○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
裁判官以外の裁判所職員の員数を四十七人減少するという今回の最高裁の方針に私は唖然としたというか、気が遠くなる思いがいたしました。
お手元に全司法労働組合が、皆さんにも要請回られたと思いますけれども、この法案の慎重審議を求める要請書というのを届けておられますが、これ極めて異例のことですよね、慎重審議求めると。そこに、こうあります。現場の実態を見ず、離婚後共同親権の導入を始め裁判所に求められる役割が大きくなる下で、それに応える体制をつくる上で大きな障害となるものです。私、そのとおりだと思うんですよ。
そこで、ちょっとこれまでの質疑を踏まえて通告順変えますけれども、総務局長、この五人増員したという家裁調査官ですが、この配置先は東京、大阪の家裁本庁ということですね。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
令和七年度において増員をお願いしております五人の家裁調査官につきましては、改正家族法の円滑な施行に向けた検討、準備を一層加速させるとともに、家裁調査官の専門的知見をより適時適切に活用し、家庭事件処理の充実強化に資するように、改正法の趣旨、内容を踏まえた適切な審理運用の在り方などを集中的に検討しております東京や大阪に配置するものでございます。
○仁比聡平君 私どもが法案成立に際して付した附帯決議の六項目にも、その審理の在り方についてしっかり検討しなきゃいけないんだということがあって、私、東京、大阪で行われているというその取組というのはそれはそれで大事だと思いますけれども、つまり、最高裁は全国の家裁の現場あるいは裁判所の現場に対して、あるいは心配している国民そして国会に対して現場の人手不足を補うつもりはありませんと、そう言っているわけでしょう。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、令和七年度につきましては、家裁調査官五人を増員して東京や大阪に配置することで、具体的な調査の在り方を含め、改正家族法の円滑な施行に向けた検討、準備を進めるとともに、現行法下での事件処理におきましても、改正法の施行を見据え、家裁調査官の専門的知見をより適時適切に活用することで家庭裁判所の紛争解決能力の一層の改善、向上を図っていくこととしているものでございます。
委員から現場の人手不足というお話もいただいたところでございます。家裁調査官につきましては、これまでも、家庭事件の複雑困難化といった事件動向や事件処理状況に加えて、法改正による影響等も踏まえて必要な体制整備に努めてきたところでございます。一方で、少年事件につきましては大幅な減少傾向が継続しております。このような事件動向を踏まえまして、各裁判所におきましては、これまで事務分担の見直しを行うなどして家事事件の処理のための必要な体制整備を行ってきたところでございます。
このような状況におきまして、現状で事件処理に支障は生じていないものというふうに認識しておりますが、今後の人的体制につきましては、事件動向や事件処理状況等のほか、円滑な施行に向けた検討、準備の状況を踏まえまして、必要な体制整備に努めてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 つまり、今日は朝からおっしゃっているんだけれども、現有人員のやりくりでできますと言っているわけですよ。現有人員のやりくりでできますと。例えば調査官に関して、少年の調査に携わっている方々を家事に回すってできますか。そんなこと絶対にできっこない。
しきりに少年事件が減少しているというふうに言うから、私、ちょっと調べてみました。ここ数年でむちゃくちゃ増えているじゃないですか、少年の調査事件。昨年のこの家裁の統計の資料をちょっと見ると、少年の調査事件というのは、令和四年で在宅の事件で一万四千七百三十九件だったものが、令和六年は二万千三百九十四件と急増している。鑑別所に送致をされている身柄の事件、四週間以内に調査の結論出さなきゃいけないという事件は、令和四年は三千八百五十八件でしたが、それが令和六年は五千百四十件、ごめんなさい、五千百四十件。いや、数字ないでしょう、通告はしていないから。むちゃくちゃ増えているんですよ。
先ほど福島議員の質疑でもありましたけれども、SNSなどを使った闇バイトなどの事件なんかもある。これがこの先落ち着いていくとか減っていくとかという、そんな見通しなんて最高裁立てられるわけがないでしょう。
調査官は現に不足しているんですよ。離婚後共同親権、とりわけ非合意型の共同親権を導入するに当たって、国会も国民の皆さんも心配しているという、だからこそ家裁の機能に期待がされているということに対する、応える人員というものは絶対に増やさなきゃ駄目なんですよ。いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
先ほど、今委員の方から直近の少年事件の事件数について御指摘をいただいたところでございます。確かに、ここ直近におきましては、少年事件、数字が増加しているというところはございます。しかし、中長期的に見ますと、なお大幅な減少にあるというふうに私どもとしては理解しているところでございます。例えば平成二十二年からの比較で見ますと、三分の一程度ということになっているというところでございます。
もちろん、今後の事件動向というのがどうなるのかということについて、これはよくよく注視をしていく必要がありまして、それに応じた対応を考えていく必要があるというふうには考えておりますが、今年度に関しましては先ほど申し上げたような状況にあるというふうに考えておりますので、現有勢力、そして今回五人の増員をお願いしていますが、これにより対応することができるというふうに考えております。
○仁比聡平君 今の現有人員の中で家事事件に振り向けることができる余剰人員があるとでも言うような、言わんばかりのそういう説明というのは、本当に現場に対して意欲をそぎかねない、現場の声を全く聞いていない、独り最高裁だけのかたくなな姿勢だと私は思います。国民はもっと増やしてくれと思っていますよ。この定員法を始めとした今度の予算でも、裁判官それから書記官の増員は行わないわけです。事務官は減員するわけですね。
