○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
私は、諫早湾干拓事業の潮受け堤防の排水門開門について今日お尋ねしたいと思っております。
まず、これまで農林水産省が開門に後ろ向きの理由の一つとして挙げてきた背後低平地の排水不良や洪水時の湛水被害についてお尋ねしたいと思います。
お手元に今資料をお配りをしておりますけれども、この一枚目は、一九八二年から一九九九年の間に背後地で行われた防災対策事業について、昨年の六月、公共事業チェック議員の会の求めに対して、農水省が精査の上お出しになられたものでございます。


これを地図に場所を落としていただきましたものが二枚目と三枚目なんですが、この諫早市が行ったポンプ場の整備が三枚目ですが、これは、御覧のように、低平地というよりは諫早の中心市街に接する部分、半造川沿いに必要なポンプ場が整備をされているということでございまして、農水省が補助をして県が設置をしている上の排水ポンプというのは、二枚目の位置図の①から⑥というふうに設置をされています。
これは、現地でいいますと、小野平野、小野地区と呼ばれるところに言わば集中して、あるいは本明川の河口域のところに整備をされていることが一目瞭然だと思うんですね。この①から⑥は排水ポンプ、排水機場を示したものですけれども、これと併せてかんがい排水事業あるいは排水対策特別事業などが行われてまいりました。伺いますと、これまでの取組で、この小野地区についてはほぼ目標の整備は完了したというふうにお伺いをしております。
そこでお尋ねをしたいんですが、この小野地区ではどのような災害を想定して、どのような能力を目標として整備をしてきたのか、その進捗率はどれだけになっていますか。

○政府参考人(吉村馨君) まず、委員御指摘のとおり、これまで私どもとしても、これは県営の事業でございますので、県の要望を踏まえて事業を進めてきたところでございます。
その場合の考え方でございますけれども、これは地元からの要請に沿って、十年に一回から二十年に一回程度発生する降雨に対応できるような排水機能を付与すると、こういうことで対応してきているところでございます。

○仁比聡平君 進捗率についてはいかがですか。

○政府参考人(吉村馨君) 先ほど御答弁申し上げましたように、こういった排水対策事業につきましては、これは県が事業主体、この場合で申しますと長崎県が事業主体ということでございますので、国として具体の目標を定めて、その上でその進捗率をはじき出すということはいたしておりません。
ただ、先ほど申しましたように、地元から要請があり、また県からもそういった要請があれば、私どもとしては、地域の実情に合った排水改良が進められるように、先ほど委員からも御指摘もありました排特事業あるいは湛水防除事業といった補助事業を活用して対応していきたいというふうに考えているところでございます。

○仁比聡平君 県の方に私どもの議員がお尋ねをしたところでは、この小野地区における整備というのはほぼ完成をしてきているというふうに伺っております。こうした事業によりまして、小野地区全体に、この図面では分かりませんが、縦横の排水路が整備をされておりまして、これが整備されたことによって排水不良は改善されたというふうに伺っております。
ところが、この図面で言います⑥の排水機場が示されているところに南部堤防という文字がありまして、ここから南東側、ここが森山、旧森山地区の昭和に完成した旧干拓地でございます。あるいはさらに、有明川を挟んで吾妻町側、こうした地区には、この一九八二年以降の排水機場の整備というのは一切行われていないわけです。
ならば、この森山地区やそのお隣の吾妻の方の干拓でそうした要望がなかったのかというと、全くそうではないんですよね。私、強い要望が繰り返されてきたというふうに受け止めております。かなり以前から、諫早市からも背後地における排水対策の整備についてということで要望が上がっておりますし、今回県に確認をいたしましたら、その背後地域でも一時的に農地が冠水する状況が発生しているということで、かんがい排水事業、排水対策特別事業の要望が強く出されているわけです。
先ほど来、県の事業です、主体は県ですというお話なんですが、農水省として、国として、森山地区あるいは吾妻の地区でのこの要望、これはどういうふうに受け止めているのか、計画は持っているのか、お尋ねいたします。

