【14.06.12.】法務委員会 会社法質疑で、第3者割当とファンド規制について 質問

186回国会質問 国会質問一覧

 

○仁比聡平君
 日本共産党の仁比聡平でございます。
 会社法の改正案につきまして、五月の十五日それから五月の二十日の質疑で私は、略奪的ファンドと会社法の規制について、あるいはステークホルダーの利益保護の枠組みを構築すべきではないかという趣旨の質問をさせていただきました。つまり、不公正ファイナンスとか略奪的ファンドと呼ばれるそうしたやからが、我が国で上場企業から第三者割当て増資を引き受けて企業の支配権を握って、その企業から資金を吸い上げるといったケースが増えている、深刻な事態をもたらしているという中でこの規制をどう考えるのかという問題です。
 そこで、今日は第三者割当て増資について少しお尋ねしたいと思うんですけれども、改正案の二百六条の二で、この第三者割当て増資に当たっての既存株主保護の規定が新設されるということになっています。これは、ちょっと簡潔に言いますと、公開会社が第三者割当ての増資を行うときに、募集株式の引受人が全ての株主の議決権の二分の一を超えるということになるような募集を行う、そのときには、株主に対する通知や公告などの情報開示、そして一〇%以上の株主が反対するという場合には株主総会の決議による承認を必要とする、そういう趣旨の規定なんだろうと思うんです。
 そこで、まず民事局長にお尋ねしたいのがこの要件なんですね。そういう第三者割当てによる新株発行を行った、増資を行った後に二分の一を超える株主が生まれるといいますか、それが第三者になるという場合に限るんだという、この二分の一を超えるという基準にしたのはなぜなんでしょうか。

○政府参考人(深山卓也君)
 まず、現行法の立て付けから御説明をしたいと思いますが、現行法におきましては、もう御案内のとおりですけれども、機動的な資金調達を行うためにいわゆる授権資本制度が取られております。公開会社では、払込金額が引受人にとって特に有利な価格であるいわゆる有利発行でない限りは、定款に定められた発行可能株式総数の枠内で取締役会決議によって株式の発行を決定することができると。また、発行する株式の割当てについても、株主総会決議を要するものとはされておらず、取締役がこれを決定することができるものとされていると、これが現行の状態です。
 ところが、こういう現行法の下で大規模な募集株式の発行がありますと、支配株主の異動ということが生ずることがもちろんございます。ところが、支配株主が異動するということになりますと、公開会社の経営の在り方に根本的な重大な影響を与えるということになり得ることですので、そういった株式の割当てについては、既存の株主に対する情報開示を充実させるとともに、その意思を問うための手続を設けるべきであるという指摘、これはかねてよりされておりました。
 そこで、こういった指摘に応えるというのが今回の改正法の内容でございまして、株式の割当てにより株式の引受人となった者が株式の発行の結果として公開会社の総株主の議決権の過半数を有することになる場合、つまり支配をする場合に、株主に対して、その引受人の氏名等々の情報や引き受けた株主の議決権の数などの事項を通知すると、また、それを前提として、十分の一以上の議決権を有する株主から反対の通知があった場合には、その引受人に対する割当てについて総会決議による承認を要すると、こういう制度を設けたものでございます。

○仁比聡平君
 全体の趣旨や枠組みというのは今局長が御説明になられたことなんだろうと思うんです。大臣も、先ほど行田委員への御答弁でそうしたお話がありました。
 もう一度、私、絞って伺いますけど、その要件を二分の一超としたのはなぜなのか。この五〇%以上の新たな第三者といいますか、既存の人がたくさん受けてということもあるのかもしれませんが、その支配権の移動ということの基準を二分の一を超えるというところに置いた根拠というのは何なのかということなんです。

○国務大臣(谷垣禎一君)
 これは、先ほど深山民事局長が御答弁いたしましたように、要するに、支配株主の異動は大変公開会社の経営へ大きく影響を与えると。そこで、一定の場合には情報開示が株主に対して必要だ、場合によっては株主の意思を問うことも必要だと。そこで、どういう場合にするかということですが、基準は客観的、形式的な基準でなければいけないと。
 それで、改正法案では、引受人の議決の保有割合でどうするかということを決めようとしているわけですが、法制審議会の議論の中で、規律の対象となる議決権の保有割合についてはいろいろな議論がございまして、三分の一超にすべきであるという、こういう御意見も確かにございました。しかし、多数意見は、一律に支配権の移動があったと言えるための基準としては三分の一超では足りないと、過半数とするのが適切である、こういう御意見が多数意見でございました。そこで今回のような内容といたしたという次第でございます。

