【14.06.03.】法務委員会 改正少年院法の理念実現のため、抜本的増員を求める

186回国会質問 国会質問一覧

6月3日 法務委員会

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

 本法案は、広島少年院における深刻な人権侵害事件の反省も踏まえて、およそ六十五年ぶりに行われる抜本改正でございます。そこで、ちょっと通告したかどうかなんですけど、大臣に、この新法の理念、法案でいいますと一条に関わって少しお尋ねしたいと思うんですが。

 今回の法案は、これまで運用で積み重ねられてきた収容に伴う権利義務関係、あるいは矯正教育の法律上の制度化という形で明確にしようとするものだと思いますけれども、その理念について一条に規定がございます。先立って行われた有識者会議の表現をちょっと御紹介をしますと、日本国憲法と子どもの権利条約、そして少年法における少年の健全な育成を期すると。そうした理念、目的を示した上で、少年矯正のよって立つ理念とはというので、こうした表現があります。少年の最善の利益のために、個々の少年の人格の尊厳を尊重しつつ、再非行の防止を図るとともに、社会の健全な一員として円滑な社会生活を送ることができるよう成長発達を支援することであると。

 これはおおむねこの法の理念ないし目的と、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 仁比委員のおっしゃるとおりだと思います。

○仁比聡平君 そこで、その少年院が、今現状なかなか大変な、処遇困難な少年に向き合っているというその現状について少しお尋ねをしたいと思うんですけれども。

 現場で少し伺いますと、やっぱり収容される少年の質が激しく変化していると。従来ならば、特に一般少年院を中心に、寮生活や職業訓練などの集団処遇を基本として少年院での生活が行われるんですが、この集団処遇に適応できない少年が増えている。集団に入れない、したがって、個室で入院から出院までずっと生活せざるを得ない。本来、医療少年院での生活が適しているのではないかというふうに思われるような発達障害、様々な少年たちがいると思いますけれども、そうした少年たちも一般少年院に送致をされることが間々あって、そうすると、その子にとっても適応できなくて大変なんですけど、そのほかの子たちにとってみても集団生活が様々な形でひずみが出てくると、そうしたこともよく伺うわけです。

 この有識者会議の最近の少年の特性等という項目では、発達上の問題を抱える少年や虐待被害の体験があるとされる少年が増えているという指摘や、他者との関わりを持つことに困難があり、不適応感を内面に蓄積させがちな少年が目立つようになっているという指摘もある。家庭環境の面では、父母間の葛藤や経済的な苦境などを背景にして家族としての機能が低下をしていて、保護関係の調整に一層の配慮を要する事例が増えていると。そうした指摘がされているわけですね。

 こうした処遇困難な少年が増えているという指摘を踏まえて、今度の法案でいえば三十条だと思うんですが、少年院における矯正教育課程を法務大臣が定めるというふうにされています。現在のG例えば1だとか、VだとかPだとかHだとかというこの分類級と、それから現行のそれぞれの少年院における処遇体制が、今の現状の少年たちのこうした大きな変化に見合っているか。やっぱりそこにちょっと適合しないところもあるのではないか。その中で、本当だったらば医療少年院に送致をした方がいいなということがあるんだけれども、帰住先の近くにないとか、あるいは、先ほど来指摘をされているような医官の皆さんの体制がなかなか難しいとか、様々な事情で一般あるいは中等の少年院に送致をされるというようなことも起こっているのではないか。そうすると、処遇をする少年院にとってみると、やっぱり大変な困難が強いられるといいますか、何にしろ向き合わなきゃいけないということになるかと思うんですね。

 この矯正教育課程をこれから定めていくに当たっては、今日の少年院に入院をしている少年たちのそうした現状をよく踏まえて、どんなコースを設定するのか、あるいは全国各地の少年院それぞれについてどういう体制を整えるべきなのか。これ、理想を追いかけるためには、職員さんたちの抜本増員と、それから医官の皆さんの確保、充実、あるいは施設そのものの近代化といいますか、もう古い建物でどうにもならないというような、こういう人的、物的な充実が私は不可欠だと思うんですよね。

 これからのこの新法を施行していく上での、この矯正教育課程を少年たちの現状にしっかり見合ったものに整えていただきたい。そのための人的、物的な体制を抜本的に整えるべきではないかと私は思うんですが、大臣、よろしければ。

○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、今、仁比委員がおっしゃったように、この頃、少年院に入ってくる子供たちの状況を見ると、もちろん少年院では個別的な処遇と集団的処遇と両方をうまく組み合わせるわけですが、集団的処遇というよりも個別的処遇に重点を置かなければならないような者が増えてきていることはこれは事実でございます。

