厚労省「年内に検討会」

 広島県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会(高野正明会長)は13日、原爆投下直後に降った強い放射能を帯びた「黒い雨」の全降雨地域を、早急に第1種健康診断受診者証交付地域に指定するよう求める6350人分の陳情署名を厚生労働省に提出し、交渉しました。厚労省は被災者の高齢化と健康悪化を踏まえ、検討会を年内に開催すると回答しました。


 交渉は高野会長、牧野一見事務局長ら12人が行い、同省健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室の和田康紀室長が応対。日本共産党の井上哲士参院議員、仁比聡平前参院議員が同席しました。

 広島県と市が2008~09年度に実施した調査では、黒い雨の降雨地域が国指定地域の約6倍の範囲に広がり、「未指定地域住民は被爆者に匹敵する健康不良状態」と報告されていました。

 佐伯地区など4地域の代表らは、黒い雨の被害によって多くの家族をがんなどで失ったことや肝臓病などの合併症に苦しんでいる自身の被爆体験を切々と訴え、一刻も早い認定を求めました。また、国の認定基準の間違いは裁判により決着済みで、それを踏まえ広島県が実態の再調査をしたものであり尊重すべきだと迫りました。

 高野会長らは広島の原爆被害問題に明るい学者の意見を聞くこと、黒い雨や胎内被爆に苦しんでいる被害者の声を聞くように求めました。

 井上議員は「広島県、市の調査結果を重く受けとめ、一刻も早く指定を」と訴えました。

 第1種健康診断受診者証 原子爆弾が投下された際、被爆者援護法施行令に規定されている対象区域にいた人または当時、その人の胎児であった人は、第1種健康診断受診者証の交付を受けて、被爆者に準じた健康診断を受けることができます。国は1976年に「黒い雨」の一部降雨地域を第1種健康診断受診者証交付地域に指定。しかし、その直後から、線引きが原爆被害の実態を反映していないとの被災者の声が出て、地域拡大を求める住民の運動や自治体首長の政府への要望が行われてきました。(しんぶん赤旗 2010年12月15日)