○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平です。
会派を代表して、災害対策基本法等改正案について質問いたします。
本改正案が、避難所の生活環境の改善とともに、壊れた自宅や車中泊など避難所以外の支援を明確に位置付け、特に福祉サービスの提供を災害救助法に明記することはとても大切です。
衆議院で、兵庫県立大学大学院教授の阪本真由美参考人は、高齢者、障害者が災害関連死に至るリスクは極めて高い、避難生活の環境を改善しない限り関連死を減らすことは困難、福祉支援が何より重要と指摘されましたが、そのとおりです。
防災担当大臣、災害によって高齢者、障害者を始め社会的に弱い立場に置かれている方々が直面する困難や要求をどのように捉え、福祉サービスの提供を明記する必要性、意義をどのように考えますか。
福祉的支援の重要性はかねて強く指摘されてきましたが、現実には極めて困難な状況が続いています。
能登半島地震から一年四か月。社会福祉士や介護福祉士など、DWAT、災害派遣福祉チームの活動の教訓や課題を、厚生労働大臣、どのように捉えていますか。
十三の障害者団体でつくる日本障害フォーラム、JDFは、昨年五月、七尾市和倉を拠点に能登半島地震支援センターの運営を開始され、奥能登六市町を中心に、被災した障害者のおうちの片付け支援、通院の送迎、買物などの移動支援、人手不足の福祉事業所へのスタッフ派遣、地域の自立支援協議会の運営支援まで、様々なニーズに対応してこられました。それらは全て無償というより手弁当、スタッフが所属する全国の福祉事業所に支えられたボランティアです。
私も二月に訪ね、お話を伺ってきましたが、本来、公的支援に移行していくべきなのに、支援の要請は減るどころか逆に増えている、終わりがないと感じると、被災地の現実がそれを許さない実情を教えてくださいました。
厚生労働大臣、こうした民間ボランティアの活動は、被災者の生活と権利を守るためになくてはならない役割を果たしています。どのようにニーズをつかみ、どのように支援することが必要かを学び、国こそが施策の充実で応える責任があるのではありませんか。
具体的に二点、伺います。
安心できる住まいの確保は切迫した課題です。
精神障害がある四十代の女性と七十代のお母さんの二人暮らしで、せっかく仮設住宅が当たったけれど、両隣が壁一枚。障害で大きな声がどうしても出てしまうのを気にされ、雨漏りする半壊のおうちでそのまま暮らしています。せめて仮設が二戸一で片方が外壁だったらよかったのにとおっしゃいますが、そのとおりです。仮設は車椅子では狭くて生活できないと、壊れた家に住み続けているケースもしばしばあると伺います。
他方で、都会に比べ、能登では地域の中に障害のある方々が一緒に暮らしている、支えられていると大変強く感じてこられたという言葉は印象的でした。視覚障害の方が隣のお店の方にいろんなことを手伝ってもらっている、避難もそうしたコミュニティーで支えられたというのです。障害者が住み慣れた地域、安心できる住まいで暮らす大切さを、厚労大臣、どう考えますか。
防災担当大臣、三月の災害対策特別委員会で、在宅被災者を含め住まいのニーズを丁寧に把握し、仮設や災害公営住宅で安心できる住まい確保を求めた私の質問に、できる限りいい方法を見付け、より良い生活の環境を提供したいと御答弁されましたが、どのように進めていかれますか。
自分らしく生きるために、移動保障は大切な人権です。
地震前、いつも乗っていたバスなら一人で福祉事務所や福祉事業所や病院、買物にも出かけ、地域で自立して生活できていた障害のある方が、一年四か月たっても公共交通機関が元に戻らず、困難に直面しています。地域包括支援センターからは施設入所もと勧められたけれど、一人で暮らせる間は頑張って地域で暮らしたいとおっしゃる思いが胸に迫りました。
被災前から脆弱だった地域交通が今なお再開できない。病院や事業所が行っていた巡回バスや個別送迎が復活できない。仮設住宅から最寄りのバス停まで三十分、歩くのは無理、せめて仮設に停留所をという方もいらっしゃいます。運転手不足が課題とも聞きます。