 一つは、いろいろな精神障害を有する者、それはさっきおっしゃった発達障害のような者、それから年少者も増えてきておりまして、まだ未熟でございますから、その処遇に言ってみれば手間と手数を要するということがあると思います。そのほか、暴行、虐待等によって心を開かないような者とか、非常にそういう子供たちが増えてきていると。

 そうすると、少年院の対応としては、一つは、昼間だけというわけにいかず、やはり二十四時間体制で対応しなければならないその必要性はますます大きくなってきていると言えると思います。それから、処遇プログラムも幾つか練り上げて、例えば覚醒剤であるとかあるいは性犯罪のプログラムというのを作ってまいりましたけど、さらに今後は、暴力等々いろいろプログラムを開発して、適切なきめ細やかな対応をしていかなければならないんだろうと思っております。

 それで、こういった密度の高い矯正教育をやっていくためには、一つはやっぱり人員でございますね。今もうかなり、先ほども御答弁の中で申し上げましたけれども、休暇を取る日数などを見てみましても平均的な公務員より取れていないということは、かなり負担が重くなっているということは、これは間違いのない事実だろうと思います。年次休暇の取得日数が少年院の職員は七・二日、それは国家公務員全体は平均は十三・三日でございますので、かなりそこに負荷が掛かっていることがうかがわれる。それから、施設も確かに老朽化しているものがございます。

 したがいまして、きめ細やかな処遇をする必要がある、増員等これから頑張っていかなければならないと、こう考えております。

○仁比聡平君 そうした入院している少年たちの現状、それから少年院が担う改善更生に向けた職務の重さからしたときに、この少年たちに向き合う法務教官の皆さんの日々の教育的な営み、あるいは無数の、今大臣からも二十四時間というお話がありましたが、二十四時間三百六十五日の少年院生活の中での無数の働きかけの積み重ねということ、つまり、法務教官の専門性あるいは教育力だとか処遇力に少年院の目的が達成されるかどうかってやっぱり負うところが極めて大きいと思うんですね。

 この法案で、確認ですけれども、局長、矯正教育についても、あるいは収容に伴う権利義務関係の明確化の点についても、少年院の長はという主語で記載がされている条文が多数ありますけれども、これはもちろん少年院長さんが一人で全てをやるなんていうのは、これはできるはずももちろんありませんし、少年一人一人に体当たりで向き合っている法務教官の皆さんの教育力ということがやっぱり本当に大切だということを考えても、この現場の法務教官の皆さんの意見、判断というのが十分に踏まえられたものでなければならないと思いますし、少年院長の権限の行使というのは。あるいは、その現場の法務教官の方に言わば委ねられているところもかなりあるのではないかと思うんですけれども、局長、いかがでしょう。

○政府参考人(西田博君) お答えいたします。

 御指摘のとおり、少年院法案におきましては、在院者の処遇に関しては少年院の長の権限により行われる旨の規定が多くございます。

 ただ、これは在院者の処遇について行政組織の長たる少年院長が責任を持って行うという趣旨でございまして、法律上明らかにする趣旨でございまして、現場の第一線で在院者の処遇に直接当たって、体ごと彼らの処遇に当たっているという法務教官などの少年院の職員の持つ専門性を重視することはもう当然でございまして、その専門的知識とか技術、この活用がなければ少年院の運営というものは絶対にできないというふうに私は思っております。

 したがいまして、今おっしゃったように、少年院長がいろんな判断をしたりいろんな新しいことをするにしても、現場の第一線の職員のこれまでの経験とか、当たってきた、実際に、例えば個別具体的な少年に対しての処遇の結果とか、そんなことがなくては少年院の長がいろんな決定ができないというふうに私は思っておりますので、その点は少年院の長といえども、現場の職員が日々やっている処遇とか経験とか能力というのは重視して仕事をしなければ少年院の運営はできないと、こんなふうに考えております。

○仁比聡平君 少し具体的に法案に沿って伺おうかなと思うんですが。

 例えば、三十七条に、在院者、少年たちの日課として余暇に充てられるべき時間帯というのが明記されました。これ、その余暇に充てられるべき時間帯そのものの教育効果ということも私よくあると思うんですけれども、実際に例えば現場で、余暇の過ごし方というのは子供によってそれぞれで、静かに本を読みたい、読書をしたいと思う子もいれば、その隣で、ラジオを大音量で聴かなきゃ気が済まないという子だったり、中には突然大声を出して騒いだりする子なんかがいると。

