○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
離婚後共同親権と高校無償化、就学支援金のこの関係につきまして、おととい、四月十六日に盛山文部科学大臣が、共同親権で二人の親であれば、合算、親権者二名分の収入に基づいて判断を行うということに当然なるというふうにお述べになって、これが大きな衝撃を広げています。
そこで、文科省にお尋ねしますけれども、特に、合意のない、裁判所によって離婚後共同親権が定められた場合、文科省として、父母の離婚や高葛藤という下で、生徒、子供がどんな状況に置かれて、どのような経済的な苦境に立ち得るのか、どんな検討を行った上で出した結論なんでしょうか。
○政府参考人(梶山正司君) お答え申し上げます。
高等学校等就学支援金につきましては、親権者等の収入に基づいて受給資格の認定が行われるため、共同親権を選択した場合には親権者が二名となることから、基本的には親権者二名の収入に基づき判定を行うこととなります。
一方で、親権者が二名の場合であっても、親権者である保護者の一方がドメスティック・バイオレンスや児童虐待等により就学に要する経費の負担を求めることが困難な場合には親権者一名で判定を行うこととしており、これは民法改正後に共同親権を選択した場合においても同様の取扱いとなります。
これらの判定に当たっては、認定を行う都道府県等において個別のケースに応じて柔軟に判断することとなりますが、教育費負担の軽減を図ることができるよう、法務省とも連携しながら適切な認定事務に努めてまいります。
○仁比聡平君 まず、今の御答弁について、選択した場合というお話がありました。が、これは、衆議院の審議でも随分問題になってきたとおり、父母の一方が共同親権にすることについて反対している場合、合意がない場合、にもかかわらず裁判所が子の利益のためだとして共同親権を定めることがある。つまり非合意型という場合がある。これは、その子の同居している例えば母にとってみれば、これは選択したものではないわけですね。
民事局長にお尋ねしますけれども、現行法下で既に離婚して単独親権だという母子に対して、別居している父が共同親権への親権者変更を申し立てて、母は反対しているけれども裁判所が共同親権を定めるということは、これは今度の法案ではあり得ることになる。そうやって裁判所が定めた場合に、別居父からの約定ないしふさわしい養育費が払われなくなるということは、これはあり得るということになりますね。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
委員御指摘の親権者変更の申立てでございますが、子の利益のため必要がある場合に認められるものになっております。また、本改正案は、親権者変更の裁判において、考慮すべき事情や単独親権を維持しなければならない場合については、親権者指定の場合と同様としております。
そして、あくまでも一般論としてお答えをいたしますと、親権者変更の判断におきましては、親権者変更を求める当該父母が養育費の支払のような子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかも重要な考慮要素の一つであると考えられます。
ただし、このような事情も踏まえた上で親権者が父母の双方に変更された場合でありましても、委員御指摘のように、約束をされた養育費の支払が経済状況の変化等何らかの事情によってされなくなる事態が生ずることはあり得ると考えられます。
○仁比聡平君 そういう場合があり得る。
現行法下で、単独親権でもあり、同居親の収入もなかなか大変で、子の高校無償化の支援をしっかり受けて学校に通えていたのに、共同親権にされてしまって、高収入の別居親が現実には授業料、養育費を払わないというような場合にも無償でなくなるとすると、これは子の利益に反すると思いますが、文科省、これ検討したんですか。
○政府参考人(梶山正司君) 御答弁申し上げます。
今回の共同親権に伴うその検討につきましては、法務省から情報をいただきまして、私どもとして検討させていただいたところでございます。
その際、就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合には親権者一人で判定を行うということ、これは今回に関しても同様でございますので、このようなところを私どもとしては考えているところでございます。