国交大臣、厚労大臣、こうした実情をどう把握し、奥能登の地域交通再建をどう支援するのですか。
移動支援にはガイドヘルパーの抜本的充実が不可欠です。ところが、市町村の事業とされているため、地域間格差が著しく、被災前から担い手不足が深刻でした。厚労大臣、どのように支援していきますか。
防災担当大臣、本法案は、こうした福祉サービスを災害対策に位置付けるのですね。その担い手として、登録被災者援護協力団体が創設されます。ところが、法案が、心身の障害により業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるものを欠格条項としていることは大問題です。
防災担当大臣、これは削除すべきです。心身の障害のある人があたかも広く必要な認知、判断、意思疎通が適切にできないかのように法文で規定することは、いわれなき差別と排除につながってしまいます。いかがですか。
障害当事者への合理的配慮こそ大切です。和倉温泉でマッサージ業の視覚障害者の方々の仕事がなくなって集いが企画されたとき、御自身、視覚障害があるスタッフがリードしたことで、みんなが本音が話せ、心が和む、いい機会となったとのことでした。こうした当事者によるピア支援の成果はたくさんあります。
防災担当大臣、厚労大臣、こうした福祉支援の活動をどう受け止めますか。ボランティア任せではなく、せめて被災地までの交通費や掛かり増し経費の特別加算など、支援を検討すべきではありませんか。
阪神・淡路大震災から三十年。最大の教訓は、災害対策の要は全ての被災者が一日も早く元の生活を取り戻すことであり、住まいとなりわいの再建こそその基盤だということです。
七月で発災から五年になる二〇二〇年球磨川豪雨の被災地ではどうか。八代市坂本地区では、宅地のかさ上げや輪中堤が行われていますが、その計画高は地点によっては災害時の水位より数メートルも低いままです。これでは、水害の恐怖で自宅の再建ができるはずもありません。国交大臣、ダムありきではなく、災害時水位までのかさ上げこそ行うべきではありませんか。
人吉市では、壊れた家や商店街が解体されたままの更地がなお広がっています。再建しても再び水害に遭うのではないかという住民の不安に対し、堤防強化の計画がないことが大きな要因です。京都嵐山の渡月橋左岸には可動式堤防が整備されました。熊本市白川では緑の堤防が進められています。温泉や球磨川下りの人吉でも、同様の可動式堤防を検討すべきではありませんか。
最後に、被災者生活再建支援金の抜本拡充について伺います。
支援金は、二〇〇四年以来、実に二十一年も据え置かれ、消費税の増税、資材、物価の高騰で目減りしています。二十六都道府県知事が最大三百万円では不十分、二十九人の知事が引上げを求める中、国の補助率を引き上げ、支給額を二倍にする抜本改正を行い、能登地震の被災者にも遡及支援しようではありませんか。
防災担当大臣の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣坂井学君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂井学君) 福祉サービスの提供の意義についてお尋ねがありました。
災害時において、福祉サービスの充実を図り、高齢者、障害者を始めとする要配慮者一人一人に寄り添った支援をすることは、災害関連死の防止のためにも重要です。
災害時には、避難所に限らず、在宅等で避難生活を送られる要配慮者の方々が多くいらっしゃいます。今般、災害救助法の救助の種類として福祉サービスの提供を追加するとともに、DWATのガイドラインを改正し、そうした方々に対しても福祉的支援を充実させていきます。
仮設住宅における良好な生活環境の確保についてお尋ねがありました。
能登半島地震の被災者に対する仮設住宅の提供に際しては、まず、市町において、被災された方々の今後の住まいに関するニーズを把握し、その結果も踏まえ、石川県において必要戸数やタイプ等を精査されたものと承知しています。
