【16.04.14.】法務委員会『部分録画は新たな冤罪を生み出す』

190回国会質問 国会質問一覧

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

今日、私は、この法案によって自白や共犯者供述を始めとする調書と録音、録画がどのように利用され得ることになるのかということを尋ねていきたいと思うんです。

まず、大臣に御答弁いただく前にちょっと聞いていただくと、まず問いたいのは、自白の怖さ、裁判を誤らせる危険性というものをどのように考えるのか、これ、大臣にも、そして私たちこの委員会がきちんと共有しないと審議の前提を欠くと思うわけですね。

戦後の憲法とその憲法三十一条、適正手続の保障を始めとした刑事訴訟法の下でも、取調べ官、つまり警察や検察の取調べによって獲得された虚偽の自白、自白がうそだったということによって数々の冤罪が起こってきました。しかも、それらの自白は裁判所では強い信用力を持つ、高い信用力を持つと、そういうふうに認定をされてきたわけです。

その典型の事例として、先ほど真山議員が取り上げられた栃木の今市事件という事件が起こっていますけれども、その同じ栃木県警が引き起こした足利事件について尋ねたいと思うんですね。これ皆さんも御存じのように、足利事件は、裁判所によって無期懲役の判決が確定をしたけれども、再審事件において、根拠とされた客観的証拠のDNA鑑定が誤っていたと、だから無罪ということが確定した事件です。

そこで、最高裁にお尋ねといいますか確認をしますけれども、この足利事件の、その無期懲役を確定させた最高裁判決が菅家さんの自白を、元被告人菅家さんの自白をどのように認定したかといいますと、記録を精査しても、被告人が犯人であるとした原判決に事実誤認、法令違反があるとは認められないとしたわけです。

この最高裁判所が間違いはないというふうに認めたのが東京高等裁判所の判決なわけですが、最高裁判所においでいただいています。この東京高等裁判所の無期懲役判決の、いただいている資料の二十ページ、つまり判決文の二十ページの上から十六行目、被告人の捜査官に対する自白にはというところからのくだりを御紹介いただけますか。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 委員御指摘の箇所を読み上げます。

被告人の捜査官に対する自白には、本件駐車場で被害者を見付けて誘い、手助けして自転車の後部荷台に乗せたときの状況、渡良瀬川堤防から河川敷の運動公園に下りる坂道でスピードが出たのでブレーキを掛けた状況、殺害した後で河原に遺体を横たえ、着衣を脱がし、愛撫したときの状況、遺体を運び草むらに置くとき、遺体がうつ伏せになったので、手前に転がしてあおむけにし、右手を身体の下から出してやった状況、遺体の上に周囲の草を折り曲げて掛けた状況など子細な状況の描写がなされているのであって、全体を通じ、実際に臨場し、体験した者の供述としての真実味が感じられる。

このように記載してあります。

○仁比聡平君 そのような認定をした上で、被告人はそうではないと弁解をしているんですが、その被告人の弁解について、その四行下にその判決のくだりがありますが、そこを御紹介いただけますか。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 読み上げます。

被告人が当審で弁解するような、当時の新聞記事の記憶などから想像を交えて、経験しない虚構の事実を捜査官などの気に入るように供述したなどという弁解は、到底受け入れ難い。

このように記載されております。

○仁比聡平君 ありがとうございました。

そのように、地方裁判所そして高等裁判所で徹底した審議の上で判決が下され、これが最高裁判所で無期懲役と確定したわけですよ。ところが、DNA鑑定は間違いであって、真犯人のものと被告人菅家さんのものは一致しない、つまり真犯人じゃなかったんですよ。高等裁判所が、実際に臨場し、体験した者の供述としての真実味が感じられるとした判断は全くの誤りだったんですね。ここをどう考えるかなんですよ。

再審無罪の判決は、そのDNA鑑定という客観的な証拠と菅家さんの自白は矛盾している。なぜ自白したかというと、最大の要因は、捜査官から間違ったDNA鑑定の結果を告げられたということにある。当時の取調べの状況や強く言われるとなかなか反論できない被疑者菅家さんの性格などからすると、むしろ本件自白の内容は、当時の新聞記事の記憶などから想像を交えて捜査官の気に入るように供述したという菅家さんの供述にこそ信用性が認められるというふうなことを認定した上で、もう一度最高裁に御紹介いただきたいと思いますが、いただいている判決文の十五ページの下から六行目、その結論部分を述べていただけますか。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 被告人の自白は、それ自体として信用性が皆無であり、虚偽であることが明らかであるというべきである。

