6月2日 憲法審査会
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
日本共産党は、選挙権年齢は改憲手続法とは関わりなく速やかに十八歳に引き下げるべきであるとかねてから主張をしてまいりました。
そこで、総務大臣にまずお尋ねをしたいと思うんですけれども、投票権年齢と公職選挙における選挙権年齢そして成年年齢及び少年法の適用年齢について、繰り返し衆議院でも、政府参考人から一致することが適当であるという立場が述べられてきました。これは言葉尻を捉えるわけじゃありませんが、一致しないのは不適当であるという趣旨であろうかと思うんですね。端的にその理由について、大臣、お答えいただけますか。
○国務大臣(新藤義孝君) この投票権年齢、国民投票法における投票権年齢、そして選挙権年齢、また民法の成年年齢、少年法の適用対象年齢、それぞれは立法趣旨が異なるわけでありますから、これらが理論上一致しなければならないものではないと。しかし、この選挙権年齢の引下げについて、私ども総務省といたしましては、成年や成人の権利と義務について定めた民法の成年年齢、そして少年法の適用対象年齢との整合性の観点から、これらと一致することが適当であり、引下げの時期についても一致することが望ましく、法律体系全体の整合性を図りながら検討を行うことが必要であると、このように考え、申し上げてきたところであります。あえて異ならせる合理的な理由が見出し難いということもございます。さらには、投票権年齢と選挙権年齢も合致していることが分かりやすいと、そういったことから望ましいと考えているわけでございます。
いずれにいたしましても、こうした年齢条項の見直しにつきましては、国民の基本的な権利であります。したがって、各党各派においての御議論が行われるものと承知をしておりますが、私どもとすれば、この立法府における御議論を、そして結論を出された場合に、それに基づいて適切に対応してまいりたいと、このように考えているわけでございます。
○仁比聡平君 法務大臣に、今の総務大臣の御答弁も踏まえてお尋ねしたいと思うんですけれども、新藤大臣からは、制度の趣旨が異なるのはそれはそうだろうと。だが、整合性の問題あるいは異ならせる合理的な理由は見出し難いといったお話もありまして、これまで伺っている法務省のお立場とこの総務省のお立場というのはやっぱり違うのかなというふうに聞こえるんですが、総務省が一致することが適当であるとおっしゃっていることと、法制審も踏まえて、法務省が一致していることが望ましいというふうにお答えになっているのは、これ意味が違うんでしょうかね。
○国務大臣(谷垣禎一君) 私どもの基本的立場も、新藤大臣がお答えになったことと違うわけではございません。一致することは確かに望ましい、しかし、立法趣旨は違うから論理的に一致しなければならないというものでもないと、こういう立場でございます。
そして、今の民法で申し上げますと、やはり先ほど白委員にも御答弁申し上げましたように、二十歳の成人年齢を十八歳に引き下げましたときの問題をやはり解消していく努力が必要でございまして、それには若干の時間が掛かるのではないかというふうに考えているところでございます。
○仁比聡平君 総務大臣に、ちょっと切り違え尋問のようで恐縮ですが、異ならせる合理的な理由は見出し難いというお話は、法務省の方から繰り返しあっています、例えば消費者保護だとか法教育だとかという、ここには一定時間が掛かるではないかとか、あるいは、国民世論を見たときに、成年年齢の引下げには慎重だという意見があるではないかと、こういう議論というのはその合理的な理由とはならないのか。
加えて、民法上の行為能力、これは未成年者が典型でしょうけれども、さきにお話もあったように、成年後見における場合など、被後見人あるいは被保佐人の公職選挙の選挙権制限というのはこれは裁判上も大問題となり、改められるということによって、民法上の行為能力の制限と選挙権を結び付けるという議論はもはやないだろうと私は思うんですけれども、これ、それでも異ならせる合理的な理由は見出し難いというお話になるんでしょうか。
