○仁比聡平君 おはようございます。日本共産党の仁比聡平でございます。

この東日本大震災法律援助事業を延長するというこの法案については、もちろん我が党も賛成でございます。

被災者の皆さんからの、とりわけ法的な支援を求める切実な声により一層応えていく必要があるという思いから、何点かお尋ねをしておきたいと思います。

まず、この法テラスの法律援助事業に対するニーズについてなんですけれども、震災から四年を経過をしましたけれども、避難生活を強いられている被災者は、今なお、およそ二十三万人に上ります。被災三県で恒久的な住まいとなる災害公営住宅の完成も一五%にとどまっている。そうした下で、住まいやあるいは事業、そして原発の被害からの賠償やあるいはふるさとを取り戻していくというこうした課題というのは、極めて困難な状況にもあり、法律実務あるいは法的紛争を資力の有無に関係なくきちんと十全に権利が実現をしていくという支援というのが極めて大事だと思うんです。

そこで、法テラスを所管している法務省にまずお尋ねしたいと思いますが、こうしたニーズについてどうお考えでしょうか。

○政府参考人(萩本修君) 先ほどの提案者からの趣旨説明と若干重複をいたしますが、法テラスの震災特例法による法律相談援助の利用件数は、平成二十四年度から平成二十六年度にかけまして増加傾向にあり、また弁護士費用等の立替え援助も活発に利用されております。

被災地の高台移転や公営住宅整備は今年度から本格化したところでありますし、特に津波被害が甚大であった沿岸自治体の町づくりは、政府の定める集中復興期間の終期である平成二十三年三月に至っても道半ばであるとの見通しでございます。このほか、原発被害の損害賠償請求権の消滅時効が十年に延長されるなど、原発関係を含む訴訟などは今後も続くものと思われます。

このような状況に鑑みますと、法務省としましても、震災法律援助のニーズはなお大きいものと考えているところでございます。

○仁比聡平君 お手元に、仙台弁護士会の、東日本大震災から四年を迎えての震災復興支援に関する会長声明という文書を御参考にお配りをさせていただきました。

今、司法法制部からニーズについてのお話があったんですけれども、この会長声明を拝見すると、この四年間、お一人お一人の被災者に向き合いながら、様々な相談活動あるいは事件の解決、問題の解決に向けた活動を重ねてきた現場の弁護士の皆さんの思いやあるいは認識がにじみ出てくるように思います。

特に、私、今日申し上げておきたいと思いますのは、この会長声明を御覧いただきますとお分かりのとおり、例えば二重ローン問題、あるいは災害公営住宅への入居の要件、二枚目に行きますと、その災害公営住宅での入居先でのコミュニティーの形成支援などを抜きに、これからの生活再建を法律家、弁護士としても希望をしっかりつくっていくことがかなわないという問題意識や、あるいは、ちょっと飛ばしますけれど、災害弔慰金について、震災関連死に係る災害弔慰金の支給、不支給をめぐる複数の係争案件や、そして原発の問題で、原発被害における被害の広範性及び特異性等に鑑みれば、従来の不法行為法の理論では対応しきれず、被害者救済に不十分な点があることは否定できない、そうしたことから、あるべき法令解釈及び賠償制度の構築などを始めとした被害の回復に向け検証、探求を行う所存であるというふうにあるわけです。

つまり、従来のといいますか、震災前の実定法をそのまま適用すれば足るというような事態では全くないということは、これはもう当然我々も共通の認識だと思いますし、法テラスやあるいは弁護士会や、それぞれの弁護士や司法書士さんを始めとした関連の法的な解決を担う皆さんのところに託されるのは、そう簡単ではない問題の解決への道筋だと思うんですね。

私、法テラスがその一つのよりどころとして、とりわけ援助を受ける被災者の資力の状況に左右されずに十全な法的なサービスが行き届くように頑張っていただきたいと思いますが、どうでしょうか。提案者、そうした御認識や決意はいかがでしょう。

○衆議院議員(遠山清彦君) 議案提出者を代表して、簡潔にお答えを申し上げたいと思います。

仁比委員が既におっしゃったとおり、被災者のこの法テラスによる資力要件を問わないサービス提供のニーズというのは非常に大きいと思います。政府挙げて取り組むことは当然のことながら、私ども立法府におります国会議員、また我々が所属する各政党各会派がそれぞれの立場で被災者支援の充実に努力をしていかなければならないと考えております。

ニーズにつきましては、既に奥野委員長の趣旨説明の中にあったかと思いますけれども、過去三年間、今年度につきましてはまだ集計がされておりませんけれども、平成二十四年度にはこの法律相談の数が四万二千九百八十一件、平成二十五年度が四万八千四百十八件、今年度につきましては、私は上半期だけ伺っておりますが、二万五千五百七十一件、今年度については五万件を超える勢いで増加をしております。

この背景には、今お示しになった資料にもありましたとおり、不動産関連の訴訟が、あるいは係争が増加をしているということでございますし、福島まで視野に入れますと、原発被害の損害賠償請求権の消滅時効が十年間に延長されておりますので、今後増加することが見込まれております。

一方で、被災者の側に立って物事を見ますと、資力要件を今回課していないわけでございますが、家族を亡くされた被災者に家族構成を聞くということは酷であるということもございます。また、自宅そのものが流失しているなど資力を疎明することが不可能な被災者の方々も多数いるということで特例的に資力要件を課していないわけでございますが、この後、恐らく仁比先生から御質問があって法務大臣お答えになると思いますが、まず一義的には政府においてきちんと広報、周知徹底を図っていただきたいと思いますし、また同時に、冒頭私申し上げましたとおり、各党各会派、各議員が引き続き被災者の支援の充実のためにそれぞれ努力をしていくということが大事というふうに提出者として考えております。

