街覆う降灰、転落事故も 市民ら懸命の除去作業

 新燃岳(しんもえだけ、1421㍍、宮崎・鹿児島両県境)が噴火してから1月29日で4日目。宮崎市から都城市に車を飛ばし、市内を駆け巡り日常生活への影響や農産物への被害を目の当たりにしました。(宮崎県・大西由美子記者)

 新燃岳の噴火を知ってカメラ片手に戸外に出たのが1月26日夕方。現地まで50㌔以上離れた宮崎市内にいました。高台の公園に上がると、日が落ちたばかりの西の空に、黒々とした噴煙が見えました。深夜にも噴火による空振(くうしん)を感じ、不安を募らせました。

 翌27日、国道10号線経由で都城市入り。旧高崎町から旧山田町、市中心部へとまわりました。高崎町市街地では、風向きのせいもあり、ほとんど降灰はないようで、「たちばな天文台」から噴煙を上げる新燃岳と灰をかぶる高千穂峰がくっきりと見えました。

〝ザクザク″と

 山田町に入るあたりから、車が灰を巻き上げるように。実際に手にすると「砂れき」のような小豆大のもの。畑は降灰で覆われ、歩くとザクザクと音をたてるほどでした。

 「かかし館」という施設では、管理者の男性が動力噴霧器を使ってバルコニーの灰を落としていました。「また降るからキリがないよね」と苦笑い。すぐそばの畑でも、青年男性たちが、小さな畝(うね)にかけたビニールを手ではじいて灰を落としていました。

 山田町の中心部では住民たちが灰の除去作業に追われていました。スコップ、一輪車、小型の重機など持っているもの全部使い、高齢者も女性も総出で懸命の作業です。一番に驚いたのは都城市街地の様子。粉状の火山灰がいたるところに積もり、横断歩道や停止線など路面表示が灰で隠れて通行には不安を感じました。午後4時前、市内乙房町の来住一人党市議と話をしていると、山の方から黒い噴煙がもくもくと上がりました。1959年以来といわれる爆発的噴火だったようです。

 28日、高崎町在住の西ノ村清党市議に話を聞きに行くと「近くの高崎川の水色が灰色に濁っている」。農家の男性は、口をそろえ、変色は前の噴火のときから52年ぶりだ、と聞きました。その時には、1年くらい同じ状態が続いたそうです。

高齢者に負担

 山田町の総合センターでは職員総出で大掃除に追われていました。玄関の自動ドアは手動に切り替えられ、屋上の灰をスコップでかきおろす様子も。山田町在住の有田辰二党市議に話を聞くと、噴石のため畜産用の波板に穴があいたり、灰下ろし中の転落事故が出たりしているということでした。

 29日は午前7持すぎから、山よりの夏尾町へ仁比聡平前参院議員や市議団と調査に。農家ではとにかく灰の処理に困っており、高齢者などにとっそは処理自体が負担になっていることがわかりました。降灰による土壌被害、逆に利用できる作物はないのか、などの情報がほしいという要望も出されました。

 宮崎県は、口蹄(こうてい)疫、鳥インフルエンザにつづく新燃岳の噴火被害。正確な情報の提供や実態に合った迅速で適切な対応、実態にあった被害補償などの必要性を痛感しました。(しんぶん赤旗 2011年1月30日)