○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

前回に続きまして、大分県警別府署による隠し撮り捜査についてお尋ねをいたします。

まず、さきの参議院選挙の取締り体制から確認をしたいと思うんですけれども、事前に警察庁にお尋ねをいたしますと、さきの通常国会の会期末であります六月一日に警察庁次長の依命通達がこの参議院選挙の違反行為の取締りについて出されました。そして、翌日、六月の二日に全国選挙違反取締主管課長会議が行われ、さらに、大分県警に対する巡回指導が六月十日、九州管区警察局における督励指導が六月十四日、これ、それぞれ行われたということですけれども、日にちはそのとおりですね。

○政府参考人(高木勇人君) 警察庁では、お尋ねのとおり、六月一日に警察庁次長名で第二十四回参議院議員通常選挙違反取締本部の設置及び違反行為の取締りについてとの表題の依命通達を発出し、六月二日に全国選挙違反取締主管課長会議を開催したほか、六月十日に大分県警察への巡回指導を実施、六月十四日に九州管区警察局において管区警察局管内の各県警察本部に対しての督励を実施したところでございます。

○仁比聡平君 それぞれいずれの場でもカメラ使用についての指示、指導なりが行われたのではないかと思うんですが、これ、どのような内容ですか。

○政府参考人(高木勇人君) これらの会議等におきましては、選挙違反の取締りに当たっては基本的人権の尊重と正当な選挙運動や政治活動の自由に十分配意するよう指示するとともに、ビデオカメラの使用についても、捜査目的を達成するため必要かつ相当な範囲内にとどまる限り許容されるものである上、正当な選挙運動や政治活動の自由への配意等から特に慎重を期すべきものであることから、その必要性、相当性について組織的に検討し、警察本部の指揮を受けて行うよう指示したところでございます。

○仁比聡平君 その前提そのものが私は間違っていると申し上げてきましたけれども、その点はちょっと今回はおいて、その下で、大分県警では六月の三日、署長・刑事課長合同会議が行われていると思いますが、そのとおりか。加えて、別府署の阿南刑事官もここに出席しているのではありませんか。

○政府参考人(高木勇人君) お尋ねのとおり、大分県警察においては六月三日に警察署長・刑事課長等合同会議を開催し、同会議に別府警察署刑事官も出席していたものと承知をしております。

○仁比聡平君 ところが、この阿南刑事官を中心に別府署において労働福祉会館に対するビデオカメラの設置を行ったわけです。この別府署がカメラ使用を具体化をしたのはいつか。ブッシュネルを扱う業者にリースを依頼をしたのはいつなんですか。

○政府参考人(高木勇人君) 本件においてビデオカメラの使用を検討し始めた時期についてのお尋ねでございますけれども、本件容疑情報を入手した後における捜査の具体的な進捗状況であることから、お答えは差し控えさせていただきます。

本件ビデオカメラの借受けの状況については、六月十七日に別府警察署刑事官から業者に依頼をし、翌十八日に当該業者がビデオカメラを警察署に持参したものでありますけれども、県警察としての会計上の手続を取ることなく刑事官が個人的に借り受けたものであった旨、大分県警察から報告を受けているところでございます。

○仁比聡平君 組織的に検討するようにと指示をしているにもかかわらず、こうした事態が発覚をしたというにもかかわらず、その具体化がいつなのかということを答えられないということで、どうして真相を解明して再発防止ができるというのか。

私は、この点についてもこの委員会にきちんと説明をされるように、委員長、取り計らいを願いたいと思います。

○委員長(秋野公造君) 後刻理事会にて協議をいたします。

○仁比聡平君 その上で、このブッシュネルというそのビデオカメラ、これ、いつまでリースすると、あるいはレンタルするという、そういう話だったわけですか。

○政府参考人(高木勇人君) 本件ビデオカメラは別府警察署刑事官が個人的に業者から借り受けたものでございますけれども、刑事官としては業者との間において借り上げ期間を明確に定めることのないまま即日使用を開始したという認識であった旨、大分県警察から報告を受けております。

○仁比聡平君 それ自体とんでもない報告なんだけれども、結局、六月十八日に設置をして、選挙期間中、つまり本番をずっと狙い撃ちにして、継続的に不特定多数の出入りを捕捉しようということが目的だったんではないんですか。いずれにしろ、この六月一日から参議院選挙の取締り体制に入っていて、それと同時進行でこの準備が行われ、かつ実行されたわけです。

別の角度で聞きますけれども、今日も資料をお配りしましたが、警察庁の取りまとめの冒頭にもあるように、このビデオ捜査というのは、選挙運動が禁止されている特定の人物がこれに反して選挙運動をしていると疑われる複数の容疑情報を入手したのが端緒だということになっています。この複数情報を、容疑情報を入手したのはいつですか。

○政府参考人(高木勇人君) 容疑情報の入手時期についてのお尋ねでございますけれども、個別事件の捜査内容に関わる事項についてでございますので、お答えを差し控えさせていただきます。

○仁比聡平君 それを差し控えていて本当に検証ができるのかと、先ほど来申し上げているとおりですが、つまり、本部指揮事件だと、県警本部指揮事件だということなんですね。それが厳正に指示されているとおっしゃっている。

