○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

私からも簡潔に法務省と提案者に確認をしたいと思うんです。

本法案で指導の対象となる「犯罪をした者等」について、未決の者又は刑の執行を終えた者などの地位に鑑みて指導の対象とすべきでない者を指導の対象にしてしまうということになってしまうと無罪推定原則と矛盾するのではないか、あるいは刑の執行を終えた者を社会でずっと監視し続けるということになるのではないか、日弁連を始め厳しい、この法案の、そうした解釈の余地を残しているのではないかという指摘があるわけですね。

そこで、法務省にまず確認をしますが、現在そうした者に指導を行う法令上の根拠はありませんし、実際行っていないと考えますけれども、まず、いかがですか。

○政府参考人(高嶋智光君) お答えいたします。

委員御指摘の指導に関する部分でございますが、指導というふうに一言で言った場合、その意義はいろんな意味がございまして、本法案における指導がどういうものを指しているのかということについてはお答えする立場にはありませんけれども、法令上一般に指導というふうに言う場合は、それは相手方に対して強制力を持たず、相手方がこれに従うかどうかは任意とされているものと理解しております。したがいまして、恐らく本法案における指導という文言も、国が強制力を持って再犯防止のための措置をとる法令上の根拠とはならないものと考えております。

いずれにしましても、現在、未決の者や刑の執行を終えた者に対して国が強制力を持って再犯防止のための措置をとることはございません。

○仁比聡平君 ちょっと確認しますが、様々なものが指導に含まれるだろうという前提でのお話です。

そこで、ちょっと絞って、保護観察上の改善指導というのは、今私が申し上げている者に対しては法令上の根拠はないし、実際行っていないと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(高嶋智光君) 保護観察、更生保護法上の保護というふうな観点から申し上げますと、様々な保護が考えられているんですが、例えば刑の執行を終えた者、それから、刑の執行を終えた者あるいは刑の執行猶予の判決を受けた者、こういう者につきましては、例えば親族がなく、帰住先がなく、そういう者につきましては、本人の意に反しない限りにおいて、本人の申出を条件として更生保護法に基づき必要な指導、支援を行っているもので、することがございます。

ただ、これは今申し上げましたように、本人の申出がある場合に限ってということで、これも強制的にわたるものではございません。

○仁比聡平君 つまり、今度の法案がそのような者に対して、つまり意思に反する、強制的な、そうした新たな働きかけを行う根拠にはならないんだという御答弁だと思うんです。

加えて、もう一つ確認をしておきます。

附帯決議も検討をしているわけですけれども、一般に法令的に次の言葉をどのような意味として使うかと。言葉というのは、有罪判決の言渡し若しくは保護処分の審判を受けた者という言葉なんですけれども、これ、言渡しあるいは審判を受けた者というだけだと、一審であるいは家庭裁判所でそういう判決や審判を受けたけれども、控訴をして争っているということも含むのかという誤解が生まれることもあるかと思うんですけれども、この言葉は有罪判決又は非行事実ありとした審判が確定した者を指す言葉だという意味だと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(高嶋智光君) 附帯決議につきましては、これは、その内容は政府としては説明すべき立場はありませんので、あくまでも一般論として、委員のおっしゃる有罪判決の言渡し若しくは保護処分の審判を受けた者というのがどういうふうな、一般的にどういう意味なのかということについて御説明させていただきますと、この文言がどのような意味を表すのかということは、それがどのような文脈で使われているのかということにもよるために、一義的にこの言葉はこういうことを意味しますというふうにお答えすることは難しいのでありますが、仮にその文言が、その者が罪を犯したのか等の事実の確定という文脈で使われる、用いられるのでありましたら、判決が確定した者、判決等が確定した者というものを意味すると解するのが自然であるというふうに考えられます。

○仁比聡平君 きちんと説明してもらおうとすると一層ややこしくなるという御説明になっているわけですが、提案者は御理解いただいていると思います、このやり取りの意味について。

法務省の答弁のとおりでよいかということと、それから、前回、この法によっての福祉施策との連携を図っていこうという、この積極的な意義についてお互い議論をし合ったわけなんですけれども、何にせよ、国や地方に計画を立ててもらおうとかいうような具体化はこれから進むんですが、この法によって何か新たな働きかけの根拠が直接できるものではないと、そういう意味ではこれからに懸かっているんだという、そういう法案なんだと思うんですが、そのことを基本法とおっしゃっているんだと思うんですが、そこの理解についてお願いします。

○衆議院議員(井出庸生君) お答えを申し上げます。

今、先ほど法務省、政府の方から答弁ございましたが、基本的には法務省の認識のとおりでありまして、また、今先生からそのお話がありましたが、この法律は、やはり刑を終えて、その犯罪、一度関わってしまったその犯罪を二度と繰り返したくないと、そう望む人に対して、福祉施設との連携のお話もございましたが、環境を整備をしてあげるというものでございまして、参議院のこの委員会の中で御議論いただいてまいりました何か強制的な指導ですとか、そういう御懸念も大変重大な御指摘だと思いますが、その立ち直り、犯罪との関係を絶ちたいという人たちに少しでも救いとなるような、そういう方向性からこの法案を御提案をしてまいりました。

今先生おっしゃられたその福祉施設のみならず、一人でも多くの再犯の方が減って自立していけるような、そういう環境整備のための法案であると、そのように御理解をいただきたいと思います。

○仁比聡平君 終わります。

○委員長(秋野公造君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。

本案の修正について仁比君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。仁比聡平君。

○仁比聡平君 ただいま議題となっております再犯の防止等の推進に関する法律案に対し、日本共産党を代表して修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。

これより、その趣旨について御説明申し上げます。

本法律案は、再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めようとするものであり、我が会派も衆議院において賛成したものですが、なお幾つかの疑義が残っております。

まず、本法律案第一条は、その目的について、「国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与すること」を規定していますが、加えて「犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進する」ことを明記する必要があると考えます。

次に、本法律案第二条第一項で定める「犯罪をした者等」の定義が不明確であるため、本法律案における犯罪をした者等に対する社会内での「指導」に関する規定については、未決の者、刑の執行を終えた者等にも指導がなされるように解釈される余地があります。

未決の者等に対する「指導」は明らかに無罪推定を受ける地位と矛盾し、刑の執行を終えた者等に対する「指導」はそれらの者を引き続き社会内で監視をする制度につながりかねません。そこで、無用な誤解を生まないよう、未決の者、刑の執行を終えた者その他その地位に鑑み指導の対象とすべきでない者に対しては「指導」は行わず「支援」にとどめるよう本法律案を厳格に執行することを法文上も明確にする必要があると考えます。

以下、主な内容について御説明申し上げます。

第一に、法律の目的に「犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進する」ことを加えることとしております。

第二に、基本理念に「再犯の防止等のための指導は、未決の者、刑の執行を終えた者その他その地位に鑑み指導の対象とすべきでない者に対しては行わないものとする」を加えることとしております。

以上が修正案の趣旨であります。

何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

○委員長(秋野公造君) これより原案及び修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに再犯の防止等の推進に関する法律案について採決に入ります。

まず、仁比君提出の修正案の採決を行います。

本修正案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕

○委員長(秋野公造君) 少数と認めます。よって、仁比君提出の修正案は否決されました