていたと思いますけれども、この妨げるおそれがなくということと健全育成に照らして相当というのは、これ、意味は同じなんでしょうか、それとも違いますか。
○衆議院議員(細川律夫君) 私の考えでは、照らしてというのと健全な育成を妨げるおそれがないということでは、意味がちょっと違っているというふうに思っております。
照らしてという場合には、少年の健全育成ということと、それから被害者の心情や被害者の傍聴の権利とか、そういうのをある程度比較をするような、そんなニュアンスがあるんではないかと。しかし、そうではなくて、この健全な育成を害することが、おそれがないということが、より縛りを掛けていくというような表現だというふうに考えております。
○仁比聡平君 そうしますと、修正の意味は、少年法の理念達成のために相当な場合に認めようという、私が紹介した意見というのはそういう御趣旨の意見だろうと思うんですけれども、提案者の方々としては、その表現よりもより厳しく少年法の理念、健全育成を害させないと、そういう理解で提案されているということですね。
○衆議院議員(細川律夫君) まあ、大体そのとおりでございます。より明確にしたと。少年の健全育成、この理念というのに合うという形で、おそれがないということで、それを基準を明確にしたと、こういうことでございます。
○仁比聡平君 今の御答弁を運用に当たられる裁判所は銘記すべきだと私は思います。
そこで、少し話は戻りますが、少年の心理状態をどのように判断するのかということについて少しお尋ねしたいんですが、大野局長も、前回のこの質疑でもそれから今日も萎縮という言葉を御答弁の中でお使いになっていらっしゃいます。萎縮というのはどのような状態なのかと。この立法の問題として言えば、少年が萎縮するという状態を裁判官は何を資料として、あるいは何を徴憑として判断するということになるのか。この萎縮という言葉については、日常用語としては大変語義が広いのではないかと思うんですね。そこはどう考えていらっしゃるんですか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 大変、萎縮という言葉はある意味ではっきりしない点があるのかもしれませんけれども、少年審判に被害者が傍聴されるということになれば、少年が被害者のことを意識するといいましょうか、被害者が来ておられるということを意識する、これは当然のことだろうというふうに考えるわけであります。
問題は、そうした意識が少年にどのような影響を及ぼすかということでありまして、被害者がそこにおられるということで過度に緊張してしまって、例えば裁判官等からの問いかけに対してきちっと耳を傾けられなくなるというようなことがあればこれはもちろん問題があり、萎縮と言われる場面なんだろうというふうに思います。また、そうした問いかけ等を受けてきちっと頭の中で考えられないということになればこれも問題だろうというふうに思いますし、またさらに、表現の過程でも被害者がおられるということで黙り込んでしまう、あるいは言いたいことも言えなくなるということになればこれは萎縮なんだろうと。
つまり、少年審判に影響を与える、少年審判の目的である適正な処遇選択のための様々な情報を審判の場で明らかにすること、それから少年の心情の安定を害さないようにして内省を引き出す教育的効果を及ぼすという観点からすれば、今申し上げたようなレベルになっていれば、これは萎縮であって問題だろうというふうに考えます。
しかし、そこまで行かない、単に被害者がそこにおられるということを意識している、若干の緊張ということになるのかもしれませんけれども、その程度であれば、直ちにこれは少年審判の機能、目的に影響は及ぼさないだろうというふうに考えます。
○仁比聡平君 今局長が答弁されたような内容が今日午前中の参考人質疑の中でもちょっと出ましたので、その点、細川先生にお尋ねしたいと思うんですけれども、今の局長の答弁のような場合に限られるんでしょうか。局長は、そのような場合はもちろん問題ですと先ほどの答弁の冒頭のところでおっしゃったんですね。
