2008年3月19日(水)「しんぶん赤旗」
6大橋「調査中止」のはずが… 関門海峡道に詳細計画
工法・費用具体化 仁比議員が追及
道路特定財源をもとにした海峡横断道路計画のうち、福岡県北九州市と山口県下関市を結ぶ「関門海峡道路」の詳細な事業計画が作られていることが3月18日の参院予算委員会で明らかになりました。日本共産党の仁比聡平参院議員の追及で判明したものです。
- 第二関門橋など六大海峡横断道路プロジェクトは中止を/参議院予算委員会/仁比聡平質問(ビデオ約10分/2008年3月18日)
海峡横断道路計画は、日本列島の湾口や海峡を橋やトンネルでつなぐもの。全国に六本あり、「関門海峡道路」もその一つです。衆院での日本共産党の追及に冬柴鉄三国交相は、その無謀さを認め、調査の中止を表明していました。
仁比氏が明らかにしたのは、国交省の発注で、六横断道計画の調査を行ってきた財団法人「海洋架橋・橋梁調査会」の報告書です。同報告書は、すでに「関門海峡道路」のルート検討を終え、工法や工事費、用地買収費まで詳細に明記。いつでも事業化できるように調査を終えていた形です。しかも、「関門海峡道路」の集客のために、すでにある「関門トンネルの道路料金値上げ」まで記載していました。
仁比氏は、「調査を中止する」といって、世論をごまかしながら、国民に秘密裏に詳細な事業計画を作る国交省の姿勢を批判。六海峡横断道路計画が今年三月に閣議決定が予定される「国土形成計画」に盛りこまれていることを示し、「国民不在ぶりは、はっきりしている。こんなプロジェクトの閣議決定などは断じて許されない」と、計画そのものの中止を迫りました。
冬柴国交相は「(この計画に)夢を持つ人はたくさんいる」「私の代で(その夢の)芽をつんでしまうことはむずかしい」「きっぱり(中止とは)なかなかできない」などと開き直り、あくまで建設に固執する姿勢を示しました。
仁比氏は「『夢』というが、こんなに(無謀で)リアルな『夢』はない」と強調。道路特定財源の聖域化が、際限ない道路建設を加速させてきたとして、ガソリン税などの暫定税率の廃止と、道路特定財源の一般財源化を強く求めました。
仁比質問 テレビが紹介
18日の日本テレビ系ニュース番組で、海峡横断プロジェクトの実態が特集され、日本共産党の仁比聡平議員の参院予算委員会での質問が紹介されました。「巨額の費用を投じてひそかに進められていた調査。68億円もの道路特定財源は誰のために使われたのか」と訴えました。
番組は、関門海峡道路建設予定地を映し出しました。
リポーターに「橋かかったら使いますか」と聞かれた男性は、「むこうにも(関門トンネルが)あるしねえ…」。自宅が橋の建設予定地になっている女性は「怖いですよ。ここは何にもないところでいいところだと思っているけど」と話しました。
関門海峡道は無謀
トンネル通行料値上げ計画も
仁比氏追及 調査報告判明
六十八億円の道路特定財源をつぎ込んだ六つの海峡横断道路計画の調査。これまで国民に明らかにされてこなかった調査内容の一部を、3月18日の参院予算委員会で日本共産党の仁比聡平議員が初めて明らかにしました。調査の内容を見ると、住民不在の無謀な計画が浮かび上がってきます。(小林拓也)
仁比氏が示したのは、関門海峡道路の調査報告書です。現在、関門海峡には関門橋と関門トンネルの二つのルートがあります。関門海峡道路は、新たに山口県下関市と福岡県北九州市をむすぶという計画。仁比氏の再三の要求で、国土交通省がやっと提出したものです。報告書は、関門海峡だけで段ポール2箱分もあります。
報告書は、橋の側面図を描き、どのくらいの高さの橋にするか、深さはどのくらいかまで詳細に検討しています。すでにルートの検討は終わり、下関西道路から彦島インターチェンジで橋とつなぎ、北九州都市高速道路と接続することになっています。立ち退きをせまられる民家も想定されます。
事業費も、橋の部分や道路部分を細かく計算。全体で千五百五十七億七千万円と見積もり、用地補償費として、九十五億円をあげています。
トンネルにした場合のシミュレーションも行っています。二〇二〇年開通で、計画交通量は一日平均一万五千六百-一万七千五百台、料金は三百五十円としています。
また、関門海峡道路の事業主体として、旧道路公団、北九州市道路公社、民間事業者の三ケースを想定し、詳細に検討しています。
報告書では、横断道路建設の「事業費を円滑に回収するため、関門トンネルの料金(百五十円)値上げ検討の必要がある」と書いています。新しい橋の通行量を増やそうという目的です。これらの調査結果は地元住民にもいっさい明らかにされてきませんでした。
一九九四年から始まった関門海峡道路の調査には毎年約一億五千万円がつぎ込まれました。調査は、財団法人「海洋架橋・橋梁調査会」や本州四国連絡高速道路株式会社などが随意契約で請け負ってきました。報告書自体、同調査会が作成したものです。調査会は国交省OBと大手ゼネコン幹部が役員を占める”天下り・財界”団体。来年度中の解散が決まっています。
巨額を投じた調査内容から、地元住民無視の計画だということが改めて浮き彫りになりました。
冬柴鉄三国交相は、日本共産党の質問にたいし、六つの海峡横断道路の調査は今後行わないと表明しています。その一方で、「プロジェクトについては、長期的視点からの調査の推進、計画の推進等熟度に応じた取組を進める」と明記した「国土形成計画」を、今月中に閣議決定する方針は変えていません。
仁比氏は3月18日の参院予算委員会で、「道路特定財源の聖域に隠れた国民不在に真剣な反省があるのなら、こんな調査で進められてきたプロジェクトはきっぱりやめるべきだ」と冬柴国交相に迫りました。
海峡横断道路計画
本列島に、東京湾口道路、伊勢湾口道路、紀淡連絡道路、関門海峡道路、豊後伊予連絡道路、島原天草長島連絡道路の六本の海峡横断道路を建設しようというもの。それぞれ数千億1数兆円の事業費がかかる見込みです。