○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
鈴木大臣とこれからこうして議論をさせていただく上で、大臣と、政治とお金の問題ということについて掛けられている疑惑にちゃんと答えていただきたいと思うんですよ。
お手元に十二月十二日の衆議院法務委員会の議事録速報をお配りをしていますが、我が党本村議員の質問の中で、二三年、二〇二三年に全国損害保険代理業政治連盟という政治団体が大臣に合わせて百十万円の顧問料を渡しているという収支報告がありまして、それを受け取っておられるということは大臣もこの委員会でお認めになったわけです。
一方で、国会議員には、資産公開の法律に基づいて、まあみんなそうですけれども、議院に所得等報告書を提出するわけですね。この所得等報告というのは、議事録お読みいただいたら仕組みはお分かりのとおりですが、確定申告書の金額の数字を記入するということになっているわけです。ところが、大臣の二〇二三年度分の所得報告書には、約三十二万円、三十一万五千四百九十九円という雑所得しか記載をされていないと。
この損保代理業の政治連盟から百十万円の顧問料を受け取っていることはお認めになりながら、その所得報告としておよそ三十二万円しか書かれていないということになると、百十万円が三十二万の中に入るわけはないですから、これは一体どうなっているんですかということについて、まあ端的に言うと、大臣は経費だと、そうおっしゃっているんだと思うんですよね。雑収入がこの顧問料で百十万円あると。この百十万円というのも、私、こういう経験がないからよく分かりませんが、一年間の顧問料としては結構大きい額を自民党の議員さんたち、もらうんですね。
この金額も大きいんだけど、この顧問料百十万円という収入を得るのに必要な経費って一体何ですか。その事務所はお持ちだし、その顧問を行うのにどうしてそんな巨額の、あの大きな経費が要りますか。もし全額が、収入の全額が顧問料だと、そこから経費を差し引いたのがこの雑所得約三十二万円だという、そういうことをおっしゃっているんだったらば、経費がおよそ八十万円も掛かっているということになるんだと思うんですけど、大臣、そういうことをおっしゃっているんですか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 今の御質問の件、衆議院では議論がありました。参議院で改めての御質問ということですので、この事実関係でまず申し上げますが。
今御指摘の全国損害保険代理業政治連盟、この二〇二三年の収支報告、政治資金収支報告書の中で、百十万円、私に対しての顧問料の支出が掲載をされております。それについては受け手は私でございます。そうしたこと、まず確認をさせていただきたいと思います。
そして同時に、これも公開をされていることでありますけれども、この同年の所得等報告書、ここについては雑所得ということで、今御指摘の三十一万五千四百九十九円ということで記載をしてございます。
一般論ということでこれ申し上げますけれども、雑所得というものの扱いでありますけれども、これ、国税庁のホームページでもナンバー千五百ということで掲載をされていますけれども、この雑所得については、この雑所得の金額ということで、これは、公的年金等、あるいは業務に係るもの、それ以外というところで、雑所得、大きく三つに分かれるわけでありますけれども、それぞれにおいてその収入金額から必要経費というものを差し引いたものが雑所得ということになって、その総額というものが雑所得となるという、そういった、こうした税法上のこととなっております。
こうした税法上の規定に基づいて適切に確定申告をしていることは私も確認をしておりますので、そういったお答えをさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 結局、適切に申告をしているとしかお答えにならないでしょう。
大臣と、政治と金の問題に関わっては、安倍派の派閥政治資金パーティー、この売上げからのキックバックという形で、二〇一八年以降はそうした記載があるのにもかかわらず、二〇一七年よりも以前は、他の安倍派の、大臣なんかも合わせてですね、みんな記載がないと。これ、裏金を隠しているのではないのかという問題があって、これも予算委員会で、我が党山添拓議員の質問に対して、適正に処理をしているというふうにおっしゃっているだけなんですね。
大臣、総選挙の結果を踏まえて、適正に処理をしているというふうに幾ら繰り返しても、それで国民の皆さんは全く納得しないんだということを学ぶべきじゃないですか。
