決算委員会20080418
第169回国会 参議院決算委員会 第3号
2008年4月18日 仁比聡平参議院議員 |
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
私は、米軍機の低空飛行と日米合意についてお尋ねしたいと思います。
昨年十二月七日、広島市で午後一時過ぎ、呉市で午後三時ころ、それぞれの上空をジェット軍用機が爆音を響かせ飛行するという事態が起こりました。私の十 二月二十七日付けの質問主意書に対して一月十一日付けの答弁書は、「米側から、お尋ねの日時の間に、米軍所属の航空機が広島市及び呉市上空を高度約千五百 フィート以上で通過したとの説明を受けているが、航空機の所属等の詳細については、米軍の運用にかかわる問題であり、政府として承知していない。」と述べ ています。この答弁書をいただいて、私、どうしてこういう答弁しかできないんだろうかと改めて思いました。
お手元に資料をお配りをしているかと思うんですが、これは、岩国基地の拡張強化に反対する広島県西部住民の会、米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連 絡会、この両事務局が調査をされた目撃証言、爆音情報、これを地図に落としまして、この問題の機体の飛行経路を示したものでございます。これを御覧いただ きますように、この機体は、米軍機は、岩国基地のございます広島湾から広島市の上空を南西から北東方向に飛んで、恐らく広島市北部で8の字を描いて、再び 安佐南区の北西から南東方向に飛んでいったということかと思うわけです。
そこで、まず最低安全高度についてお伺いをしたいと思うんですけれども、質問主意書の答弁に言います千五百フィート以上というのは、これは約四百五十 メートルになります。ですけれども、最低安全高度というのは海抜ではございません。国土交通省航空局長おいでかと思いますが、航空法施行規則の百七十四条 一号のイはどのように規制をしていますか。
○政府参考人(鈴木久泰君) お答えいたします。
航空法施行規則第百七十四条第一号イの規定は、人又は家屋の密集している地域の上空にあっては、最低安全高度は、当該航空機を中心として水平距離六百 メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度以下の高度までは飛行してはならないという規定でございます。
○仁比聡平君 私は現地で、この図面でいいますとちょうど破線が実線になる辺り、ここで目撃者の方に直接お話を伺いました。この方は、雲の 切れ間からいきなり米軍機が現れて、まるでエスティマのように大きく見えたとおっしゃっておりましたけれども、鳥肌が立って圧倒されたそうです。機体番号 や機長も見えそうなほどの高さだったとおっしゃった上で、ちょうどその北側に権現山という山があるんです。標高が三百九十七・四メートルで、頂上近くには テレビ塔のアンテナがある山ですが、その山頂よりも低いところを飛んだように見えたとおっしゃっているんですね。
今、航空局長からございましたように、飛行する米軍機から見て最も高い障害物、つまりこの権現山より三百メートル上、すなわち七百メートル以上でなければ最低安全高度を守ったとは言えないということはこれは明らかでございます。
平成十一年の日米合意は、在日米軍は低空飛行訓練が日本の地元住民に与える影響を最小限にする、人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物、学校や病院 などですが、これには妥当な考慮を払うとした上で、米軍は日本の航空法により規定される最低高度基準を用いているとしております。
そこで高村大臣、この飛行は日米合意に反するのではないんでしょうか。大臣。
○国務大臣(高村正彦君) 日米両政府は、日米地位協定の運用改善として、平成十一年一月に、低空飛行訓練に関する合同委合意に合意をいた しました。その中で、在日米軍は、国際民間航空機関や日本の航空法により規定されている最低安全高度と同一の飛行高度規制を適用していることとされている わけであります。この点、国際民間航空機関、ICAOや我が国の航空法により規定される最低安全高度は、人口密集地では付近の最も高い障害物の上端から三 百メートル、その他の地域では地表から百五十メートルとなっております。
御指摘の米軍所属の航空機について米側に照会したところ、米側から、広島市及び呉市上空を高度約千五百フィート、すなわち約四百七十五メートル以上で通 過したとの説明を受けております。したがって、政府としては、米側の説明を踏まえれば、御指摘の飛行は在日米軍による低空飛行訓練についての平成十一年一 月十四日の日米合同委員会合意に反しているものではないと認識していますと、こういう説明を事務方から受けているところでございます。
今の委員の御説明を、私はちょっとこの広島の地理的感覚が分かりませんので、ちょっとそごがあるかなと感じましたけれども、広島の、どこがどういうもの があって、どこを通ったかということは正確に分かりませんが、現時点で私が事務方から受けている説明は今申し上げたことでございます。
