先月末、台風2号接近による暴風雨で二次災害が懸念されるなか、宮城県石巻市、女川町、岩手県宮古市を訪ねました。現石巻市は1市5町の合併。世界三大漁場とされる三陸沖に向かって突き出すいくつもの半島に深く入りくんだ湾、東北最大の旧北上川、北上川の河口域から凶暴な大津波が遡上(そじょう)し、古くからの浜々の営み全てを壊滅させたのです。
雄勝町はその一つです。雄勝湾の最奥部から700米以上の谷合まで、住家も漁業施設も名産の雄勝硯(すずり)も一切ががれきと化しました。役場に掲げられた「おがつ ふっかつ ぜったい勝つ!! 雄勝中学校生徒一同」の横断幕。そしてがらんとした役場のフロアにずらりとはためく大漁旗をみつけ、私はこみ上げる涙をこらえて何枚もシャッターを切りました。
5月28日付本紙の「三陸漁業の復活へ」は岩手県山田町の76歳の漁師の思いを紹介しています。漁船も自宅もさらわれたこの方のタコ漁のかごが沖で被害を免れ、生きていたのです。それを仲間から伝えられ「がぜんやる気がでた。船さえあればかごを引き上げられる」と。こうした海への渇望を支え実現することこそほんとうの復興です。
1日、日比谷公会堂で開かれた「公害被害者総行動決起集会」では、財界がねらう「漁港の集約化」や「株式会社の参入」ではなく浜々の再生を求めて宮城県漁協理事長がはじめて訴え、「よみがえれ!有明海」訴訟の漁民原告たちが大漁旗を掲げて支える場面がありました。
豊漁を祝う大漁旗。深刻な被害とのたたかいを鼓舞する大漁旗。その旗の前に、「大連立」の企てや、諌早湾開門にあくまで抵抗する農水省「アセス素案」はあまりにも色あせています。そして「海のことは漁民にきけ」と、ともにたたかえることを心から誇りに思うのです。
6月27日。諌早の即時開門をめざす小長井・大浦漁民の長崎地裁判決が迫っています。(しんぶん赤旗 2011年6月15日)