私に言わせれば、今大野局長が紹介になったような裁判官の発言が耳に入らないとか、その働きかけを考えることができないとか、あるいは黙り込んでしまうとか、言いたいことも言えないとか、そんな状態になったら審判の機能が害されていることはもう明白じゃないですか。それは極度の限界事例ですよ。少年の心理状態がどのようなものであるかということについて科学的な知見に基づく検証もされておられないのに、そうでない場合は、あたかも被害者の方々が在廷しておられるという意識にとどまって審判の機能が害されないというような、そんな御答弁は私はあり得ないと思うんですけれども、細川先生はどう思われますか。
○衆議院議員(細川律夫君) 今局長が答えられたようなそういう状態に少年がなっては、それは当然審判を害することでありますからそれはいけないことでありますけれども、私どもが考えましたのは、そういう健全な育成を害するおそれがあればそれは駄目なんだと、こういうことで前回の委員会でも申し上げたとおりでございます。
○仁比聡平君 続けて伺いますけど、そのおそれというものをどのように認識すべきであるというふうにお考えですか。
○衆議院議員(細川律夫君) それは、条文中にも書いてありますように、少年の年齢とかあるいは心身の状態、事件の性質、審判の状況、これらについていろいろ調査官も調査して、そしてそれが報告されていると思いますので、それはまさに個々具体的な少年あるいは事件などによって異なると、一概に言えるものではないというふうに思います。
○仁比聡平君 政府案が修正案によって修正されてこの参議院に送られているわけですから、今の細川先生の御答弁で私は納得しているわけではありませんが、その修正の意義というのは、これは政府当局においても、それから裁判所においても当然重いものであるということを改めて申し上げておきたいと思うんです。
裁判所が傍聴の許可をするに当たって、裁判官が何を資料としてどのように判断するのかということについて家庭局長にお尋ねをしたいと思うんですけれども、これ前回の私の質疑の中で局長は、この法案の様々な考慮要素、それらの事情を十分考慮し、被害者が少年審判を傍聴された場合に起き得る問題も含めて検討して、そこは審判の機能が損なわれない場合に審判傍聴を認めるということになろうかという御答弁をされたんですね。
この起き得る問題というものの中には、平成十二年の家庭局長答弁に言う、少年の内面に相当踏み込んだそういう審理に不可欠な、内面に関するあるいはプライバシーに関する事項について発言することをためらうということだとか、あるいは少年の情操の安定や内省の深化が妨げられるおそれがあるというような場合、これが含まれますね。
○最高裁判所長官代理者(二本松利忠君) お答えいたします。
まず、どのような資料から傍聴を認め、あるいはこれを認めないこととするかにつきましては、これまで申し上げたとおり、捜査機関から送られてきました証拠資料に含まれる少年や被害者等の供述調書を始め、あとは被害者調査を含めた家庭裁判所調査官による調査の結果など、本法律案に掲げられた諸事情を把握できる資料に基づいて、付添人の意見も踏まえて判断することになると思います。
そして、御指摘の二点につきましては、そういった点も十分考慮して傍聴を認めるのか認めないのか、あるいは仮にその点、一度傍聴を認めたけれども、少年の様子等からやはりこれはこれ以上傍聴を認めるのは良くないということであれば、被害者の方に退席していただく等の措置を講ずることもあろうかと考えております。
以上でございます。
○仁比聡平君 今の御答弁を前提としてなんですが、少年に直接裁判官が向き合うのは審判廷の場面でございます。一回で審判が終わるというそういうことも多い中で、その一回目の審判の前に裁判官が少年にそのような影響が起こらないということを判断が可能なのかと。
