○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
昨年、超党派の議員立法で、女性支援法、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が成立いたしました。
その趣旨について、提案者の公明党、山本香苗議員は、居場所がなく家出した若年女性、性虐待、性的搾取の被害者、家庭関係の破綻、生活困窮などの困難な問題を抱える女性に対して、売春防止法を根拠とする従来の枠組みから脱却し、ニーズに応じた新たな女性支援の枠組みを構築することが強く求められていると強調し、基本理念として、困難な問題を抱える女性が、それぞれの意思が尊重されながら最適な支援を受けられるようにすることにより、その福祉が増進されるよう多様な支援を包括的に提供する体制を整備すること、関係機関及び民間の団体の協働により早期から切れ目なく支援が実施されるようにすること、人権の擁護を図るとともに男女平等の実現に資することを旨とすると説明しております。
そこで、厚労省子ども家庭局担当審議官にお尋ねをしたいと思いますが、一般社団法人Colaboが新宿歌舞伎町や渋谷で取り組んできたバスカフェは、この法律に位置付けられた重要な意義ある若年女性支援事業であり、関係機関が協働して発展させていくべきものですね。
○政府参考人(野村知司君) 個別の団体が取り組んでいるものについて、なかなか論評というか、何というか、難しいところではありますが、ただ、今もColaboが東京都から委託を受けて行っていただいております困難女性支援の事業、これは女性困難支援法に盛り込まれているアウトリーチなどによる支援、これを一つ事業化したものであるというふうに考えております。
○仁比聡平君 厚労省は、平成三十年度のモデル事業から始まって、令和三年度に本格実施ということで国庫補助もして、今年度、民間団体支援強化・推進事業などでこうしたアウトリーチの若年女性支援事業の掘り起こし、これを担える民間団体の掘り起こしだとか、あるいは立ち上げ、こういう支援を行って横展開をしていきたいというふうにおっしゃっていたと思うんですが、そういう積極的な意義を持っているわけですね。
○政府参考人(野村知司君) 様々な困難な問題を抱える女性に対する支援に当たりまして、行政機関に支援を求めることが難しい状況に置かれている場合があるということに留意しながら、その公的機関と民間団体が密接に連携をしながら、アウトリーチの支援でございますとかあるいは相談支援、こういったものを始めとして個々のケースに応じたきめ細かな支援を展開していくこと、これは重要であると、御指摘のとおりであると思います。
厚生労働省は、これまた御指摘ございましたけれども、そういった自治体における支援体制の強化を図るということで、来年度の予算案におきましても、民間団体と協働したアウトリーチ支援などの推進でございますとか、支援を行う民間団体の掘り起こしや育成支援、こういったものを盛り込んでおりまして、これらの取組などを通じまして、困難な問題を抱える女性に対して行政と民間団体が協働した適切な支援が行われるように取り組んでまいりたいと、かように考えてございます。
○仁比聡平君 支援法の採決に当たって、当時の橋本泰宏子ども家庭局長が、様々な困難を抱えた若年女性は公的な支援につながりにくいというふうに答弁をしておられるんですね。
この公的支援につながりにくいのは、これなぜでしょうか。
○政府参考人(野村知司君) 行政機関に自ら支援を求めることが難しい状況に置かれているというふうなことを言われておりますけれども、例えばでございます、過去に支援を求めた際の二次被害などの体験から、行政機関に相談することへのハードルが高いと、そういったことで相談窓口になかなかたどり着けないといった女性がいらっしゃるであるとか、あるいは、そもそも自分、御自身が支援の対象たり得るということにお気付きになっていないなど、そういった状況に置かれている場合があるということがやはり支援につながりにくい、困難を抱えているにもかかわらず支援になかなかつながれない場合があるということになって、つながっているのかなというふうに考えております。
○仁比聡平君 率直に言えば、行政に対する不信、あるいは大人社会に対する不信、こうしたものがやっぱりあるんですよね。
Colaboは、家に居場所がなく、夜間の繁華街にいる十代女性に向けて無料カフェを実施して、ドリンク、フード、コスメ、ファッションなどを無料で提供し、訪れた少女の状況に応じて相談に乗り、宿泊場所がない少女に対して宿泊場所を提供するというなどの支援につないで関係性を築いてきたと。ここを僕はとっても大事だと思うんですよね。この取組は、性搾取や虐待の被害者やその危険にさらされている女性たちのいるところに直接出向き、探して声を掛け、出会い、つながることというアウトリーチの積極的、先進的活動だと思います。
昨年、子ども家庭局長も、若年女性支援の先進事例の周知を図るということもおっしゃっているんですが、このColaboの事業も先進事例として周知してこられたのではないですか。
○政府参考人(野村知司君) もう御指摘のとおり、困難を抱える女性ができる限り早期に相談窓口につながっていく、そして必要な支援を受けることのできるようにしていくためには、巡回などのアウトリーチというのは有効でかつ重要であるということは御指摘のとおりでございます。