○仁比聡平君
 今大臣から御答弁の中に触れられました、三分の一超とすべきではないのかという意見に私は実は賛成なんですね。というのは、三分の一超の株式を保有するということになれば、会社の重要事項についての求められる特別決議が成立しないという拒否権を持つことになるわけですよね。
 となれば、会社の一般的な経営というのはもちろんのことですが、こうした第三者割当て増資が行われる場面がどういう場合が想定されるかということを考えると、わざわざ、先ほども御議論がありましたけれども、四項ただし書に、会社の事業継続のために緊急の必要のある場合についてのただし書が置かれているように、会社経営がとりわけ資金繰りなどの面において深刻な状況にあるという場合に、第三者の資本を会社に増資をすることによって何とかその危機を乗り切ろうというような場面が想定もされるわけじゃないですか。
 こういうときに、第三者割当てを引き受けて会社に参加してくる、これ略奪ファンドの場合は介入してくるわけですけれども、そうした場合に、五〇%超の支配比率を確保する必要はないんですよね。特別決議を拒否できるというその三分の一超の支配率を有すれば、実際に、私が取り上げてまいりました、APFというファンドに介入され今深刻な事態になっている千葉県の昭和ゴムなどの事例でいいますと、第三者割当てによってAPFグループが三五・七九%の支配率を持つことになった、そのことによって、その悪質ファンドの代表が社外取締役になり、その弟はCEOになりなどの過半数の役員を老舗であるその事業会社に送り込むということになったわけです。現実に経営権はそこで確保できるわけですね。
 そこで行われたのは、会社資産を、もう余り繰り返しませんけれども、悪質な手口で流出させたということであって、結局、この第三者割当て増資を、このAPFグループが行ったものをトータルで見れば、虚偽の増資だったということです。会社を立て直し事業を本当にうまく発展させていくための資本の提供ではなくて、そうやって増資によって介入することによって経営権を握って事業会社の資産を食い物にするという、私は虚偽の増資だと思うんですね。こうしたやり口、手口が行われるんだというのが現行の第三者割当てのありようなんだと思うんですよ。現実に上場会社で、今も上場廃止されていないわけですけれども、この会社、だから、現実にこういう行動が言わば野放しになっているわけですね。
 これを今度の法改正で既存株主を保護しようという方向の改正をするということは私はつまり賛成なんですが、なぜその基準が五〇%超なのかと。特別決議を否決できるという、つまり、会社が重大な状況にあるときに、その将来を左右するような決議は三分の一超あれば否決できますから、そうすれば会社の支配権は握れるじゃないですか。だったらば、その三分の一超を握る第三者割当て増資をやるというときには、既存株主の保護はこれはする必要があるんじゃないでしょうかという問題意識なんですけど、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(谷垣禎一君)
 これは、日本はある意味でアメリカの会社法制度と共通なところがございまして、ヨーロッパはまたちょっと違う立て付けをしているんだと思います。余り私、そういう日本やアメリカの会社法の流れの中で今まで取締役会だけでできるとしていたのを、少しヨーロッパに近づけたというか、そういう方に振ったんだと思いますが、余り知ったかぶりして申し上げてもいけませんので、不足のところは事務方に補ってもらいたいと思います。