このように記載されております。

○仁比聡平君 少女を殺害して無期懲役という判決が最高裁判所で確定をして、ところがその根拠とされた自白は全くの虚偽であった、それ自体として信用性が皆無であった。

これ、大臣、自白というのは怖いものだと思われませんか。

○国務大臣(岩城光英君) 虚偽の自白に係る冤罪、そういった例を引いてのお話でありますけれども、もちろん犯人でない人を処罰することはあってはならない、そのように基本的には認識をしております。

そうした上で、自白に関わるおただしでありますけれども、極めて慎重に自白の内容についてはきっちりと検討をしなければいけないと思いますし、私といたしましても、慎重に自白については取り扱うべきものと、そのように考えております。

○仁比聡平君 それは慎重に取り扱わなければならないのは当たり前なんですね。起こっている、発生した犯罪、その被害が深刻であればあるほど、凄惨であればあるほど、真犯人への憎しみや怒りというのは、これは捜査官はもちろん、遺族の皆さんの悲しみはもちろん、社会としても沸騰するわけですね。だから、被告人である、あるいは共犯者であるのではないかというふうに名指しをされた人、つまり容疑者、被疑者がその容疑を認めたという報道、あるいはその自白、これは、やっぱりそうかというような危険性を持っているわけです。

この足利事件の菅家元被告人のその自白だって、そのようにして扱われました。その危険性を持っている。であれば、大臣にお尋ねしたいのは、なぜうその自白がなされると考えるかということなんです。

布川事件という冤罪事件がありますが、その被害者の桜井昌司さんは、お会いいただければ分かりますが、とても気丈で気の強い方ですよ。この人が何でうその自白なんかしたのかと、きっと皆さん思われると思うんですけれども、なぜかと。朝から晩まで、おまえが犯人だという決め付けを前提に責められ続ける、警察から。心が折れるまで圧力を掛ける。される側は、自分が、何があっても、どうあっても有罪にされると思い込まされ、それは本当に苦しいからうその自白をする。それでも、検察官に話せば、裁判官に話せば分かってくれるに違いないと。だって、本当はやっていないんだからと、そういう心理に陥ると。でも、実際には検察官も裁判所もうその自白を見抜こうともしない、それが現実だったと。

こうしたうその自白というものが作られてしまう過程について、大臣はどんなふうに思われますか。

○国務大臣(岩城光英君) 一つには、そういった自白の信用性に対する吟味、検討が不十分であったということが挙げられると思いますけれども、いずれにしましても、一般的に言いまして、委員御指摘のとおり、自白に対する取扱い、検討は慎重にしていかなければいけないと、そのように改めて考えております。

○仁比聡平君 自白の吟味、検討を慎重にとおっしゃるけれども、それは具体的にその自白の調書なり録音、録画のビデオが出てきて、これが真実か、ここで犯人だと、先ほどの菅家さんのように、体験していなければ語り得ないなと思うような言動で語っているけれども、だけど、これがうそかもしれないというときに吟味、検討するというわけでしょう。それは、つまり重大な人権侵害と虚偽の自白が取られてしまった後のことなんです。

この自白がどのようにしてなされるのか、これが繰り返されてはならないという問題意識の、強い問題意識の下に、私は、客観的に密室での取調べが検証できない、ここを変えるべきだというのが取調べ過程の全面的な可視化という議論の出発点だと思うんですね。密室で捜査官から迫られる、心理的に屈服をさせられて、その屈服をさせられて自白した。一旦自白をすれば、これはその後もうずっと持続するんですよ。一旦自白して、その後、いや、本当はやっていないんですと被疑者が答えたとしたら、どう大臣されますか。さっき言ったのはうそだったのかと言うでしょう。

一旦自白をすれば、一旦認めた、それはうそだったのかという論理の下で屈服を持続させられる。そうしたプロセス全体を、密室ではなくてちゃんと事後的に検証できるものにする。事後的に検証されるとなれば、その場ではそういうことが行われないようになるだろう、抑止されるだろうと、それが全面可視化ということの出発点なんだと思うんですが、大臣の御認識はいかがですか。