 これ、余暇なんだから自由じゃないかとか物を言っちゃならないじゃないかというような理解になると、何だか少年院としての目的に沿わないことになりかねない。だからといって、法務教官がその子たちの余暇の過ごし方について何か注意とか指導とかいうようなことをしようとすると、それは少年院長の許可を、一々決裁を得なきゃいけないのかというようなことになったら、もちろん間尺にも合わない。

 この三十七条の三項で言う援助を与えるものとするというのはそういう趣旨ではないのではないかなと思うんですけれども、これはどんなふうに理解したらいいんでしょうか。

○政府参考人(西田博君) お答えいたします。

 余暇時間帯と申しますのは、在院者が何らかの行動をすることが義務付けられていない時間帯というふうな意味でございます。余暇時間帯を含めまして在院者の日課というものを定めておりまして、集団生活でございますので、その日課に従っていろんな活動をさせるということになっております。これは、食事の時間ですとか睡眠の時間ですとか、そんな健康な規則正しい生活をするために必要なものでございます。

 もっとも、先ほど言われましたように、余暇時間帯は何らかの行動をすることが義務付けられていないからといって自由に過ごすことができるものではございません。全く放任されるものではなくて、少年院でございますので、規律及び秩序の維持の観点から生活及び行動に対する制限がなされることは当然でございます。それと、あと、援助ということがございましたけれども、在院者は未成熟であることも多いことから、自ら有意義にその時間を過ごすことが困難な場合もございます。

 したがいまして、少年院の長が適切な援助を与えるよう配慮するというふうにしておりますのは、具体的な援助として申し上げれば、例えば、自主的に行う通信教育の受講の機会の提供であるとか、映画鑑賞会の実施であるとか、球技大会の実施であるとか、そんなふうに、ある程度こんなことをやってはどうかといったことで援助をするということでございます。

 それから、先ほど大音量でという話もございましたけれども、余暇時間帯であっても、個々の在院者の具体的な行動等によっては、教官が適時にかつ臨機応変に指導しなければ矯正教育自体が成り立たない場合もございますので、日課に定められている矯正教育の時間帯以外の時間帯であっても矯正教育を行うことができる旨を三十七条の第二項で規定しておりまして、言ってみれば、生活指導を始め必要な矯正教育は余暇時間であったといえども臨機にしなきゃいけないときはできるということでございます。

○仁比聡平君 そうした法務教官の処遇力というのがやっぱり最前線で問われるんだなということだと思います。

 念のための確認ですけど、四十九条には、今度、できる限り戸外で適切な運動を行う機会を与えなければならないという規定がありまして、これそのものは大事な規定だと私は思うんですが、ただ、実際の少年の生活を考えると、一日、戸外での活動というのはたくさんあるカリキュラムになる場合があります。元々、体育の授業というか時間というのは、別の条文、二十八条で規定をされていますし、職業訓練などでも戸外で活動するという場合ももちろんあるわけですね。

 これ、現場で、例えば、このできる限り戸外での運動ということがしゃくし定規にやられると、一日中外に出しておいて、炎天下というわけにもいかないから、職業訓練の戸外の活動をちょっと割愛してこの運動の時間をつくらなきゃいけないかとか、そういうことも起こっているかのようなお話を伺ったんですが、その辺りは柔軟に考えられるのではないかと思いますが、いかがでしょう。

○政府参考人(西田博君) お答えいたします。

 元々、できる限り戸外で運動を行うということは、行動の自由を制限されております在院者にとって、健全な心身の成長を図る上で適切な運動を行う機会を与えることは重要であるということが前提で考えておりまして、先ほど言われました四十九条はその趣旨を明らかにしたものでございます。

 また、おっしゃいましたように、少年院におきましては、指導の中に体育指導というものがございまして、矯正教育として体育指導の一環として野外活動とか運動競技を行う場合もありますけれども、これも、先ほど言いました適切な運動と同様に、在院者の健全な心身の成長という面においては運動と同じ効果を持つわけですので、これについては、これを運動の機会を与えたものとすることを予定しておりまして、言ってみればタブって運動とか、そんなことは考えておりません。

○仁比聡平君 あと一つ、書籍の閲覧について伺いたいと思うんですけれども、寮に行くと本棚があって、たくさん寄贈されたものなんかも含めて本がありますよね。

 この中で、少年が関心を持って本を読んでいると。すごいじゃないかと、どうやら一冊読んだみたいだと。その感想なんかも聞きながら、だったらこの子にはこういう本も紹介したらどうかということで、例えば教官が自分で持っている本なんかを紹介する。こういうことは法務教官の教育的働きかけとして本当に大事なことなんじゃないかなと思うんですけれども、その一々を少年院長に、この子にこんな本を提供しようと思うがどうかというような許可などが要るものなんでしょうか。