それはもちろん、調査官やあるいは鑑別所技官の意見もあるでしょうし、付添人の意見もあるでしょう。だけれども、私自身の経験からしても、審判廷で裁判官が少年と向き合うことによって新たに少年の性格あるいは心理の状況が分かってくるということもよくあることであって、調査官やあるいは付添人が信頼関係を結び、いろんな調査をしてもなおその少年の内面になかなか届かない。だからこそ、できる限り科学的に、そして裁判官も適正に努力をしてこられたということだと思うんですよね。なのに、審判廷に臨む前に少年にどんな影響を与えるのかということを本当に判断できるんでしょうか。
付添人をどのような形で付けるかという議論も、前回、近藤先生とそれから修正案発議者中心になされましたけれども、付添人をきちんと付けて、付添人活動をきちんと取り組んでいただいた上で、裁判官が実際に少年と向き合って審判に入って、その上で判断すべき場合ももちろんあるだろうし、むしろその場合を原則にするべきではないかと思うんですが、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(二本松利忠君) お答え申し上げます。
現在におきましても、裁判官は係属した事件についての記録を十分検討し、少年についてどういう問題があるのか、あるいはどんな少年であるのかというイメージをつかみ、一方、家裁調査官の調査等を経まして、少年の状況について報告を受け、そして審判の前には家庭裁判所調査官、書記官、裁判官等が集まりまして、カンファレンスといいますが、こういったときに審判をどういうふうに運営するかということで審判に臨むわけです。
そして裁判官も、その少年の特性に応じて一番最初どういう声を掛けたらいいのかとか、そういうことをイメージしながら審判を始め、そして少年の対応等を見てそれを修正して、何とか少年に本心を語らせ、あるいは内面に踏み込んで問題点を指摘してその内省の深化を迫るという、そういうことを各裁判官はいろいろ工夫して行っているわけです。
ですから、今回の場合も、そういったことも踏まえまして、傍聴を認めることによって審判の機能が害されるかどうか、裁判官は慎重に判断することになるでしょうし、いったん被害者の方の傍聴を認めて審判を始めたところ、その少年の様子が調査官に前にしゃべっているときと大分様子が違うとかそういうことが分かったり、あるいは少年の様子自体を裁判官が観察して、そして後、それからは被害者に退席していただく等のそこは柔軟な対応を取ることになるのではないかと考えております。
以上でございます。
○仁比聡平君 私も司法修習生の時代に、今局長がおっしゃったようなカンファレンスに参加をさせていただいたこともございます。実際、そのようなカンファレンスをした上で審判廷に臨んだときに、シナリオどおりに審判を行われるのではなくて、実際にそこの審判廷での新しく得られた審判官の御判断によって、審判を続行するだとか、様々な保護処分を考えるだとか、試験観察に付するだとか、いろんな判断がされているのが審判廷の現実だと思うんです。そこの機能を決して損なわれることのないように強く求めたいと思います。
ちょっと最後に、一点だけ修正案発議者にお尋ねしたいんですが、低年齢少年……
○委員長(遠山清彦君) 質疑者の質疑時間、終了しておりますので。
○仁比聡平君 はい。低年齢少年についての十二歳の区別の問題で、昨年、少年院送致下限年齢に関しての改定がなされたときに、大口先生おられますけれども、私ここでお尋ねしまして、政治家としての識見と、それから参考人の方々がこうおっしゃったということ以外に、何か十二歳という線引きの根拠がありますかとお尋ねしましたら、それはないというお話で、民主党の皆さんは、送致の下限年齢については、ここは同意はされなかったんだろうと思うんですけれども、今回何か事情が変わったんでしょうか、そこだけ伺いたい。
○委員長(遠山清彦君) 細川律夫君、簡潔に御答弁をお願いします。
○衆議院議員(細川律夫君) 質問の趣旨はあれですか、十二歳ということと……
○仁比聡平君 十二歳にどんな根拠があるのかということ。
○衆議院議員(細川律夫君) 根拠。これは、私どもは特に触法少年、罪を犯しても罪にならない触法少年について、低年齢については何らかのあれを考えなきゃいかぬと。しかし、その場合にどう考えるかといった場合に、小学生以下あるいは中学生以下と一般に区別がありますけれども、私どもとしたら、小学生はこれは傍聴を認めない、しかし、その触法、中学生とではこれは特別に配慮をしなきゃいかぬと、こういうことで区切ったわけでございます。
