○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
十一月十八日に発見された東京入管収容中の五十代のイタリア人男性が死亡された事件についてお尋ねをします。
入管にまずお尋ねいたしますけれども、改めて、どのように亡くなられたんでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 現在把握している事実関係でございますけれども、令和四年十一月十八日午前七時二十二分の職員による発見時、この亡くなられた方は、引き裂かれたテレビの電気コードを巻き付けた五十円玉二枚を輪ゴムで固定して両こめかみに当て、コンセントに差し込み通電した状態で、居室内に敷かれた就寝用のマットレスの上に横たわっていた状態であったということでございます。
その後、午前七時二十六分に職員が救急搬送を依頼したものの、午前九時十六分に搬送先病院での死亡が確認されたというものでございます。
なお、搬送先病院医師の所見では、推定される死因は電撃傷であったというふうに聞いております。
○仁比聡平君 先ほど来の質疑で、天井からつるされているテレビの、天井のコンセントにつながっているテレビの電源コード、電気コードを引き裂いたという表現をされているんですけれども、かなり高い位置にあると思うんですが、踏み台になるようなものが居室にあるのか、加えて、手で引きちぎったということなのか、その点はいかがですか。
○政府参考人(西山卓爾君) これも事実確認中ではございますが、室内にはテーブルがございました。
それから、私も引きちぎったという表現をいたしましたが、実際、コードを切った方法についても今事実確認中でございまして、明確なことは今お答えできません。
○仁比聡平君 刃物のようなものがあったのかということも調査中ということなんだろうと思いますけれども、生きている収容者を入管が最後に確認をしたのはいつなんでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 詳細な事実関係、今確認中でございますが、当日未明の時点では、亡くなられた方が居室内で動いている状況が確認をされております。また、居室内のコンセントに通電されるのは午前七時であったため、現時点で把握された事実関係からは、亡くなられた方は午前七時前までは生存していたものと推測をいたしております。
○仁比聡平君 動いているというのは、その居室をどんなふうに確認をしたということなんでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 動哨確認ももちろんございますけれども、そのほかに、居室内には監視カメラはございませんが、ほかの箇所に監視カメラがあって、それに映っている状況からも確認が取れたということでございますが、その点も含めて今詳細については確認をしているところでございます。
○仁比聡平君 ということは、その動いている収容者を、入管といいますか警備官といいますかが確認されていたということのようなんですけれども、そのときの様子というのはどんな様子だったか。というのは、先ほど来御説明いただいているような亡くなり方で自殺をしたと思われるということは、この収容者が相当深い自殺念慮に襲われていた、とらわれていたというふうにも思われるんですけれども、そうした様子というのはなかったんでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) その動静の具体的な様子につきましても、今事実を本庁の方で改めて確認をしているところでございます。
○仁比聡平君 大臣、収容中に収容者が亡くなったということの重み、そして、こういう形で自殺をされたということについてはどうお感じになっておられますか。
○国務大臣(齋藤健君) まず、十一月十八日に東京入管の被収容者がお亡くなりになりまして、まずもって亡くなられた方の御冥福をお祈りをしたいと思っています。
当然のことながら、入管収容施設に収容されている方が亡くなるということは本来あってはならないことだと思っておりますので、大変重く受け止めなければいけないと認識しています。被収容者の死亡事案などが生じないように処遇全般を適切に行うことは、出入国在留管理行政の私は責務であるというふうに思っております。
まずは、入管庁において、今委員いろいろ御指摘されましたけど、そういう御指摘あるわけでありますので、しっかりと経緯、死に、死亡に至る経緯の確認をしっかりして、適切に対処していかなくちゃいけないと考えております。私からも、事実関係をしっかりと確認して適切に対処するよう指示をしたところでありますので、それをしっかり実行させていきたいと思っています。
○仁比聡平君 その、まず、今回の件の事実関係の調査についても、この十一月十八日の未明以降に起こったことは無論のことですけれども、この亡くなられた被収容者の収容やその原因というところにもしっかり遡って、遡ってというか、視野をきちんと大きく持って取り組まなければならないと思うんですが、その点で大臣にもし、確認いただければと思いますが、配付した資料の二枚目に、本年九月十六日に水戸地方裁判所で下された判決文から私の方で抜粋をいたしました。これは、牛久の入管、つまり東日本入国管理センターで死亡したカメルーン人男性をめぐる国家賠償請求事件に係る判決です。
