「政府のおひざ元で起きている問題だ。こういう労働者も救えないで何の政権交代か」。今年1月27日の参院予算委員会で、大門みきし参院議員(比例予定候補)の声が響きました。
郵政に波及
NTT東日本―北海道で、契約社員から登録型派遣社員への不当な転籍強要が行われていることを、労働者から聞き取った会社側の卑劣な手口の数々を示して
告発したのです。
鳩山由紀夫首相は「違法行為があれば、当然適切に対処しなければならない」と答えざるをえなくなり、その後、派遣化を拒否していた女性の雇用更新にも結
びついています。
さらにこの質問は思わぬ波及効果も――。
質問を聞いた亀井静香郵政改革担当相が、大門氏に「日本郵政でも非正規労働者がどうなっているか心配になった」と連絡。大門氏が調べてみると、日本郵政
では10万人以上が長期にわたり更新を繰り返している契約社員でした。
3月の予算委員会で、正社員にすべきだと迫ると、亀井大臣は「おっしゃる通りにいたします」と答弁。数日後、10万人の正社員化を正式に発表しました。
企業に衝撃
仁比そうへい参院議員(比例予定候補)は、マツダ、東芝系企業など「非正規切り」に抗してたたかう労働者の実態を各地で聴き取り、政府にその声をぶつけ
てきました。
昨年11月の予算委員会では、ハリソン東芝(愛媛県今治市)やNECセミコンダクターズ九州・山口(熊本県)が偽装請負の是正や直接雇用の推奨指導に従
わず、直接雇用を拒否していることを告発し、政府に厳正な対応を迫りました。
長妻昭厚労相は「全国の派遣先企業が法を順守しているか、是正指導の手続きがきちんとなされているか点検したい」と答弁。鳩山首相も「違反の事例が今後
続かないように、積極的に私としても動いてみたい」と表明せざるをえませんでした。
その翌日、NECから労働組合に「協議したい」と電話が入りました。
同社に直接雇用を求めてきた青年、柴田勝之さんは、この質問を傍聴したときに、これまでのたたかいが思い起こされ、涙が出そうになったといいます。
「12分の質問で、これだけの答弁を引き出してもらって本当にうれしかった。大企業を動かすインパクトがあった。他の大企業の雇用問題全般に波及すると
感じています」
派遣法改定
に修正案
こうした、たたかいのうえに日本共産党は、政府の労働者派遣法改定案に対する修正案を発表しました。
小池晃政策委員長(参院東京選挙区予定候補)は5月20日、国会での記者会見で「抜本改正を行う国会の責任を果たすべきだ」と力を込めました。
「大きな“抜け穴”が開いている政府案のままでは、圧倒的多数の派遣労働者が使い捨て労働のままにされる」。怒りを込めてこう指摘した小池氏。08年末
からの「派遣村」、09年末からの「公設派遣村」で医師として医療相談に応じたり、行政への要望を聞き、失業者のために奔走してきた思いが込められていま
した。
08年12月の厚生労働委員会では、有期雇用の中途解約については、労働契約法17条1項で「やむを得ない事由」以外は禁止されていることを政府側に認
めさせました。これは、党議員団、労働者のたたかいとあいまって、厚労省の「非正規切り」防止通達に結びつきました。
07年3月には、懸命に働いても「日雇い派遣」から抜け出せず、ネットカフェで寝泊まりせざるをえない人たちの問題を国会ではじめて本格的に取り上げま
した。自ら体験したネットカフェの実態を示しながらの追及は、後に「この時のやりとりがベースになって、厚労省は実態調査に乗り出す方針を固め
た」(『ネットカフェ難民と貧困ニッポン』/水島宏明著)と記されました。
論戦に蓄積
日本共産党の追及は、長い間の論戦に裏打ちされたものです。
市田忠義書記局長(比例予定候補)はすでに06年10月、予算委員会で偽装請負問題を本格的にとりあげ、違法な請負を受け入れた大企業の責任を追及。安
倍晋三首相(当時)も「ワーキングプアを前提にコスト、生産の現状が確立されているなら大変な問題だ」と答えざるをえませんでした。
07年1月には、日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)=当時=が違法な偽装請負に対し、「労働者派遣法が悪い」と開き直って合法化を求めてい
ると告発(本会議)。安倍首相から「派遣先企業にも厳格に指導する」との答弁を引き出し、厚労省が同年3月に偽装請負問題での新たな通達を出すことにもつ
ながりました。
いま市田氏は、各地の遊説先でこう指摘しています。
「大企業にどういう立場をとるか。はっきりとモノを言うことができるかどうかが、国民の暮らしを守る政治への分かれ目です」(しんぶん赤旗 2010年
6月1日)