被災者への提供の際にも、世帯人数に応じた間取りとすることを基本に対応されたものと承知していますが、例えば、入居を急ぐなどの御事情により、世帯人数が多い場合であっても狭い間取りの仮設住宅に居住されているケースもあると承知しております。こうした場合、仮設住宅に空き室があれば、石川県、市町の判断により、広い間取りの部屋に入居いただくことが可能であり、石川県にはその旨を周知し、必要な調整を進めてきたところです。現在、石川県において、間取りを変更すべき世帯を抽出する作業を進め、空き住戸の解消に向けた取組を進めているものと承知しています。
引き続き、石川県と連携し、被災された方の良好な居住環境の確保に努めてまいります。
被災者援護協力団体の欠格要件や障害者が当事者として行う活動への支援についてお尋ねがありました。
被災者援護協力団体は、被災現場で厳しい環境に置かれている被災者の支援に当たる必要があることから、一定の登録要件を設けるものであって、障害者の当事者を排除する趣旨では全くなく、必要な認知、判断及び意思疎通が適切に行うことができない者に該当しなければ、この要件に当たらないものと考えています。
能登半島地震においても、障害者の当事者の方々が被災者支援に御活躍いただいたと承知しており、今後、こうした取組についても被災者援護協力団体に登録いただけるよう、適切な制度運用を行ってまいります。また、障害者が当事者として行う福祉支援の活動も含め、その具体的な活動内容に応じ、交通費補助事業や災害救助法による支援を適切に実施してまいります。
被災者生活再建支援金についてお尋ねがありました。
被災者生活再建支援金は、災害による財産の損失を補填するものとしてではなく、いわゆる見舞金的な性格のものとして、被災者を側面的に支援するものと位置付けられています。
都道府県の基金を活用しており、その財源の半分を全国の都道府県が負担していることから、その拡充等については、都道府県の負担も増えることに留意する必要があります。加えて、東日本大震災等の過去の震災や、現在も支給が継続されている他の災害における被災者との公平の確保といった課題もあり、慎重に検討すべきものと考えております。(拍手)
〔国務大臣福岡資麿君登壇、拍手〕
○国務大臣(福岡資麿君) 仁比聡平議員の御質問にお答えします。
DWATの活動についてお尋ねがありました。
能登半島地震の対応では、全ての都道府県からDWATが延べ約千六百名派遣され、避難所での生活について福祉的な観点からの支援を行っていただきました。
DWATの活動につきましては、その活動範囲を避難所から在宅、車中泊避難者へ拡大することや、各都道府県等のコーディネート機能を強化することなどが課題として挙げられており、こうした点への対応も含め、関係省庁と緊密に連携し、DWATの活動による福祉的支援の充実を図ってまいります。
民間団体の活動支援についてお尋ねがありました。
災害時の福祉的なニーズに適切に対応するため、官民多様な主体と協力しながら、平時から円滑な連携体制の構築を進めることが重要です。
厚生労働省では、災害ボランティアセンターにおいて、社会福祉法人やNPO法人等の多様な民間団体と平時からの関係構築ができるよう支援を行っています。また、今般の改正法案では、被災者援護協力団体の登録制度を創設し、登録団体の活動内容、活動実績等を全国の自治体に広く共有することで、連携体制づくりの後押しを図ることとされています。
関係省庁、関係機関と連携しながら、災害時の福祉的支援の充実に向け、しっかり取り組んでまいります。
災害発生時の障害者の住まいについてお尋ねがありました。
災害が発生した際に、障害者におかれても、住み慣れた住まいの復旧を進めることは重要であり、大規模災害の被災地域に対して、グループホーム等の復旧を支援する補助金のかさ上げを行ってきました。また、応急仮設住宅に入居した障害者や在宅に避難している障害者の方々に対しては、孤立防止のための見守り支援や日常生活上の相談を行った上で、必要に応じて専門の相談機関へつなぐ支援を行っており、引き続き、自治体と連携し、障害者の方々が安心して暮らせる環境の整備に努めてまいります。
