○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まずは、千葉大臣の御健闘を心から期待を申し上げたいと思います。
私ども日本共産党は、国民の立場に立って、間違ったこと、問題点は堂々とただして防波堤となりますけれども、これまでの政治に代わる新しい政治を探求し
ていく、国民の皆さんの要求にこたえて政治を前に進めるためには、とことん建設的な野党としてこの国会、この委員会でも奮闘していきたいと思います。
今日は、女性差別撤廃条約の完全実施の問題に絞って大臣、そして外務省、内閣府政務官にもおいでいただいておりますので、お尋ねをしていきたいと思うんです。
御案内のように、女性差別撤廃条約の採択から三十年という記念すべき年でございます。この条約は、例えば今年の夏に女性差別撤廃委員会から示されました
最終所見の中の言葉を幾つか例えば拾いましても、女性に対する差別撤廃の分野における最も適切かつ広範で法的拘束力を有する国際人権文書である、固定化さ
れた男女の役割分担観念の撤廃及び女性の地位向上の基盤であるとその意義が改めて語られておりますし、この三十年、世界の女性の皆さんに大きな希望とより
どころを与えてまいりました。世界の女性の憲法と、そうした表現をされる方もおられますけれども、まさに私はそのとおりだと思っております。
同時に、この三十年の間、日本の女性運動がこの条約の完全実施を求めて本当にたゆみない、そして大きな努力を重ねてこられたこと、そのNGOの力という
のも大変大きな発展をしてきたと思うんですね。とりわけ、この夏に行われました委員会の審議に当たりましても、NGOのレポートやあるいは傍聴参加、そう
した活動が大変高く評価をされまして、最終所見の中でもその役割がたたえられると、そうした状況になりました。
まず千葉大臣に、この条約の重み、そしてこうした女性運動の積極的役割をどのように受け止めていらっしゃるか、思いも含めてお尋ねをしたいと思います。
○国務大臣(千葉景子君) 今、仁比委員が御指摘をいただきましたとおり、今年は本当にある意味では大変記念すべき年に当たるだろうというふうに思っております。
女子差別撤廃条約の採択から三十年ということになります。感慨深い私もものがございますが、この女子差別撤廃条約、これがやはり、今女性の憲法という御
表現がありましたけれども、この日本の社会に、そして日本の女性の様々な権利を促す、男女共同参画社会を進めていく大きなやはり礎になってきたこと、私は
大変重く感じているところでございます。
また、この間、本当にこれは、逆に言えば残念ながらですけれども、この女子差別撤廃条約、それを国内の中で様々な分野で生かすという活動は、むしろやは
り政府等々よりは多くの女性の活動をしている皆さん、そしてNGOの皆さんなどが牽引役となってきたのではないかというふうに思っております。
そういうものを受けて、国会でもやはり多くの女性の議員が中心となってそれを日本の法律に表していくと、こういうことなども手掛けてきたのではないかと
いうふうに思っておりまして、やはりここまで女子差別撤廃条約を国内に本当にいろんな形で定着をさせてきたのは、NGO、女性の力というのは私は大変大き
いものがあったと受け止めております。
○仁比聡平君 大臣の所信的あいさつを伺っておりまして、個人通報制度が含まれた国連人権関係条約の選択議定書の批准に向けた体制整備とい
う決意を大臣がお語りになるというその場面で、私は、今大臣が牽引役としての、牽引者としての運動の力ということをおっしゃいましたけれども、この私たち
の国がやっぱり大きく変わってきたし、今これを本当に大きな実りを上げなきゃいけないという思いを大変強くしたわけでございます。
ところがといいますか、前の政権の時代のことではあるわけですが、これまでの他の国際人権条約関連の委員会におきましても、それからこの条約の委員会の
審議におきましても、とりわけ今年の夏の第六次政府報告書審議の際にも、委員会の委員から、条約違反の具体的な指摘と具体的な改善策が問われているにもか
かわらず我が国の政府が法制度を説明するにとどまると、そうした姿勢に大変強い失望感が示されてきたと伺っております。その結果といいますか、この女性差
別撤廃条約の問題でも、今年の夏の総括所見では、四十八項目にわたる懸念と勧告、そして二項目のフォローアップ項目が特記されたわけです。
条約やあるいはその委員会からこうした指摘や勧告を受け続けてきたというこの限界を乗り越えていくことこそが千葉大臣を始め新しい政権の皆さんに私は求められている、期待されていると思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(千葉景子君) 大変期待を込めていただきまして、大変責任を重く感じております。