こうしたアウトリーチによる早期把握を通じて適切な支援に努めていくことが必要であるというようなことを考えておりまして、そうしたもろもろ、事例集をいろいろ紹介する中の一つにColaboのものも含まれておったんではないかというふうに考えております。
○仁比聡平君 ところがなんですよね。そのバスカフェに、昨年十二月以降、先週三月八日までの計八回にわたって見過ごすことのできない妨害が繰り返されてきました。
お手元、一枚目の資料は二月八日の現場の様子を伝えたしんぶん赤旗の記事ですけれども、御覧いただいたらお分かりのとおり、二十人以上の少女がバスで支援を受けている。そこを男たちがのぞき込み、どなったりスマホをかざして動画を撮ってユーチューブで中継すると。女の子たちが怖がるからやめてとやめさせようとするスタッフの女性たちをあからさまに侮蔑し、ぶす、ばばあなどと暴言を投げ付ける。局部を露出し公然わいせつ罪で逮捕、勾留されたと自慢している男や、自慰行為のしぐさをしながら風俗王だなどと叫ぶ男など、極めて卑劣で執拗な業務妨害行為なんですね。
先週三月八日には、Colabo代表の仁藤さんを十人以上の男たちが取り囲み、動画を撮りながら付きまとい続け、大声でどなり続けました。何度も体を触ってくる。スタッフもどなられたり体を押されたりする。さらに、バスカフェに突撃してきてスマホで生配信しながら活動を妨害し続けるなど、いよいよエスカレートしているわけです。
この二枚目の資料は、そうした妨害者に対して東京地裁が半径六百メートル以内への接近禁止を命じた仮処分決定です。
そこで、警察庁においでいただきました。申し上げてきたような支援を必要とする若年女性や事業の支援者、この皆さんに暴力や妨害が及ばないように予防するというのは警察の責務ではありませんか。
○政府参考人(友井昌宏君) お答えいたします。
一般論として申し上げれば、個人の生命、身体、財産の保護、あるいは犯罪の予防などは警察の責務であると認識をしております。
○仁比聡平君 何だか一般論がちょっと抽象的なので、警察庁からいただいた資料を、五ページ、五枚目以下を御覧いただきたいと思うんですが、令和三年三月十二日付けで、警察庁次長による繁華街・歓楽街の安全・安心の確保に向けた総合対策の推進についてという依命通達です。この中には、客引きやスカウト行為、非行の深度が進んだ少年や不良行為者の蝟集、犯罪組織の暗躍や違法風俗店などから市民や繁華街の安全、安心を守ると。
続けて、同日付けの、この総合対策の推進上の留意事項という文書もお配りしておりますけれども、ここの中には、風俗営業等の接客従業者の中に人身取引被害者や福祉犯の被害少年が潜在している可能性について十分配慮し、これら被害者の認知、把握に努めることともあるんですね。
繁華街、歓楽街での警察活動というのは、こうした視点も持って、今、先ほど申し上げたような業務妨害が行われているということを現認するならば、もちろんその状況を把握するために双方当事者の話を聞いたりするんでしょうけれども、なんだけれども、まずは警察官が間に入って距離を取らせて、危害が加えられないように、名誉毀損や被害が継続しないように、しっかりとそうやって対処をした上で市民の安全あるいは業務の平穏、これを確保するというのが警察組織の任務なのではありませんか。
○政府参考人(友井昌宏君) お答えいたします。
一般論として申し上げれば、警察においては、トラブル等の通報を受け、複数当事者がいる場合には双方から丁寧に話を聞くなど、訴えの内容を正確に把握して、適切な助言等を行うこととしております。
その中で、刑罰法令に違反する行為が認められるときは、個々の事案の具体的な事実関係に即して、法と証拠に基づき厳正に対処することとしております。
○仁比聡平君 もちろん、法と証拠に基づいた厳正な対処ということが極めて重要で、しかも、犯罪が起こらないように予防をするということが当然重要な活動なんですね。
次に質問を進めますけれども、四枚目の資料は、一年ほど前、警視庁が売春防止法での取締りとは別に女性支援専門の担当者を新たに配置するという取組を始めたことに関わる資料です。警視庁生活安全部のツイッターで、助けて、その思いを声に出してくださいというメッセージとともに拡散されているこれ資料なんですけれども、御覧のとおり、一人で悩んでいませんかと。あなたを支援します、本当は売春なんてしたくない、住むところがない、仕事が見付からない、借金があって強要されているなどの、この困難な女性の状況に寄り添う形で東京都女性相談センターと連携強化をするという取組だと思うんですけれども。
この件について、女性支援法に向けた厚労省検討会の座長も務められた堀千鶴子城西国際大教授がこうおっしゃっています。売春の摘発や取締りをして終わりではなく、女性たちが支援を求めているのだということを警察が理解し、取組を進めることは一定の評価ができる、行政や民間の支援団体など関係機関同士の連携を強化し、確実に支援につなげられる体制が構築されることを期待していると。
これは、警察としても同じ御認識ですか。
○政府参考人(友井昌宏君) お答えいたします。
警視庁におきましては、売春をするに至った女性等に対しまして、関係機関と連携し、支援のための取組を行っているものと承知しております。
女性が売春に至る背景につきましては、住居、就労、経済状況等に関する様々な事情が存在すると考えられますことから、売春の防止のために関係機関と連携して取り組むことが重要と考えております。