○仁比聡平君 大臣が今、私の質問といいますか紹介とそごがあるかもしれないとおっしゃったとおりだと私は思うんですよね。つまり、米側は 千五百フィート以上ですから最低安全高度を守ったというふうに説明をしたのかもしれないけれども、実際にはこの権現山という山があって、そこよりも低く飛 んでいるように見えたという目撃証言が幾つもあるんですよ。そうであれば、航空法の規則は守られていないということになります。
安保や地位協定や、あるいはこの航空法の八十一条を適用除外にしているというような問題については、私と大臣、少し立場が違うのかもしれないけれども、 低空飛行の問題というのは、これは事実の問題が大変大事、事実がどうだったのかということが問題なのだと思うんです。そういった意味で、この事実がどう だったのかということをしっかり調査することが必要だと思うんですね。
広島市民の皆さんから、今御紹介した市民団体は、落ちてくるのかと思って鳥肌が立った、中学校の真上を飛んでいったと、余りに怖かったので機体を見たの に形が思い出せないといった恐怖や不安の声が次々と寄せられました。広島市や県に対しても問い合わせや抗議が殺到しましたし、写真を撮られた方も幾人もい らっしゃるわけです。
防衛大臣に、石破大臣にお尋ねしたいんですが、防衛省はこの飛行があった十二月七日以降、飛行高度だとか被害や苦情を、目撃情報について調査をされてき たのか、米軍あるいは米側がどう説明するかは別として、市や県への苦情の内容や現場の調査を行うのが私は主権国家として当然のことではないかと思います が、いかがでしょう。
○国務大臣(石破茂君) 私どもとして、現地における調査は行っておりません。十二月七日の米軍機の飛行、御指摘の飛行でございますが、 中・四国防衛局では四十件の苦情を受けております。また、すべての苦情を受けておるわけではございませんので、つまり防衛局に来たものだけではございませ んので、関係自治体、これは広島県になりますが、との間でどのような状況であったかを確認し、私どもとしても把握をしておるところでございます。
私ども本省といたしまして、全国から報告されました低空飛行に関する騒音苦情等の状況は集計をし、おおむね四半期ごとに在日米空軍に通知をいたしますと ともに申入れを行っておるところでございます。各地におきましてそのような低空飛行による苦情が発生をした場合、必要に応じ、私どもの本省から個別に第五 空軍、すなわち在日米空軍に申入れを行っているところでございます。
私自身、この低空飛行というのに実際遭遇したことがございまして、私の選挙区、鳥取県でございますが、それは本当に怖い、恐怖を感じる、いきなり現れ て、いきなり低空で飛行してということでございます。もちろん、それは遊びや冗談でやっておるわけではございませんで、その必要性によってやっているもの であり、米軍自体も命懸けでやっておるものでございますが、しかしながら、それを受ける側として本当に物すごい恐怖を感じるということは、私自身、身を もって体験をしておることでございます。
今申し上げましたように、主権国家としてきちんとした合意が遵守されるようにということは、その都度きちんと申し入れることは当然であり、私どもとしても、今後もそれに努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 石破大臣がそのような思いでおられるならなおのこと、この広島の件について、もうしっかり調査をするべきではないかと思うんですね。
参考までにといいますか、元々墜落やガラスが割れるといった物的被害が出なければ、どんな騒音や墜落の恐怖があっても被害ではないというようなお立場で はそもそもないと思うんです。防衛省が、在日米海軍司令官あてに今年の一月十七日付けで出されている要請文などを拝見しましても、精神的な苦痛を、被害と いいますか苦情といいますか、として受け止めて、それを踏まえて遺憾の意を表し、最小限にするように米側に申入れをしておられるわけですね。
この広島の件においても多数の住民の声をしっかりつかんで、その精神的苦痛を踏まえた上で米側に対していくということが、私、当然だと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(石破茂君) 基本的に委員のおっしゃるとおりだと認識をいたしております。また、一月十一日付けで知事及び広島市長から要請文書もちょうだいをしておるところでございます。
そこの内容はもう委員よく御案内のとおりでございまして、当省としてこれを極めて重要なものとして受け止めました上で、本年一月十六日、地方協力局補償 課長から在日米軍司令部運用部長に対しまして、低空飛行訓練についての合同委員会の合意事項の下、安全面に最大限の配慮を払い、地元住民の方々に与える影 響を最小限にとどめるよう申し入れたところでございます。その後も機会をとらえて米軍に申入れを行っておることでございまして、これだけ多くの方々から苦 情が寄せられるということは、それはそれなりのものがあるのだろうと。断定的なことは申し上げられませんが、これだけの方々がそのような苦情を寄せられた ということ、そして広島県知事、広島市長からもそのような申入れが行われたということは、私どもは極めて重要なものだと考えております。