私、もう一点伺いたいと思うんですけれども、大臣は、テレビなどへの出演料、講演料などをかつて所得報告をしておられたようです。そこで、しんぶん赤旗日曜版がちょっと調べてみたら、分かっただけでも、二三年、二〇二三年に、BSフジのプライムニュース、BSテレ東のNIKKEI日曜サロン、それから北海道の留寿都で行われた一般社団法人G1というところのシンポジウムというか分科会というか、に出演なり参加をしておられるようなんですよ。もし、ここで出演料なりをいただいているということになれば、百十万円よりももっと大きい雑収入があって、これが三十一万ぐらいになるだけの必要経費が掛かったという、そんな説明になっちゃうんですけどね。
このテレビの出演や講演に当たっては、謝礼は受け取っていないんですか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) それぞれの出演であったり講演であったり、これは当然謝礼があるもの、無給のものありますけれども、それぞれ法令に基づいて適切に、当然のことながら申告はしておりますので、税務上の問題は一切ないと承知しています。
○仁比聡平君 皆さん、分かりますか、納得ができますか。
百十万円より、恐らく今の御答弁だともっと大きい雑収入があったんだと思います。ところが、衆議院に対しては三十二万円ほどの所得しか届けていないと。その差額ということになると、もう八十万超えて百万とかの経費が掛かったというようなお話になるんですが、到底私は理解できないと思うんですね。かりそめにも法務大臣ということであれば、確定申告を偽っていたということになれば、これは脱税かという疑惑になるわけじゃないですか。そんな疑惑は御自身で晴らすべきだと思います。
考え直して、私は、この委員会の理事会に、衆議院の委員会の理事会でも求められているようですから、そこに提出をされるということをお願いしたいと思いますし、理事会としてそうした取組を協議いただきたいと思いますが、委員長、よろしくお願いします。
○委員長(若松謙維君) 後刻理事会で協議いたします。
○仁比聡平君 袴田無罪判決に対する検事総長談話についてお尋ねをします。
今日、古庄議員それから福島みずほ議員と、与野党を超えて、この検事総長談話は一体何だと、人権侵害であり許されず、撤回すべきだと。
私も全く同じ思いなんですが、九月二十六日の歴史的な静岡地裁の無罪判決の核心は何かと。この判決は、みそだるから発見したとされる五点の衣類などの検察が袴田さんを犯人だと主張し続けてきた証拠には、三つの捏造があるとしました。その上で、それは捜査機関によって捏造されたものだと厳しく批判したんですね。この判決というのは袴田事件の核心の争点です。
ですから、検察は、今日いきなりその争点について物を言っているわけじゃない。特に、第二次請求審、再審請求審というのは二〇〇八年に申し立てられて、二〇一〇年、つまり今から十四年前に実質審理が始まっています。そこで証拠開示が争われるということになるわけですが、それを経て、静岡地裁の再審開始決定が行われたのは二〇一四年、つまり十年前のことですね。この再審開始決定に対して、不当にも検察が上訴で争うという態度に出たからこそ、その後十年にわたって東京高裁、最高裁、差戻しの東京高裁、そして今回の再審公判と。言ってみれば、検察は嫌になるほど争い続けてきたじゃないですか。そのことによって、袴田さんやお姉さんのひで子さんを苦しめ続けてきたじゃないですか。
弁護団や支援運動は、その検察の不当な人権侵害に対して徹底して闘ってきました。だから、この五点の衣類は捜査機関による捏造ではないかというこの争点、これはもう国民みんなが知るところの大争点なんですよ。その核心的な争点に決着を付けたのが無罪判決だと思います。検察が控訴せず無罪が確定したと、それは当然のことなんですね。
ところが、検事総長が出したのがこの検事総長談話。
お手元にあるとおり、再審開始を決定した令和五年三月の東京高裁決定には重大な事実誤認があるとか、被告人が犯人であることの立証は可能であるとか、本判決が五点の衣類を捜査機関の捏造と断じたことには強い不満を抱かざるを得ませんとか、そして、本判決はその理由中に多くの問題を含む到底承服できないものである、こういう認識を検事総長の談話として示しているんですね。
先ほどの議論の中で、判決の既判力が及ばないのではないかというような弁解を刑事局長されたけれども、そういう話じゃないでしょうということですよ。弁護団声明で、これは、控訴はやめておくが巖さんを冤罪とは考えていないということであり、到底許し難いものであると猛然と抗議をしていますけれども、そのとおりだと思います。
