○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

大臣がこの青柳氏の事件そのものについて詳細は答弁されないというこの下で、この集中的一般質疑を提案された与党の責任は、私、重大だと冒頭申し上げておきたいと思います。

事実について、これは答えられるだろうと思うんですが、論文式の出題について、問いに相当する内容というふうに先ほど答弁されましたけれども、漏えいしたものですね、これは、つまり現実に出題された問題と同じものないしはほぼ同じものという趣旨なんだと思うんですよ。そう私は受け止めましたが、それでいいかということと、それから、短答式についてもこの受験生が高得点だったという報道もありますが、短答式の問題についても漏えいが疑われるということでいいですか。

○国務大臣(上川陽子君) 一点目の御質問でございますけれども、問いのほぼ内容、全容というようなことだということでございまして、そのとおりであるというふうに報告を受けているところでございます。

それから、短答式の件につきましてもお触れいただきましたけれども、こちらにつきましても蓋然性があるという、そうした認識をしているところでございます。

○仁比聡平君 こうした問題が、先ほど来議論のあるように司法試験とそして司法の公正さを打ち壊してしまう、そして、プロセスとしての法曹養成という、学部、ロースクール、司法試験、司法修習というこのシステムそのものの信頼を壊してしまう重大な問題であって、その中心的な役割を担うロースクール教授、考査委員が倫理違反を繰り返しているという、こうした事案だということを私しっかり踏まえて、これからの原因究明と再発防止に当たっていただきたいと思うんです。

というのは、先ほど来議論のある八年前の慶応大学ロースクールの事件ですね。これは八年前、つまり二〇〇七年なんですが、平成十九年ですが、大臣、青柳前考査委員が最初に考査委員に任命され、その後ずっと継続していると思いますが、それはいつですか。

○政府参考人(黒川弘務君) 青柳委員は、司法試験考査委員として平成十八年に初めて任命されまして、その後、今回の司法試験までずっと継続しております。

○仁比聡平君 その八年前の事件、つまり平成十九年に起こった事件の時点で青柳前委員は考査委員なんです。しかも、憲法、公法の考査委員なんですね。

あの事件は、慶応大学の教授が公法系の論文担当の問題を、先ほどお話ありましたが、答練で、答案練習会で繰り返し提起していたのではないかなどの問題だったんですけれども、それを目の当たりにしているわけですよ。あのときその慶応大学の教授は、口伝えでその年度の出題を、あるいはその素材を知ったということを、当時の官房長の答弁があるんですけれども、その憲法、公法の考査委員の中に青柳氏はずうっといるんですね。そして、その慶応大の漏えい事件を目の当たりにした。

その下で、平成十九年の九月の十二日に司法試験委員会の決定として、先ほど指摘をされた考査委員の遵守事項というのが出されました。これは、考査委員は任命された日から司法試験の実施が終了するまでの間、指導に当たってはならないということを柱にしたものなんですよね。私が申し上げたいのは、これは、現実にはこの遵守事項違反という実態が常態化しているのではないのかということなんです。

今度の青柳事件が発覚して後の、ちょうど法務省前で合格発表を確認に来た受験生、合格者の数々のインタビューが取られておりました。あるいは、明治大学を始めとした学生、ロースクール生のインタビューもたくさんメディアに出ておりますけれども、そうした学生たちのそのコメントを総合すると、私は、結局この考査委員がロースクール生やその修了者を指導してはならないというこの遵守事項は完全に有名無実化している。指導を行うのは当たり前になっている。その下で、特定の、あるいは特定の人たちの指導に熱心だなどというこの青柳氏に対するコメントもあるわけでしょう。

この遵守事項が守られないことが当たり前になっていると、大臣はその認識がありますか。

○国務大臣(上川陽子君) 遵守事項につきまして、平成十九年にこの慶応の事態を受けまして作られたということでございまして、これが考査委員に就任をするに当たって確認をしながらやってきたというふうに報告を受けているわけでありますが、しかし結果としてこのような事態が起こっているということ、そしてこれに係る様々な、今のような御指摘もございましたけれども、ということになりますと、ここにも本質的な問題が潜んでいるのではないかというふうに、私自身は極めて大事に、重要なことというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君 八年前、この遵守事項について、私はこれ、何の決め事なのか分からないじゃないか、これに反したらどうなるのかはっきりしないじゃないかと、当時の大臣にお尋ねをしたけれども、そこはこれから勉強していきたいというような趣旨の御答弁にとどまったんですね。

これに反すれば社会的にただされるということをはっきりした禁止規範にしないことには、そのことをはっきりさせないことには、こんな決定を出しても結局何にも守られない。それは、考査委員やあるいはロースクール教授としての倫理、これを投げ捨ててしまうという姿を野放しにするということになるんですよね、試験委員会が。

そんなことは絶対にあっちゃならないと思うんですが、先ほど官房長から、私ちょっと耳を疑う答弁伺った思いがあるんですよ。この試験委員会の決定を言わば作ってきたというか、の立場で、甘い認識であったと御答弁ありました。それは、大臣も含めて法務省として、この遵守事項の性格について甘い認識だったんですか。

○国務大臣(上川陽子君) 今の遵守事項、違反事案があったということを踏まえた上での再発防止ということで作られた極めて大事な遵守項目である、一つずつ照らしてみても項目であるというふうに思っておりまして、しかし結果としてこのような事態が生じているということ、そしてこのことが発生してからの一連の様々な状況をいろんな方が御指摘をされるということを鑑みてみますと、この遵守事項を、高い倫理性の下で司法分野においての指導者が持つべき倫理規範について、持てなかったということにつきましては、極めてゆゆしきことだというふうに思っているところでございます。