○国務大臣(岩城光英君) 本法律案で導入することとしている取調べの録音・録画制度の趣旨、目的は、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、取調べの適正な実施に資することを通じて、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現、これに資することにあると、そのように考えております。

○仁比聡平君 いや、結局私の問いにお答えにならないじゃないですか。つまり、この法案が、取調べ室への弁護人の立会い権も認めない、捜査官手持ちの全面的な証拠開示も行わない、そうした下で一部の取調べの可視化だけをする、録音、録画をするということが一体日本の刑事裁判をどのように変えてしまうのか、私たちはそこをちゃんと今考えなきゃいけないと思いますよ。

ここで法務省にお尋ねをしておきますけれども、私が先ほど紹介をしたような足利事件のように、自白に任意性、信用性があるとして検察が起訴をし、有罪立証を尽くしながら結果として無罪になった、そういう事件は戦後幾つもあります。これ、何件あるのか。自白をどのように評価して立証したのか。有罪判決はその自白をどのように評価したのか。無罪あるいは再審無罪判決はどう評価したのか。これは私、この委員会に明らかにしていただきたいと思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(林眞琴君) 法務当局におきまして、お尋ねのような観点からの統計等を取っておりません。網羅的に把握していないところでございます。

○仁比聡平君 網羅的に把握していないんですよ。どこに反省があるのかと。八海事件、吉展ちゃん事件、足利事件、布川事件、志布志事件、氷見事件、アリバイの事実さえあなた方が否定をして、自白を強要してうその自白をさせて、有罪で確定して刑務所まで送ったじゃないですか。ところが再審無罪でしょう。何の反省もないのかと。

私は繰り返し、この戦後刑事事件の冤罪の第三者機関による検証を求めてきましたけれども、政府はずっと否定をしてきました。その下で申し上げて、大臣も否定できないでしょう、自白の危険性。という問題について何の検証もせずに、その録音、録画を裁判でどう使うのか、その法案の審議の前提を、私、欠いていると思うんですね。

委員長、私が今法務省に求めた資料、これを是非提出をさせるように指揮を願いたいと思います。いかがでしょう。

○委員長(魚住裕一郎君) 後刻理事会で協議いたします。

○仁比聡平君 法制審のこの法案を議論した特別部会で、皆さんがよく御存じの映画監督の周防さんがおられて、衆議院の参考人質疑の中で、この法案につながった、議論の出発点である郵便不正事件、村木厚子さんの事件について、特に司法取引が導入された場合、共犯者とされる在宅被疑者の取調べはどうなるのかと。具体的に、皆さん思い起こしていただきますと、厚生労働省の職員、村木さんの部下が共犯者として参考人の取調べをされました。ところが、この法案では、そうした共犯者とされる参考人の在宅の取調べというのは可視化はされません。

そうした下で、周防さん、こうおっしゃっているんですね。共犯者の初期供述から取調べの全過程が録音などで記録されるようになれば、検察官の見立てに沿って無理に供述を変更させるような取調べや取引を防止することができます。逆に言えば、取調べ全過程の録音などもない共犯者の供述に基づいて裁判が行われるようなことになれば、郵便不正事件と同じような冤罪は防ぐことができないのではないでしょうか。

大臣、この批判にどう答えますか。

○国務大臣(岩城光英君) この法律案の録音・録画制度ですが、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、取調べの適正な実施に資することを通じて、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資することを目的とするものでありまして、真犯人の適正、迅速な処罰とともに誤判の防止にも、それにも資するものである、そのような仕組みになっていると、そのように考えております。

○仁比聡平君 もう繰り返し大臣、そういう御答弁を前上川大臣の頃からやっておられるんですけれども、適正な任意性の立証に供するというふうに。裁判になった後の扱いをこの後議論したいと思いますけれども、それで実際に虚偽の自白を強要するようなことしていいなんてならないでしょう。

私は、先ほどお話のあった今市事件で法廷で再現をされたその取調べ室での様子、これDVDになっていると思います。足利事件でも、先ほどお話ししたような、最高裁から述べていただいたような自白の録音テープが法廷で再現をされました。先ほど御紹介した布川事件でも自白の録音テープというのが存在し、証拠になっているわけですね。