収容者は、その意思にかかわらず居住を東日本入管センター内に限定されて移動の自由を制限されていたことにより、自由に入国者収容所外の医師による診療等を受けることができない立場にあった。したがって、その反面として、東日本入管センターの職員らには、その職務を行うについて、被収容者であったAに対し、その生命、身体の安全や健康を保持するために社会一般の医療水準に照らして適切な医療上の措置をとるべき注意義務があったというべきであるという、こうした判決ですけれども、この判決の一般論、これについては法務省として、大臣として、そのとおりだとお認めいただけるんでしょうか。
○政府参考人(西山卓爾君) 今委員御指摘の部分は、判決文から、判決文の指摘でございます。国の主張は一部認められておりませんで、当方としては控訴している状況でございますので、この判決文の記載についてのコメントは差し控えさせていただきたいと存じます。
ただ、我が方としても、被収容者処遇規則というのがございます。そこには、「所長等は、被収容者がり病し、又は負傷したときは、医師の診療を受けさせ、病状により適当な措置を講じなければならない。」と定めております。
○仁比聡平君 この期に及んでといいますか、裁判としては、救急車を呼ぶ義務があったか、あるいは、被収容者亡くなられたんですが、この救急車を呼ばなかったことと因果関係があるかという点が争点になっています。ですが、今の局長の答弁からもうかがわれるように、つまり、被収容者は入管において移動の自由を制限される、自由に外の医師による診療等を受けることができないという、そういう拘禁状態に置かれるわけですよね。その反面として、入管には、生命、身体の安全や健康を保持するために社会一般の医療水準に照らして適切な医療上の措置をとるべき注意義務があったというのがこの判決なわけですね。
大臣、この被収容者の生命、身体の安全や健康を保持するための社会一般の医療水準に照らしての適切な医療上の措置、これは、収容所においてこれはちゃんととられなきゃいけないでしょう。処遇規則とおっしゃるんだったら、処遇規則はそれを意味しているんでしょう。
○政府参考人(西山卓爾君) 入管収容施設において、被収容者は、この判決文にも指摘されているとおり、自己の意思により自由に施設外の医療を受けることができないという状況にございます。そのため、その健康の保持と社会一般の医療水準に照らし適切な医療上の措置を行うことは、収容を行う国の責務であるというふうに考えております。
○仁比聡平君 やっと中身はお認めになったわけですね。
その生命、身体の安全や健康を保持するというときに、身体的な、けがをしているとかあるいは内臓の疾患があるとかですね、いうことと同時に、いうことと同じに、並んでですね、精神面での健康、これも当然保持されなければならないし、そうした精神医療、典型的には、も社会一般の水準に照らして適切に行われるべきですよね。
○政府参考人(西山卓爾君) 今答弁をいたしました医療上の措置には、当然ながら精神疾患に対する措置も含まれるというふうに考えております。
○仁比聡平君 この十八日に亡くなられた被収容者ですけれども、入所時には健康状態に関する質問書やあるいは入所時健診というのも行われるわけです。その後、やり取りといいますか、収容中の警備官とのやり取りというのもあるだろうと思いますけれども、その中でこの自殺念慮を疑わせる、したがって、御本人の申出があればもちろんだけれども、入管の側からカウンセリングのような機会を持ったらどうかと促したり、あるいはお医者さんが事実上診に行ってみたり、あるいは入管の方で強制的にそうした診療を受けていただいたりという、そうした精神的な医療というのは行われたんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) その点も含めまして事実確認中でございますが、御本人様、御本人は庁内医師が複数回診療を行ったということは確認できております。ただし、収容後、精神科医師が受診を行ったという事実は把握できておりません。あっ、受診を、失礼、撤回します。御本人が収容後、精神科医師の受診を受けたということはございません。
○仁比聡平君 精神科の医師の受診は行っていないということなんですね。内科の先生が御覧になったのかどうかということもあるんですけれども、そもそも現在の入管では、被収容者の診療に関する判断というのは医師が直接行うのではありませんよね。医師の診察に立ち会った入管職員の報告に基づいて、収容所長あるいは入管の局長が行うということになっている。
これ、けがとか内臓疾患なんかのときだって、インフォームド・コンセントがこれで成り立つのかということは、私、甚だ疑問なんですけれども、特にメンタル、自殺念慮に襲われると、それがなぜかなどというのは、信頼関係が結ばれなければきちんと把握をして適切な治療を行うということは、私、できないんだと思うんですよ。これを、仮放免を取り消して、社会での生活を奪われて収容された、その収容の当局が生殺与奪の権握っているという中で、この方が苦しまれたのではないかと。自ら精神科でのカウンセリングなんかを申し出るというみたいなことは、到底そういう状況にはなかったのではないかと。
だから、本当にこういう自殺の防止のためにも、適切な治療を受けよう、受けてもらおうと、受けさせようということであれば、この入管の中での医療の在り方ということを根本的に改めなければならないのではありませんか。
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほども申し上げたとおり、規則に定められているとおりに医師の診察を、診療を受けさせ、病状により適切な措置を講じなければならないということが所長等に義務付けられていることから、当然ながら、その被収容者の状況に応じて、精神疾患の疑いも含めてですね、そういった疑いがあれば必要な措置を講じなければならないということになりますので、その点はその所長以下職員も目くばせをしていくのが当然であろうかというふうに一般論としては考えます。