やはり、今、日本の社会が国際社会の中で本当に信頼をされ、そしてまた尊敬をされるという国であるためにも、私は、女子差別撤廃あるいは男女共同参画、
男女の平等、そしてこれから一人一人の人権が十分に尊重される社会、これに向けて日本は率先してその先頭に立っているんだという発信をしていくということ
は大変重要なことだろうというふうに思っております。
これまでなかなかなし得なかった部分であろうかというふうに思います。私もどこまで、大変力足らぬところはあろうかとは思いますけれども、是非、このよ
うな国際社会でも信頼され、そしてまさにそれが日本の国内でも一人一人の人権が守られ女性の地位がきちっと担保される、こういうものにつながりますように
最大限頑張っていきたいというふうに思います。
○仁比聡平君 大臣、少し謙遜をなさいましたけれども、これまでの大臣の政治家としての、ちょっとおこがましいですが、生き様を私自身も拝
見をしておりましても、今条約の重みや意義について語られた、そうした思いにみなぎった力をお持ちなんだと思いますので、そうした立場で是非これまでの状
況を一変させるだけの力を発揮していただくことを心から期待をしたいと思います。
選択議定書の問題について少し伺いますけれども、この批准が求められている選択議定書といいますのは、条約の完全実施に不可欠のメカニズムであって、国
内司法による本条約の直接適用を強化して女性に対する差別への理解を促すものだと、こんなふうな勧告の中の表現もございます。差別撤廃条約三十年間の歴史
の中で最も大きな発展であると、こうした表現をされる方もおられるわけですね。
この選択議定書を批准してこそ、国内法的にも条約の法的拘束力を実際に持たせることができますし、加えて、日本人はあるいは日本社会はこの国際人権機関
においても数々の中心的な委員も送ってまいりまして、大変評価の高い活動をしてこられたわけです。ところが、この選択議定書を批准していないがばっかり
に、人権問題の分野での国際的評価が大変現実に低められているということもあるわけだと思うんですね。
この選択議定書の意義について大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(千葉景子君) 私も、この選択議定書そして個人通報制度というのは、個人が通報できる、それで国際機関に救済を求めるというこ
とに大きな、これは制度ですから当然できるわけですけれども、そこに意義があるというよりは、これを批准することによって、やはりむやみにだれだって通報
するわけではありませんので、むしろ通報されるようなことがないような人権状況あるいは体制を国内できちっとつくっていこう、そういう姿勢に私はむしろつ
ながっていくものだというふうに思っております。
だれでも個人通報やりたくてやろうというわけでは多分ないでしょうし、そんなに数多く個人通報が積み重なっていくということではないだろうと。むしろ、
これによって通報が、本当にやっぱり日本の国内からは通報なんということはないんだなと、それだけ人権がきちっと尊重されたりあるいは担保される、そうい
う体制ができたんだなということにつながる効果ということを私は期待をむしろしたいというふうに思っております。
○仁比聡平君 通報自体にといいますか、通報、そこに意義があるというよりはという今御発言だったんですけれども、私の受け止めとしまして
は、この個人通報制度というのは、国内救済が完了をした上でなければならないという原則だったり、あるいはその通報に対する見解や勧告には法的拘束力はな
いわけですし、そうした中で受理の要件も大変厳しいものがあると伺っております。国際的に、これまでの運用の中でも何でもかんでもが受理され、勧告をされ
てきたということではなかろうと思うわけですね。
そうした意味では、通報それ自体による効果だけではなくて、その選択議定書を批准している、個人通報制度があるという、そのことの実効性の担保になるという、そうした思いだと思うんですけれども。
ちょっとこれ一応確認ですが、選択議定書が批准されて個人通報がなされるということになれば、もちろんそれ自体にも大きな意味や重みがあると思いますけれども、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(千葉景子君) 先ほどの私の答弁も多少ちょっと舌足らずというか誤解を招くところがあったと思いますけれども、個人通報制度そのものにも当然重要な効果があることはもちろんでございます。