これらの、これまで現に行われてきて有罪立証に供されてきた、あるいは任意性立証に供されてきた録音、録画がどのようなものか。私、これ、法務省、この委員会に提出をしていただいて、私たちがちゃんと見れるようにする、どんなものなのか確認できるようにする、していただきたいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(林眞琴君) 御要望につきましては、例えば現在係属中あるいは既に確定した個別事件、こういったものについての録音・録画記録媒体の提出を求められているところでありますけれども、こういったことについて、刑事裁判以外の場で証拠の内容自体を明らかにすることとなりますので、やはりこれにつきましては、当該事件の関係者の名誉でありますとかプライバシーの保護の観点から問題がございますし、また、今後の捜査機関の活動等においても関係者の協力を得ることが困難になるなどの重大な支障を生ずるおそれがあると考えております。

○仁比聡平君 刑事裁判以外の場でとおっしゃるけれども、例えば今市事件であるならば、裁判員の皆さんがいらっしゃって、補充裁判員の皆さんももちろんいらっしゃって、しかも公開の法廷で、マスコミも入って、そこで再現をしておられるわけでしょう。そうした在り方を今後どういうふうに縛っていくのか、縛っていけるのか、この法案そのものを審議する私たちが全く知らないままで法案の審議ができますか。私はいささか取調べ室やあるいは面会室や刑事裁判の弁護の経験もありますから、そうした録音テープというものを自分自身が聞いたこともある。けれども、多くの国会議員の皆さん、それは御存じないでしょう。この法務委員会の議員の皆さんが、これまで現実に行われてきたそうしたうその自白というものがどれだけ怖いものか。だって、皆さんお聞きになれば、真犯人に違いないと思われる方多いと思いますよ。ところが違うんですから。そうした事実をちゃんと踏まえた上での審議を私は是非やるべきだと思います。

委員長、このテープなどについても提出を引き続き求めていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

○委員長(魚住裕一郎君) 今の点につきましても、後刻理事会で協議いたします。

○仁比聡平君 そうした下で、この法案は、対象事件の全過程の録音、録画であると繰り返し法務省からも説明がされ、そして、例えば今朝の新聞などにもそんなふうに書かれているわけです。対象事件について、今日ももう既に確認がありましたが、裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件、この事件については全ての取調べが録音、録画されると皆さんも説明を受けておられるし、多くの国民の皆さんはそう思っているわけですね。

ところが、そうかということを、私はまず確認をしたいと思うんですね。お手元に「部分録画―「恣意的運用の余地は無い」のか」と題した、私が作った資料ですけれども、お配りをいたしました。

重大な、例えば殺人事件、こうしたものを考えたときに、皆さんも、逮捕に至る前に任意同行というのが行われることが間々あるということは御存じだと思います。この任意同行というものは、今回の法案によっては、つまり任意同行の下で行われる取調べですね、これは、今回の法案によっては録音、録画の義務付けの対象にはならないという御答弁が先ほどもありました。

二枚目に、なぜならないか、私が法案三百一条の二から法案の骨格を整理したものをお配りをしていますが、明文で逮捕又は勾留されている被疑者の取調べに限るとなっているからだと思いますが、局長、そういう理解でいいですか。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおりでございまして、逮捕、勾留されていない被疑者、例えば任意同行の段階については今回の義務の対象外でございます。

○仁比聡平君 じゃ、任意同行といって、本当にすぐ帰れるのかと、帰れないんですよ。現実に、任意同行という、身柄拘束期間の定めも制限もない、そうした状況の下でどれだけの違法捜査が行われ、そこで冤罪事件が引き起こされてきましたか。

今朝、三宅理事が取り上げられた鹿児島県の志布志事件もそうでした。十数人の容疑者とされた市民が任意同行を次々とさせられて、その中で無罪判決は、ありもしなかった事実がさもあったかのように関係被疑者の供述が一致をさせられていく、そんなプロセスを断罪をした無罪判決だったわけですね。