○政府参考人(吉村馨君) 委員御指摘がございました森山地区あるいは吾妻地区におきましては、かなり古い時代の排水機場、これは整備をされた経緯はございます。ただ、現在でも森山町、諫早市の森山地区を中心に標高が海抜ゼロメートル以下の農地が三百ヘクタール程度存在しているというふうに承知をしておりまして、現在、調整池の水位をマイナス一メートルで管理をしているわけでございますけれども、集中豪雨時等には調整池の水位が高くなって、他地域と比較して排水が滞ることがあるというふうに聞いております。こういった状況を改善するために、森山町の地先の農家を中心に排水改良のための事業の要望があるというふうに長崎県から聞いております。
ただ、今委員が御指摘がございましたように、計画があるかということでございましたけれども、まだ具体の計画にはなっていないというふうに承知をしております。

○仁比聡平君 先週、この点、担当の課の方にレクを求めてみましたら、国としてどのような想定でどのような目標で整備をするのかというのは認識がないということを伺って、私は驚いたわけですね。
大臣、この問題について大臣と議論させていただくのは私は初めてでございますけれども、この諫早湾干拓事業の防災効果ということを農水省は一貫しておっしゃっておられて、この低平地の湛水被害あるいは排水不良、これどうするのかということを裁判でも国会でもずっと唱え続けておられるんですよね。ところが、小野についてはこういう事業を進めてきたけれども、森山についても吾妻についてもどんな要望があるかというのを私から問われて、その場ではよく知りませんと。そんなことで国としての責任が尽くされているとお思いなのかという、私はびっくりしているんですよね。
私、現地を訪れまして調査をさせていただきましたが、一つは、小野地区と同じように排水路と排水機場の整備を早くしてほしいという声を直接伺いました。森山地区にはこの南部堤防の陸側に仁反田川という県管理の川がございます。この仁反田川とそれから吾妻との境の有明川、この二つ以外には海に向かって縦に排水するその排水路がないんですね。これが洪水時に内水被害の原因になってきたのではないかと。特に、昭和三十年代にこの森山干拓は完成しているわけですが、その干拓の前に、それ以前にできた干拓地を守っていた堤防、旧堤防と申し上げておきますけれども、この旧堤防の山側と海側の間には排水路が通じていなくて、この旧堤防によって内水が排除されない、これを通してもらえば、二本ほど通してもらえばという具体的な声も伺いましたけれども、排水は大幅に改善されるという声でございました。
もう一つ私が紹介をしたいのは、近年、洪水時の湛水が引いていく時間が早くなったという実感はあるんだけれども、それは調整池のマイナス一メーター管理というよりも、仁反田川の整備、改修が進んだからだという実感をお持ちの方がいらっしゃいます。それは、湛水がいつも諫早湾からの潮に押されての排水不良なのではなくて、仁反田川や有明川の河川整備が遅れてきたことによって内水がはけないと。だから、これの整備が進んだことによってどんどんはけるようになったから引く時間が早くなったというんですね。
これ、私が直接伺った限りの声ですから、これが本当に現場で総意としてとか、あるいは科学的にとか、検証され尽くしたなんて私は申し上げるつもりはないんですけれども、こうした声も含めて県とともに要望を調査して、こうした事業は営農にも防災にもすぐに役立つわけですから、それこそ前倒しで今年度からすぐに事業を着手するべきだと思いますけれども、大臣、いかがですか。大臣、大臣。

○政府参考人(吉村馨君) 先ほど委員御指摘がありましたが、実は、私も現地に参りましたときに森山の地先のその排水の問題については直接要望を受けておりますので、要望を承知していないということではございません。ただ、先ほど申しましたように、現時点で、要望はございますけれども、具体の計画はまだ立っていないという状況であるということを申し上げたところでございます。ただ、私どもといたしましても、県からの要望に基づきまして、必要な排水対策が速やかに実施されるように支援していきたいという気持ちは持っております。

○国務大臣(石破茂君) 今局長からお答えをしたとおりでございます。現場の実情というものは知らないということではあってはなりませんので、局長も現地に参りました、担当者も現地との連絡をよく密にしていかねばなりません。
これは、地元からの御申請が上がってこなければ事業は実施ができないわけでございますので、前倒しということは地元から上がってくればもちろん私ども真摯にそれに対応していかねばなりません。現時点で地元でこれをどのような形で申請をするかということについて御議論が行われているのかもしれませんですけれども、私ども、事業の申請が上がってきましたときに、その効果の発現が早かるべく努力をするのは当然のことだというふうに承知をいたしておるところでございます。