○国務大臣(新藤義孝君) 私たちが申し上げておりますのは、制度として最終的に別々にすると、別々の方がよいと、こういう合理的な理由が見出し難いと申し上げているわけであります。これは一致した方が望ましいと、しかし、それは必ずしも一致しなければならないものではない。
したがって、各党各会派における国民的御議論をいただくことと制度的なそういった運用の推移を見ながらこれは検討がなされるべきものだと思っておりますし、現実に八党の合意によってそういったプロジェクトチームができているわけでありますから、そういう中でしっかりとした御議論を賜ればよいのではないかと、このように思っているということであります。
○仁比聡平君 ちょっと別の角度から両大臣の御見解を伺います。
それぞれの制度が立法趣旨が違う、理論的に一致する必要はないということで法務省が強くおっしゃり続けてきたわけですけれども、そうすると、憲法十五条三項に言われる「成年者による普通選挙」という言葉の意義ですね、「成年者による普通選挙」と字句上あれば、その成年年齢と公職選挙の年齢というのは一致しなければならないのかというような問題もあるかと思いますけれども、法務省はどうお考えなんでしょう。
○政府参考人(深山卓也君) ただいま、憲法十五条三項の「成年者による普通選挙を保障する。」というときの成年者と民法上の成年年齢の関係について御質問がありました。
これは、ある時期に法務省でも網羅的に憲法学説を調べたことがございますけれども、憲法学説上も、この成年者という概念と民法の成年というのは直接の関係はない、どちらかが下がったらどちらかが下がるという関係はないという考え方と、もう一つ、憲法が制定された当時既に、明治以来、日本の民法では成年は二十歳ということになっていた、民法上の成年年齢を考慮して民法上成年年齢に達している人を成年者という概念で表したという考え方、これがやはり有力な考え方、両者拮抗している状態でございます。
前者の考え方に立ちますと、これは立法趣旨も違っていて、言葉は一字違いだけれども、どちらかが下がったらどちらかが下がるというような論理的関係はないということになります。
後者の考え方、民法の成年に達した者を成年者と憲法は言っているという考え方に立ちますと、これは、先ほどの文言で「普通選挙を保障する。」といわゆる制度的保障をしている。憲法上保障されているのは、民法上成年に達した人には全員選挙権を与えなさいと。それよりも若い人たちに選挙権を与えることについては、この学説は挙げて、ほぼ例外を見たことはありませんけれども、憲法の趣旨からして、参政権を与えられる人を増やすことは趣旨に沿うことであって、憲法上保障されているのは二十歳、民法の成年年齢以上だけど、その下の例えば十八歳、十九歳の方に公職選挙法上の選挙権を与えることは憲法上は何も問題はない、むしろ望ましいというのがそちらの考え方に立ったときの説です。
したがって、私たちの整理、これは実は法制審議会で議論したときもそういう整理になりましたが、どちらの憲法上の理解に立っても、民法上の成年年齢が二十歳のままで公職選挙法上の選挙権の年齢が十八に下がるということは憲法上の問題は生じない、憲法違反にはならないということでございます。
○仁比聡平君 今の法制審ないし法務省の憲法十五条三項の理解というのは、これは、総務大臣、総務省も一緒なんでしょうか。
○政府参考人(安田充君) お答えいたします。
総務省といたしましても、憲法十五条三項は成年者による普通選挙を保障しておりますけれども、何歳からが成年者であるかについては法律に委ねておりまして、選挙権年齢と民法の成年年齢が理論上必ず一致しなければならないとは言えないと考えております。
○仁比聡平君 だったらば、なぜ現行法施行までの三年間あるいは今日までの七年間に政府としての議論がまとまらなかったんでしょうか。現行法附則三条は、施行まで、つまり三年間の一致をとされている。だけれども、これが今日までなされていないわけです。
総務省は、今日の答弁でも、法務省は必ずしも私どもと考え方が一緒ではなかったというような趣旨のことを述べておられるわけですよね。現在まで合意ができない、政府提案には至っていないということについて、衆議院の答弁で、内閣官房の年齢条項の見直しに関する検討委員会を担当しておられる政府参考人から、今なお政府部内で成案を得るに至っていないという御答弁もあります。