○政府参考人(西田博君) お答えいたします。

 具体的にどういう案件かちょっとつぶさに分からないんですけれども、ただ、個々の少年にとってみますと、少年の方から見ると、あの少年はあの先生からこんな本をもらったとか、あるいは俺はもらっていないのにとかいったことが当然起こると思います。ですので、そういった意味で、許可と申しますか、上司の方にそういった話をして、いいよということでバランスを取るというか、そういった意味でそういった手続はしているかもしれません。

 ただ、先ほど申しましたように、どうしても狭い空間で彼らは二十四時間生活しているものですから、そういった先生からの一言というのは、非常に心強く感じるとともに、やっぱり、あの子にはそういう話があったのに自分にはなかったとか、そういったこともありますので、そういった意味である程度の、上司に相談をしてほしいとか、上司の許可を取ってほしいというのは、そういったことがあるんではないかなというふうに思います。

○仁比聡平君 法務教官の現場でのそうした少年に対する教育力というのを尊重しながらのお話なんだろうというふうに受け止めました。

 信書に関してなんですが、例えば親御さんに手紙を書くと、少年が。だけれども、その表現というのは、当然親と子の関係というのがいろいろ複雑なわけですから、子供のその文章の表現が親には伝わらないんじゃないかと。こういう書き方を、もうちょっとこういうふうに書いたらいいんじゃないかと、そうしたアドバイスを教官が行うというのは、これまでもやられてきていると思うんですけれども、それはこの信書の発受に関する権利義務関係を明確にした中で難しくなるんでしょうか。

○政府参考人(西田博君) お答えいたします。

 親御さんとのそういった信書のやり取りというのは、権利義務関係というよりも、むしろやはり少年にとっても、改善更生とか社会復帰で親元へ帰るといった面から非常に違った意味で有力な矯正教育手段だということも考えられますので、それはただ単に権利義務関係とか、あるいは規律、秩序の維持とかいったことで一律に子供に、その少年に、そんなことを書いてはいけないとか、こんなふうに書きなさいと言うわけではなくて、やはり前向きにその少年の処遇のために、改善更生のために指導をすることはできると思います。

○仁比聡平君 そうした法務教官の、例えば有識者会議でも、それから今日の答弁でも、複数指導体制の導入ということが強調もされているんですけれども、だけれども、現状の人的体制で複数指導体制を全ての少年院に広げていくと、極めてどうなるのかという思いを抱かざるを得ないんですね。

 これまで複数指導体制がつくられたのは六少年院というふうに伺っています。今後、全国にこれを広げていくためには本当に抜本的な増員が必要だと思いますし、現状の現場の様子を伺いますと、既に連続二十五時間勤務といった法務教官のシフトが法務省からいただいた資料でも明らかになっていますし、私が現場で伺うと、例えば朝九時から夜まで働いて、夜の十時から朝六時まで仮眠をした上で翌日の昼まで二十七時間半といった拘束というかシフトを組んでいると。

 先ほど研修というお話もありましたけど、今の職員体制で研修が行われれば、あるいは何らかの事情で出張ということになれば、そのシフトそのものがもう成り立たなくなってしまう。だから、当直は六日に一回というふうなことなんだけれども、実際には、一人が病気で休んだり出張だったりとなれば、三、四日に一度はそうした当直をせざるを得ないという中で法務教官の皆さんが少年たちと向き合って頑張っているということだと思うんですね。

 ちょっと時間がなくなって取り上げられませんが、残念ですけれども、今度独立法ができて、社会的にもその技能が本当に生かされることが期待される少年鑑別所の技官の皆さんの現実もそうだと思います。再鑑別だとか、あるいは保護との関係での鑑別技官の皆さんの役割をもっとという方向が出されているけれども、実際にはそれを実現するには本当に抜本的な増員が必要だと思うんですが、大臣、一言、最後、決意も伺って終わりたいと思います。

○委員長(荒木清寛君) 谷垣大臣、簡潔にお願いします。

○国務大臣(谷垣禎一君) 先ほども御答弁申し上げましたけれども、やはり個別処遇等々、きちっとやっていかなきゃならない領域が増えてきておりますので、増員に向けて努力をいたしたいと思います。

○仁比聡平君 終わります。


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