私がただしたいのは、これは、検察が組織として判決には従わないと、これだけの大争点で、核心部分で大論争をやってきて、主張、立証を尽くして、何度も何度もですよ、この五点の衣類は有罪立証の証拠としては使えない、あるいは捜査の機関による捏造だという判断が繰り返されてきた挙げ句、もうこれ以上争えないと検察は立ち至ったにもかかわらず、組織としてその裁判には従わない、判決には従わないと宣言しているに等しいでしょう。裁判の上に我ありと、それは検察が組織として司法の独立、裁判制度を否定するということではありませんか。
刑事局長に聞いてもいろいろ弁解するだけだと思うから、私、鈴木大臣にその認識聞きたいんですよ。この検事総長の談話、大臣は検察活動のことだから私言えないみたいなことを今日言ってきたけれども、あるいは個別事件に関わることだけどと言ってきたけれども、そうじゃないでしょう。
これまで、戦後、検事総長談話が発せられたというのは今回が初めてではないようです。戦後直後の造船疑獄事件で、大物政治家を逮捕して取り調べる必要があるとした検察に対して、時の法務大臣が指揮権を発動してそれを止めたと、それに対して、検察のあるべき姿勢を示したなどという談話はあるんですよね。あるいは、検察官が非違行為を行った、それに対して国民にわびる、信頼を回復するというための検事総長談話というのもあるようですが、けれど、これだけ争い続けて得られた無罪判決に対して、その根幹を否定するような検事総長談話なんてないですよ。鈴木大臣、あり得ないと思いませんか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 改めて、大変恐縮でございますけれども、検察当局が談話を発表したということ、そして、その内容等の本判決への対応に関する事柄、大変恐縮ではございますけれども、個別事件における検察当局の活動に関わるものでございますので、法務大臣としての所見をこちらで述べることは差し控えたいと思っております。
若干繰り返しになって恐縮でございますけれども、その上で申し上げれば、この検事総長談話、検察当局において、袴田さんが無罪であると、その判決の結果を受け入れ、そうした上で、不控訴の判断に関して説明をするために発表したものであって、不控訴という判断を行った理由や過程を説明するために必要な範囲で判決内容の一部に言及したものでありまして、司法判断を軽視すると、そういった意図のものではないと承知をしております。
○仁比聡平君 先ほど来の議論で、他の様々な事件に影響があるとか、同種事案の取組に差し障るとかいうような発言も局長からあったかと思いますけど、それは、検察がこうした事態に対して、この袴田事件に対する不満と同じような姿勢でこれからも事件に臨むということを言っているに等しいですよ。あり得ないことだと思います。
加えて、長期間にわたって法的地位が不安定な状態に置いたと、大臣も謝罪めいて言いますけれども、争い続けたのは検察組織でしょう。検察官が争い続けたから長期間不安定な状況に袴田さんは置かれたんでしょう。
袴田事件のみならず、相次ぐ冤罪、再審事件が今日も起こっています。その根本にあるのは、長期の身柄拘束、それを利用した自白の強要、捜査機関が獲得した虚偽自白に沿う証拠の捏造や、それに反する被疑者、被告人有利の証拠、無罪の証拠は徹底して隠す。しかも、そうした検察、捜査機関の不当な捜査や公判を軽視する。結果、誤った裁判が繰り返されてきたと。そういう日本の刑事司法の根本問題にあるんじゃないですか。私は、その原因を検証し、全裁判所、司法関係者の共通認識にしなければ、同じように冤罪が繰り返されると思います。
検察組織が組織として猛省をするとともに、誤った裁判を正すという立場での検証、そして再審法の改正、大臣、行うべきじゃありませんか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 検察の活動、これは当然のことながら、国民の皆様方の信頼、これに基づいてなければならないと思いますし、様々いろいろな御批判がある状況、このことも認識をしております。そういった中で、まさにそうした規律ということをしっかりと、それぞれ検察官がしっかりと肝に銘じてきちんと進めていくことが肝要だと思っております。
それ以上のことについてこの場で述べさせていただくことは控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 古庄議員が指摘をされていましたけど、検察が秋霜烈日という構えを、魂を貫いて活動していたら、国民の信頼をなんて言わなくたって国民は信頼しますよ。国民の不信が突き上げているのは、検察、日本の捜査そのもの、刑事司法そのものが本来は人権保障の最後のとりでたるべきなのに、そうなっていないからなのではないですか。個別事件で、個別の関係者の不見識で引き起こされているというものではない。本来、人権保障の最後のとりでたるべき司法が国際人権水準と憲法を生かした役割を果たしていないからだと私は深く認識する必要があると思います。こんな人権後進国であっていいはずがない。