この改正案の附則によって、法律上の国民投票権年齢と選挙権年齢の一致という法的なリンクは切られることになります。にもかかわらず、施行後速やかに、あるいは確認書によって二年以内にと。この公職選挙権の年齢の引下げが実現できる保証というのは、これ両大臣、どこにあるんでしょう。
○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、若干総務省と法務省は今までの議論の中で力点の置き方が違っていたことは事実でございます。しかし、今お触れになったような八党の合意あるいは国会における議論を踏まえまして、先ほど来、理論的に一致させなければいかぬということはないけど、それが望ましいという、これは共通でございますので、先行して確かに国民投票法上は十八歳にしていただくとして、その後に、先ほど私が申し上げましたようないろんな懸念を取り除く手だてを講じて、それをそろえていこうという方向ではどちらも違いない立場に立っているのが現在でございます。
○国務大臣(新藤義孝君) 今、谷垣法務大臣がおっしゃったとおりでございますが、理論上必ずしも一致しなければならないものではないと。しかし、これは制度として国民が基本的権利の行使に当たる、皆さんが使うものでありますから、望ましいということで、我々、そこは政府内でも一致しているんだと思います。あとは、八党のこのプロジェクトチームの作業も含めてこれからの作業というものが必要であって、我々は目標、この方向性に向かってこれは努力をしていくべきではないかと、このように考えております。
○仁比聡平君 与党の中からは十八歳選挙権というのは駄目なんだというような議論も報道上は結構聞こえてくるところでありまして、一体どういうふうに今後なっていくのかということについては、私は今日も大変疑問を持っております。
最後に、総務大臣に一問。むしろ、懸念されているのは、国民投票権と選挙権が一致しないという状態が長期間継続するという事態なんですね。それは、今度の改正によって法的リンクを切るということになれば、そうなると。
例えば、小澤参考人は、憲法十五条、国民主権原理からすれば、政治的事項について判断能力を有するとされる者に対して平等に参政権を付与することが求められるのであって、この不一致が長期間継続する蓋然性のあるそういう制度は選挙権侵害、選挙権の平等原則侵害になるのではないかという問題を提起されました。
民主党の小西議員からは、前文は、憲法改正における国民主権を直接行使する主権者の範囲を画する国民投票権年齢と代議制を具体化する主権者の範囲を画する選挙権年齢とは本来一致すべきことを憲法前文は求めているのではないかという趣旨の御発言が前回ありまして、私、傾聴に値する御意見かと思うんですが。
総務大臣、こうした事態というのは不条理だと、国民投票は十八歳になってから行うのに、その改正案を発議する国会議員を選ぶ選挙は選挙権がないと、こんなの不条理じゃないかという若者たちの声にどうお答えになります。
○国務大臣(新藤義孝君) まず、何度も申し上げますけれども、これは国民的議論、各党各会派による国民の代表による御議論というものがまず非常に求められているという部分だと思います。あわせて、行政府、総務省といたしましては、そういった立法府の御議論を注視しながら、それに対して適切な対応をしてまいるということであります。
そして、この国民投票年齢につきましては、私どもは、選挙権年齢と他の年齢と一致していることが望ましいと、このように申し上げておるわけでありますが、仮にこの国民投票権年齢と選挙権年齢にずれが生じたとしても、それは国民投票権はできるだけ多くの国民が参加することが望ましいと考えられており、その趣旨に異なる点があるということ、さらには、これは、この選挙人名簿と投票人名簿はそれぞれ個別に整備されるわけでございまして、実務上そういったことは対応は可能ではないかと、このように考えているわけでございます。
○仁比聡平君 まだまだ議論は必要だと思います。
終わります。