第169回国会 参議院決算委員会 第6号
2008年5月12日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
若林大臣、お久しぶりでございます。
有明海漁業の再生について、まず大臣、有明海のアサリは四月から五月にかけて子を産む、これ地元では種を出すというような言い方をするそうなんですけれども、これ大臣、御存じでしたか。


○国務大臣(若林正俊君) そのようなことは承知しておりません。
○仁比聡平君 諫早湾内の小長井の漁民、それから湾口の大浦の漁民にせんだって伺いまして尋ねたところ、この諫早湾のアサリの種子ですね、 これかつては売るほど生まれていました。諫早湾干拓事業の前は、この自然に生まれる種子に加えて六月から七月の初夏に稚貝をまいて、翌年の二月から五月、 六月にかけて収穫をしていたわけです。
ところが、干拓事業が始まりまして、特に九七年、平成九年のギロチンの後、初夏に稚貝をまいても、夏場のうち、九月までにはへい死してしまって、今現在 では秋、十月から十一月に大きい貝を入れて翌年の五月ころに収穫するしかないと。そういう形で、有明海、諫早湾のアサリ養殖のやり方というのは変わらざる を得なくなったということなんです。
それが、諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の短期開門調査が行われた二〇〇二年、平成十四年は、干拓の後は夏場で一〇〇%死んでしまっていたアサリが、 開門調査の初期に一時的には死んだんだけれども、一〇〇%は死なずに年を越して翌年の春、アサリが捕れたというわけですね。ある漁民の漁場では九〇%生き ていたというお話を伺いました。
これ、若林大臣、こうした漁民の実感にうそがあると思われますか。
○国務大臣(若林正俊君) うそがあるかどうかということを私が申し上げるわけにはいきませんけれども、佐賀県の有明水産振興センターが調 査をいたしておりますけれども、このセンターでの調査の結果によりますと、短期開門調査による調整池への海水の導入ということとの関係でいえば、諫早湾内 ではこの開門調査実施後に一定量のアサリのへい死が確認されておりまして、諫早湾内の漁業に対する影響はあったものというふうにこの調査の結果から判断し ているところでございます。
○仁比聡平君 今、大臣がお触れになった佐賀の有明水産振興センターの調査、これについては委員会に提出を求めたいと思いますが、局長、よろしいですか。
○政府参考人(中條康朗君) 確認でございますが、佐賀県の水産試験場……
○仁比聡平君 そう大臣おっしゃいました。
○政府参考人(中條康朗君) の報告でございますか。これはもう公表されているんじゃないかと思います。
○仁比聡平君 いやいや。大臣が今答弁の中でお触れになったから委員会に出してくださいと言っているんです。
○委員長(小川敏夫君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(小川敏夫君) 速記を起こしてください。
○国務大臣(若林正俊君) 申し訳ありません。
私が言いました佐賀県の有明水産振興センターの調査はタイラギの生息状況の調査でございまして、アサリについては、その調査結果ではございません。他の 判断としまして、開門調査後にアサリのへい死が確認されているということから諫早湾内の漁業に対して影響があったというふうに判断をしたというふうに申し 上げて、訂正したいと思います。
○仁比聡平君 大臣、今の答弁メモの読み違えなのかもしれませんけれども、御答弁は私はちょっといただけないです。他の判断によってというのは一体どういう意味なんですか、大臣。大臣。
○国務大臣(若林正俊君) 諫早湾内の漁業者につきまして、この短期開門調査は、委員御承知のとおりと思いますが、一日に二回、調整池から 諫早湾内に排水するとともに調整池内への海水の導入を繰り返すという形のものでございます。調整池から諫早湾内へ専ら排水を行う本来の水門操作とは異なっ て、諫早湾の干拓事業において想定していなかった水門の操作を行うという調査でありました。
○仁比聡平君 大臣、それ私の質問と違うじゃないですか。
○国務大臣(若林正俊君) そのために、開門、短期開門調査に先立った水質、潮流などのシミュレーションを行った結果、短期開門調査によっ て諫早湾内の漁業に影響を及ぼす可能性が想定されたところでございまして、このことから短期開門調査の前後において二枚貝等の生息状況調査等を実施したと ころ、アサリへのへい死率が一定量増加しているという事実が確認されております。
○仁比聡平君 大臣、私の質問に正面から、答弁メモの朗読ではなくてお答えいただきたいと思うんです。
他の判断によって確認されたとおっしゃるからその根拠を尋ねたんですけれども、今大臣がおっしゃったのは短期開門調査に向かっての農水省としてのシミュレーションの話なんですよね。