家事、民事の分野にちょっと問題を変えますけれども、せんだって女性差別撤廃条約委員会の八年ぶりの日本審査が行われました。お手元にその報告を政府の仮訳でお配りいたしましたけれども、結婚と家族関係というパラグラフで、委員会は懸念を持って以下に留意するとして、今日取り上げたいのは(b)というところです。
現在の協議離婚制度の下では、家庭裁判所は、虐待的な父親が関与するケースであっても、また保護命令を出すべきケースであっても、子供の面会権を優先することが多く、子供と被害者である親の両方の安全が損なわれる可能性があるとの報告に留意すると。勧告として、次のページですが、離婚を求める女性に利用しやすい料金で法的助言を提供し、子供の親権と面会交流権を決定する際にジェンダーに基づく暴力に十分に配慮することを確保するため、裁判官と児童福祉司の能力開発を強化、拡大すると。
この勧告について、最高裁、まずどのように受け止めていますか。
○最高裁判所長官代理者(馬渡直史君) 委員御指摘のような勧告がされたことは承知してございます。これを含めまして、面会交流事件等の審理に関しましては様々な立場からの御意見があるものと承知しています。
いずれにいたしましても、一般論として、親権や監護に関する事件の審理に当たりまして、DVや虐待といった安全、安心に関する事情が適切に考慮されることは重要でありまして、重要であると認識しておりまして、各裁判所においても、子の安全、安心を最優先にした事件の解決が図られるよう努めているものと承知しております。
また、DVや虐待に関する知見を含む専門性の向上も重要であると認識しておりまして、最高裁といたしましても、裁判官等の研修の充実を含め、そのための取組を続けてまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 勧告を様々な意見の一つとしてしまって、いずれにいたしましてもと言って自分の取組を語ると、この論法というのがずっと繰り返されてきました。
国際人権水準の意味について、日本の裁判所や裁判官は一体どう考えているのかと、法的規範として考えていないのではないかという強い批判が国際的に寄せられているわけですね。私、その点で、時間がありませんから一問だけ伺いたいと思いますけれども、このジェンダーに基づく暴力ということをどう捉えるのか。
DVについて言いますと、DVとは家庭内の権力格差を背景として行われる支配であって、権力によってパートナーを支配する人間関係の構造そのものがDVだと。暴力はその支配の手段にすぎない、支配するために得意な形態の暴力が振るわれる。ところが、DVの本質がそうした個人の尊厳を害する支配であるという理解は、日本社会においても、司法においても著しく遅れていると。加害者は加害の自覚がなく、一方で、被害者は被害に自信が持てないという実態があると。
私は、こういう実情が現実に存在する、DVとはそういうものであり、社会の実態として存在する。特に、被害者は自ら自覚もしていない、だから訴えることはない。例えば、調停で双方の意見を傾聴いたしますと言ってみたところで、そうなると、自分が訴えることないわけですから、もう一方当事者の話ばっかり聞いて、お父さんは反省していますよとか、あるいは夫婦間の問題は親子の問題ではありませんとか、別の問題ですとか、そんな裁判、調停になっていやしませんかと。
これ、正すという研修などの取組が必要ではありませんか。
○最高裁判所長官代理者(馬渡直史君) まず、傾聴ということについて申し上げると、調停における傾聴というのは、単に当事者の話を受け身で長時間聞くということではなく、当事者との信頼関係を醸成しつつ、紛争解決に当たって必要な客観的な事情やその意向等をお聞きして、その過程において浮かび上がる課題に当事者が向き合うことなども志向されておりまして、当事者にDVの自覚がない限りはDVに関する事情が把握できないというものではないと承知しております。
その上で、DV被害の特性、委員御指摘のような特性も含めて、DVに関する知見、理解を深めることは極めて重要であると認識しております。研修等の専門性向上を図るための取組、これを引き続き続けてまいりたいというふうに考えております。
○委員長(若松謙維君) 時間になりましたので、質疑をおまとめください。
○仁比聡平君 家裁調査官になっていくための養成課程の研修だったり、調停委員の研修などの、そうした立場での抜本的な転換が私は必要だと思いますし、先般の国会で成立した改正民法八百十九条の共同親権の問題でも、そうした被害者が、つまり言えない被害者がそのまま共同親権を強いられるというようなことになっては絶対にならないと思いますので、そうした取組について引き続き議論を深めていきたいと思います。
ありがとうございました。