○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 前回の質疑で、適性評価にかかわる法案十二条四について、公務所若しくは公私の団体への照会にかかわって、公務所というのはおよそ国と地方のあらゆる行政機関が当たるということを確認をいたしました。
 そこでまず確認ですが、この機関には警視庁、あるいは都道府県警察の公安部などのいわゆる公安警察あるいは公安調査庁、こうしたところも該当いたしますね、大臣。

○国務大臣(森まさこ君) はい、該当いたします。

○仁比聡平君 二〇一〇年の十月に、警視庁公安部が作成した国際テロ対策に関するデータというのがインターネット上に流出していたことが発覚をして、国会でも大問題になってまいりました。

 警察庁おいでだと思いますが、およそ千人の市民の個人情報、約六百三十の法人、団体の情報が流出した、そういう事件であったことは間違いありませんね。

○政府参考人(高橋清孝君) お答えいたします。

 お尋ねの事案は、平成二十二年十月、個人情報を含む国際テロに関連する記載のある文書が、ファイル共有ソフト・ウィニー等を用いてインターネット上に掲出されたものでございます。
○仁比聡平君 この流出自体も重大なんですけれども、今日問題としたいのはその内容、つまり公安警察の情報収集の実態なんです。

 そこで、お手元に三枚資料を配らせていただきました。この問題についての公刊物から私が抜き刷りをしたものですけれども、これ、明らかになった文書の中に、二〇〇四年の三月十八日付けで外事第三課長が関係所属長にあてたこの一枚目の「国際テロ関連実態把握の集中的な推進について」という文書があるわけです。この趣旨のところにあるように、現在、各種通達等により国際テロ対策を推進中でありますが、各署から報告を受け、当課で把握している外国人の居住実態と入管統計を比較しますと、統計上の都内居住対象国人約四万人、把握している都内居住対象国人約四千人と大きな隔たりがあるのが実態ですとした上で、各種国際テロ対策を進めていく上で、管内にどれだけの対象国人が居住し、どのようなコミュニティーを形成しているかを把握しておくことが極めて重要ですと、そうこの実態把握の狙いを掲げた上で、どんな実態把握をそれなら行っているのかと。

 資料の三枚目ですが、「実態把握強化推進上の要点」という文書がありますが、御覧のとおり、実態把握の対象は、イスラム諸国会議機構、森大臣、いいですか、大臣。後ろの人のじゃなくて、私の質問を聞いてください。OICの国籍を有する者及びその他の国籍を有するムスリムとした上で、ムスリムとはイスラム教徒をいうと。OIC加盟国五十六か国一地域の国籍を有する者の把握、だったらそうした国籍を有していらっしゃる方々全員ということですよね、を最重点として、その文章の最後の部分、言動、服装等からムスリムと認められる者、その下の行には、判別が困難な場合は公安係に報告し、判断を任せよと、こういう実態把握のやり方なわけですよ。

 これはまさにムスリムを狙い撃ちにしたものですけれど、その下、報告要領、必要事項というのがありますね。①国籍、②氏名、③生年月日、④住所。これ、法案に言う四事項というのと基本的に同じなんですが、そうした中で、結局、一律網羅的に都内在住四万人のムスリムの実態というのを大規模かつ組織的にそうした四事項について把握をして、徹底的にこの際調査をしてしまおうと、そういうものなんじゃないんですか。

 国家公安委員長、そうした調査ですか。

○国務大臣(古屋圭司君) お答えいたします。

 警察におきましては、警察法第二条に定めがございます。もう委員御承知のとおりでございますけれども。公共の安全と秩序の維持という責務を果たすために、必要な情報について収集及び分析を行っております。御承知のとおりでございます。

 警察がどのような情報を収集するか、あるいは分析するかということを明らかにすることは、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがありますので、この点についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

○仁比聡平君 これだけ重大なプライバシー侵害が社会問題にも、そして国会でも重大問題になりながら、それを明らかにすることはならないなんて、つまり、それ特定秘密という話かと。それを明らかにしないということは、反省もしないし、これからも続けていくということですか。その手法が、この実態把握の手法がまた驚くべきものなわけです。