奥能登の地域交通の再建についてお尋ねがありました。
被災地における地域交通について、障害福祉を所管する立場からは、障害者お一人お一人の状況に応じて、同行援護、行動援護などの障害福祉サービス、障害福祉サービス事業所による送迎、地域生活支援事業による移動支援等が適切に行われることが重要だと考えています。
引き続き、自治体や関係団体等から被災地の状況を伺いながら、関係省庁と連携して、障害者の移動支援に取り組んでまいります。
障害者の移動支援についてお尋ねがありました。
障害者に対する移動支援事業につきましては、地域の実情や利用者の状況に応じて、各自治体が柔軟な形態で支援を行う地域生活支援事業として実施されています。
その際、事業の担い手については、移動支援のみを提供する事業者だけでなく、居宅介護等のサービス提供を行う事業者を活用することも可能であり、引き続き、自治体と連携しつつ、障害者の方々が地域で安心して暮らせるよう取り組んでまいります。
被災地の福祉支援の活動についてお尋ねがありました。
御指摘のピアサポートの活動は、障害者と同じ目線に立って相談、助言等を行う取組であり、被災地においても障害者の方々の不安の解消に資するものと考えます。
これまでもピアサポーターの活動について地域生活支援事業による支援を行ってきたほか、令和六年度報酬改定では、サービス事業所におけるピアサポートの体制に対する評価を拡充したところです。引き続き、こうした取組を推進してまいります。(拍手)
〔国務大臣中野洋昌君登壇、拍手〕
○国務大臣(中野洋昌君) 仁比聡平議員にお答えいたします。
まず、奥能登地域の地域交通の再建についてお尋ねがありました。
能登地域における地域交通の復旧復興につきましては、震災前からの担い手不足や交通空白などの課題にも対応し、持続可能な地域交通へ再構築を図ることが重要と考えております。
国土交通省においては、昨年七月より、交通空白の解消を強力に進めてきたところであり、被災地においても、AIオンデマンド交通や乗り合いタクシーの導入などの取組に対して支援をしております。
並行して、石川県と地方運輸局が連携し、被災地における地域交通の現状を把握、分析した上で、新たに石川県能登地域公共交通計画が本年三月に定められたところであり、今後、この計画に基づいて再構築の取組が更に進められていくものと承知をしております。
引き続き、自治体、交通事業者に対する伴走支援や予算面での支援等、あらゆるツールを活用して、奥能登地域を含めた被災地における地域交通の再構築を進めてまいります。
球磨川豪雨の被災地における治水事業についてお尋ねがありました。
球磨川においては、令和二年七月豪雨を、七月洪水を踏まえ、学識者から構成される委員会において専門的観点から御意見をいただくとともに、計百九十七回の住民説明会やパブリックコメントなどにより関係住民や関係自治体からの意見をお聞きした上で、令和四年に河川整備計画を策定しております。
御指摘の八代市坂本地区においては、このようなプロセスを経た計画に基づき、川辺川ダムや遊水地の整備、河道掘削等により水位をできるだけ低下させた上で、令和二年七月と同様の豪雨が再び襲った場合でも洪水があふれない高さまで宅地かさ上げや輪中堤の整備を行うこととしております。
また、人吉地区については、県内有数の観光地でもあることから、川辺川ダム等の整備や河道掘削により洪水時の水位をできるだけ低下させることにより、これまでの堤防の高さを変えることなく、令和二年七月洪水と同様の流量をあふれることなく流下させる計画としたものです。
国土交通省としましては、今後とも熊本県や流域市町村等と連携し、被災地の一日も早い創造的復興に貢献できるよう、球磨川の治水安全度の向上に全力で取り組んでまいります。(拍手)