ただ、それだけではなくして、やはりこれを批准することによって国内の人権状況、そしてそれに携わる者のやはり意識あるいは対応の仕方、そういうものに大きなやはり影響をもたらすものではないかと、そういう効果も私は期待されるものだというふうに思っております。
○仁比聡平君 そこで、大臣の所信にございます批准に向けた体制整備という、この体制整備という言葉がどういう意味内容なのかということを可能な限りで御紹介いただければと思うんですけれども、体制整備とは何か、どうした検討をしておられるのか、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(千葉景子君) この批准に向けては、幸いなことにと申しましょうか、この間、法務省あるいは外務省等々他の省庁も協力をし合い
ながらかなりの研究を続けてきているということを承知をいたしております。そこでいろいろな問題点の整理も大分進んでいるというふうに思われますが、そう
いう中で、例えばそれを受ける機関はどういうふうにつくったらいいのかと、そういうこともございますし、そしてこれは、先ほどお話がありましたように、拘
束力があるという問題ではありませんけれども、例えば日本の確定判決と違った判断が出たときに、何というんでしょう、それに対して、出た勧告に対してどの
ように対応していくのか、あるいはそのための、受けるための法律が必要であるのかと、こういうことなどももう少し詰める必要がある部分もあるように私も
思っておりますので、そういう意味での体制整備。決して、よく言われておりますように、日本の司法制度と相入れないとか、そういう意味ではございませず、
それを受けた場合の、何というんでしょうね、対応の仕方、こういうことなぞをやはり多少事前に念頭に置いておく必要があるのだろうというふうに思いますの
で、そういう意味での体制整備というふうに私は考えているところでございます。
○仁比聡平君 その省庁を超えた研究会の所管は外務省のようで、西村政務官に、ちょっとこういう聞き方で伝わるかどうか分かりませんが、
今、千葉大臣もおっしゃられたように、この個人通報制度が三審制を壊すとか日本の司法制度と相入れないとか、そういうことでは全くないということなのだろ
うと私は受け止めているんです。
そうしますと、今検討されている課題というのは、これは国際機関と、我が国の三権も始めとして国としてその国際機関の窓口をどういう形でつくるかとか、
あるいは、その実務的な運用を支える体制、これをどういうふうに持つかとか、そうした議論が検討課題だと、そういう理解でよろしいんですかね。
○大臣政務官(西村智奈美君) 仁比委員にお答えをいたします。
個人通報制度関係省庁研究会と申しますが、これは外務省が主宰をさせていただいておりまして、これまでにもう合計いたしますと五十四回の会合、研究会を
開催をしております。関係省庁に幅広く参加を呼びかけて行っておりますけれども、この中においては、具体的な通報事例を可能な限り収集をいたしまして、委
員会や関係国の対応などについて研究を行っているところでございます。
ここで申し上げます対応等についての研究でありますので、まさに窓口をどうするかとか運用をどうするかとか、こういったものを含むものでございます。
○仁比聡平君 つまり、検討すべき課題は実務体制の問題であって、言わば権利の問題ではないと。実務体制どういうふうにするかという、ここ
は、この問題は批准をという政治的な意思決定、決断に向かって整えられるべきものだと思いますので、これまでその種の研究会が本当に長きにわたって結論を
出さずに行われてきたんですけれども、私は、会議のための会議であってはならないということを強く要望を申し上げておきたいと思うんです。
そうした中で、今、女性差別撤廃条約についてお伺いをしてきたこうした議論は、この条約だけではなくて、自由権規約の第一選択議定書ほか、大臣が国連人
権関係条約とおっしゃっている、今発効している四つの条約についてすべて共通のことなのだろうと論理的には思うわけですね。この日本社会の人権をめぐる現
状、状態を国際人権水準に引き上げていくこと、条約違反の法制度を改めること、条約違反の実際の事実の状態をなくすこと、そのために必要な選択議定書の批
准を始めとして手だてを取っていくことについて、大臣の決意を改めて伺いたいと思います。
○国務大臣(千葉景子君) 今回、私も就任をさせていただくに当たりまして、先ほどから申し上げておりますように、やはり日本の社会が、一
人一人が大切にされる、人権が守られ、そしてそれが日本の社会の秩序としてきちっと浸透をしていくと、こういうやはり一番の根幹を是非しっかりと整備をし