私は、諫早湾内のアサリが短期開門のときに被害を受けてないなんて言っていないんですよ。一時的にはそれは被害はあったかもしれないけれども、その前に は一〇〇%夏を越せなかったものが、ある漁民の漁場では九割方翌年まで生きていたと。これは干拓事業が始まった後にはなかったことなんだという漁民の実感 があるから、だからそれを否定するような材料があるんですかとお尋ねしているわけです。
私は多くの有明海漁業者から、この〇二年の短期開門調査が行われたときに久々にタイラギが立ったと、アサリが増えたと、カニが捕れたというような実感 を、これは有明海広いですから沿岸各地いろいろありますけれども、その多くの漁業者からそういう実感を聴いてまいりました。
局長に伺いますけれども、農水省はこの実感を否定する具体的な根拠をお持ちですか。
○政府参考人(中條康朗君) 特に具体的な調査等は行っておりませんけれども、今のところそういった報告は受けておりません。
○仁比聡平君 そのような具体的な根拠、データを持っていないということ自体が驚きじゃないですかね。
干拓事業について私と局長は立場は違うのかもしれませんけれども、だけれども、有明海漁業の再生、これは政府にとっても重要な政策課題なんじゃないんで すか。そうなら、一か月の短期開門でも漁業復活の兆しを感じたというこの漁民の実感を、私は、これからでも有明海沿岸各地で悉皆的に聴き取って、短期開門 の有明海漁業への影響、つまりこれがいい影響をもたらした部分があるのではないのかというこのことをきちんと検証するべきであると思うんです。
大臣、実際に短期開門調査をやりました。その中で、漁業者の中で諫早湾内でも有明海でもこれによって良くなったという声が実際にあるんですよ。これを聴き取って検証するっていうのは、大臣、当然だと思いませんか、大臣、大臣。なぜ、大臣に聞いている。
○委員長(小川敏夫君) 大臣、答弁できませんか。
○国務大臣(若林正俊君) 実際の農林水産省の方で行いました開門調査に伴うアサリ等の事前事後調査、その調査の結果などからそのように判 断しているものでございまして、さらに今この漁業者の実感からくるものについてどうだということについて言えば、私の方は、それについての調査は、平成十 四年の四月の二十二日から十一月二十九日までの期間におきます各時期別のアサリのへい死率などの調査からそのように判断しているものでございまして、その ようにお答えせざるを得ないわけであります。
○仁比聡平君 大臣、有明海の漁業を再生させたいというのは、これは農水省も同じ立場なんだと思うんですよね。で、その兆しがここにあっ たっていう声があるなら、それを受け止めるのは私は政府の責任だと思うんですよ。今大臣の答弁の中にあった、アサリのへい死率の調査というお話がございま した。この点については、短期開門調査に伴う湾内四漁協に対するアサリ被害の補償、これを実際にされたわけですけれども、その具体的な根拠を示す資料を国 会に提出するべきだということを我が党はかねてから求めてまいりました。被害補償をされたんですけれども、各漁業者ごとの配分とその根拠、被害状況調査の 報告書及びすべての調査票の提出が私は必要だと思います。
といいますのも、その被害調査の際に、死んだアサリの殻をよそから集めて写真を撮ったといった疑いが当の小長井の漁民から指摘をされているわけです。
委員長、今申し上げた資料を当委員会へ提出させることを求めたいと思います。
お計らいお願いします。
○委員長(小川敏夫君) ただいまの申出につきましては、後刻理事会で協議いたします。
○仁比聡平君 実際にそういった中で、農水省は、〇〇年から〇一年にかけてのノリ大凶作の後に、短期、中期、長期の開門調査を求めたノリ第 三者委員会の中長期開門調査、これをできないというふうに言い続けてこられたわけです。この点について、ノリ第三者委員会の会長をお務めになった清水誠東 大名誉教授は、中長期開門調査をやらない方向での農水省の検討会議の報告書を受けて、改めてその必要性を強調しておられるんですね。
西日本新聞の〇三年十二月二十六日の記事によりますと、教授はこう言っています。農水省の報告書を読むと、開けても分からないという言い方がいろんな箇 所で出てくる、海が元の状態に戻らない、要因は複合的という理由だが、我々はそれを承知の上で、検証は過去の事象ないし原状の再現を期待していないと書い たとおっしゃるんですね。つまり、少なくとも中長期開門調査をやれば、どういう変化があり、今後どうなるのかという有明海の環境に及ぼす影響の手掛かりは 得られるはずだ、検討会議はできる範囲で何かを得ようとの姿勢からほど遠いのではないかと、このように清水教授はおっしゃっているわけです。
