防衛省 戦争法強行のウラで
戦争法(安保法制)が強行された2015年の国会で、日本共産党が独自に入手し告発した防衛省の内部文書について、質問の翌日には同省内にある文書と照合していたことが、本紙の取材でわかりました。この時点で、同省は文書の内容を真実性が高いと判断したとみられ、「同一のものの存在は確認できなかった」と答弁してきた安倍晋三首相の責任が問われます。
米に成立約束の統幕長発言
現職自衛隊幹部が国を訴えた民事裁判で、国が提出した資料から判明しました。
共産党が入手した文書は、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長がオディエルノ米陸軍参謀総長に「(戦争法の成立は)与党の勝利により来年夏までには終了する」などとのべたことを記したもの。この発言は戦争法が強行成立される10カ月も前の2014年12月の総選挙後にされていました。
15年9月2日の参院特別委員会で日本共産党の仁比聡平参院議員がこの文書を取り上げ、中谷元・防衛相(当時)に確認を求めていました。(質問動画はコチラ)
国が裁判に提出した資料によると、陸上自衛隊中央警務隊は仁比氏が質問した翌日の3日に「共産党議員手交内部資料と統合幕僚監部作成資料の照査に関する捜査報告書」を作成。防衛省内にあるものと、仁比氏が示した文書を照合していました。
仁比氏の質問後、国会では「同一のものの存在は確認できなかったものと認識」(安倍首相、15年9月11日)、「同一のものは確認できませんでした」(中谷防衛相、同)と答弁し、戦争法案を同19日に強行成立させました。
一方で、防衛省は存在が確認できないはずの文書を“漏えい”した犯人を捜していました。
現在、さいたま地裁で身に覚えのない容疑で違法捜査を受けたとして防衛省情報本部の大貫修平3等陸佐(44)=嫌疑不十分で不起訴=が損害賠償を求める裁判を起こしています。
国側は大貫さんの私物パソコンから「内部資料と思料するデータを抽出」したなどと主張しています。
その際、抽出したとされるデータと照合したのは、原本ではなく仁比氏が国会で示した文書でした。
警務隊が16年3月15日に作成した捜査報告書によると、このデータと仁比氏の文書が「同一資料の可能性が高い」として、漏えいの疑いをかけています。こうした点からも防衛省が仁比氏の文書について真実性が高いと判断していたことがうかがえます。
大貫さんの代理人の伊須慎一郎弁護士は「仁比氏の文書を捜査で照合用に使っているということは、9月3日の時点で本物と確認した疑いが強い。政府は、ほぼ同一の文書があることを知りながら、ごまかし続けたことは国民軽視も甚だしい。米軍高官に戦争法を『夏まで』に成立させることを約束したことも知っていたと思われ、それだからこそ、米国に忖度(そんたく)し、法案成立を遅らせないためにウソ答弁を重ねた姿が浮かぶ」と指摘します。(しんぶん赤旗 2019年1月4日)
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