全日本年金者組合は6月16日、静岡県熱海市内で第20回定期大会を開催しました。

 あいさつした篠塚多助委員長は、民主党政権が後期高齢者医療制度を廃止せず、年金支給額を引き下げたことは許しがたいと批判。要求実現のとりくみを強め、全自治体に支部をつくり、高齢者人口1%に当たる20万人の組合員をめざそうとよびかけました。

 運動方針を提案した冨田浩康書記長は、「税と社会保障の一体改革」で「マクロ経済スライド」の仕組みが変えられると、年金が際限なく下げられるとして、年金改悪に総力をあげてたたかうことを提案。東日本大震災の復興にむけて、安心して住み続けられる街づくりが必要だと語りました。

 組織方針について三上利栄副委員長は、組合員が10万人に到達した成果をふまえ、新たに6年間で20万人に拡大する目標を提案し、12月の中央委員会までの討議をよびかけました。

 討論では、被災県の代表が発言し、全国の支援にお礼をのべるとともに、被災地の現状を報告しました。

 鳥取の代表は、年金受給資格期間短縮の運動にとりくみ、19市町村で意見書を可決したと報告。富山の代表は、後期高齢者医療制度の廃止にむけ署名、アンケート、議会要請など粘り強い運動が、組織の拡大につながっていると語りました。茨城の代表は、年金学校のとりくみについて語り、年金相談を広げたいと表明しました。

 全労連の大黒作治議長、中央社保協の相野谷安孝事務局長、日本共産党の仁比聡平前参院議員(党国民運動委員会副責任者)が来賓あいさつしました。

 大会の開会にあたり、震災の犠牲者を追悼し、黙とうしました。(しんぶん赤旗 2011年6月17日)

全日本年金者組合第20回定期大会 あいさつ要旨

仁比聡平前参院議員

 わたしは日本共産党を代表して、全日本年金者組合のみなさん方が、最低保障年金制度実現のたゆまぬ闘いをはじめ、高齢者の健康で安心できるくらしと、憲法、平和を守るためにこんなに元気に活動されていること、そして東日本大震災と東電福島第一原発による原子力災害の危機に直面して、被災された方々の無念と悲しみ、苦しみを我がこととし救援に全力をあげてこられたご奮闘に、心からの敬意を込めて連帯のご挨拶を申し上げます。



短期間に2200万円を超える義援金が集まったと伺いました。苦しい生活のなかで、本当に貴いことです。
全労連をはじめ労働組合・民主団体のボランティア派遣や、全国からの救援募金と支援物資をひとりひとりに届けてきた救援活動は、避難所以外へのきめ細かな物資の届けや炊き出し、瓦礫や土砂の撤去、労働相談や利用できる制度の周知など、労働組合の連帯の精神と組織力、行動力を遺憾なく発揮し、多くの被災者を励ましています。

犠牲者の多くが高齢者でした。
なんでも「自己責任」「市場競争万能」といって、医療・福祉を壊してきた構造改革政治が、救援と復興の大きな妨げとなっています。

 また、被災地の雇用・労働問題はきわめて深刻です。全国的にも、部品・原材料の供給網が断たれて休業による賃金カットや「派遣切り」などの労働相談が、次つぎと寄せられています。
「従業員・労働者こそ最大の宝」だと必死になって雇用を守ろうとする経営者の一方で、震災を口実に安易な首切り・賃金カットに走る大企業が相次いでいます。「派遣切り」や日航の「整理解雇」、社会保険庁の「分限免職」など、新自由主義路線のもとでの無法な解雇の横行が「首切り自由」の風潮をつくりだしたことの反映であり、労働組合の力のいっそうの発揮と「働くルール」の確立が求められているのではないでしょうか。

ところがこの大震災のさなかに、民主党と自民・公明両党が、菅内閣不信任案提出から大連立の企てという一連の経過に見られるように、被災者不在・国民不在のきわめて党略的で無責任きわまる政争に明け暮れていることは、断じて許せないではありませんか。
その根底には、双方に国政の基本問題で対抗軸がなく、だからこそ政治の中身の議論なしに政局ばかりに走る二大政党政治の行きづまりと政治的退廃があります。
被災者をはじめ多くの国民は、こうした政治からの決別こそ求めているのではないでしょうか。