○仁比聡平君 県の事業ということになりますから、県から要望が上がれば速やかに今大臣もおっしゃられたような形で取り組んでいただきたいと私からもお願いをしておきます。
加えて、この仁反田川の河口に、これは局長は御存じかと思いますけれども、万灯樋門という新しい樋門が平成十六年に完成しております。これは県の土木事務所の管理のようですから、むしろ国交省の方の御縁なのかもしれないんですけれども、ここに排水機場も設置をされているわけですね。この樋門はモーターで駆動して県が管理しているわけです。この有明海とりわけ諫早湾あるいは調整池の開門をどうするのかということの議論の際に、この樋門の管理を潮汐の干満の差が大変激しい中で毎日行うことは大変だという議論があるわけですね。この樋門は、直接調整池に接する樋門というのはこれは数に限りがありますから、ここをこの万灯樋門と同様にモーター駆動のものにして行政が一元的に管理するというふうにすればこの樋門の管理というのは随分楽になるんじゃないか、営農者の皆さんにとってですね。
加えて、みお筋、水路を確保するということも排水の上では大事なわけですけれども、この南部堤防と森山干拓の間の水路は、ここは中央干拓地の整備に伴ってきちんとした整備が行われまして、ここ水路、十分確保されているわけですよ。だから、先ほどの地元の方がおっしゃるように、はけが良くなったということだと思うんです。そのみお筋の確保も、この場所やあるいは佐賀県や福岡県なんかでやられているように、人力に頼るんじゃなくて必要ならば重機を入れてそういう形で整備するというふうにすれば営農者の方々、地元の例えば土地改良区や農協の皆さんの御苦労というのは随分負担が軽減されるんじゃないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(石破茂君) 重機でどうなのだという御指摘でございます。
河口部の排水樋門では、潮受け堤防の閉め切り以前には潮汐の影響により前面に潟土が堆積しやすく軟弱な泥土であるところから、重機による除去も困難な状況でございました。ですから、ずぶずぶという、変な言い方ですけれども、そうであるので重機が入っても沈んじゃうというようなことでしたから、人力によってみずみちを確保したということがございました。
このため、潮受け堤防を建設をし、調整池の水位を標高マイナス一メートルに管理をすることによりまして、現在では定期的な潟土の除去が必要がない、そういう状況になっておるわけでございます。
今後、潮汐の影響により調整池内の排水樋門等の前面に潟土が堆積するというような影響が生ずる可能性というものは否定ができないわけでございますので、開門調査のための環境アセスにおいて、開門方法に応じて排水樋門の潟土堆積による機能障害の程度を予測しなければならない、それと同時に、これらの影響を極力回避、低減する措置についても併せて検討したいと、このように考えておるところでございます。

○仁比聡平君 大臣、一問目で申し上げた駆動式の樋門ということを検討してはどうかという点はいかがです。

○政府参考人(吉村馨君) まず、これは委員の御指摘の点は、開門を言わばした場合のことを念頭に置いているのではないかというふうに考えているところでありますけれども、開門によって調整池の水位が潮汐に連動して変動するということになりますれば、低平地の排水に影響が生じる可能性はあるというふうに考えております。
そのときにどういう対策を取るかということでございますけれども、これについては、開門調査のための環境アセスメントにおきまして、開門方法に応じて数値シミュレーションによりまして、洪水期における調整池、背後地の水位、洪水期と申しましても、これは通常の年に雨の多い時期というものでございますけれども、そういった時期の水位を予測した上で、農地、それから排水樋門、まさに委員の御指摘になった排水樋門ですね、これに対する浸水、湛水、それから被害の程度、これを定量的に予測をまずいたしたいというふうに思っております。
そして、その予測の上に立って、これらの影響を極力回避、低減する措置についても併せて検討するということでございまして、委員御指摘のモーターで駆動するような形というのも、当然、その一つの形として検討の対象になるというふうに考えております。

