○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
公訴時効の延長特例に関して、先週金曜日の本会議代表質問で、私が、本法案によっても、被害をようやく認識して捜査機関に相談した時点で公訴時効が成立しているという事態が起こるのではありませんかと質問したのに対して、大臣は、御指摘のような事態が生じないとは言えませんとお認めになっておられます。
この問題にも関わるんですが、午前中の参考人質疑で、武蔵野大学の小西先生が参考人として法律がモデルとしてきた被害者像は現実と懸け離れていると厳しく指摘をされた、そのことはこの改正案にも刺さっていると思うんですよね。特に、公訴時効に関わって、PTSD診断の平均持続期間が百十か月を超えているというこの知見というのは、私は重く受け止めるべきだと思います。PTSDと診断され続ける平均の期間だけでも十年になると。
となると、もちろん個々の被害者によって様々な状況があるわけですから、本会議で私が御紹介をしたスプリングの二〇二〇年実態調査にいう、挿入を伴う本来重大な性被害を被害と認識するのに二十六年以上掛かったという方が三十五人、三十一年以上掛かったという方も十九人ある。あるいは、被害の記憶そのものを長期にわたって喪失しておられた被害者もいらっしゃると。これが性被害の人格に対する深刻なダメージ、侵襲の重さなんだというところに立って附則、衆議院で修正をされましたけれども、二十条二項に言う性的な被害を申告することの困難さというこの問題をちゃんと捉えていく必要があると思うんですね。
そこで大臣に、この性被害、とりわけ幼少期、思春期の性的加害が被害者の人格にどんな負の影響を与えると法務省としては認識しておられるんでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) 大事な御指摘だと思います。
性犯罪につきましては、一般にその性質上、被害申告が困難であることなどから、他の犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいという特性がございます。
本法律案の立案に先立って行われました性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会の部会におきましては、性犯罪の被害者心理や精神医学についての知見を有する有識者が委員として参画したほか、若年時に被害に遭った性犯罪の被害当事者の方や性犯罪被害者に関する知見を有する専門家等からヒアリングを実施したものと聞いています。
そして、御指摘の幼少期等における性犯罪の被害の特性といたしまして、反復的、長期的な被害の影響で解離が生じ、被害についての記憶が失われる、犯罪に遭った場合もそれを性犯罪の被害と認識することができない、PTSDを発症しその症状が重いため被害について話すことができないといった点があり、それらが原因で被害を外部に表出することができなかったり、表出するのに時間を要する場合が多いといった御指摘がされているものと承知をいたしております。
○仁比聡平君 午前中も申し上げたんですけれども、六年前の法改正のときに山本潤参考人がこの場でお話をされた、今、そうした突き付けられてきた認識が法の趣旨として大臣の答弁として語られるようになったと。この六年間の間の隔世の感を私は本当に深く感じるんです。
なんだけれども、大臣も、今の答弁、そういう指摘がされているという、法務省自らが調査をし実態として整理をしてきているものではない、専門家がそういう指摘をしてきていると。もちろん、法制審の場でされているんですから、大変重いものなんですよ。なんだけれども、そういう指摘がされてきているということがオーソライズされつつあるというのが、まだ今の、今日の状況だと思うんですよね。
午前中、小西参考人は、そのPTSDというお話と併せて、急性期解離反応というお話もされました。感情感覚が麻痺してしまう、離人感、非現実感、あるいは、被害が長期にわたる場合は解離の慢性症状に加えてマインドコントロール様の支配が被害者に対してなされている状態になると。これは、被害時、なぜ抵抗しないのかについての説明として紹介をされたんですけれども、これ、なぜ申告できないのかというこの問題にも関わる知見だと私思うんですよね。
法制審の議論の中で、脳科学、脳科学の専門家の桝屋二郎准教授のヒアリングが行われていますけれども、小児期逆境体験が健康や寿命に及ぼすメカニズムというテーマで、幼い頃に受けたいろんな逆境体験、心の傷が神経発達の混乱を生んで、その神経発達の混乱のために、その後様々な社会的障害、例えば認知が少しほかの人とずれていったり、情緒面で落ち着かなくなっていったりと。そのことが更に社会的な不適応を生ずることになって、健康を害する。例えばお酒をすごく飲むとか、自傷に及ぶとか、性的な逸脱が出てくるなどの問題行動を経て病気の状態になり、更に不適応が深まってしまう、最終的に早く亡くなるなどのアメリカにおける大規模な調査によって得られた知見を御紹介になっています。
あるいは、様々なそうした虐待を受けると脳の一部が萎縮をしてしまうということ、そもそも人の脳の成熟というのは、生後二十年以上、研究によっては二十五年以上掛かって実っていくと、こうした知見が科学的に明らかになってきているわけですよね。
ですから、これを専門家の方から伺って、そうですねというだけじゃなくて、こうした観点を持って政府が私はしっかり実態を調査するということが必要だし、附則二十条の二項が求めている必要な調査というのはそういうものでなければならないと思うんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 本法律案では、今御指摘のように、衆議院における御審議の結果、附則が修正されて、政府において、施行後五年を経過した場合に施策の在り方について検討を加えること、より実証的な検討となるよう、性的被害の申告の困難さ等について必要な調査を行うことが定められるとしたわけであります。
我々といたしましては、こうした御審議の結果を踏まえて、本法律案が成立した場合には、御指摘の実態調査の方法や範囲などについても、関係府省庁とも連携し、適切に対応してまいりたいというふうに考えているところであります。