申入れを行っておりますが、本当に今後きちんと遵守され、住民の方々に恐怖、不安を与えないようにしていくのは日本国政府の責任であると考えております。
○仁比聡平君 であれば、本当にしっかりした調査を今からでも行っていただきたいということを改めて強く求めておきたいと思うんです。
今大臣からもございましたけれども、県知事、市長、それぞれの抗議文も米軍側に出されているんですが、今日までのところ、アメリカからはなしのつぶてと いうことになっているかと思います。一体国が何をやってきたのかということで、防衛省から、十二月七日の問題の飛行の後に、地方防衛局が岩国基地に岩国所 属の米軍機ではないかどうかということを確認した後に、本省からアメリカの第五空軍司令部航空機関係部あてに、ほかの基地所属機ではないかということを確 認しようとしたんだけれども、何度電話を掛けても担当者が出張で連絡が取れなかったという説明を私は受けたんですが、大臣、これ事実ですか。
○国務大臣(石破茂君) 済みません、私自身ちょっと事実であるかどうか今確認をしておりません。ちょっと担当局長からお答えさせてよろしゅうございますか。もしそうであれば委員長から御指名いただきたいと存じます。
○政府参考人(地引良幸君) お答えさせていただきます。
今の御指摘のところは事実でございます。
○仁比聡平君 今大臣、そういうことなんですよ。十二月七日にこの飛行が起こって、もちろん地元は大騒ぎになっているわけですね。つまり、 正体不明なわけですよ。岩国じゃないということになったら、一体どこの飛行機なんだと。その時点では米軍機であることも分からないわけですから、まるで正 体不明機が飛んだのかというような話になっている。だから防衛省も米軍に尋ねられたんだろうけれども、何度電話を掛けても担当者が出張で連絡が取れなかっ たというのは一体どうなっているのかと。これ実は、クリスマス休暇でいなかったという、そんな話まであるんですよね。
日米合意にいう苦情処理のための連絡メカニズム、これを充実させていくという議論がありますけれど、米軍担当者が出張中なら、私が質問主意書を出した十 二月の二十七日以降に、外務省がやっとアメリカ大使館とやり取りをするまで連絡すら取れないというほどにお粗末なものなのかということがこの件でも問われ ていると思うんですね。
防衛省が、相手がそんなような状態で連絡が取れないとしても、私、これここの空域は岩国が管制しているわけで、岩国の管制に尋ねればどこの飛行機か分かったんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
○政府参考人(地引良幸君) お答えさせていただきます。
岩国の管制には確認しておりますけれども、岩国ではないというふうな回答を得ているところでございます。
○仁比聡平君 いや、岩国の部隊に確認したら自分のところの部隊の所属機は飛んでいませんよというのはそれは分かるでしょうが、管制コント ロールを岩国基地がやっておるわけですよね、そしたらそこのレーダーには映っているでしょう。まさか正体不明機だったら、そこを飛んでいるはずがないわけ ですから、私は、こういった場合に正体不明機であるという状態を一か月近く置いておくようなことはせずに、きちんと調べるべきだと強く申し上げておきたい と思うわけです。そんなようなていたらくで政府責任が果たされているとは私は言えないと思います。
資料をもう一度御覧いただければと思うんですが、高村大臣、この8の字のように広島市上空を飛んでいるわけですけれども、ここの、地図で言いますと南の 方に原爆ドームの写真を貼り付けておりますが、ここが爆心地になるわけです。まるで爆心地をへいげいするかのような、そういう飛び方だという声がございま す。占領意識の表れなのではないのかと、厳しく怒りの声を私に語った方もいらっしゃいました。
広島市長の抗議文の中では、人類史上初の被爆都市であり、世界恒久平和の実現を訴え続けている本市の上空を、軍用機が市民に不安を与える形で飛行するということは、市民感情からしても断じて容認できるものではないと、厳重に抗議されているんですね。
この機体が、被爆地広島市の上空で何の訓練をしたのか、訓練でもないならなぜ飛んだのか、この飛行目的はいまだに明らかではないわけです。これをアメリカ側にただして明らかにするべきだと思いますが、高村大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(高村正彦君) 在日米軍は日米安保条約の目的達成のために所要の活動を行っているものと認識をしておりますが、本件米軍機の飛行目的等の詳細については、米軍の運用にかかわる問題であり、政府としては承知をしておりません。