私は、今有明海の再生というこの課題の上で求められているのは、この清水先生がおっしゃるとおりだと思うんですよ。できる範囲で何かを得ようという、そ の姿勢に立って、この有明海の漁業を良くするためにはどんなことができるのかという調査だと思うんですね。本当に有明海漁業の再生に真剣に向き合うのな ら、開門をしないという結論ありきではなくて、漁業者の実感をまずよく聞くべきではないでしょうか。大臣、もう一度お尋ねしたいと思います、大臣。
○国務大臣(若林正俊君) 委員も御承知のことと思いますけれども、この中長期の開門調査の実施につきましては、平成十六年五月に亀井農林水産大臣が判断といたしまして、中長期の開門調査に代えて有明海の再生に向けた調査、現地実証などを実施するというふうに決めたわけでございます。
それは、中長期開門調査の実施によってどのような成果が期待でき、どのような影響が生じ、これに対してどのような対策が必要になるかというようなことを 検討をし、また排水門を開けることによって被害が生ずることがないようにしながら調査を行うと、そういう必要が出てくるわけでありますが、このためには長 い歳月を要する、それでも成果について必ずしも明らかではないというような判断でございました。また、被害防止対策を講じて調査を行ったとしても、なお予 期し得ない被害が発生するおそれがあるというようなことを総合的に判断をした上で、平成十六年五月に農林水産大臣の判断として今申し上げたような判断をし たところでございます。
したがって、有明海の環境変化の仕組みに更なる解明のための調査でありますとか、有明海の環境改善を効果的に進めるための現地での対策の実証、調整池か らの排水などの抜本的な改善、こういったようなことを進めていくことといたしまして、漁業者の方々とは有明海再生の道筋などについて具体的な話合いを行い ながら今後の取組を進めてまいりたいと、このように考えているところでございます。
○仁比聡平君 今、大臣が中長期開門調査ができないという理由をまた繰り返して述べられたわけですけれども、私が言っているのはそうじゃな いんですよね。大臣の今の答弁の中にもありましたけれども、有明海の漁業再生の道筋を漁民、漁業者と話し合って具体的に考えていきたいとおっしゃるし、そ のための調査なんかは必要だというような趣旨のことをおっしゃるんですね。だったらば、短期開門のときに漁業の復活の兆しが見えたと、これを調査する、そ の漁民の実感をしっかり受け止めて調査するというのが当たり前じゃないですかということを私は申し上げている。
今日、委員各位のお手元に資料を配付いたしました。これは、先ほど大臣が答弁を間違えられました佐賀県の有明水産振興センター、ここが我が党の武藤明美 佐賀県会議員に提出をいただいたタイラギ生息状況の経年推移についての調査資料でございます。これはそれぞれの年の秋、九月ないし十一月に有明海の五十五 の地点でタイラギの個体数を調査したものですけれども、この調査の表にあるちょっと前ですが、八九年、平成元年に堤防工事が開始されて、平成五年、九三年 から九六年にかけては大量の海砂が採取が始まりました。それ以降、従来豊かなタイラギ漁場だった諫早湾の湾口部、この図面で言いますと左下の周辺になりま すけれども、ここではタイラギが壊滅しているわけです。平成九年、九七年の四月に潮受け堤防の潮止め、いわゆるギロチンが落とされて、その年はまだ諫早湾 の対岸に当たる有明海の東部に生息が確認されたけれども、翌平成十年度以降は壊滅状態になっています。
ところが、大臣、御覧いただけますか。平成十五年度、つまり平成十四年に短期開門が行われて、その翌年、その秋には御覧のようなたくさんの生息が確認されたんですよ。翌十六年度も一部それが残った。だが、十七年度以降は再び壊滅状態になっています。
これについて、タイラギの潜水漁業を営んでこられたある漁業者の方は、短期開門の海水交換によって調整池の水質が改善され、その後の一定期間は排水の水 質が以前より良かったので中央部そして東部に着床ができたんじゃないだろうか、タイラギの幼生が、というふうにおっしゃっているんですね。私は、この漁業 者の方のお話はなるほどというふうに思いました。
四月の三十日に、これまで沿岸四県の漁業者、市民が原告として闘われてきた、よみがえれ有明海訴訟に続いて、小長井、大浦の漁民が熾烈な提訴妨害を乗り 越えて開門を求めて新たに提訴したということは大臣も御存じかと思うんですが、それは小長井、大浦の漁民たちが諫早湾内、有明海の漁業を壊滅させたのは潮 受け堤防であって、開門なしには海は戻らないこと、言い換えれば開門すれば海は再生するということを一番よく知っていて確信しているからです。
この声にこたえて、開門しないということを先決のようにありきという態度を変えて真剣に検討し、中長期開門調査への政治決断をすべきだということを改めて強く求めておきたいと思います。