以上でございます。

○仁比聡平君 ということですので、大臣にお伺いしましょう。

今、遠山先生からもあった法テラスのこの制度についての周知広報なんですけれども、法テラスが実施されたニーズ調査によりますと、本特例に基づく法律援助事業を知っていると回答された被災者が四〇・四%にとどまっているんですね。加えて、震災後に経験した最も重大な問題について法律家に相談したという回答は二七・三%にすぎません。法テラス出張所のある南三陸町では六六・四%の人がこれを知っていた。一般的には四〇・四%だけれども、南三陸町では六六・四%の方々が知っていた。三一・九%の方が法律家に相談したと回答しておられるわけです。法テラス出張所のない女川町でも、避難所や仮設住宅に来た弁護士や司法書士に相談したという方が一六・三%いらっしゃって、五割近く、四八・八%の方が法律家に相談したと回答しておられるんですね。

この法律家の相談の支援ということが被災者お一人お一人のところに届くことがまず大事だと思いますけれども、大臣、端的にどんな工夫を考えておられるでしょう。

○国務大臣(上川陽子君) まさに法テラスの役割を十全に果たすためには、被災者の皆さんがそれぞれのニーズに応じて相談をすることができる先があるということを知っていただくということが何よりも大事だというふうに考えております。

今、委員の方から御指摘いただきましたニーズ調査に基づいて、南三陸町の七割近い方が法テラスを知っていらっしゃるということのその背景には、その被災地の出張所があるということ、また、移動車両で仮設住宅まで赴きまして、そして具体的なニーズにつきまして対話をしながら相談を受けているという実態があるという典型的な例として、こうした認知度も上がっているのではないかというふうに考えているところでございます。

その意味では、法テラスを周知徹底をしていく広報の活動ということは大変大事でありまして、今もう既に新聞広告等の一般的な広報活動のほか、また、今申し上げたように移動相談車両等を積極的に利用いたしまして、仮設住宅での巡回相談を更に浸透させていきたいと。そして、この震災法律援助制度そのものを皆さんに理解していただきながら使っていただくように、また専門的な立場でサポートをしっかりしていただくように対応をしてまいりたいというふうに思っております。

○仁比聡平君 よろしくお願いいたしたいと思います。

そこで、この仙台弁護士会の声明にもある、相続関係が不明である、そうした土地の問題について、登記のことを一問だけ伺っておきたいと思います。

防災・減災と復旧復興の迅速化というのは、地図の作成が第一歩だというのは、阪神・淡路大震災以来、教訓として浮き彫りになっているわけですが、今、東日本の現場で見ますと、境界を確定するために必要な説明会を法務局の登記官が行う、あるいは立会いを所有者に通知をしなければならないけれども、現在の地図にある所有者が亡くなっている例も多々あって、その作業に大変時間を要していると。土地の相続人の特定のために戸籍を公用で取って氏名、住所を調べるという、こうした作業に大変時間が掛かっているという現状があると思うんですね。

この現場の現状にきちんと手当てをするということが大事だと思いますのと、それから、自治体が税務の関係の情報で登記には反映されていない相続関係、所有者の氏名、住所を把握する場合があるわけです。これが登記にも手掛かりとなったらどうかという声も私聞くわけですけれども、まず葉梨副大臣、どう思われますか。

○副大臣(葉梨康弘君) 御指摘のように、法務局の備付けの地図、これは復興のために非常に大事だというふうに思っています。そういうことで、現場の法務局におきましても、所有者の立会いを求める、もし所有者が分からないといった場合には隣接地の方々の所有者に問い合わせる、あるいは個別に訪問する、あるいは相続の関係につきましては、現状においても不在財産管理人制度、そういったものも活用すると。いろんな手法で、いろんな形で調査をやっぱりやっていかなきゃいけないと思っています。

御指摘の点についても、税務関係の情報というのは秘匿性が高いということで、非常に慎重な取扱いがされているというふうに伺っているところですけれども、そのような必要性の有無につきましてもしっかり勉強をしていきたいというふうに思います。

○委員長(魚住裕一郎君) 仁比君、時間ですので、おまとめください。

○仁比聡平君 総務省審議官、おいでいただいていて恐縮なんですけれども、今のような状況をよく御検討いただければと思います。

また、時間が参りましたから、もう要望だけにとどめざるを得ないでしょうけれども、復興庁の統括官にもおいでいただいておりました。

集団移転事業を進める上で、各市町村がコンサルタントに委託して作ってもらった測量図が実はなかなかそのまま登記に使うということが難しくて、やり直しをしなきゃいけないということが登記事務が遅れる原因にもなっているという声も伺っております。元々、復興庁、コンサルではなくて土地家屋調査士さんたちの協会に委託をできるという周知をずっとしてこられているんですけれども、いろいろ市町村、御事情もあるのかもしれません。

是非、相談に乗っていただいて、そうした正確な地図作りが速やかに進むように御努力いただきたいと今日は御要望を申し上げまして、私の質問を終わります。

○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人から発言を求められておりますので。法務大臣官房萩本司法法制部長。

○政府参考人(萩本修君) 先ほどの答弁の中で、政府の定める集中復興期間の終期を平成二十三年三月と申し上げてしまったようですが、正しくは平成二十八年三月ですので、訂正いたします。