委員がこういうふうな問題提起している以上、米側にもう一回聞いてみたいと思います。
○仁比聡平君 高村大臣はこの日米合意が成立したというか、実ったときの担当大臣で、たしか、違いましたですか、であったかなというふうに 私は思っていたんですが、もう一度聞いてみたいとおっしゃった今の答弁、大変重いと思うんですね。運用だから分からないでいいんだという話になってしまう と、米軍機が飛ぶ以上何でもかんでもすべて一切合財が運用で、もう手を出すなという話になってしまうと思うんですよ。そういう立場を両大臣お取りにはなら ない、日本政府がそんな立場を取らないということを私はお願いをしたいと思うんですね。
被爆国の外相として、目的すら今のところ国会でも明らかにできていない、そういった飛行を米軍機が行ったと、爆心地の上空を、そのことをどう思われますか。
○国務大臣(高村正彦君) 基本的には、米軍の運用というのは教えないんですよ、基本的には。ただ、場合によっては、我々としてもどうしても知りたいというとき聞くということはあり得ることだと思うので、もう一度聞いてみたいと、こういうことを先ほど申し上げたわけであります。
爆心地の方たちの特別の感情というのは、それは当然あるんだろうと、こういうふうにも思います。思います。ただ、そのことで、じゃ爆心地、広島上空だから絶対にいけないのかとか、そういうことになるかどうかということについてもいろいろ考えてみたいと、こう思います。
○仁比聡平君 市民感情からしても断じて容認できるものではないという、この市の抗議文というのは私は大変重いと思うんですね。考えられるという際に、そのことをよく考えていただきたいと思います。
この件について様々伺いたいことがまだあるわけですけれども、時間がございませんので、この市民団体の調査で、この機体は厚木基地所属の空母艦載機 EA6Bプラウラーであることは私は明らかだというふうに思っております。この部隊がどれほど横暴かということを最後お尋ねしたいわけですね。
我が党の塩川鉄也衆議院議員の要求で提出をされました資料によりますと、群馬で平成十八年の五月の二十三日付け以来、防衛省の関係各機関から、本年一月 十四日以降の訓練にかかわるまで少なくとも六回というか六個の固まりといいますか、この訓練に対して文書要請が相次いでなされているわけです。例えば、昨 年四月二十三日の沼田市の上空で超音速で飛んでいるんですよ。ソニックブームで学校や民家の窓ガラスが割られると。計十三件の物的被害が出ております。
そういった被害が出ているからこそ、防衛省も文書で要請をしてきたのだろうと思うんですよね。厚木のNLPや夜間訓練、この横暴は言うまでもないわけ で、ところが、防衛省が幾ら何回要請文を出しても米軍は訓練やめないし、同じような訓練を繰り返している。日本の政府の要請すら聞かない米軍を私は信頼す るということにはならないと思うんですよ。もはや容認姿勢は許されないのではないでしょうか。米軍の低空飛行をやめさせて航空法八十一条を適用するべきだ と思いますけれども、いかがですか。
○委員長(小川敏夫君) どちらにですか。
○仁比聡平君 高村大臣。
○国務大臣(高村正彦君) 一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されません。したがっ て、航空法第八十一条は在日米軍に対しては適用されておりませんが、先ほどから申し上げているとおり、日米間では、日米地位協定の運用改善として平成十一 年に在日米軍による低空飛行訓練に係る合同委員会合意が行われました。したがって、既に米軍は、航空法により規定される最低安全高度を実質的に守ることに なっているわけであります。守ることになっている以上、守ってもらわなければいけないというのは当然のことだと思います。
○仁比聡平君 その守ってもらわなければならないものを守っていないという事態が私は相次いでいる、繰り返されてきているということを今日申し上げたつもりでございます。
日米合意の後、低空飛行は減るどころか合意違反がこれほど繰り返されてきている。それは合意そのものに実効性がないのではないかということを疑わせるものなんですね。
その下で、日米合意が結ばれた当時は山間地での低空飛行訓練が大変な問題になってきました。だけれども、それだけでなく、このような都市部の住宅密集地上での低空飛行訓練が、飛行がこれまでになく行われているようになってきているわけです。
その下で、この無法を繰り返してきた、例えばこの厚木の部隊、これが岩国の移転を強行されるなら、中・四国、あるいはイエロールートというのが指摘をされている九州、被害の激増は明らかでございまして、被害のたらい回しは許されないと思うんですね。
○委員長(小川敏夫君) 仁比君、質問時間を過ぎておりますので、まとめてください。
○仁比聡平君 実態調査と低空飛行の中止、そして地位協定の抜本的な改定を強く求めて、今日は質問を終わります。
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