○仁比聡平君
 局長にその点もちょっと伺えればお伺いをしたいと思っていますので、今日、お手元に法務省に御準備をいただきましたアメリカのこの問題での法制について資料をお配りしています。
 私なりにちょっと勉強をしてみますと、やっぱり法制度というのは、お国、お国という、お国柄というのがあるもので、アメリカでこうした問題がどういうふうになっているかというと、私もちょっとにわか勉強ですから、局長が違うとおっしゃるなら教えてもらいたいと思うんですけれども、今申し上げたような既存株主の権利侵害というのは、増資をする場合にも、発行される新株を既存株主にも割り当てると、第三者にも割り当てるが現在の株主にも割り当てるという増資の仕方をすれば起こらないわけですね。
 それで、アメリカ法制でいうと、株主利益を侵害するような株式発行は信認義務違反であるという考え方が古くから確立をしていて、私が申し上げているような株式の不公正発行は、これ信認義務違反である。したがって、アメリカ法制でいう集団訴訟、クラスアクションの対象とされるんだと。その下で、研究者によりますと、株主の新株引受権は、遅くとも一八〇七年には慣習法上当然であると認められ、一九二二年には最高裁判例においても確認されているということなんですよ。
 イギリスあるいはヨーロッパでいいますと、一九七六年にEU会社法第二次指令というのが採択をされていて、ここでは新株引受権を会社法に明記するということになっているそうです。そして、二〇〇六年に成立といいますか、イギリス法制ですから、改正とか成立とかいろいろあるんでしょうけれども、二〇〇六年のイギリス会社法によれば、既存株主にその持分割合に応じて第三者と同等か、それよりも有利な条件で割り当てなければ第三者割当て増資はできないという明文の規定が置かれることになっているんだということです。
 つまり、明文規定があるイギリスでも、それからアメリカ法制でも、実際には、既存株主が第三者に先んじて、あるいは第三者よりも有利な条件でその持分割合に応じて新株を引き受ける権利がこれが確立しているわけですね。
 私は、こうした考え方を日本の会社法においても、今回の改正案がそうなっていないのはなっていないんですが、これ導入すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(深山卓也君)
 まず、最初にお答えをしなくちゃいけないのは、諸外国の法制というのはなかなか十分理解するのは難しいので、私がこれからお話しすることもやや文献等に基づく概略的なお話です。
 それから、委員が示された資料、これはアメリカの法制として我々が御提供申し上げたものですが、アメリカの会社法で最も使われているデラウェア州の会社法の規制のことを書いておりまして、御案内のとおり、州ごとに違います、会社法制もですね。ですから、デラウェア州法は最も著明な会社法ですけれども、デラウェア州法では、定款に記載された範囲内の数量の株式の発行であれば、取締役の決定で、つまり株主総会の決議を経ることなく発行できる。日本は、これは授権資本の枠内で、つまり発行済株式の最大四倍までしか枠がありませんけれども、デラウェア州法はどうもその枠すらない。機動的な資金調達に極めて傾いた形の法制のようです。他方で、証券取引所の規則でこういう規定がされていると。証券取引所の規制は、東証でも、類似の規制が日本でもされているということです。
 ですから、アメリカは、先ほどちょっと言われた信認義務違反になる不公正発行、これは、我が国の新株発行の差止め事由でも不公正発行がございます。そこでいう不公正発行というのは、現在の経営陣が専ら経営支配を維持するため、そういう目的でやる新株発行というのは、経営を委ねられた人が自分で株主をつくり出す。自分を支持する株主をつくり出す行為ですから、これはまさに不公正発行で差止めの対象になるという、そういう意味での不公正発行ではないかと、それも推測ですけど、思います。
 他方で、ヨーロッパですが、これも今委員が御指摘のとおり、詳細は承知していないんですけれども、イギリス、ドイツ、フランスでは、法律上原則として株主が株式の割当てを受ける権利があるんだと、こういう原則的な立場に立って、この権利を排除するには、国によって少しずつ違いはありますけど、株主総会の決議が必要とされていると。元々イギリスは英米法でアメリカに近い法制だったものが、これも御指摘のEU指令によって、EUの統一的なルールということで、大陸法のほかの国々が株主の割当てを受ける権利というのを原則として認めているということから、そういう指令が出され、イギリスもそれに従った法的な手当てをして、現在ではヨーロッパの諸国は、今私が申し上げたように、株主割当て権があることを前提として、それを排斥する第三者割当て増資をするには株主総会の決議が必要だと、こういう建前になっているということです。
 それで、我が国の話ですけれども、我が国はアメリカ法の影響を受け、御案内のとおり、授権資本制度が取られるまでは、増資をするには定款変更が必要で特別決議が必要だったというのが戦前の日本の法制、これはドイツからきっと来たんだと思われます。その後、授権資本制度を取って、機動的な資金調達に傾いた法制を取って現在まで来ました。つまり、最高四倍までの授権資本の枠内で取締役会の判断で公開会社では増資ができるということです。
 そのことのやはり問題点が、機動的な資金調達というのはそれは悪いことではないけれども、支配権が移るというような重大な既存株主にとっての影響がある場合には、そこはやはり今回のようなことを設けてはどうかという議論が学界、実務界に徐々に高まってきて今回の改正に結び付いたと思っておりますが、そのときの割合で三分の一というのも一つの基準ではないかと。
 それは、特別決議を阻止できる、拒否権を持つというのはおっしゃったとおりだと思います。ただ、我が国で一般に会社法上支配権と言ったときには、五〇%基準、要するに過半数支配をすれば普通決議は自分だけで決められますので、普通決議事項も全部自分で決められるという意味で五〇%ということで、今回そういう仕切りにしていますが、その支配というのは、厳密に考えていきますと、確かに三分の一でもある程度の大きな力を持つ、過半数ではもちろんいわゆる会社支配ができる、三分の二を超えれば完全な特別決議を自分だけで成立させることができるというふうに、支配の程度というのは割合に応じていろいろだと思いますが、取りあえず今回は、いわゆる会社を支配する五〇%基準をもって、今まで四倍までの範囲で自由にできた公開会社の増資にこういう枠をはめていこうと、こういうことで議論がまとまったということでございます。