○仁比聡平君 終わります。


 反対討論
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
本改正案に反対の立場で意見を申し上げます。
長きにわたって置き去りにされ、あるいは証拠の一つや取材源としてしか扱われてこなかった被害者の尊厳を尊重し、その心情を重んずることの具体化は重要な政治課題であり、繰り返し述べてきたとおり、我が党は七〇年代以来、その努力を重ねてまいりました。
とりわけ、被害者や御遺族の知りたいことを知ることができないという要求に対して、警察を始めとした捜査機関が、少年事件だから、少年法があるからと いって拒絶してきた被害者対応が少年司法全体への不信感を広げてきたこと、一方で、少年事件においても、捜査機関とそれをうのみにした裁判所による人権侵 害と冤罪事件が繰り返されてきたことの猛省を求めるものでございます。
改正案に反対する最も中心の理由は、被害者等の傍聴によって少年審判廷の機能が変質してしまうおそれが極めて強いからです。ある裁判官の、被害者の心は いやされ、その回復がなされなければならない、しかしながら、司法がかなえることのできる措置にはその公的な性格から限界があるとの法案反対の訴えを私た ちは真摯に受け止め、徹底かつ慎重に審議を深めなければなりません。
少年手続は、少年の未熟さや可塑性にかんがみ、少年の改善更生と再犯の防止を目的とし、健全育成を理念としています。そのためには、少年が少年司法全体 を通じて主体的に参加して自己の意見を自由に表明できなければならず、そのかなめとなる審判廷は、閉ざされた少年の心に向き合い、少年が萎縮することなく 審理に参加できる環境、受容的な雰囲気を確保することが不可欠です。
しかし、現実には、これまでの審判廷においても少年は一般に心を閉ざし、特に審判廷の緊張した場でなお萎縮しやすく、また言語的理解や表現力に劣る場合も多くあるため、自己の意見を十分に表明するのは困難であるというのが少年司法関係者の共通認識です。
法案は、被害者の傍聴を許す要件として少年の健全育成を妨げるおそれがないことを求める修正を経てもなお、被害者などの傍聴による少年の萎縮は否めない こと、当局及び修正案提案者が避けるとする萎縮とはどのような心身の状態をいうのかすらあいまいであり、裁判官による裁量的判断に歯止めが掛かっていると は言えないこと、裁判官が審判廷で初めて少年と向き合う前に、その心身にどのような影響が起こり得るのかの判断が可能なのかなどの問題点からすれば、被害 者の心情に配慮するばかりに、被害者の要求があればこれを認める運用がなされかねません。にもかかわらず、対象少年の心理などについて科学的知見を踏まえ た検討がなされたものとは言えません。
審判廷が狭く、少年に与える影響がより強くなること、取り返しの付かないトラブルのおそれを否定できないことへの防止策も全く不十分です。また、傍聴を 十二歳未満の場合に認めない修正それ自体は当然ですが、なぜ十二歳かの科学的、合理的根拠は明らかでなく、少年、中でも十四歳未満の触法少年の萎縮の可能 性は変わりません。
今回、閲覧、謄写の対象範囲を、法律記録の少年の心情、経歴など高度のプライバシーを含む部分についてまで拡大することは、少年の更生への影響から見て問題があります。
我が党は、少なくともこのような重大な問題点を有する本法案について、徹底かつ慎重な審議が必要であることを強く求めてまいりました。少年法をめぐって は度重なる改定が続き、その多くが強行採決され、それらの施行後の状況の検証も極めて不十分です。ところが、国民的合意がないまま、本委員会でまた趣旨説 明当日の審議入り、参考人意見聴取当日の採決提案など、異例に異例を重ねる審議が行われ、審判廷の視察すら行わずにこうして採決の段階に至っていることに 厳しく抗議をし、反対討論を終わります。