ただ、本件につきましては今事実確認中でございますので、本件に関しましてはちょっと今お答えできる状況にはございません。
○仁比聡平君 今、入管が本件においては事実確認中で答えられないと言うとおり、つまり、自殺されたということはおよそ、恐らく間違いのないことですよね。亡くなり方も、ちょっとなかなかない亡くなり方じゃないですか。よほどの自殺念慮があっただろうと思うんですよ。だけれども、結果自殺をされた、その間、精神科的なケアはなされていないという、それはもうはっきりしているわけで、だから、このままでは自殺は防止できないでしょうということなんですね。
先ほど来の質問の中で、この収容が仮放免の取消しだということはもう既に御答弁がありました。この仮放免の取消しとこの精神的な影響、仮放免の取消しによる収容が精神面に及ぼす影響というのは、私は大きいんではないかと思います。
ついこの十一月三日に、国連の自由権規約委員会が日本に対してこの入管の人権侵害について勧告を行いました。同種の勧告というのは、二〇〇七年の拷問禁止委員会、二〇一三年の同委員会、二〇一四年の自由権規約委員会、二〇一八年の人種差別撤廃委員会、あるいは二〇二〇年の国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会など、相次いでいる、後を絶たないわけです。
ここで特に厳しく指摘をされているのが、収容の長期化、あるいは上限もないじゃないか、無期限に収容されるじゃないか、あるいは外国人が不当な取扱いを受けているではないかと、司法による独立した審査もないではないかなどなんですよね。
そうした長期収容に、一旦社会に出ていたんだけれども仮放免取り消されて収容されてしまったと、これは被収容者にとって絶望感を高じるという大きな要素に私はなると思うんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 御指摘の点を含めて、その入管収容施設へ収容されるということが、事案によっては、まあ一般論でありますけど、当該外国人の精神状態に悪影響を及ぼすということは、私はあり得るんだろうと考えています。そのような外国人に対しましては、精神科医による診察等の医療上の措置をとるなど、人道に配慮した適切な対応を行うことは当然に必要なことであると私は承知をしております。
ただ、本件につきましては、今委員が御指摘されたことからも分かりますように、様々事実関係を確認しなくちゃいけないことが多々あろうかと思いますので、まずはその事実確認を優先をして対応していきたいと思っております。
○仁比聡平君 今の大臣の答弁、大切なことだと思うんですよ。
となると、やっぱり改めて、収容者、新たに収容される人、そのうち、収容前の在留資格がどういうもので、収容された理由は何なのか、これ、仮放免の取消しという本件のような事案がどれぐらいあるのか、それから、収容が終了するということがありますよね、その内訳という、そうした今の現在の入管の収容の実態を国民的にちゃんと明らかにして、医療の必要性、人員の配置の問題などもきちんと議論できていくような、そうした統計をちゃんと取って明らかにすべきではありませんか。大臣、いかがですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 私どもでその統計として把握しているのは、あるいは入所総数であるとか出所総数、被送還者数、在留特別許可件数、仮放免許可件数等でございます。
委員の問題意識、あるいはその収容あるいは収容を解かれるということに関連するものとしてはそういう統計を取ってございますが、ある一定の時点で収容されている者がその後どういう内訳で収容を解かれるのか、解かれてないのかといったところを統計として把握していることはございません。
もちろん、個々の処遇において、ある者が収容され仮放免になったが取り消されて送還されたというような一連の経緯はもちろん個々で把握しておりますけれども、それを、ちょっとイメージがよく湧かないんですけれども、それをこの統計的なもので数値的に何か整理をしているということではございません。
それから、もう一つ、委員御指摘あった収容前の在留資格、これについては統計を取ってございません。
○仁比聡平君 質問にお答えになっていないのでちょっとあえてもう一回聞きますけど、それはそうなんですよ、今。だから、生殺与奪の権を握っている入管が、自分ところのブラックボックスの中で我が裁量ですというふうに言っていたら、何にも変わらないじゃないですか。ちゃんとどんなことになっているのか分かるように、統計のその取り方はいろいろあるでしょう、それを明らかにすべきだと。大臣、いかがですか。
○政府参考人(西山卓爾君) その問題意識として、例えばですが、収容期間が結局どのぐらい長くなっているのか、長くなっていないのかといったところについては、昨年統計を取って、数字を取ってみたことはございます。ですので、その委員の御指摘、何かこう抽象的には分かるんですけど、具体的にどのような数字で統計を取っていいのかが、いま一つ私も理解が及ばないところがございます。申し訳ありません。
○委員長(杉久武君) おまとめください。
○仁比聡平君 大臣が最後までお立ちにならないので今日はこれで終わりますが、入管は、中で自分たちは知っているからっていうことでしょう、つまりね。知っている人がちゃんと整理してみんなに知らせるというのが本来の当たり前であって、私もよく聞き方考えたいと思います。
終わります。