郵政や国鉄などの民営化前後に働いた労働者の業務上疾病に対する補償に関して、公務災害・労災双方から不支給とされた労働者が多発していた問題で、救済が図られる道が明確にされました。全日本建設交運一般労働組合(建交労)九州支部と日本共産党の仁比聡平参院議員が、厚生労働省に対して実態に即した認定ルールの運用を求めた結果、発症の時期にかかわらず事実があれば労災保険として補償が受けられるルールの明確化を勝ち取りました。
民営化された職場では、長期におよぶ仕事の負担で発症する振動性障害や難聴、腰痛、じん肺など遅発性疾病は、主たる起因の時期をめぐり労災申請の対象外として不支給とされたケースが相次いでいました。今回、救済対象となるのは、民営化で公務から民間になったり、船員保険と労災保険が統合するなど適用する保険が切り替わった労働者です。
建交労九州支部ではバイク配達で振動障害を負った郵便職員の労災申請を支援しました。しかし、2007年10月1日の郵政民営化にまたがって配達に携わってきたため、労災保険が不支給になりました。同様の事例が熊本と宮崎両県で3件起こりました。
船員の労災申請の支援でも、船員保険と労災保険の統合時期にまたがって発症した振動障害や騒音性難聴が4件不支給となり、1件は裁判になっています。
郵政民営化の際の労働基準局長通達で、民営化以前の業務に起因する労災は、公務災害として補償するものとされていました。しかし、遅発性疾病は、どの時点の業務に起因しているか明確に判断できません。
建交労と仁比議員は、医師が診断した時点の労災保険の支給を求め、昨年12月7日、19日、今年1月19日の3回、厚生労働省と交渉しました。厚労省労働基準局補償課職業病認定対策室の担当者は、「通達の読み方が正しくなかった」「すみやかに(支給)決定すべきものだ」と問題を認めました。
仁比議員は、「正式な解釈を全国の労働行政に周知徹底すべきだ」と強調。担当者は、すでに当該労働局に伝え、2月の労災課長の全国会議での周知、補充通達なども行う考えを示しました。
緒方徹治建交労九州支部委員長は、「労災認定が長引き、まして不支給になるのは精神的につらい。一日でも早く労働者が救済されるようにできてよかった」と話しました。
仁比議員は、「労働者は民営化後も同じ仕事を続けているのだから、民営化後の労災保険で救済するのが当然です。制度切り替えのリスクを被災した労働者に押し付けてはなりません」と話しています。(しんぶん赤旗 2018年1月24日)