任意同行というのは、希望すれば取調べ室を出ていけるというような状況ではないんです。そうした下で、法制審の委員も務められた後藤昭教授が、今年、法律時報の一月号に、名目は任意同行であっても実質的に身柄拘束に当たる状況で取り調べた場合には録音・録画義務の潜脱という違法が生じると述べておられるわけですが、これ、林局長、この見解は、前提は、実質的に身柄拘束に当たる状況での取調べは、名目は任意同行、つまり逮捕状は出ていないという状況の下でも録音・録画義務の対象になるんだという理解を前提にしないと理解できないんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(林眞琴君) この名目的には任意同行であっても実質的には身柄拘束に至っている場合というものが、これについてが定かではございませんが、もしそれがそのままの意味でございますれば、これ自体は違法な身柄拘束でございます。そういったことについての取調べ自体につきましては、やはりそれに対して違法の評価がなされるわけでございます。

あくまでも今回は、適法な形での身柄拘束がなされる中での取調べについては、この対象事件に当たる限り録音、録画の義務の対象となるということでございます。

○仁比聡平君 つまり、法律の論理としてはそういう説明をするんでしょうが、皆さん、それが信じられますか。警察が違法な身柄拘束をしないと思われますか。現に幾らだってやっているじゃないですか。任意同行が違法な身柄拘束ではないかどうかというのが争われるのは、最終的に起訴されて、裁判の中でその取調べ室における自白調書が有罪立証の根拠として示されてからですよ。私たち弁護士がこの身柄拘束は違法だということを求めて争っても、皆さんはそれを認められないということがこれまでの刑事捜査の現実であります。

そうした任意同行の中で別件逮捕が行われることがあります。その一枚目に、例えば今市事件でいいますと、偽ブランド商品などを所持していたということで商標法違反ということで捕まっているわけですが、私はこれは明らかな別件逮捕だと思うんですね。

これが今市事件でいうと二〇一四年の一月二十九日のことですけれども、その後、逮捕の七十二時間、そして最初の勾留、勾留延長、二十三日間の期間を経て二月十八日に別件起訴をされます。商標法違反で別件起訴をされる。その二月の十八日、別件起訴をされた日の午前中に初めて犯行を認める自白をしたということになっているわけですね。ところが、その前、つまり別件逮捕に基づいて身柄を拘束されているその期間に、殺人あるいは死体遺棄、そういった本件での取調べが行われたのかということは定かではどうもありません。

私は、法務省、検察庁にお尋ねをしたいと思うんですけれども、報道では録画されていた取調べというのは全部でおよそ八十時間だと言われています。そのうち七時間が再現をされたと言われています。これが事実なのかということ、それ以外にこの別件逮捕以降行われた取調べというのは警察と検察で合わせて何回であって、全体で幾らの時間になるのか、それらは、その八十時間以外は録画していないということなのか、ちょっと確認をしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君) お尋ねの事項でございますけれども、まだ確定していない個別の事件に関します捜査の具体的内容、あるいは、検察あるいは裁判当事者の公判での主張立証内容に関わる事柄でございますので、ここでのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

○仁比聡平君 警察は。

○政府参考人(三浦正充君) 警察庁といたしましても、お尋ねの件につきましては判決がいまだ確定をしていないことから、お答えは差し控えたいと存じます。

○仁比聡平君 いや、答えようとされないんだけれども、実際に重大な犯罪、しかも真犯人が見付からないということで長期化していたこの事件で、その被疑者と目した人物を身柄拘束をしながら何の調べもしていないというのは、私はあり得ない。

先ほど来、初めて犯行を認めたという二月十八日午前中の自白について、これ、初めて認めたというふうにすっと皆さん語られますけれども、この二月十八日の録音、録画をされていない自白に至るプロセスというのが一体どんなことだったのか、そのことは極めて重大な問題なんですね。

そこで、法案について確認しますが、別件逮捕の期間中に本件の取調べをした場合、これは録音、録画の対象となりますか。

○政府参考人(林眞琴君) 逮捕、勾留されている被疑者について取調べを行う場合に、その逮捕、勾留事実が今回の対象事件でない場合、これを想定した場合でお答えいたしますが、そういった場合に、実際、その逮捕、勾留期間において被疑者を今回の対象事件を事実として取り調べることはあり得ます。ただ、その場合に、そういう形で取り調べる場合には、対象事件について勾留されている被疑者を取り調べる以上、今回の録音、録画の義務の対象となります。

したがいまして、こういったある身柄拘束中の被疑者をいわゆる余罪について取り調べる場合にあっても、この余罪自体が今回の対象事件であれば今回の取調べの録音・録画義務の対象となるわけでございます。

