斎藤健法相は8月4日、臨時に記者会見し、日本で生まれ育った在留資格のない外国人の子どもに「在留特別許可」を付与する方針を発表しました。家族に重大な犯罪歴がないことなど一定の条件を満たせば認めます。在留資格のない子ども約200人のうち、少なくとも7割、学齢期の子どもの8割が許可される見通しです。

 先の通常国会で成立した改悪入管法は、難民申請中でも申請が3回目以降なら外国人を強制送還することを可能にしました。これにより、日本でしか暮らしたことのない子どもが親と共に本国へ送還される危険が高まりました。

 在留特別許可は、強制送還の対象となった外国人について、家族の状況や素行などを総合的に判断し、法相の裁量で例外的に在留を認める制度。今回の許可の対象は、改悪法の施行時までに日本で生まれ、学校教育を受け、引き続き日本での生活を希望する子どもとその家族。今回限りの措置として、家族一体で在留資格を付与する方向で検討しています。

 在留資格のない子どもは、▽健康保険証がない▽入管の許可なしに居住する都道府県を出られない▽就労が認められない―など、人権を侵害された暮らしを強いられています。在留資格が得られれば、これらの制約はなくなります。

 斎藤法相は「適正な出入国管理行政を維持しつつ、子どもの保護を図るバランスを実現した」と説明しました。

 日本共産党の仁比聡平議員は、参院予算委員会(5月26日)で、子どもたちが強制送還や家族がばらばらにされるかもしれない恐怖にさらされている実態を示し、「わが国で家族とともに、安心して働き暮らせるようにすることこそ、国の責務ではないか」と追及しました。斎藤法相は、子どもの扱いについて「真剣に前向きに検討していきたい」と答弁していました。

入管政策根本転換こそ

 仁比議員のコメント 入管庁がひとくくりに強制送還の対象としてきた「送還忌避者」(2022年末4233人)の中には、送還されれば直ちに迫害の恐れがある人、日本人や永住者と婚姻し日本社会に根ざして暮らしている人、日本で育った子どもと若者たちなど、さまざまな事情で帰国できない人が含まれています。

 このうち「日本で生まれ育った子どもには条件を満たせば在留特別許可を与える」とした斎藤法相の表明は、「ここにいさせて」という当事者・支援者の声、野党の追及が動かしたものですが、日本での出生や就学を条件にして家族を離散させてはなりません。

 また、本来難民として庇護(ひご)されるべき親、おとなの強制送還は許されません。差別と排斥から保護と共生へ、入管難民政策の根本的転換をさらに求める運動を広げましょう。(しんぶん赤旗 2023年8月5日)