「投票総数198、賛成198」― 5月21日の参院本会議で、電光掲示板に、国立ハンセン病療養所の充実決議の投票結果が出ると、ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会会長の谺(こだま)雄二さん(78)が、傍聴席で立ち上がり議場に向かって一礼しました。「国の責任できちんとやってくださいという意味です」
 谺さんは7歳の時にハンセン病を発症、今までの人生を療養所で過ごしてきました。差別とたたかい、訴訟に取り組んできました。

 「2008年にハンセン病問題全面解決をめざす基本法ができたのに、生活は逆に追い詰められています」

 国家公務員定数削減路線で、谺さんのいる栗生楽泉園(群馬)では看護師が21人欠員のまま。職員の多くを占める賃金職員(非常勤職員)の雇用を最長3年にすること、医療的措置を療養所外の医療機関で行って療養所の医師・看護師を大幅に減らすことも検討されています。

 「基本法が実際の療養所生活に生かされていない。このままでは死ねない」と言う谺さん。08年末に倒れ意識不明になりましたが、執念で回復しました。

 同園では園内に群馬大学と協力しアトピー温泉治療所をつくること、懲罰的に入所者を押し込めた「重監房」を保存する施設をつくることで療養所を地域住民と共有していく計画を進めています。

 谺さんは言います。

 「私のふるさとである療養所を『人権のふるさと』にしたい」
   

ハンセン病療養所決議傍聴の谺さんと懇談=2010.05.21、国会内

ハンセン病療養所決議傍聴の谺さんと懇談=2010.05.21、国会内


 谺さんは、参院本会議後に、日本共産党の仁比そうへい参院議員と懇談し協力要請。仁比氏は「憲法を生かす政治を実現し、基本法を施策として実らせるために頑張る」と、谺さんと握手しました。
(しんぶん赤旗 2010年5月22日)