○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
今日は、活火山の監視観測体制の強化の問題について、まず政府の基本的な認識を伺っていきたいと思うんです。
つい先日、三月二十六日に、火山噴火予知連絡会火山観測体制等に関する検討会の御嶽山の噴火災害を踏まえた活火山の観測体制の強化に関する報告が出されました。私、これ読ませていただきまして、御嶽山についていいますと、昭和四十年一月一日に気象庁が火山情報の発表を正式に開始して以来最多の人命を失う災害となったという現実を極めて重く受け止めて、現状に至っている体制の課題を深く省みて真剣な検討を行っておられるということを、その文章の隅々からにじみ出ているように思ったんですね。
そこで、まず気象庁にお尋ねしますけれども、この御嶽山噴火で明らかになった課題として、結果として今般の噴火災害を防止できなかったという観点から、噴火に至るまでの気象庁の対応を振り返ってみると、以下のような幾つかの課題が明らかになったとして諸課題を挙げておられるんですが、この紹介をいただくとともに、政府としての受け止め、認識はどうなのかと、その点をまず伺いたいと思います。
○政府参考人(関田康雄君) 昨年の御嶽山の噴火につきまして、火山噴火予知連絡会の下にあります検討会において、火山観測体制につきまして検討を行っていただきました。
その中でいろいろと課題が指摘されておりますが、まず第一に、今回の噴火が水蒸気噴火ということで、非常に前兆現象が出にくい、検知しにくい、予測することは非常に困難である噴火であったということがまず第一に挙げられるかと思います。このため、火山噴火予知連絡会のその検討会におきまして、火山観測体制について強化すべきという御提言を、これは昨年十一月に緊急提言という形でもう既に出されておりますが、こういったものを出していただきました。
具体的な内容を申し上げますと、水蒸気噴火の兆候をより良く捉えるための火口付近への観測施設の設置。これは、水蒸気噴火というのは、山全体が変形するのではなくて、本当に噴火する火口の付近だけ変形する場合が非常に多いものですから、火口付近という非常に限られた場所に観測機器を設置しないと噴火を予測できないという、こういった課題があるということで、ここを御提言いただいております。そのほかにも、御嶽山のマグマ活動を把握するための観測強化、あるいは八甲田山、十和田、弥陀ケ原といった、こういった三火山について常時観測火山に追加すること、こういったような提言もいただいているところでございます。
私どもとしましては、こういった内容につきまして、関係機関と連携の上、しっかりと対策を現在進めておるところでございます。
○仁比聡平君 正面からこの報告は私、受け止めるべきだと思うんですね。
申し上げた幾つかの課題として報告書では三つが挙げられていまして、その第一は、山頂付近での観測体制が十分でなかったことですね。二つ目は、こうした場合の総合的な火山活動の評価体制が十分でなかったということ。三点目に、名古屋大学や火山噴火予知連絡会委員との間で、十分な意見交換、認識の共有がなされなかったといった課題が指摘されているわけですね。これは、気象庁の対応についての言わば不十分さということの指摘なのだろうと思うんです。
その中で、一つ伺いますが、現地調査という課題があります。御嶽でも、九月十日から十一日にかけて火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生するとの判断に至らなかったという指摘と併せて、九月十二日以降も地温や噴気、火山ガスなどに変化を及ぼすような火山活動ではないと考え、現地調査を行うという判断に至らなかったという指摘があるわけですね。
これ、現地調査によって得られる、監視や観測にとっての重要な情報というのがやっぱりあるということなんだと思うんですが、その点はいかがですか。
○政府参考人(関田康雄君) まず、今回現地調査を行わなかった理由なんですが、これは実際、今回の噴火の前に、平成十九年の三月に非常に小規模な噴火がございました。この噴火の前には、今回ありましたような地震活動、これを上回るような非常に規模の大きな地震活動がありました。それから、微動も観測されました。それから、地殻変動もありました。こういったように、非常に顕著な前兆が見られました。
その上で、実は、そういった前兆現象が見られてから三か月ぐらいした後に非常に小規模な噴火があったという事実がございます。この事実を我々知っておりますものですから、今回はそれに比べると、地震活動がありますけれども、前回に比べると規模が小さい。それから、九月十日、十一日と二日間は非常に地震活動がありましたのですが、その後すぐに収まってしまったということ。それから、地殻変動や微動が観測されなかったということから、今回は噴火に至るような活動ではないというふうに判断いたしまして、現地調査も行わなかったというのが事実でございます。
