保険法改正

仁比議員 参考人質疑


仁比聡平議員は5月27日の参院法務委員会で、生命保険や損害保険の契約などについて定める保険法の改正について参考人質疑をしました。

 

第169回国会 参議院法務委員会 第12号
2008年5月27日 仁比聡平参議院議員
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
三人の参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。
最初に、原参考人からお尋ねをしたいと思うんですけれども、保険商品をめぐる被害あるいはその相談や苦情が根雪のように存在する上に近年激増しているというそういう状況の中で、政府が、改善傾向にあるというふうに政府は言うけれども、だけれどもそうではないのじゃないのかと、構造的な問題であるという認識に欠けているのではないかというお話が先ほどございました。その点について、原参考人がずっと携わってこられて、この間の相談や苦情の激増というその原因をどのように考えられるか。これまでのお話の中で複雑化や多様化、あるいは変額個人年金保険についてのお話も少し触りがありましたけれども、そういった投資性の高いあるいは含むそういった商品などの問題も含めて、今の現状をどう認識していらっしゃるか、もう少し詳しくお話をいただければと思うんですけれども。


○参考人(原早苗君) 実は、各地に消費生活センターというのが五百か所ぐらいありますけれども、ここで集められた情報というのは国民生活センターのPIO―NETに情報集約をされているのですが、ここでの情報集約を見ますと、生命保険については毎年苦情とか相談の二十位辺りをずっと保持しているという感じなんですね。ですから、必ず存在をしているというような形でずっとありました。
今回の不払問題を契機にやはり増えている、特に倍増してきているというような感覚での増え方というのは、やはり皆さんが御自分の保険を、今回の不払問題とか、それから火災保険であれば払い過ぎの問題もありましたので、自分で見直しているということがあると思います。ですから、見直してみてこれはどうかなというふうに思われて相談をしていらっしゃるという、それが私は、すごく悪質な形がもっともっとはびこってきているという形ではなくて、自分のものを見直しているから増えているというのが割増しはされているというふうに感じております。
ただ、今、生保にしても損保にしても、それから医療保険をお売りになっていらっしゃる外資にしても、このやっぱり二年は、そうはいっても法規制にはならなくても御自分たちの自主規制で何とかこういった状況は改善しようというふうに思って努力はなさっていると思うんですね。ただ、その努力がちょっと二、三年たつと緊張の糸が切れたように元のもくあみというんでしょうかね、元の体質、構造のままにされてしまうと、私はやはり同じようなことが、特に高齢化する中では医療保険なんかを中心に、それから複雑な変額個人年金保険なんかで生じてくるのではないかというふうに感じております。
○仁比聡平君 その相談の激増というのは、つまりこれまで泣き寝入り、あるいは気付かずに本来受けられるべき保険金などを受け取られていなかった方がどれだけいらっしゃったかということの反映のようにも思うわけです。
そういった中で、先ほど、実務や訴訟の中での到達が後退することになりはしないかというお話を六点に整理をされてお話があったんですけれども、特にその中で原参考人が敷衍してお話をしておかれたい点があれば、どうぞ御紹介をいただきたいということと、その中で特に業法を含めての改正をという中で、約款の規制の見直しというお話がございました。契約法としての保険法をどう考えていくのかということを考えるときに、この約款を中心とした契約の在り方がどうあるべきなのかという議論は不即不離の関係にあると思うんですね。この点も含めて、原参考人のお考えをもう少し伺いたいと思うんですが。
○参考人(原早苗君) 最初の質問が……
○仁比聡平君 最初の質問は、その約款の件、このほかに特に敷衍してお話をいただける点があればということです。
○参考人(原早苗君) 大変恐縮です。
最初の、特に実務が後退しないかという点で懸念をしておりますのは、相談現場からの意見ということになりますが、同意のところです。同意は、やはり被保険者の保険を掛けられる側が同意をするということが保険の場合は原則です。ですから、同意を原則ということは今回の保険法でも確立をしているのですが、除外例というのが大変気になっておりまして、実際の実務の場面ではこの同意を取るというところは大変な作業なんですね。ですから、実際に検討をされているときでも、例えば家族で入っている保険のようなものを一人一人同意を取るのかというところがあって、やっぱりその辺りは何かもうちょっと簡易なことが考えられないかなという話はあったんですけれども、何かその話がどんどんどんどん広がっていって、同意を取らなくてもいいという範囲が今の実務レベルより広がり過ぎた。もう実際には、何というんでしょうか、そういった家族型以外のところではもうほとんど同意を取っていらっしゃるというような形だったのが、相続人が被保険者になるような場合は除外みたいな保険分類、ジャンルが出てきたというところで、消費者側も混乱をするし、実務でやってきた部分も、後退をすることはないかもしれませんけれども、根拠付けがちょっとないままになるというところは残念に思っております。
それから、約款なんですが、約款は商品そのものなんですよね。御覧になるとすごい複雑で大変分かりにくいものではあるんですが、今分かりやすくするということを努力はしておられますけれども、二つ問題があって、一つは内容が陳腐化しているということですね。
例えば手術をして、八十ぐらい手術の方法が書かれているんですけれども、今の時代にそぐわない。私が聞いた話では、扁桃腺の手術をしたんだけれども、扁桃腺の手術をして保険金給付を願い出たんだけれども、その約款には、何というかしら、その扁桃腺の手術の方法が昔からの方法しか書いていなかったもので、彼がやったその手術方法は記載していないので払われなかったんですよね。そういうふうにして、この約款内容が陳腐化しているということですね。