○仁比聡平君 今のように衆議院の頃からずっと説明をしてこられているんですけれども、そこでちょっとはっきりさせたいんですが、法案では今局長が御答弁になったことがどこに書かれているのかと。

これ、何しろ裁判所の発付した令状は別件での令状しかないわけです。殺人罪とか死体遺棄罪では誰も審査をしていない、証拠確認はしていない、その下で身柄が拘束されている。けれども、殺人罪で取調べをするわけですよね。そのときには録音、録画をするんですと局長は言うんだけれども、これは法案ではどこに書かれているんですか。

○政府参考人(林眞琴君) 本法案の録音・録画義務が課される取調べについて、刑事訴訟法第三百一条の二第四項におきましては、逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるときと規定しております。この場合の逮捕若しくは勾留されているという被疑者に今回の対象事件という限定が付されておりません。そのことから、今回、身柄拘束中の被疑者について余罪について調べる場合に、その余罪が今回の対象事件である場合には録音・録画義務が掛かるわけでございます。

○仁比聡平君 そうした理解だとして、そうした四項の理解をした上で、一項は当該事件についての取調べというふうに書いてあるわけで、当該事件についてのというのは、つまり本件についての取調べという意味なんだと思うんです、これ違っているんだったら後で違うと言ってもらったらいいんですが。

そういう当該事件についての取調べ、つまり殺人についての取調べを行うときには録音、録画をしなければならないんですと言うんだが、けれども、その録音、録画というのは、そこで取った調書を裁判所に証拠として出すときに求められるもの、弁護側が任意性を争ったときにしか求められないものですよね。そういうことでいいですか。

○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、公判で例えば調書を立証に用いないというときには、本法案での取調べの録音・録画記録を証拠調べ請求する義務はございません。しかしながら、捜査の過程で、取調べの時点においてその対象事件について調べる限りは、取調べの全過程を録音、録画することが義務付けられておりますので、そのようにその義務を履行することが必要となります。

○仁比聡平君 いや、ぎりぎりの話なんですよ。一般的に求められておりますというような話ではない。

例えば今市事件であれば、別件で逮捕されてから犯行を認める自白を検察官の前でするまでどんなことがあったのかというのは、これは分からない。犯行を初めて認めた自白というのは、これ録音、録画はされていない。けれども、その日の夕方の取調べ、それ以降も全部が録画されているわけではないんだけれども、録画をされている部分が裁判所に証拠として出されたわけです。

先ほど来、何だか今回の最初に犯行を検察官の前で認めた事件については録音、録画がされ、もし求められるなら裁判所に証拠として出されるかのような御答弁をされているけれども、法案ではそれは必要ないでしょう。つまり、録音、録画をなしに最初の自白の供述がされ、その夕刻以降の、その後の後続する自白、この録音、録画が提出をされれば後に続く自白の調書の任意性は立証できるという考えでしょう。

○政府参考人(林眞琴君) 当該取調べ請求している調書についての任意性を立証するためには、その調書が作成された取調べの開始から最後までの録音・録画記録媒体を証拠調べ請求する必要がございます。

一方で、先ほど申し上げましたように、自白調書をこの立証に用いないといったときには証拠調べ請求する義務は負わないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、録音、録画の義務自体はございますので、これを履行しなければそれは違法行為でございます。もちろん懲戒の対象にもなります。

また、実際に録音、録画の記録媒体があるかないかということは、証拠開示がなされますので、その時点でその義務を果たしているかどうかということは弁護人の方にも分かることになりますので、そういった形で、そのような証拠調べを請求しない場面での取調べの録音・録画記録媒体があるのかないのか、あるいは実際にその義務を履行しているかどうかということについては証拠開示等を通じて把握され得ることになろうと思います。

○仁比聡平君 証拠開示を全てしているかのようなお話は、これは心外ですよね。袴田事件の再審開始決定審についても、今になって出してきている、その中に録音テープがあるというみたいな事態をこの委員会でも追及してきたじゃないですか。明らかにしてまいりました。

今の違法と確認をされ、違法だから懲戒対象にもなるというお話については、またこれから後、次の機会に聞いていきたいと思うんですけれども、証拠取調べ請求の義務がないということが録音、録画との関係でいうとどういうことか、ちょっと確認をしておきます。