「ねじれ国会では前にすすまない」「震災のときくらい与野党力を合わせて欲しい」―国民のなかにそういう声が多いのも事実です。問題は「大連立」でやろうという政治の中身です。
その中心は、「税と社会保障の一体改革」の名による消費税大増税と医療・福祉・年金のいっそうの切り捨てであり、道州制と「地域主権改革」や公務員の賃金引下げ、TPP参加の強行です。米軍普天間基地の県内たらいまわしをはじめとした日米同盟の深化であり、改憲手続きのハードルを下げるなど装いを変えた憲法改悪の企てです。そして、こうした反国民的・反動的な野望を達成するために、衆参の比例代表を中心とした定数削減を狙う動きが強まっています。

9日の産経新聞で森元総理は、「一体改革」「選挙制度」「憲法」―この懸案を、この際期限を切って結論を出す「絶好のチャンス」だと、「大連立」のねらいをあけすけに語りました。
日本経団連の米倉会長は、不信任案否決を受けて北京でわざわざ記者会見し、「大連立しかない」と述べました。
日米同盟絶対、大企業中心主義という点で同じ土俵に乗っているからこそ、一党だけでは国民の批判を受けてやれない財界が望む積年の課題を一気に押し通そうとする極めて危険な流れといわなければなりません。こうした悪政の苦しみは、もちろん被災者にも及びます。それを大震災に乗じて押し通すなど、断じて許されないのではないでしょうか。

二大政党への国民の失望と怒りが噴き上げる下で、相手も必死ですが、民意と要求を踏みにじるこんなやり方は決して思うようにはいかない―ここに確信をもち、日本共産党は三つの国民的運動を、心から呼びかけます。

 その第1は、被災者救援と復興のための国民的運動です。被災者の要求と願いを何より大切にし、劣悪な避難生活をただちに改善させ、仮設住宅を一刻も早く確保させるとともに、復興にあたっては、「被災者・被災地が主人公」を貫き、仕事と生活基盤の回復、地域社会の再建を土台にするという、生存権保障の大原則に立った政治への転換を求める闘いを、いっそう発展させようではありませんか。

 第2は、原発事故の収束に総力をあげるとともに、原発からの撤退を求める国民的運動です。いまの原発技術は本来的に未完成の危険なものであることが、目の前で実証されています。にもかかわらず歴代自民党政府と電力各社は、「安全神話」につかり、安全よりももうけ第一を上において、世界有数の地震国・津波国である日本に原発を集中的に立地し、民主党政権もそれを引き継いできました。
福島の原発危機は明らかな「人災」であり、東電にたいして全面賠償の責任を果たさせるとともに、政府にたいして、いまこそ原発からの撤退を決断し、原発ゼロをめざす期限を決めたプログラムの策定と、自然・再生可能エネルギーへの転換を求める国民的大運動を起こそうではありませんか。

 第3は、被災者支援・復興の取り組みと深く結んで、国民の暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」をめざすたたかい、利潤第一主義を抜け出す新しい日本社会をめざすたたかいををあらゆる分野で発展させる国民的運動です。
 
 3月11日を境に、多くの人々が「日本の経済社会と政治のあり方がこのままでいいはずがない」と真剣に考えはじめています。
 日本共産党は、これまでの政治に代わる新しい政治の対抗軸をしっかりと掲げ、危険な企てに正面から立ち向かい、国民の要求実現のために全力を尽くします。

 国民の模索と探求に応えられるのは私たちの運動の発展です。
とりわけ、地域の絆、支えあいの大切さという点で、地域に根ざした年金者組合のみなさんの運動と組織の役割は、ますます大きくなっています。
財界や構造改革推進勢力は、公的責任を放棄し、大企業にもうけ口を提供する口実として「地域の絆」や「支えあい」を強調しています。そうではなく、これと対抗するみなさん方の「たたかう絆」づくり、「まちづくり運動」こそが、そのまま高齢者と地域住民の命綱となる――3・11の国民的経験はそのことを示したのではないでしょうか。
そのためにも、10万人を突破した組織がもっともっと大きくなることを心から期待するものです。第20回という区切りの大会が、年金者組合の新たな歴史を切り開く大会として成功することを祈念して、ご挨拶とします。
みなさん。ご一緒に頑張りましょう。