 二枚目の資料を御覧いただきたいと思うんですが、(3)モスク等の集中的実態解明というのがあります。当面、四月二日から期間中の毎週金曜日、墨塗りにされていますが、その三施設の金曜礼拝参加者に的を絞り、指定署と外事第三課の合同による集中的実態解明、これ行確というんですか、行動確認ですか、を実施するのでという目的を明らかにした要員の配置、体制を整えようという指示をしているわけでしょう。
 資料の三枚目、もう一度御覧いただきますと、巡回に当たる警察官に対して、三項めで具体的着眼点という指示があります。安価なアパートに的を絞ること、外国人を雇用している企業や会社、イスラム諸国出身者が経営する店舗、社員寮、町工場、土建会社、新聞店等、そして学生寮などに対する、こうしたところの巡回連絡を強化せよと、推進せよと、そういうふうに求めているわけですよね。

 何ら犯罪は発生していないにもかかわらず、先ほど公共の秩序維持のためにはとおっしゃいました。何でも許されるというんですか。ムスリムというだけで個人情報を丸裸にして、モスクを継続的に監視をして尾行をすると、こんな理不尽な人権侵害行為が、大臣、許されていいと思っているんですか。

○国務大臣(古屋圭司君) 先ほどもお答えさせていただきましたが、やはり公共の安全と秩序の維持のために、その責任を果たすためには、警察としては必要な情報について収集並びに分析を行っております。法律に基づいてやっております。
 その具体的な中身については、先ほど申し上げましたとおり、お答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○仁比聡平君 更に恐ろしいのは、集めた情報を基に、その一人一人の身上調書をまとめ上げているところにもあります。

 その内容は、先ほど来の氏名、住所、生年月日などの人定事項から始まって、極めて詳細です。出入国歴、出入りしているモスク、旅券の番号、在留資格、本国の住所やその本国の電話番号、そして顔写真まで洗いざらい調べ上げて調書を作っているわけですね。そこには、人との交友関係とか誰と会ったかとか誰と連絡を取っているというようなことも書かれています。

 モスクなどに対する解明作業進捗状況という週報も流出をしたようですが、ここにはそのモスクの礼拝時間、礼拝参加者数、それぞれの日ごとの礼拝者、そして面割り率ですね、面割り、つまりその礼拝、モスクに来ているその礼拝者が一体どこの誰かということを面割りをした率というのまで進捗状況として報告をさせているわけですよ。これはまさに張り付いて監視しているということにほかならないじゃないですか。

 ですから、流出した情報のある人の身上調書には、長女の誕生をきっかけにモスクに通い出したとか、この人は契約に関するトラブルを抱えているとか、イスラム・トゥデイにハマスの指導者を礼賛する書き込みをしていたなどの、まさに継続的に長期間にわたって監視をし、微に入り細に入り情報を収集し、調査をしていなければ分からない、とりわけ思想信条に及ぶ調査までやっているんですね。

 国家公安委員長、こんな調査が許されるんですか。

○国務大臣(古屋圭司君) 先ほども申し上げました、答弁させていただきましたとおり、やはり必要な情報、すなわち公共の安全と維持のために必要な情報を収集をしてそれを分析を行っている。これは法律に基づいて我々は取り組んでいるという、ここに尽きます。

○仁比聡平君 今の答弁は、公共の安全と秩序を理由とすればどんな根こそぎのプライバシー侵害も許されるんだという、そういう理由の答弁になるんですよ。大臣、それでいいんですか、本当に。

○国務大臣(古屋圭司君) あくまでも公共の安全と福祉を守るために必要な情報を警察は収集をしている、これに尽きるわけでございます。これは法律にも、警察法第二条にもその趣旨は定められていると、こういうことでございます。
 以上です。(発言する者あり)

○仁比聡平君 与党席から、よしなんという声が出ていますけれども、とんでもない認識ですよ。そういう発想だから、この特定秘密保護法案を、こんな乱暴なやり方であなた方は強行しようとするわけでしょう。とんでもないやり方ですよ。(発言する者あり)後ろからやじっているのはあなた方でしょう。

 二枚目の資料をちょっと見ていただきたいと思いますが、こうした根こそぎな人権侵害をやりながら何と言っているか。百八十九ページというふうになっている方の、六、対策推進上の留意事項というのがあります。作業については秘匿を原則とし、人権に十分配意をお願いしますというんですね。これ私、最初読んで何を言わんとしているのか全く分かりませんでしたが、つまり、国民に知られないように密行して洗いざらい調べ上げて、膨大なプライバシーを自ら手中にして蓄積をしていく、そのことが国民に知られないようにすればそれは人権に配慮していると、そういうことなんじゃないんですか。あなた方が使う人権の配慮とか尊重とかという言葉というのはそういう意味なんですか、森大臣。