時間の関係で、もう一点今日聞いておきたいんですが、一方で、干拓農地では四月から営農が開始されました。その干拓地農業者の選考について、入植者の一 つに株式会社T・G・Fという会社がございます。ここは小江干拓地の一番国道に近いところに三十二ヘクタール、東京ドーム七個分に相当する広大な土地を リースを受けて入植をされました。登記簿を拝見しますと、この会社の設立は平成十九年、昨年一月十六日のことで、この干拓地の入植者募集が始まるわずか半 年前なんですね。そして、本店の所在地は、谷川建設グループの谷川商事、その大村支店の所在地と同一でございます。
役員を見ますと、設立時の五人の取締役の方々のうち、今日おいでいただきましたが、谷川政務官の御長男であり、谷川建設を始めグループ企業の代表取締役 を幾つもお務めになっておられる方がこのT・G・Fの代表取締役。そのような取締役のうちお二人は、その御長男の配偶者で、現長崎県知事金子原二郎さんの 御長女、そしてもうお一方は谷川政務官の御親族という、そういう役員でございます。
三月にこのように谷川政務官と県知事の親族が役員を務める会社が選考されたということが明らかになって、三月の二十日に今申し上げた三方は役員を辞任さ れて、その旨の登記がなされているんです。ですから、その時点では取締役は二人になったということになりますが、その方々を拝見しますと、お一人は谷川政 務官の御子息が辞任された後、代表取締役になっておられますけれども、この方は谷川政務官の政治資金管理団体、自民党長崎県第三支部の会計責任者をお務め の方で、長崎の材木業者団体というんでしょうか、ながさ木ネットという団体のホームページによりますと、谷川商事からこの業界団体に参加しておられます。 残るもう一人の方は、大村青年会議所のホームページを拝見しますと、青年会議所の総務広報委員会の委員長をお務めで、所属企業は株式会社谷川商事となって おります。その後、三月二十五日に別のもう一人の方が取締役に就任されたということなんですけれども。
そこで、農村振興局長にお尋ねします。
干拓地への入植の資格条件は、まず農業生産法人であることですね。農地法によりますと、農業生産法人の理事、株式会社の場合は取締役、これはその過半 数、つまりこのT・G・Fであれば五人のうちの三人がその法人の行う農業に常時従事する者、常時従事者でなければならない、かつ過半を占める取締役の過半 数、T・G・Fなら二人になるのかと思うんですけれども、その法人の行う農業に必要な農作業に政令で定める日数以上、これは原則百五十日以上となっていま す、年間従事しなければならないというふうにされている。
としますと、T・G・Fは、昨年一月の設立のときから入植を申請された時期、そして十二月二十五日に入植者として選考されたその過程でこの要件を満たし ていたんでしょうか。今私が申し上げるように、それぞれ谷川建設グループの会社の役員などを務められている。また、三月二十日にお三方が辞任された後に、 現在営農を開始していると思いますけれども、その要件の存否はどうなったのか、私はここを疑問に思うんですけれども、局長、いかがでしょう。
○政府参考人(中條康朗君) 基本的に、その入植者あるいは入植する法人の審査につきましては、これは県の方で行っておられておりまして、私が承知しますのは、その県からの間接的な情報の入手ということでお話をしたいと思います。
それぞれ入植を希望された方については県の方で営農の計画書をお求めのようでございますけれども、それによりますと、代表取締役をされている方につきま しては、日数ですね、年間百五十日とかあるいは百八十日、百八十日というようなことでございまして、私、現段階でこの方々が委員御指摘のように役員を継続 されているかどうか、ちょっとそこは確認しておりませんが、そういった報告をいただいております。
○仁比聡平君 時間が参りましたけれども、もし要件を満たしていなければ、農業生産法人としての資格が疑われるということになれば、選考の取消しを含めて私は整理がされるべきだと思うんです。
この干拓地の営農についてはリース方式という異例の方式が取られて、その事業のために長崎県が、県公社に対して完済まで百年近く掛かるという公金の貸付けを行いました。そこには政府系金融機関の融資が行われているわけですね。
委員長、今のこのT・G・Fが常時従事者の要件を含めて農業生産法人としての要件を満たしているのか、干拓農地の入植者としての資格条件を満たしていたのか、その詳細を政府が調査をして、当委員会に報告をさせるようお計らいいただきたいと思いますが、お願いします。
○委員長(小川敏夫君) ただいまの申出につきましても、後刻理事会で協議いたします。
○仁比聡平君 谷川政務官にこの経過についての関与をお尋ねしたいと思いましたけれども、時間が参りましたので今日は終わらざるを得ません。
以上で終わります。