裁判官についてちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、次のページの、全司法が一年前に、この非合意型の共同親権、とりわけ心配と声明を出されました。これまでの現状からしても、離婚に際して葛藤が高まった父母の場合には、そもそも協力体制を築くことが難しく、相手方や子供を支配したり、あえて行動を妨害し、攻撃するための手段として用いられる懸念が強くあります。こうした懸念というのは昨年の国会で大問題になり、そして、この間も、民事局そして最高裁と、これに、そうならないための様々な御答弁も重ねてこられたわけなんですね。
私、今日お尋ねしたいと思うのは、これまでのこうした子供の親権をめぐる父母間の事件について、DVの主張がある、虐待の主張があるというときに、そこに対する判断を明確には示されないで、葛藤を下げる努力をされたり、あるいは審判をされたり、そういう取組をしてこられたと思います。それが当事者にとってみると、主張したDVが認められない、まるで挙証責任が被害者の側に負わされているのかと、家裁は実態が全く分かっていない、被害が分かっていないという、そうした批判は極めて強いものがあるわけですね。
資料の終わりの方に、八ページ目に、三月十三日のその点についての法務省民事局長の答弁を御紹介しています。
父母間に様々な力の差を背景として一方的に他方を支配するような関係が認められる場合には、父母が共同して親権を行うことが困難であると認めて必要的単独親権にするのだと、その判断において、裁判所は個別事案ごとにこれを基礎付ける方向の事実とそれを否定する方向の事実とを総合的に考慮して判断するのだと、一方が挙証責任を負担するというものではない、被害者が自覚を欠いている場合もあることを勘案した上で適切に判断されるべきものだと答弁されました。
その判断を、施行後は個別の事件において、裁判官そして調停委員会始めとして、家裁はやっていかなきゃいけないわけでしょう。これまでは審判書に書かないというふうにしたこともあるのかもしれませんが、これからは具体的な事実を書かなければならなくなる、当事者の主張に対して必ず応答しなければならなくなる。それは、裁判官の責任として極めて重いものがあるのではありませんか。
○最高裁判所長官代理者(馬渡直史君) まず、現行法下におきましても、親権等に関する事件においてDVや虐待等の有無が問題となる事案は少なからずあります。裁判官は、このような事案におきまして、個別の事案の内容に応じた様々な証拠からそれらの事実関係を認定、判断しているものと承知しております。
委員御指摘の規定を始めとする今般の改正家族法が施行されること自体によって、このようなDVや虐待等を認定、判断すべき場合が現行法下と比べて格段に増えるということまでは考えておりませんが、いずれにしましても、一般論といたしまして、改正法の趣旨や内容を踏まえた適切な審理、判断を行う上では、DVや虐待といった安全、安心に関する事情が適切に考慮されることが重要であると認識しているところでございまして、最高裁といたしましても、DVや虐待等に関する専門性の向上を図るべく、裁判官等の研修の充実を含め、引き続き必要な支援を続けてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 私は、今のこの問題をめぐる社会の状況を見たときに、更に葛藤が高まる、高葛藤になるということはあり得ると思いますが、そこはおいておいても、今局長がおっしゃるように、裁判官に歯を食いしばって頑張れと、研修の準備はちゃんとやるからと、そういうことで、裁判官になろうという若者たちがどんな思いをしますか。
実際、一人の裁判官が何百件もの事件を同時に抱えている。地方の支部なんかに行くと、ほかの調停事件だとかも含めてですけれども、五、六百件とかの担当をしていて、その裁判官の署名、判こをもらうために事務官さんたちがもう本当に気をもむみたいな。その下で、一件一件の事件に本当に丁寧に向き合って必要な事実を調査する、そして葛藤を下げ、本当に子の福祉になっていくような調整を図っていくという、その仕事をしっかり支えていく、頑張っていくというのが裁判官であり、そして調査官なのではありませんか。
この事案に向き合っていく上で、調査官の増員というのは絶対必要なんじゃないですか、家庭局、いかがですか。
○最高裁判所長官代理者(小野寺真也君) お答えいたします。
繰り返しになって恐縮ですけれども、その時々の事件状況あるいは事務処理体制を踏まえまして裁判所の人員体制というのを検討していくということになります。家裁調査官につきましても、今回五人の増員をお願いしたというところではございますが、そして、今年度に関しては、これで先ほど申し上げた様々な考慮の下で体制の準備が整うというふうに考えているところではございます。
しかし、今後、またいろいろ考えながら引き続き検討してまいるべきことというふうに考えております。
○委員長(若松謙維君) 時間が過ぎております。
○仁比聡平君 整えるべき環境という答弁を、二十四日のこの委員会、三月二十四日の委員会で馬渡局長されました。研修も含めて、引き続き、海外における知見なども参照しながら、研さんを深めていけるよう環境を整えていきたいと。私、整えるべき環境というのは、裁判官にとっても、それから書記官、事務官、そして調査官にとっても、時間なんだと思います。一件一件の事件にちゃんと向き合って、必要な調べをしていくための時間というのが圧倒的にない。だから、抜本増員が必要だと。
法務省は、今年度、保護観察官による直接処遇を強化する、在留管理体制を充実強化する、経済安保など情報収集・分析体制の強化をするなどで、六百六十六人の増員をやっているんですよ。それが新規事業ということです。差引き百九十四人純増なんですよ。内閣人事局おいでいただいて、コメントいただく時間がなくなってしまって本当に申し訳ないけれど、それが行政府省庁で行われていることでしょう。最高裁だけ何で減らすんですか。
とんでもないと厳しく申し上げて、質問を終わります。