○国務大臣(森まさこ君) 特定秘密保護法案につきましては、適性評価につきましては、評価対象者の同意を得まして、条文に書いてある事項のみを調査することになっております。それによって、まず評価対象者からこの七つの事項について質問票に記載をしていただき、それにのっとって調査をすることになり、プライバシーに十分配慮をして行うことになります。

○仁比聡平君 あなた、何でそんな、質問に答えないんですか。何で質問に答えない、それで答弁したなんて言うんですか。絶対に許されない。あなた、法案担当者なんでしょう。

 法案、例えば十二条の四項における調査において、適性評価の、事実、評価事項に係る調査において、あなたは先ほど、そして前回も、公務所にはこうした公安警察も当たると答弁をしたわけです。あなたが、法案には人権尊重だとか取材の自由への配慮だとかそういう規定があるから、だから処罰はされないだとか対象外だとか、そういうふうに言うけれども、だったら、十二条の四項において、あなたが一般的には認めているこの公安警察による調査においてこうした人権侵害が行われないという条文上の根拠を明らかにしなさいよ。

○国務大臣(森まさこ君) 委員が御指摘のこの資料による調査については、私の方は担当ではございません。今国家公安委員長が御答弁したとおりだというふうに思います。

 本法案については、適性評価の事項については適性評価対象者の事項に限って、この七つの事項のみを対象するというふうになっております。

○仁比聡平君 今担当大臣が、この法案の骨格の基本、一番恐ろしいその根本の一つをお認めになりました。つまり、法案担当者でありながら、法案担当大臣でありながら、こうした私が厳しく人権侵害であると指摘をしている調査のありようについて、この法律案が何らの制約もしていないということをお認めになったということでしょう。つまり、あなたの答弁は、法案の担当者としては答えられない質問であって、あとは調査に当たるこの公安警察、そこの部署の問題ですという、そういう答弁でしょう。担当外だから答えられないというのはそういうことじゃないですか。

○国務大臣(森まさこ君) 今御答弁をしましたとおり、御指摘の資料は、この秘密保護法案の適性評価についての調査ではございません。この法案につきましては、ここの法案に書いてある事項のみを、適性評価の対象者に限ってこの書いてある事項だけを調査をする、その中で必要な部分があれば公務所に問い合わせる、そのことについては公務所に問い合わせることも含めて本人の同意を得ているということを御答弁を申し上げたわけでございます。

○仁比聡平君 とんでもない話ですよ、あなた。あなたね、私が、私が今日ここで問題にしているのは、日本の、我が国の情報機関と一応言っておきますけど、公安警察だとか、これまで我が党が問題にしてきた、取り上げてきた防衛省・自衛隊の情報保全隊だとか、あるいは公安調査庁だとか、そうした情報機関はこうして無法に洗いざらい国民のプライバシーを密行して調べ上げる体制も能力も十分持っているということなんですよ。現にこれまでの制度の下でもこういうことをやっている。

 そして、それが何らかの事情で、例えば内部告発とか、この問題での流出とかいうことで明らかになっても、その無法を自ら正してやめようとしていないじゃないですか。先ほど来の国家公安委員長の答弁はそういうことでしょう。だったらば、これまで行われてきた氷山の一角としてあらわになったこうした無法なプライバシー侵害は、これから更に行われるということになるじゃないですか。そこについて担当大臣として何の認識もないんですか。森大臣、答えられないんだったら、官房長官、いかがです。

○国務大臣(森まさこ君) 先ほど来お答えをしましているとおり、この特定秘密保護法案による適性評価については、本人の同意を得た上で法定事項に限ってその適性評価者の事項を調査をするということで、限定をしております。さらに、そのことによって不利益な取扱いをしないこと、又はこの法案によって規定してありますのは、二十二条に、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことはあってはならないということも規定をしているわけでございまして、これが全ての条文の解釈指針になるわけでございますので、適性評価についてもプライバシーの侵害を、ないということをここに明記をしてあるわけでございます。

○仁比聡平君 幾らあなたがそんなふうに繰り返しても、こうして明らかになっている重大なプライバシー侵害や違法、無法な調査を、真摯に謝罪して、もうやらないという態度を明らかにして、実際にそれを絶対に許さないという法的な拘束を掛けない限り絶対に繰り返されるんですよ。

