「原爆症認定訴訟で本日、国の18連敗目となる東京高裁判決が下された。線引きのない被爆の実相に即した一人残らずの可括解決を強く求める」

日本共産党の仁比聡平議員は5月28日の参院予算委員会で、原爆症認定問題の全面解決に向けた政治決断を政府に迫りました。(会議録全文→)

仁比氏は、四歳の時に広島で入市被爆し、二年前にがんで亡くなった斉藤泰子さんの話を紹介し、「全国三百六人の原告のうち、六十八人がすでに無念のまま他界している。これ以上被爆者を苦しめてはならない」と強しましました。

河村建夫官房長官は「一連の司法判断を踏まえ、その内容を精査して、現行法の見直しを含め、可能な限り早期解決に向けて必要な対応を検討する」と答えました。

仁比氏は麻生太郎首相に対し、「オバマ米大統領の『核兵器のない世界』演説を受け、世界は動き始めている。被爆国の首相として、ふさわしいイニシアチプを発揮する上でも、原告・被爆者の方々と直接会い、被爆の実相と核兵器廃絶への思いを直接受け止めるベきだ」と強く求めました。

首相は、早期解決に向けた姿勢を示しましたが、面会については答えませんでした。(2009年5月29日(金)「しんぶん赤旗」)

原爆症「基準に欠陥」/新たに9人認定/原告18連勝 国に見直し迫る/東京高裁

原爆症認定をめぐり、東京都や茨城県の被爆者三十人(うち十四人死亡)が申請の却下処分取り消しを求めた集団訴訟の控訴審判決で、東京高裁(稲田龍樹裁判長)は5月28日、新基準で未認定だった十人のうち九人について却下処分を取り消し、原爆症と認める判決を出しました。うち二人は一審で敗訴しており、逆転勝訴です。残る二十人は新基準で認定されており、これで三十人中二十九人が原爆症と認められました。

一連の訴訟で国側は十八連敗となりました。原告側は基準の再改定と原告全員の救済による全面解決を求めており、国は、同高裁判決をみて全面解決に向けた政治決断を行うとしています。

記者会見で東京弁護団の高見沢昭治団長は「これまでの判決の集大成といえる判決。政治解決の指針となるものだ」と評価。全国原告団の山本英典団長は「非常にうれしいが、原告全員が救済されるまでたたかいは終わらない」と語りました。

判決は、肝機能障害と甲状腺機能低下症の二つの疾病には原爆放射線と関連性があるものと考えて認定審査にあたるべきだと指摘。審査の方針について、基準から二疾病を排除している点や、残留放射線や内部被曝(ひばく)による被曝線量評価の不十分さなどで問題点があり、「原爆症認定の判断基準として適格性を欠く」としました。

そのうえで、二疾病の原告や、がんで被爆距離が積極認定の範囲外となっている原告などを原爆症と認めました。原爆投下から十三日後に広島市に入り、がんを発症した一人については、放射線被曝の程度が低いとして、請求を認めませんでした。

政府は政治決断を/志位委員長強く求める

日本共産党の志位和夫委員長は二十八日の記者会見で、原爆症認定訴訟で東京高裁が原告勝訴の判決を出したことについて、「非常に重要な判決だ。政府は判決を重く受け止め、全員一括救済の政治決断を下すべきだ」と強く求めました。

志位氏は、今回の判決について、「国の審査方針に欠陥があり、判断基準それ自体に合理性を欠くと認定した。審査の基準の見直しを求め、訴訟の全面解決への指針を示す中身になっている」と意義を強調。「長いあいだたたかい、“もう待てない”という原告の方々の思いを政府は受け止めるべきだ」と述べました。(2009年5月29日(金)「しんぶん赤旗」)