ていきたいという思いでございます。
そういう意味では、国際社会から大変信頼を、ある意味では批准をしない、あるいはそういう仕組みを受け入れていないということで信頼をいささか損ねてい
るような、こういうことについてはやはりできるだけ解消し、そして世界のある意味では人権のリーダーなんだと、それに先頭に立って、これは日本というだけ
ではなくて国際社会のやはり人権のために日本は汗をかいているんだ、こういう姿を示すことができるような、そういうために私も全力を挙げていきたいという
ふうに思っております。
○仁比聡平君 私は、この分野において国際社会の信頼が損なわれているのは、いささかどころではなくて、大変甚大、重大なものがあると思っ
ております。速やかな批准をということを求めるとともに、具体的に家族法改正の問題について一問お尋ねをしたいと思うんですけれども、これは国際社会の信
頼どころか国内の女性たちの具体的な権利が私は侵害されていると思っておりますけれども、例えば、新日本婦人の会の皆さんが集められたアンケートの中で、
結婚するに当たって、名前はただの名称ではなくて今まで生きてきたあかしというか自分自身そのものという思いが自然にあったので大変迷ったと。でも、その
思いは夫も同じだろうし、私が名字が変わるのが嫌な分、夫も嫌だろうと。二人で本当にいろいろ悩んだ挙げ句通称婚を選択したけれども、それでもいろいろ御
苦労があるというお話があります。
あるいは、長年連れ添われたお連れ合いが亡くなられて、別姓で御一緒に慈しみ合ってこられた方ですけれども、地区担当の民生委員の方が同居をしていたと
いう証明書を発行してくれないと。夫が死亡し、介護保険料の返金の通知が来ても、法定相続人ではないので受け取れずにそのままにしておくしかないと。これ
は、お二人で御一緒のころに配偶者控除などの問題でも具体的な不利益があっております。
あるいは、結婚したとき、保険証や通帳あるいは生命保険などなどの氏名変更でぐったり疲れて、職場では旧姓使用届を出して対応してきたけれども、会計業
務を担当したときに、旧姓では通帳が作れずに、金融機関の窓口からこういう名前の人は存在しませんと言われてすごくショックだったという声があります。
こうした精神的苦痛や不利益というのは、現実に通称使用が幾ら拡大をしていっても存在するわけですよね。
もう大臣には釈迦に説法になってしまいますけれども、昭和六十三年の最高裁判決の中に、氏名は、その個人から見れば、人が個人として尊重される基礎であ
り、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものというべきであるというくだりが、これは氏名の正確な呼称の問題についての判例ですけれ
ども、存在するわけです。
こうした状況の下で、同姓を法律上強制するのは人格権侵害じゃないかという声は、私はもっともなことだと思うんです。この条約違反の状態を解決するために速やかに立法解決をするべきだと思っておりますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(千葉景子君) 御指摘がございましたとおり、夫婦の内といいますのは、事実婚であれば、それによってまた不利益、様々な障壁がある、また、通称使用ということであれば、これまた別な形でのいろいろな難儀があると、こういうことでございます。
そういう意味では、すべての皆さんに強制をするというものではなく、多様な生き方あるいは選択を皆さんにしていただける幅を広げていこうということでも
あり、是非実現を果たしていきたいというふうに私も思っておりますので、皆さんの是非御理解を賜ればというふうに思っております。
○仁比聡平君 時間が参ってしまいまして、泉政務官にお尋ねをしようと思っていた項目の御答弁をいただけないのだろうと思います。残念なん
ですけれども、もう一つのフォローアップ項目のテーマについて、我が国で、日本の女性労働者の七割が妊娠、出産を契機に離職を余儀なくされていること、あ
るいは非正規労働者の七割が女性であり、女性労働者の半数が貧困ラインの年収レベル以下という収入しか得られていないというこの男女の賃金格差、ここは大
変な衝撃を持って委員会の委員の皆さんに受け止められたというふうにお伺いをしています。
こうした事態をなくしていくために、政府を挙げて全力を挙げて取り組んでいただきたいということを申し上げまして、泉政務官、申し訳ない、私の質問を終わります。
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