 それで、この調査を、テロリズム対策という名目で行われているものなんですが、今回の秘密保護法案においてのテロリズムの規定というのは、今日ここを取り上げるわけではありませんけれども、極めて曖昧で限定がないと、テロリズムの定義そのものに。テロ特措法は、それでも九・一一の同時多発テロとの関係でテロを概念をしていたわけですが、今回は一切限定もないと。

 そういう中で、この公安警察の調査ですけど、外務大臣にもおいでいただいたんですが、これ、一般市民だけでなくOIC諸国の大使館にまで及んでいるわけですね。イラン大使館のレセプションに公安警察が潜入をしていたという、その情報も流出をしています。大使館のレセプションの参加者、出席者の言動、領事の発言内容、そのやり取りの具体的な様子が逐一報告をされているわけですね。とんでもないと思うんですね。
 外務大臣、我が国が正式に受け入れている国の大使館に公安警察が潜入し、その活動を監視するなどということが外交上許される行為なんですか。

○国務大臣(岸田文雄君) 政府としての考え方、対応については、先ほど国家公安委員長から御説明させていただいたとおりでございます。そうした方針で対応していると承知をしております。

○仁比聡平君 とんでもない答弁ではないですか。

 潜入して先ほどの様子を報告しているだけではなくて、流出情報によると、イラン大使館の、官房長官も聞いていただいていていいですか、イラン大使館の大使以下八十人もの大使館員の銀行口座情報、給与の振り込みから現金の出入りまで、その報告書には詳細に記録をされているわけです。

 警察庁、こうした銀行口座情報というのはいかなる手法で手に入れたんですか。金融機関に記録を提出をさせたのか、御答弁いただきたい。

○政府参考人(高橋清孝君) お答えいたします。

 御指摘の事案につきましては、本年十月二十九日に偽計業務妨害罪の時効期間が経過しましたが、被疑者の特定など事案の解明に至っていないため、委員御指摘の文書の出所など、提出された経緯は明らかになっておりません。

○仁比聡平君 問いに答えられないというのは、指摘を否定できないということでしょう。

 岸田大臣、どうですか、こんなことをやっていて本当に外交上の友好関係をつくっていくことができるんですか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、御指摘の点につきましては、先ほど国家公安委員長から御説明させていただいたとおりであります。

 外交に関しましては、外務大臣の立場から最大限様々な外交関係を進展させるように努力しなければいけない、これは当然のことであります。

○仁比聡平君 全くはっきりしない。

 官房長官にそこを伺いたいんですけど、この秘密保護法案を作るなら、許すなら、これまでも私は、とんでもない人権侵害であり外交関係も損なう、そうした調査だと思いますが、そうした無法な調査がこれまで行われてきた、氷山の一角でもそれは明らかじゃないか。これが、例えば適性評価における公務所としての照会を受けたからと、あるいは政府部署相互の協力という下で、言わば秘密を保全するためにという、そういう名目を得て、そういう法的根拠を得て、これまでは密行、国民に知られたらとんでもないということになっていたけれども、先ほどの国家公安委員長の答弁ではありませんけど、いや、秘密を保全するためですと言えば何でもやり放題と、そんな国にしていいのかと。官房長官、いかがですか。

○国務大臣(菅義偉君) 先ほど来、国家公安委員長、外務大臣等の答弁を聞いていまして、情報収集というのは法律の中で行われていることであれば私は問題ないと思います。

○仁比聡平君 委員長、本当にとんでもない、法案そのものの絶対に憲法原理と相入れない骨格がこの問題でもあらわになったと思うんですよ。

 それで、こうした問題が法案審議すればするほど山積みなんですよ。あしたが会期末だといって強引に質疑を打ち切るなんてあり得ないですよ。それで、今日この開会前の理事会で、私、改めて、委員長が後刻理事会で協議をすると、そう発言をしてきた数々の問題をちゃんと理事会で協議をして、政府に提出を求めるべきだと強く求めました。

 私は、前回の月曜日の質疑において、様々な検討課題、中でも政令委任事項というふうにされている、そうした諸問題が、どんな検討事項であって、どんな所管において今後検討されていくのか、一覧表を提出せよという話をして、もう木曜日ですからね。絶対にこれを明らかにしていただかなければ、委員会を打ち切るなんて絶対にあり得ないと強く申し上げて、私の質問を終わります。