有明海のノリ養殖は10月、網を重ねて海に張り、網にぶら下げた牡蠣(かき)穀から胞子を移す「種付け」で本番を迎えます。そこから12月下旬までの「秋芽(あきめ)」、種付け後とり分けて冷凍保存しておいた網に張り替えてからの「冷凍」の収穫期―ノリ漁民は、厳寒の海で夜昼無く、最大6メートルの干満差のなか海と太陽の恵みをいっぱいに取り込んでノリを育て、摘採、乾燥、出荷と、家族で働き続けるのです。

ところが今秋、その大切な種付けから秋芽の最中、諫早干拓の北部・南部排水門から大量の汚濁水が、連日のように排水されてしまいました。

潮受堤防の「ギロチン」で閉め切られた内側の調整池の水質は、目を覆わんばかりに悪化しているのです。ヘドロ臭までする排水は島原半島をなめるように南下し、汚れがノリ網にこびり付き、大切なノリ芽を根こそぎ痛めつけて、「芽が落ちていく。風が吹いただけで芽が流れる」(島原市有明漁協)という壊滅的な被害をもたらしました。排水の真正面にあたる大牟田、玉名にかけても同様の事態です。

日本一のノリ生産地―福岡県柳川、佐賀市川副など有明湾奥部では「赤腐れ病」が大量発生し、必死の作業もむなしく鹿島から大浦にまで広がって、秋芽生産は平年の3~4割です。「11年前の大凶作よりひどい」(川副漁協)事態です。諫早干拓によって海をかき混ぜる自然の力が弱められてしまったからです。

養殖資材の請求書を前に漁民と奥さんたちは眠れない夜を過ごしています。ですが私たちはこの10年、「二度と犠牲者を出さない」強い決意で団結し、宝の海を取り戻す展望を切り開いてきました。

ノリ被害を訴える仁比参院議員(当時)

 調整池から汚濁水を吐き出すのではなく、海水を入れる開門を実現すれば、水質は劇的に改善されるのです。国と長崎県が、いまこそ開門判決確定の重みをかみしめるべき時です。(しんぶん赤旗 2011年12月21日)