○仁比聡平君 その下で、とりわけ歌舞伎町などでのアウトリーチ活動というのは、女性をからめ捕ろうとする性産業、スカウトたちとの対決をしなければ、その事業の目的というのは果たせないわけです。性搾取から女性の人権を守ろうとする最前線だからこそ、性産業や性搾取のスカウトなどから商売の邪魔だと言わんばかりの妨害、攻撃のリスクにもさらされるわけですね。
そうした業務の性格をよく現場の警察組織が理解して、現場のアウトリーチ活動の平穏を守るために、所轄署といいますか警察官隅々そういう対処をしていただくということが、女性支援法の六条には緊密な連携というのが特に定められています、この趣旨にも沿う姿だと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(友井昌宏君) お答えいたします。
警察においてトラブル等の通報を受けた場合の対応につきましては、先ほど一般論として申し上げたとおりの取組を行っているところでございます。
困難な問題を抱える女性への支援につきましては、新たな法律により、国及び地方公共団体が必要な施策を講ずる責務を有するとされております。これを踏まえまして、引き続き、各種の取扱いにおきまして適切な対応が取られるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
是非この女性支援法の趣旨が現場で全うできるように、警察としても頑張っていただきたいと思うんですね。
改めて厚労省にお尋ねしますけれども、この激しい妨害を放置して現場の事業者任せにしてしまったら、掘り起こしだとか横展開だとかというのはもうなかなかこれ大変というか、あり得ないじゃないですか。やるべきは、現に担っていただいている民間の団体の皆さんの事業を守ることだと思うんですが、いかがでしょう。
○政府参考人(野村知司君) アウトリーチ支援を始めとする現場での活動、こういったものが円滑に行われることって非常に大事なことであるというふうに考えております。
そうした中で、御指摘のこの支援者への妨害行為などによってこの支援が必要な方に支援が届かなくなってしまうと、このようなことというのはあってはならないものであるというふうに考えてございます。
厚労省といたしましても、必要に応じて関係機関と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 最後に、大臣、法務大臣の認識をお尋ねしたいと思うんですけれども、女性支援法を実践する現場の事業者を、今日御紹介したように執拗に妨害し、その様子をユーチューブやツイッターでしきりに拡散して女性支援事業への憎悪をあおると。この行為は、刑法二百三十四条の威力業務妨害罪や、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例五条の二違反の付きまとい、待ち伏せ、進路の立ち塞がりなどが疑われる刑法犯なんですけれども、その本質はバックラッシュだと思うんですね。つまり、女性の人権、ジェンダー平等への敵対、声を上げる人たちの敵視ですよね。要は商売の邪魔だということなんですよ。
女性支援法が理念とする男女平等への挑戦であり、許されない人権侵害ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) 今委員が御指摘になられた事案が法令違反になっているのかいないのかとか、人権侵害があるのかないのかという点については、ちょっと私、この場でお答えをすることはできないわけでありますけど、御指摘のように、女性に限らずでありますが、誹謗中傷等によりまして人権が侵害されるということはもう当然あってはならないというふうに認識をしています。
女性の人権という観点で申し上げますと、法務省の人権擁護機関では、女性の人権を守ろうを人権啓発活動の強調事項として掲げて、女性に対するそういった偏見ですとか差別を解消するために、啓発動画の配信や講演会の開催など、各種啓発活動に取り組んでいます。
そして、法務省が取り組んでおります、法務省の人権擁護機関が実施している人権相談でも様々な困難を抱える女性からの相談に応じておりまして、人権侵害の疑いを認知した場合には、相談者の意向に応じ人権侵犯事件として立件した上で、任意の調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずるよう努めているところであります。
関係省庁と協力しながら、女性の人権問題についてしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。
○仁比聡平君 時間が参りました。
私は、女性支援法というのは、取締りではなく支援へという大転換だと思うんですね。それは、これまでこうした性的虐待や貧困によって家族から孤立し、学校にも居場所がない、繁華街をさまよう、その中で本当に苦しむ女性たち等に寄り添って頑張ってきた皆さんの力によって、そして今、その仕事を担っている民間団体の皆さんによって前進をしてきたものだと思います。本当に心から敬意を表したいと思うんですよね。
この事業を妨害しようとする執拗な攻撃から事業を守り発展させるということは、政府と政治家の重い責任だと思います。政府を挙げての取組を強く求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。