○仁比聡平君 大臣も、文科大臣もですね、個別のケースでの対応ということで、法務省その他と相談をしながら対応していくというふうに述べておられて、そういう趣旨のことを今文科省が説明されているんだと思うんですけど、実際に子供自身が、就学支援金の申請に向けて、家族の事情、特に父母間の事情を把握して相談するというのは、これなかなか大変なこと、容易でないことだと思うんですね。別居している父が養育費などをちゃんと払っているのか、どんな葛藤がその父母間にあるのか。そういう中で、子供が相談する相手というのが、まずは学校ということになるんだと思うんですけれども。
今、繰り返し、現行法で婚姻中の共同親権の場合に個別のケースでの対応をしているという趣旨のことをおっしゃっているんですけれども、父母のDVだったり虐待や失踪などによって親に経済的負担を求められないということで合算の例外として認められている例というのは、現行支援策になった平成二十六年度以降、どんな実績があるんですか。
○政府参考人(梶山正司君) お答えいたします。
親権者が就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合につきましては、認定を行う都道府県等において個別のケースに応じて判断することとしていることから、文部科学省においてはその件数を把握しておりません。
いずれにしても、個別のケースに応じて都道府県等において柔軟に判断されると認識しておりまして、引き続き適切な認定事務に努めてまいります。
○仁比聡平君 国としては把握していないということなんです。
柔軟な対応をするとおっしゃっているけれども、そうしたら、学校の現場でどんな柔軟な対応がされているかお分かりなんですか。
○政府参考人(梶山正司君) お答えを申し上げます。
先ほど申し上げましたが、就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合につきましては、個別のケースに応じて都道府県等において柔軟に判断されるということ、こちらにつきましても私どもお願いしているところでございます。こちらにつきまして、引き続き適切な認定事務に努めてまいりたいと思っております。
○仁比聡平君 全然安心できないじゃないですか。
法務大臣もお分かりだと思いますけど、約定した養育費が払われなくなるというのは、一人親世帯にとって本当に大変なことなんですよ。深刻な状況が起こって、おうちの中も大変になっていくという下で、養育費が払われなくなって一月、二月とたったら大変だと。そうしたら、その都度ちゃんと対応できるのか、授業料が一遍無償じゃなくなったとかいうようなことがあっても、そうしたら無償にすぐなりますよと、そんなことになるんですか。今の文科省の御説明では、個々個別に対応するとおっしゃっているだけで、現実に現場がどんなふうになっているのかという実態も国としては把握しておられないと。それでは安心できないんですよ。
離婚後共同親権の導入に関わって、親の資力、収入などが要件になっている各省庁の主な支援策を参議院の各調査室に調べていただいて、私の責任で今日資料をお配りしていますが、今の高校無償化の支援も含めて文科省には九件、こども家庭庁には十一件、このほかに他省庁との共管もありますが、厚生労働省には四件、そして金融庁に一件、少なくとも昨日までに分かっただけで二十五件のそうした支援策があるんだけれども、一体どうなっているのかと。
金融庁が関わっておられる日本財団のまごころ奨学金という制度があります。交通事故や詐欺被害、傷害や殺人などの犯罪に遭遇したお子さんたち、御家族が遭遇したお子さんたちを対象にして奨学金の給付を、お手元十三番目の資料ですけれども、月額で高校生だったら国公立で一万七千円、私立で二万五千円、入学一時金もと、そうした給付金が、奨学金があるんですけど。これ、世帯年収一千万円を超えると原則対象外とされるんですが、私が申し上げている非合意型の共同親権の場合、誰の所得証明書を提出しなければならないんでしょうか。
○政府参考人(若原幸雄君) お答えいたします。
ただいま言及のございましたまごころ奨学金制度でございますけれども、いわゆる振り込め詐欺救済法の規定に基づきまして、犯罪被害者等の支援の充実を図るために、保護者又は本人が犯罪に遭遇し、学資の支弁が困難になった家庭の子供に対し奨学金を給付するものでございます。
この奨学金制度におきましては、現在、公益財団法人日本財団が運営しておりまして、こちらの財団によりますと、今お尋ねいただきました裁判所の手続の結果として父母双方を親権者と定められた場合に誰の所得証明書を提出しなければならないか、この点を含めまして、離婚後の共同親権が制度化された場合における審査の方法につきましては、現時点では決定をしておりませんで、制度開始までに検討を進めていくことを予定しているということでございます。