御指摘いただきましたとおり、そうはいっても、やはりこれだけ大きな災害になったことを、結果として防ぐことができなかったという反省に立てば、やはりあらゆる手段を尽くして情報を集めるべきであったという観点から、今後は、このような活動に変化が見られた場合には、その変化の規模によらず、直ちに現地に人を派遣して、現地で得られる情報を得てくると、こういうことが非常に重要だということを御提言いただいておりますので、我々の方もそのようにさせていただきたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 私、こうした専門家の指摘を受けながら現地調査を行わなかったことを合理化するような御答弁をここで聞きたくないんですね。
私が尋ねているのは、現地調査、あるいは政府もですよ、今後の問題として機動観測とおっしゃっているでしょう。つまり、遠望のシステムではなく、現地に臨んで分かることというのがあるんじゃないんですか。
○政府参考人(関田康雄君) まず、データとしましては、これはカメラを使ったり、あるいは地震計を使ったり、あるいは地殻変動を計測する機械を使ったりして、こういったものは全てデータとしてこの火山監視・情報センターの方にリアルタイムで送られておりますので、こういったデータについては分かります。ただ、もちろん、遠望はカメラを使って見ているだけですので、例えば臭気ですね、臭いとか、こういったやはり現地でしかつかめないものは当然あるだろうと思っています。
ただ、現在のところ、そういったものがどの程度噴火の予測に活用できるかというところは、これからまたいろいろと検討を進めなければいけないんだろうと思いますが、少なくとも情報を集めるということは極めて重要だということは、これは間違いのないところでございますので、今後はそういった形でさせていただきたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 ですから、予知連絡会は、結果として今回の噴火災害を防止できなかった。つまり、噴火は、噴火そのものは防止できないとしても、これが最多の人命を失うという結果、その災害は防止しなきゃいけないじゃないかと、それが観測体制の強化であり、専門家や気象庁、火山防災の責任じゃないかと、この観点から課題を指摘をしているわけでしょう。
私、この気象庁の人の体制の問題についてこの委員会でずっと問題にしてきたんですけれども、今気象庁が常時観測の火山に対して監視をしておられる、その体制というのは、全国で四か所、つまり札幌、仙台、東京と福岡、この四か所しかない情報センターに人が集中しているという体制ですよね。ですから、現地に臨むといっても、恐らくそんな簡単な話じゃないんだろうと思うんです。
この今回の報告の中で、機動観測の体制を強化する、あるいは地元自治体や観光業など日頃から火山周辺の状況に詳しい方々とのネットワークを構築して、火山活動に変化があった場合に現地の状況を把握できる体制をつくる、それから幅広く大学、研究機関などと意見交換を実施できる体制を構築する、加えて地元の気象台にもこうした火山活動の状況の認識を共有できる環境をつくる、こうした人の配置に係る提言がされているわけですが、これまでの人員を削減していくこの流れからしたら、これは到底できないこと。
私は、地元の気象台にもこうした環境をつくるんだと、あるいは火山ごとに地元の住民の皆さんと本当のネットワークをつくるんだというのは、人を抜本的に配置することなしにはあり得ないと思うんですけれども、この具体化はどうしていかれるおつもりですか。
○政府参考人(関田康雄君) 今御指摘いただきましたとおり、大変行財政事情厳しいところで、気象庁としましても全体では数がずっと減ってきているという事実がございます。そういった中でも、やはりこういった提言をいただきました。それから、本当にこれだけ大きな災害を防ぐことができなかったという反省に立てば、我々としてもできる限りの強化はしてまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 次の問題として、火山の専門家が大変少なくなっているという課題があるわけですよね。
この点について、予知連絡会の藤井敏嗣名誉教授が火山観測研究の危機的現状という指摘を繰り返しされてこられました。その御指摘の中で、国立大学法人への移行以来のポスドク問題ということがあります。博士号取得者の多くが終身の雇用ポストに就けないという状況の下で、博士課程への進学意欲がそがれて研究者の後継者難が引き起こされていると。ポスドクが観測所、研究所を転々と移動し、正規教員にはなれないという現実を目の当たりにして学生そのものが減少しているという、こうした指摘がされているわけですよね。
文科省の審議官にもおいでいただいていますが、さきに十一月、科学技術・学術審議会測地学分科会地震火山部会において、御嶽山の噴火を踏まえた火山観測研究の課題と対応についてという文書が出ておりますが、この報告でも、大学の法人化によって研究リソースが限られてしまったという認識があると思います。私、この時期に、大学の研究を十六火山に重点化するという当時の方針が出たときに、これは火山防災の強化に逆行する動きではないかとこの委員会で厳しく指摘をいたしました。
大学において、当時の文科副大臣が、研究価値の大きい火山に研究を重点化するというふうに述べて、結局、そうした長期的な視野の持てない大学の在り方が火山の専門家の後継者を大変にしてきたということではないかと思うんですけれども、この点はどんな今御認識にあるんですか。
○政府参考人(磯谷桂介君) お答え申し上げます。