となれば、この間、有田議員も指摘しておられたと思いますが、大分県警においてこの通常参議院選挙において摘発された件数というのは四件というふうに聞いていますけれども、この複数の容疑情報というのは極めて県警本部にとっても重要なものだったはずです。当然、本部指揮事件として、その情報をつかんだ段階で本部に報告されていてしかるべきだと思いますけれども、これ、誰が本部の誰に報告をしていますか。

○政府参考人(高木勇人君) 情報の報告について、個別事件に関する事項のお答えは差し控えさせていただきますけれども、一般に、選挙違反に関する情報は警察署の刑事部門から警察本部捜査第二課に報告されるものでございます。

○仁比聡平君 刑事部門から本部へ報告するということは、別府署の刑事二課長、そういう理解でいいですか。

○政府参考人(高木勇人君) そのように理解していただいて結構でございます。

○仁比聡平君 で、報告はされたんですか。

○政府参考人(高木勇人君) 本件の情報については、警察本部に報告をされておりました。

○仁比聡平君 当たり前なんですよね。こういう容疑があるということが県警本部に報告をされている。

そうすると、この容疑事案についてどう臨むのか、この具体的な指示をし、その後の捜査経過を県警本部がつかんでいるというのは、これ当たり前のことでありまして、事柄はそういうことですよね、審議官。

○政府参考人(高木勇人君) 警察本部におきましては、警察本部長の指揮の下、警察署に対して、基本的人権の尊重、正当な選挙運動や政治活動の自由に十分配意すること、不偏不党、厳正公平な立場を堅持しつつ緻密かつ適正な捜査を徹底することなど、必要な指揮、指導を行っているところでございます。

○仁比聡平君 警察本部の本部長の指揮の下と今おっしゃったとおりなんですけれども、つまり、この具体的な容疑情報についても県警本部長は知っていたということですね。

○政府参考人(高木勇人君) 本件容疑情報については、警察本部長も報告を受けていたものと承知をしております。

○仁比聡平君 つまり、容疑情報の段階で県警本部長も知っていた。で、県警本部がこれを、具体的にどこまでというのは時間もありませんから聞きませんけれども、指揮をしていたわけですよ。

ところが、後になって、必要性、相当性がないと皆さんがおっしゃる権力犯罪が発覚をしたということなんですけれども、これ、報道によりますと、その別府署の二課長が、刑事官が言うから仕方がないと言って、容疑情報は県警本部に報告しているんだけれども、カメラ使用を刑事官が具体化してきたときに県警本部に報告をしなかったという説明がなされていますが、これは一体どういうことなんですか、審議官。

○政府参考人(高木勇人君) 大分県警察本部に対しまして別府警察署からは本件のビデオカメラの設置について一切報告をしておらなかったところでございますが、当人たちは大変軽率な判断であったというふうに申しております。

○仁比聡平君 いや、軽率だったんじゃないんですよ。これが警察において当たり前のことだからなんじゃないんですか。

つまり、重大な権利侵害が伴うにもかかわらず、警察庁は任意捜査だと言い張っている。しかも、選挙違反取締りでカメラを使うのは当たり前だというし、固定カメラで継続的に事務所の出入りを撮影することも許される、認められるんだというわけですね。それが、今回ではなくて、ずっと以前から警察庁の選挙運動取締りの方針なんです。その下で今回の別府署の事件が発覚したということなんですね。もし草刈りが行われなければ、選挙戦全体をこうやって監視していたということなんですよ。発覚したから今皆さんこういう議論になっているのであって、発覚しなかったらこれ当たり前なんだから、上司の刑事官が言うんだったらそれに従おうというのが別府署の全体の構造であり大分県警の構造だった、ひいては全国の警察の構造だということなんじゃないんですか。その下で起こっているというのが今回の事件なんですよね。

八月の三日に県警本部の刑事企画課がケース・バイ・ケースでカメラの設置は署が判断するというふうに説明をしていたという記事が九月七日付けの西日本新聞にありますが、ところが、八月の二十六日になって、今回のような重要事案では本部に報告し、判断すべきだったと説明を変えたと指摘をされています。

八月の三日に署が判断するというふうに言っていた、これは一体どういうことなんですか。

○政府参考人(高木勇人君) 必要性等につきましては、第一義的には警察署において検討されるものでございますけれども、これにつきましても、警察署長以下で組織的に検討するものでございます。その上で、警察本部に指揮を伺う旨、指示をしていたところでございます。

○仁比聡平君 いや、時間が来てしまいましたけれども、結局、別府署が、あるいはこの容疑を追いかけるその阿南刑事官を中心にした捜査のチームがですよ、判断したら、それはもうどんどんやれというのがこれまでの現実だったんじゃないんですか。

その下で今回の事件が発覚をした。だから、慌てていろんな通達を出して、慎重になんというような答弁をしている。そんなごまかしは絶対に通用しないと。まして、侵入行為と隠し撮り行為を切り分けて、これが不適正ではあったけれども違法、違憲ではないなんという言い逃れをして、これからもやろうなんというようなことをこの国会が許してはならないということを強く申し上げ、指摘をしてきた協議事項を徹底してこの委員会で審議することを強く求めて、今日は質問を終わります。