○仁比聡平君 衆議院やあるいは本会議での答弁からちょっとだけ踏み込まれて、方法や範囲という調査の方向性について御答弁になったことは大事なことだと受け止めたいと思うんですけれども。
そのことに関わって、本会議でも御紹介したNHKが昨年の三月から行った被害実態調査について、主要な三枚だけお手元に、皆さんにお配りいたしました。これ、僅か一月半で三万八千八十三件もの方々が、そして、その多くの方々が初めて回答しますと、そういうふうにお答えになってなされたものということで、とても大事な調査だと思うんですね。被害に遭ったときの年齢は、十代が五四・三%、十歳未満が二〇・三%で、二十歳までの間に七四・六%の方々が被害に遭っている。平均でも十五・一歳と。
こうした中で、たくさんの声がここに寄せられていますから、定性的な意味での被害者調査、エピソードの調査という意味でも極めて画期的といいますか、とても大切なものなんだと思うんですけれども、こうした大規模な国民的な調査というのをこれまで法務省として行ってこられたことはないと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘のような、いわゆる国民に向けてこういったことについて直接お尋ねするような調査というのは行っていないと承知しております。
○仁比聡平君 これまで私も求めてきましたけれども、検察が不起訴にする事案の中に様々な、今申し上げているような状況もあって不起訴になっているという事案もあるのではないですかという調査を求めてきましたが、これは刑事局長、どんな成果を上げているんですか。
不起訴事案についての集積と、その一定の分析をして、この間の検討会などで述べておられると思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(松下裕子君) 御指摘の点につきましては、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループにおきまして、御指摘のようなことに、実態調査に関連する調査の結果を収集したり被害当事者の方からヒアリングを実施するなどしたものでございまして、そういったことを踏まえて本法案の、法律案の作成に至ったというふうに理解しております。
○仁比聡平君 もう今日時間がありませんから、詳しくはそうした調査を皆さん当たっていただければと思いますけれども、つまり不起訴事案の調査については一定されていないわけじゃない、検証はされているということがこの六年間の間に行われたんですが、結局、アメリカが、先ほど御紹介したような大規模な国民的な調査というのは日本社会で行われたことがないんですよ。そこに、著しい暴行、脅迫が必要だとか抗拒不能にならなきゃ駄目だとかいうみたいな、身勝手な規範ですね、これが被害者を苦しめるという状況になってきて、それが社会の中に一定沈殿しているといいますか、規範化されちゃっているというところを、私、打ち破っていかないと、性犯罪の被害者が正当にその被害を回復していくということはできないんじゃないか、だからこそ公訴時効の期間はもっと延長しなきゃいけないんじゃないかと。
ドイツではそうした被害調査が行われて、時効、公訴時効は三十歳でしたか、まで動かないというふうになっているんですが、そのことについての認識を法務省に伺うと、ドイツ法がそうなっているということは認識していますという御答弁にどうやらとどまりそうなので。ですので、今回の法改正において法務省が、大臣もですけど、唯一挙げておられる内閣府の性暴力に関する調査、令和二年度で申告までに五年間というような大臣答弁もありますけれども、その調査についてちょっとお尋ねをしたいと思うんですけれども。
配付資料の続きに調査の概要をあえてちょっと紹介をしました。
これ、元々DV防止法だったり男女共同参画基本計画だったり、そういうものに基づいて、統計法的な一般調査として行ってきているものなんですよね。ですから、刑法の改正をどうすべきかということについての深掘りをした調査ではない、元々が。
その項目の中で、内閣府にお尋ねをしますけれども、相談ができない、やっと相談ができても相当な期間が掛かっているという実態は明らかだと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(畠山貴晃君) お答え申し上げます。
内閣府におきまして令和二年度に実施した男女間における暴力に関する調査では、無理やりに性交等をされた被害経験について調査をしており、無理やりに性交等をされた被害経験があったと回答のあった百四十二人について、複数回答可として被害の相談経験を尋ねているところ、いずれかの相談先に相談した方が五十二人、どこにも誰にも相談しなかった方が八十五人となっております。
相談したと回答された五十二人につきまして、複数回答可として相談までの期間について尋ねているところ、三日以内が二十四件、四日から一か月未満が十一件、一か月から一年未満が十六件、一年から五年未満が五件、十年以上が五件となっております。
○仁比聡平君 時間が来たんで、申し訳ないんですけれども、大臣、こうした内閣府の調査のこれまでの積み重ね、蓄積に、しっかりお願いもしてですね、法務省自らで国民的な大規模な調査ってなかなか難しいと思うんですよ。だから関係省庁と連携してと大臣おっしゃっていると思うんですよ。で、その主要な相手は、私、今御答弁された男女共同参画局だと思うんですよね。
大臣から是非お願いして、そういう調査をやりたいとおっしゃるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 先ほど御答弁申し上げたように、附則、衆議院の審議の結果の附則におきまして、より実証的な検討となるよう、性的被害の申告の困難さ等についての必要な調査を行うことと定めておりますので、先ほどの答弁と重なりますけど、御指摘の実態調査の方法や範囲などについて、関係府省庁とも連携し、適切に対応してまいりたいというところを深く理解していただきたいなと思います。
○仁比聡平君 更に踏み込んで、速やかに調査を始めるべきだということを申し上げて、今日は質問を終わります。
ありがとうございました。