○仁比聡平君 今回の青柳氏の事件は、結局、出題そのものを漏えいしたと、恐らくそういう認定をされたんだと思うんですよ。だから、これが国家公務員法上の秘密の漏えいだということになって、こういう事件になって公表された。

けれども、遵守事項違反ということが常態化しているというのが現実だとすると、この遵守事項に違反していることが仮に発覚をし、ロースクール生がおかしいと思って試験委員会に言ったとしても、それは何の処分も受けないし、公表もされないということにこれまでなってきたのではないのか。先ほど官房長は、大学の先生方に気を付けてくださいという趣旨にこの遵守事項を説明をされて、それは甘い認識であったという、そんな御答弁だったと思うんです。

そういう性格の遵守事項があるから再発は防止できるなんというような論はもう成り立たないぞと厳しく申し上げて、恐らく事実関係、これ以上お尋ねしてもお答えにならないんでしょうから、私、この委員会の運営との関わりで、大臣にもう一問伺いたいんです。

当委員会には民主党などが提出をされた人種差別撤廃基本法案が係属をし、八月六日にこの委員会で実質審議を行いました。ところが、その後、いわゆる四党協議、自民、公明、民主、維新による協議が行われ、その詳細は理事会オブザーバーである私にも分からない、そうした状態で今日まで来ているわけです。

議員立法というのは、こうして既に実質審議に入っているわけですから、その扱いというのは委員会の問題なのであって、修正を含めて法案の扱いは理事会、理事懇談会の合意を踏まえて、国民の皆さんに明らかになるように必要な委員会質問を行う、研究者や当事者や自治体関係者の皆さんなど参考人の質疑をきちんと行う。そうやってしっかり国会として行っていくということが私当然だと思うし、八月六日には、ヘイトスピーチ根絶の趣旨については全会派それは共有をしているということが改めて確認されたわけですから、ならばなおのことだと。そういう十分な審議を行っていくべきだと私は思うんですけれども、大臣、御感想があれば。

○国務大臣(上川陽子君) ただいま御指摘の法案につきましては、議員立法ということでございまして、四党の間で協議が行われているということにつきましては承知をしているところでございます。

まさにこの委員会、国会の中での審議の進め方に係る御質問ということでございまして、大臣としての感想を述べるということにつきましては、その立場にないということを御理解いただきたいというふうに思うところでございます。

○仁比聡平君 法務省としては、大臣としてはそういう御答弁になるんだろうと思うんですね。

ところがと、官房長にお尋ねしたいんです。

こうした委員会運営をめぐって様々な議論があっている。八月二十六日に久しぶりの理事懇談会が行われました。これが散会した後に、官房長は民主党の理事に追いすがって、と私には見えたんですが、どうすればたたき台として受け止めていただけるのかと。つまり、この議員立法について、与党が議論をしておられる、民主党はたたき台を求めておられる。このたたき台をどうすればたたき台として受け止められるのかというふうに官房長が民主党理事に言っているというのは、これ一体どういう意味なのかと。議員立法の扱いについて法務省大臣官房が何かそんなことやっているんですか。

○政府参考人(黒川弘務君) まず、誠に恐縮でございますが、委員御指摘の日時、場所で私が民主党の理事の方と接触させていただいて、一体どのようなやり取りをしたのかについて今具体的な記憶はございません。

その上で、四党協議の中で、役所としては、法務省所管の所管行政の中で御質問があればお答えし、いろいろな説明もさせていただいてきているところでございます。

○仁比聡平君 参議院議員会館の二階のエレベーターホールで、私がいる目の前で先ほど申し上げたようなことをやっておられたじゃないですか、うなずいておられるけど。

そんなに言うなら、私、ちょっと耳に入って、ちょっと確認したいんですけど、法務省が労働組合の全国団体に働きかけて、多方面に、盗聴法など一括法案、私は反対しましたが、この後趣旨説明を行うとされていますが、これを何とかしてくれと働きかけてきたというのは事実ですか。

○政府参考人(黒川弘務君) そこの詳細について私は承知しておりませんけれど、今委員御指摘の連合の関係の方がこの刑事訴訟法を議論する法制審議会の主要メンバーとして入っておられまして、この法制審議会の意見形成に尽力されたということがございます。

その関係で、その団体の方のみならず、この法制審議会の運営に御協力いただいてきた方々がこの国会でのこの法案の成立を望んでおられたという背景があることは事実でございます。

○委員長(魚住裕一郎君) 仁比君、時間ですのでおまとめください。

○仁比聡平君 お認めにならないけれども、結局、この間、あなたを始めとした法務省が取ってこられた態度というのは、何が何でも刑訴法等盗聴法など一括法案の審議入りの条件づくり、それをのりを越えて行っているのではないかと私言わざるを得ないと思うんです。

我が党は、本会議質問で問うたとおり、重大な憲法違反の治安立法であり、刑訴法等一括法案を廃案にすべきだと考えておりますが、たとえ賛否の立場は違っても、この国会状況の下で残りの定例日を考えたときに、慎重、十分な審議を行うというような条件はどこにもない、たとえ趣旨説明を行っても、これはきっぱり廃案しかないということを強く申し上げて、質問を終わります。