○仁比聡平君 整備の手法としては駆動式はあり得るということを今局長はおっしゃったんですけれども、その前提としてアセスが必要だというのは僕は理解がいかないんですよ。
万灯樋門は、これは仁反田川の河口のところで、これは調整池からの影響を遮断するために造られているわけですよね、平成十六年に。この干拓地のほかの樋門だって重要なところはそうしたらいいじゃないですか。
だって、これはもちろん私は開門をすべきだという立場でございますけれども、洪水時には湛水被害が起こっているわけでしょう、マイナス一メーターの管理の後にも。そのときには閉めた上で内水を排除しなきゃいけないじゃないですか。だから樋門が要るじゃないですか。そうした事業を何でそんな先延ばしにしようとするのかというのが全く理解がいかないんですよね。どうですか、大臣。大臣。

○国務大臣(石破茂君) それは、今委員の御指摘そのものだけを聞けば、なるほどそうかねという気がしないわけでは正直言ってございません。
しかしながら、アセスというのは、いろんな状況において何が起こるか、それが相互に連関をしてどのような状況が現出するかということを全部総合的にあらゆる観点から行う、これは別にこの諫早に限らず、アセスメントというのはそういうものでございます。
そのように考えてまいりますと、アセスメントをするということと今委員の御指摘のことが全くセパレートして議論ができるかといえば、必ずしもそういうものでもないだろうと。すべてのものが連関してアセスというのは行うわけでございまして、それのみを外して議論をするということは余り適切ではないだろうと。そして、そのときにどういうような状況が起きるかということも、二十年に一回とか、あるいは場合によっては三十年に一回、そういうものも想定をしながらやっていくことになるとするならば、実際にそうでございますが、更に総合的なアセスメントというものがあらゆる観点から必要になるというふうに私は考えております。

○仁比聡平君 それはおかしいんじゃないですか。
だって、地元の要望をよく受け止めて、かんがい排水事業だとかあるいは排特事業だとか、こういうようなものはすぐにでもやりたいとおっしゃっているわけじゃないですか。その中で樋門だとか排水機場だとかというのは、それは当然含まれてくる話でしょう。それを、アセス、それも三年だとか六年掛かるかみたいなことが言われているようなことにかからしめるのは、私は逆に営農者の皆さんの要求も後回しにするものだと、そんなものはアセスの名に値しないと私は思うんですよね。
大臣、時間がなくなりましたから一問だけお尋ねしたいんですが、予算委員会で、アセスをいつまでもやるなんというようなことは、予算委員会ではないか、いつまでもやるなんということはあってはならないとおっしゃっているでしょう。総理も早くに結論を出すというような趣旨の御答弁をされてきました。これ、今日お伺いすると、その必要な事業も何だかその先に先送りするかのような、そんな議論に聞こえるんですが、大臣はどんなおつもりなんですか。

○国務大臣(石破茂君) それは、県が必要であるということで申請が上がってくれば私どもとしてそれに真摯に対応しなければならないというのは先ほど答弁を申し上げたとおりでございます。
そしてまた、アセスというものを、不必要にという言い方は良くないのかもしれません、ああだこうだ理由を言いながら引き延ばすつもりは私どもとしては全くないと。アセスを行うのにこれは必要な期間というのは、それは環境省において定められているものであって、それをすっ飛ばして短くするなんということを申し上げるつもりは、アセスの正当性に影響を与えますから、そんなことを言うつもりは私は全くないのですが、不必要に延ばす必要は全くなくて、どうすれば早くアセスが行われるかということについては、それはもう最大限の努力をし、きちんとしたアセスの下に今後の対応を検討していかねばならないということを申し上げたものでございます。

○仁比聡平君 どうすれば早くできるかといえば、これまでこの海域において調査をされてきたデータは、これは過去のデータはたくさんあるわけで、これについて今後検討に使用することについて関係者は異論ないわけですよ。ですから、これまでのデータを前提に関係者がきちんと合意形成をしていくことのできる、そういう開かれた協議の場を私は継続して持っていくべきことだと思います。
今、意見の聴取があっていますから、大臣、その後決断をしていかれるんでしょうけれども、いたずらに長期にアセスをやるというんじゃなくて、それは関係者の意見をきちんと聴いて合意を形成する、そして、今の防災の問題も含めて、あるいは代替水源の問題もそうですよ、やるべきことは早くやる、着手するということが大臣に求められている、それが昨年六月の佐賀地裁判決を受けて大臣が開門アセスをする、そういうふうに述べられたその本来の姿になるのではないかと私は思います。
強くそのことを求めて、質問時間終わりましたから、質問を終わります。