○仁比聡平君
 少し踏み込んでといいますか、お話を伺えたんですけれども、とはいえ、結局、三分の一超で特別決議の拒否権を持つというのは、言ってみれば国連の安保理理事国のようなものだと。
 どうしてこういうことが問題になってきたか、あるいは、ニューヨーク証券取引所の規制だとか東証の規制というのが出てきたのかと。これ、東京証券取引所の規制とニューヨークの証券取引所の規制って、私は同じとは思えないんですね。ニューヨークの規制は、これ、二〇%超の株式発行の場合は株主総会の承認を必要としているんです。だけれども、東証の規制の方は、独立した第三者委員会などからの客観的な意見の入手であればいいという話で、これも私、これから勉強していきたいと思うんですけど、例えば社外役員などが集まっている委員会みたいなのをつくればそれでオーケーというようなことにどうやらなっているようで、ですから私が繰り返し取り上げているような事案がずっと横行するわけですよ。
 その上にあるように、希釈化率が三〇〇%を超えるときって、先ほどの授権資本制度の枠は四倍というけど、とんでもないじゃないですか、この三〇〇%って。こんなような本当にひどい第三者割当てが現実に起こってきたからこうした規制をせざるを得なくなっているんですけど、それでも、こうしたMアンドAで第三者割当てが株主の権利を著しく毀損するということがあらわになって、社会問題にもなって、日本の市場で大問題だということになりながら、二〇〇九年にこれ東証の規制が行われているんですね。
 私が知るところでは、既にその前に、二〇〇六年の三月に、東証が、二〇%超の第三者割当て増資について株主総会の事前承認を求めようと、そういう規制をつくろうということを提案をしたことがあるようですが、そのときに猛然と反対をしたのが経団連などの上場企業の側だということです。会社法が授権資本制度で認めているのに証券市場が規制するのは越権行為だといったことがその当時唱えられたということなんですけれども。
 授権資本制度による機動性というのは、これは会社法制としてそれはそれなりの存在理由があるんだと思うんですが、何しろ市場はどんどんどんどん変化して、金融工学だとかMアンドAだとか、そういうような手法、手法というか術策が様々に行われるようになって、それが経済を前に発展させるんだったらいいけれども、こうやってファンドによる略奪というのはこれ食い物にするという形で行われるわけじゃないですか。ここに規制が掛からないようなことだと、英米ではそれはできないという下で、日本の企業が言わばターゲットにされると、そうなってくると思うんですよ。
 私は、そんなことにならないように、今回の改正ではそうなっていませんが、あの英米や世界の規制をよく日本の法務省としても研究して、一層より良く改正をしていくべきだと思いますが、大臣、最後伺って、質問を終わります。

○国務大臣(谷垣禎一君)
 先ほど民事局長が御答弁を申し上げたように、従来の我が国の考え方は、株主は余り自分の会社の持ち株比率の動向等には関心がそれほどないんではないかということの前提の上に、機動的な資金調達という方に重きを置いていたと。しかし、先ほど来御議論のように、いろいろな問題が出てきて、やはり支配株主が変わるようなときには情報も出さなきゃいけないと、ある程度の手続も必要だろうというので今度の改正になったわけでございます。
 そこで、今、仁比委員もいろいろな問題点の御指摘をされました。私どもも、この改正が起こりましたら、改正の後、やはりこの趣旨を踏まえた適切な運営を図っていかなきゃなりませんし、それとともに、今までの流れからちょっと反対の方向に少し振ったわけですが、こういったことが更にどういう効果なり問題を生じているかはよく研究していきたいと思っております。

○仁比聡平君
 終わります。


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