安倍政権は、臨時国会では法案提出を見送った共謀罪を来年の通常国会に持ち出そうとしています。その危険性や阻止するたたかいについて日本共産党法務部会長の仁比聡平参院議員に聞きました。

 

 

20160326_1702764 過去の共謀罪をめぐる経緯を振り返ると、自民党政権は国際組織犯罪防止条約の国内担保法をつくる必要があるという口実で2003年、04年の通常国会、さらに05年の特別国会に共謀罪法案を提出しましたが、いずれも廃案になりました。

 

共謀罪をつくることは思想、内心を処罰するということになる。これは犯罪の実際の行為のみを処罰するという現行刑法の大原則にも真っ向から反します。ここに国民の大きな怒りが寄せられて廃案になったのです。

 

今回は、テロ等組織犯罪準備罪と「テロ対策」を冠した名称に衣替えしようとしていますが、思想や表現、内心を取り締まりの対象としようとすることでは全く同様です。

 

従来の共謀罪法案への批判を意識して今回の内容には若干の変更がみられます。たとえば、犯罪主体を「団体」から「組織的犯罪集団」に変えて、対象は限定的であるかのようにしています。

 

2人以上は組織

 

しかし、組織的犯罪集団とは、これまでの盗聴法や秘密保護法の議論で法務省自らが認めているように2人以上であれば組織であって、あたかも暴力団やテロ組織だけを指すかのように見せながら、実は市民団体や労働組合なども含まれるのです。法文上なんら限定的ではありません。

 

また新法案は、犯罪の共謀だけでなく「準備行為」を要件に加えるとしています。しかし、犯罪の構成要件としては計画そのもので罪が成立します。実際に罰を科すことができるかどうかの要件として、準備行為をおいているにすぎないわけですから内心を処罰するということ自体はなんら変わりません。

 

結局、犯罪かどうかの解釈がすべて捜査機関にゆだねられてしまうということになり極めて危険です。それは権力的で卑劣な捜査が市民生活を脅かすことにもつながります。

 

拡大された盗聴法、大分県警がおこなっていたような盗撮、捜査機関が描いたストーリーに従って市民運動や労働組合、政党に干渉するための密告・スパイの奨励などがテロ等組織犯罪準備罪の名目で横行しかねません。

 

そもそも政府が批准のために共謀罪が必要だという国際組織犯罪防止条約は、各国が「国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる」と規定しており、共謀罪の新設は求めていません。

 

安倍政権が共謀罪でやろうとしていることは、テロ対策の名による思想・内心の弾圧。戦前の治安維持法体制の現代版です。

 

秘密保護法や盗聴法、沖縄県の高江や辺野古で機動隊がやっているような蛮行と一体となった、ものが言えない社会、戦争する国にむけた強権と独裁の社会体制づくりだと思います。

 

たたかい広げて

 

臨時国会で法案を提出するかどうか政府与党内で議論したと思いますが、反対の世論が強いのをみて提出すれば逆に国会運営に支障があるかもしれないと、今回は出さないとしただけです。提出の機をうかがっていることは、はっきりしました。

 

いま大切なのは世論を盛り上げて法案を提出させないことです。国民運動の一つの大きな課題として国会内外のたたかいを広げていきたいと思います。(しんぶん赤旗 2016年10月27日)