法案の私が骨格と示している上から五行目の最後ですが、最初から最後まで録画するんだと言っている対象というのは何かといえば、当該書面が作成された取調べ又は弁解の機会なんですよ。当然、自白調書、供述調書というのは一回の取調べごとに作られるわけです。

これまでは、否認の調べは調書を作らないということも平気で行われてきました。だから、調書がない取調べというのも幾らだってあるんですよ。その下で、当該書面、つまりこの今市の事件でいうと、六月十一日の検察官に対する被告人の供述がこれは極めて詳細だというふうに報道されていますけれども、そういうところは絶対に作るんです。その調書の任意性というのを弁護側が争ったときに、その書面を証拠として扱ってよいかどうかが争われたときに、録音、録画が必要ですと。

ですから、先行する自白があって、そこには録音、録画がなくても、この調書の録音、録画さえあれば証拠として出せるようになりますという、そういう規定でしょう。

○政府参考人(林眞琴君) 当該調書についての任意性が争われた場合に、その当該調書が作成された取調べの開始から終了までこの録音、録画の記録媒体がありませんと、その証拠調べ、調書の証拠調べ請求は却下されることになります。

他方で、調書が取られていない取調べというのが当然ございます。その調書が取られなかった他の機会における取調べ、これについても本法案では録音、録画の義務を課しております。したがいまして、その義務は履行しなければなりません。

他方で、もう少し申し上げますと、その回の調書が作成された取調べにおける録音・録画記録媒体を出せば証拠調べ請求は却下されないということになるわけでございますが、却下されないということがイコール任意性が認められるということではございません。したがいまして、その調書の任意性というものは更に検察官は立証をしなくてはいけないわけでございまして、そういった場合には、義務を履行している他の取調べにおける録音、録画の記録媒体などを使って立証することになろうかと思います。

○仁比聡平君 時間がなくなってきてしまって。

私は、この法案をちゃんと理解するだけでも、皆さん、随分議論が必要だと思われませんか。

今、懲戒の対象にはなるんだとしきりにおっしゃるんですけれども、例えば志布志事件で何人の警察官が懲戒を受けたか御存じですか。踏み字をさせた警察官とその指揮をした警察官の二人だけですよ。組織ぐるみで冤罪をつくり出しておいて、その捜査官というのは何も断罪されていないんですよ。だから、自白偏重の捜査を繰り返してきているんです。

最後、確認をしておきますが、起訴後勾留というのがその後ありますね。つまり、二月十八日に別件で起訴をされて後、殺人罪で起訴をされたのは六月二十四日です。その間、別件逮捕からすれば百四十七日間あるんですが、ここには期間の制限もないかのような扱いをする。ここでも検察官もそして警察も取調べを行うし、その取調べはこの法案では可視化の対象になっていないでしょう。

○政府参考人(林眞琴君) 起訴後の勾留中の被告人に対しましても、起訴された事件以外の余罪につきまして取調べを行うことはできると考えられます。もっとも、この場合には、この被告人に取調べ受忍義務が課されない点でその法的性格は在宅の被疑者の取調べに近くて、被告人は取調べを受けること自体を拒否することができると考えられます。そのことから、本法案における録音・録画義務が課される取調べにつきましては、この刑事訴訟法三百一条の二第四項において逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるときと規定しているところでございます。したがいまして、こういった起訴後の取調べについては録音・録画義務の対象とはなりません。

○仁比聡平君 このように、この法案では録音、録画の義務の対象にならないんですよ。その下でどんな取調べが行われているのか、その一端が今市事件で明らかになりつつあるわけです。例えば、その起訴後勾留の間に自白をし、そして否認に転ずるということになると、検察官から、今話さないでいつ話すんだ、遺族やいろんな人に恨まれ続けて生きていけばいいと迫られて、被告人は、もう無理、ああ嫌と、立ち上がって窓に突進して自殺を図ろうとしたというような様子が報道されているわけでしょう。それが今局長が言ったような任意の取調べですか。とんでもないと。

そうしたものを可視化をせずに部分録画で、裁判員も含めた裁判に強い影響力を与え得る、自白というのはそういう恐ろしいものなんだということをちゃんと共有する委員会の審議が必要だと、今日はそこまで強く申し上げて、質問を終わります。


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