それから、約款は保険商品そのものになりますから、約款規制をというふうに言ったのは、私としてはやはり商品規制のところまで消費者の視点が及ぶということが必要だというふうに考えているということです。
○仁比聡平君 約款の公開の問題について私はちょっと調べていて、ホームページで主商品の約款を明らかにしているのはわずか四社にすぎないというのを知りまして改めてびっくりしたんですけど、これ公開されれば、先生方やあるいは消費者もじかに見ることもできるし、保険商品がどんなものかというその優位性を市場の中でもっと検討もできるのにという気もいたしますけれども、原参考人、いかがですか。
○参考人(原早苗君) 何かどんどん具体的な話が出てきて大変恐縮なのですけれども、おっしゃるとおりで、例えば、生命保険文化センターに参りますと、資料室があるのですけれども、約款が棚に置いてあるんですね。ですから、そこで見ることはできるんですけれども、持ち帰るとかコピーとか、何か大変それは難しくて、机も一つぐらいしか、二、三年前ですから、今ちょっと私が文句を言ったので変えられたかもしれませんが、非常に狭いスペースで、ですから私もなぜ公開しないのかな、公表しないのかというのは大変疑問に思っております。
○仁比聡平君 福田参考人にお尋ねしたいんですけれども、そういった問題状況の中で信義則的な一般条項の明文化が見送られたことについて、私法上の義務にも連結することを明確にすべきだったのではないかという御意見、私なるほどというふうに思っておりまして、保険契約をめぐっての相談や苦情を参考人がどんなふうに感じられて、そういった一般条項を明文化するならどのような具体的な効果が期待できるかという点で少しお話しいただければと思うんですけれども。
○参考人(福田弥夫君) いわゆる努力義務でございましたけれども、これを取っかかりにして、いろいろな保険契約者、保険会社、それぞれがいろいろな情報を出し合い、協力をし合いという一つの取っかかりに私はこれがなるものだというふうに理解していたんですね。ただ、一般条項ですので、それで制裁規定もないということですから、じゃどれだけメリットがあるのかと言われると、確かにそうなのかなとは思いますが、保険法典の中にそういうきちんと、アメリカでいうところのデューティー・ツー・コオペレートみたいなものがきちんと入れば、それはそれで保険契約の締結の段階から、募集、締結、そして支払の段階まで当事者が協力し合ってこれをやっていくんだということが明確になったと、そういう一つの取っかかりになったのではないかということで私は非常に残念に思っている次第でございます。
○仁比聡平君 もう一点、他人の生命に対する保険の問題で、被保険者の同意について、同意主義に立った上で書面同意を要件とすべきであるというお考えが先ほど示されたんですけれども、保険会社が行う団体定期保険において被保険者証の交付すら今現在なされていないという実務をどう考えるか。
それから、総合福祉型の、先ほどお話ありましたその主契約においても確かに通知同意ということが監督官庁としては求めているようなんですけれども、実際に現場の従業員、労働者の方々にお話を伺いますと、その通知同意すら全く実践されていないという声でございまして、その通知同意が実践されているのか否かということについて私、金融庁に尋ねましたら、そういった監督というか調査といいますか、これは行っていないというふうに言っているんですよ。元々、総合福祉型も、被保険者である従業員の同意というのは会社に対してなすことになっていて保険会社がじかに取るものではございませんですよね、先ほどもお話ありましたけれども。
こういった状況をどうお考えになるか。ちょっとやや実務的なんですけど、御意見、御感想ありましたら。
○参考人(福田弥夫君) ありがとうございます。
非常に難しい問題でして、まず被保険者証の問題ですけれども、これは外国法制では先ほど説明いたしましたように発行を義務付けている国もあると。日本でも発行して差し支えないとは思いますが、ただ保険法案ではこの被保険者証の交付は義務付けてはおらないわけです。
実際に、会社それぞれいろいろあるとは思うんですけれども、社内のいろいろなネットとかで契約内容を確認できるようになっている場合もあれば、労務担当の部署から契約内容がきちんと通知されているような場合もあると。そういうことを考えると、法律によって一律に交付義務を保険者に課すこともいかがなものであるかということなんだと思いますが、先ほど先生が御指摘のような事例がまかり通っているとすれば、それはこの団体保険における被保険者同意の本質を逸脱するようなものにつながってしまいますので、ここの条文では書き込んでいないけれども、是非監督法の方できちんとそのような指示、指導ができるようにすべきではないかというふうに考えます。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
最後に、小野岡参考人に、保険と共済の区別について考慮されるべき共済の特殊性あるいは理念は何なのかということでこれまで質問があっているわけですけれども、御経歴を拝見しますと、共済やあるいは全労済の運営に関してずっと頑張っておいでだと思うんですね。保険会社とは違う共済の役割ということを感じておられるんではないかと思うんですけれども、小野岡参考人のそういった意味での思いというか熱意というか、そういうふうな辺りもお聞かせいただければと思います。
○委員長(遠山清彦君) 小野岡参考人、簡潔にお述べください。
○参考人(小野岡正君) はい。
私ども先ほど申し上げさせていただきましたとおり、組合員の皆さんというのは大変いろんな層の方もございまして、そういった方々が参加して共同で運営しているということでございます。そういう組合員の方にいかに相互扶助的な保障を提供していくのかということが私どもの役割でございますので、言わば組合員の方に本当に合った保障をどうつくってそれを提供していくのかということについて、一生懸命これからも励んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
○仁比聡平君 ありがとうございました。