犯罪被害者等の支援に係る知識及び経験を有する団体としてこの日本財団が本制度の運営を担っておるわけでございますけれども、こうした法令の趣旨に鑑みまして、まごころ奨学金制度の詳細につきましては、一義的に日本財団において適切に検討が行われるものというふうに考えております。
本制度を所管する金融庁といたしましても、国会におけます御議論等を踏まえながら、法務省等とも連携しつつ、本制度が適切に運営されるように対応してまいりたいと考えておるところでございます。
○仁比聡平君 この制度について法務省からの協議を受けたことはないと昨日聞きましたが、そうですか。
○政府参考人(若原幸雄君) お答えいたします。
御指摘のとおりでございまして、この制度に関する協議というものは承っておりません。
○仁比聡平君 同じように厚生労働省。特別児童扶養手当、資料の八枚目にありますが、障害児福祉手当の支給要件、あるいは補装具費支給制度における利用者負担の上限月額、あるいは小児慢性特定疾病児童等への医療費助成制度における自己負担上限月額などを定める上で親御さんの経済状況などを把握することになっていますけれども、この支援が離婚後共同親権が定められた場合にどうすべきなのか、具体的に法務省との協議をしたことはないと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(斎須朋之君) お答え申し上げます。
特別児童扶養手当につきましては、民法上の親権の有無などにかかわらず、障害児を監護している実態があるか否かでその受給資格者を判断し、当該受給資格者の所得を確認して支給するものとされております。
また、先生がおっしゃいました障害児の福祉手当でございますが、こちらも、その親権を有する者ではなくて、民法上の扶養義務者であって、当該障害児の生計を維持する者について所得を確認して支給するものとされております。
さらに、補装具費支給制度も、その障害児と同一の世帯に属する者が市町村民税非課税か課税かによって決定されるということでございまして、今回のその共同親権と直接関係するような要件で手当の支給がされるものとはなってございません。
○仁比聡平君 法務省から、具体的に今後どうなる、どうしていくかについて協議を受けたことはありますか。
○政府参考人(斎須朋之君) ただいま申し上げましたように、直接、親権というものがこの支給に影響するものではございませんので、そういった意味で協議を行ったということはございません。
○仁比聡平君 こども家庭庁に関しては一問だけ。児童扶養手当の所得限度額というのが親の所得に関わることになりますけれども、これ、先ほど来申し上げているような養育費が払われなくなったときというのは、これは増額されるんですか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
児童扶養手当でございますけれども、こちらも、親権とか監護者の定めとかの有無とか、その所在とかに関係なく、子を監護している実態があるかどうかで支給対象者を判断しております。その支給対象者の方の所得に応じて支給額が増減をしたりするわけでございますけれども、そうした中で、養育費という収入がなくなった場合は、その分、所得の判定対象となる所得が減ったことになりますので、そうすると児童扶養手当、まあ所得の額が幾らかにもよりますけれども、増えるケースもあり得るというような計算式になっております。
○仁比聡平君 ですが、そうした判定といいますか、は毎年八月の現況届の際に前年の所得で算定するという、そういう今の仕組みは変えるつもりはおありではないんだと思います。一年間は変わらないというお話なんだと思います。
三月二十二日のこの委員会で、今問うていることに関連する私の質問に対して民事局長は、最後、十五ページですけれども、法務省として法案提出に至るまでの間に関係府省庁と検討を行ってきたと、婚姻中別居の場合の各法令における取扱いを参考に、どのような取扱いがされることになるかについて検討してもらうよう協議を重ねてきたというふうに答弁をされましたが、私はこれ具体的に個々にされていないと思いますよ。
だから盛山大臣のあの記者会見のような発言が出てくるし、現場で、それこそ本当に苦しんでいる子供の立場に立って、どういう支援を今後していくということになるのか、離婚後共同親権を特に非合意型で定めていくということが、そこに混乱を与えてしまわないのか、現実に給付の減少、マイナスをもたらしてしまわないのか、明らかにされていない。
あらゆる子供支援施策について、私は、どのような取扱いがされるのか、基準や運用、これを一律に明らかにして国民に速やかに知らせるべきだと思いますが、今日、質問時間がなくなりましたので、明日の本会議で問いますので、大臣、明確にお答えください。
終わります。