先生御指摘いただきました平成二十六年十一月に文部科学省の科学技術・学術審議会測地学分科会におきまして、今後重点的に進められるべき火山観測研究や人材育成の在り方等がまとめられております。その中で、特に火山観測研究において、先ほど御指摘の十六重点火山を見直しまして、新たに、研究的意義が高く水蒸気噴火の可能性が高い火山を重点研究の対象に加えまして、御嶽山を含む二十五重点火山とすることなどが提言されております。また、噴火の予知が見られた場合等に観測研究が強化できる機動的な体制の構築、あるいは先生御指摘の人材育成も含めまして、観測研究と人材育成を一体的に行うプロジェクトの立ち上げなど、火山観測研究の強化について方向性が示されております。
二十六年度補正予算におきまして、火山観測研究体制の強化を図るための必要な経費、あるいは機動観測のための経費、加えて火山活動のリアルタイム観測技術開発に必要な経費として二十一億円を計上しております。
さらには、先生御指摘の人材育成につきましても、先ほど申し上げたような観測研究と人材育成を一体的に行うプロジェクトですとか人材育成の強化等々につきまして、早急に省内に検討の場を設けて取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
今後とも、関係機関と協力して、火山研究者の育成に努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 大臣、聞いていただいていて、感想で結構なんですけど、ちょっとお尋ねをしたいんですが。
先ほど来の噴火予知連の報告書にはこういうくだりがあります。「先端的な火山学の知見は、将来的には火山噴火の予測に繋がるものもあるが、直ちに火山災害軽減の実現に結びつくとは限らない。大学・研究機関等は、長期的な視点に立ち学術的な研究の成果を着実に積み上げることが求められる。また、研究成果を着実に気象庁の業務の高度化に活かし、火山災害の軽減に結び付けるための応用研究も実施する必要がある。」と。本当に長期的に見ないと、今度の、例えば阿蘇もですね、危険だという地域に指定されたのは昭和五十年なんですね。やっぱり長いスパンで本当に物を見ていくし、判断ができる人材を育てていくということなしにこの火山国で国民の命を守ることができないと思いますけれども、大臣、御感想はいかがでしょう。
○国務大臣(山谷えり子君) 火山防災対策については長期的な取組が必要だと考えております。そして、委員丁寧に読んでいただきました三月二十六日の御嶽山を踏まえた今後の火山防災対策の推進についての報告書でありますが、この内容、今後の火山防災対策の大きな指針となるものでありまして、政府としましては、本報告における提言の実現に向けてしっかりと取り組んでいかなければならないと考えております。
火山研究体制の充実のための人材育成には時間が掛かります。火山防災対策については長期的な取組が必要であると認識しておりまして、引き続き、関係省庁連携しながら、火山防災対策を推進するための取組、継続的に実施し、火山監視・観測体制の充実や火山研究体制の強化等を図ってまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 時間が迫ってまいりましたので予算などの問題についてはまた次の機会に譲ることにして、農水省においでいただいておりまして、一言決意をお尋ねしたいと思うんですけれども。
阿蘇の噴火、特に降灰による農作物被害、これ極めて深刻だと先ほど来お話があっているとおりです。活火山対策特別措置法に基づく様々な支援措置が桜島の経験なども踏まえて積み上げられてきたわけですけれども、県の方で防災営農施設整備計画が策定をされた場合、近くされるだろうと思いますけれども、露地の土壌改良だとか、あるいはハウスの支援だとか、こうした支援を、できることは何でもやるという構えで取り組んでいただきたいと思いますが、一言いかがでしょうか。
○政府参考人(室本隆司君) 阿蘇山の噴火以来、国といたしましても防災営農施設整備計画の作成について関係県に技術的助言を行ってきたところでありまして、地元の意向や降灰の状況を踏まえまして、今後、県が防災営農施設整備計画を作成した段階で、計画に位置付けられた事業の推進が図られるよう国として適切に対応してまいりたいと考えております。
委員御指摘のビニールハウスあるいは土壌改良等につきましては、大量の降灰によりまして、私ども被覆施設というふうにビニールハウスを呼んでございますが、その被覆資材、これはビニールでございます、その劣化が著しく営農に大きく支障を来している場合は、地域の実情や営農体系を勘案しまして被覆資材の更新を支援するということを既にやっております。
したがいまして、これは一定の条件がございまして、例えばビニールハウスにつきましては、当該施設の被覆資材の光線透過率、これがおおむね七〇%を下回るもの、あるいは火山活動による噴石等で破損したことが明らかに認められるものなどを対象にその更新に対する費用を支援しているところでございまして、今回の阿蘇山の噴火による降灰におきましても、同様の状況が確認でき、今後、関係県がその計画に被覆施設あるいは土壌改良、こういったものを位置付けることとなれば国としても適切に対応してまいりたい、このように考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
終わります。