○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
問題になっております難民審査参与員が関与する不服申立て手続について今日お尋ねしたいと思います。
議場の皆さんには配付をしている資料の一番最後に難民認定手続の概要をお配りをしておりますけれども、つまり、今からちょっと議論をするのは、入管が難民認定申請に対して不認定の処分をすると、これに対して、行政不服審査法に基づく不服申立て、審査請求と呼ばれますけれども、この審査請求の手続という場面なんですね。
まず、お配りをしていますが、今年の三月に大阪地裁で、ウガンダ人の、ウガンダ国籍のレズビアン当事者に対して難民認定を不認定にした、難民申請を不認定にした入管庁の判断が、これが覆されるという判決があり、確定をいたしました。
この件について二十五日の参考人質疑で渡邉参考人が紹介をされましたけれども、口頭意見陳述が実施をされなかったと、そこには、その理由として、申立人の主張に係る事実が真実であっても、何らの難民となる事由を包含していないという理由が示されたことについて驚愕だと、驚愕の理由が示されているというふうに述べられましたけれども、まず、西山次長、そうした理由で口頭意見陳述を行わなかったと、これは事実ですね。
○政府参考人(西山卓爾君) 今委員が御指摘いただいたのは、法令にそのように定められているものでございまして、私どもとしては、参与員が法令にのっとって口頭意見陳述の機会を与えないこととしたというふうに承知をしております。
○仁比聡平君 今お話あったように口頭意見陳述の機会を与えないこととしたんですよ、難民審査参与員が。
資料の三枚目に入管がつかんでいた事実の概要というのがあるわけですけれども、この申請者がレズビアンであること、そして、本国において同性愛が違法とされており、警察から三か月身柄拘束をされ暴行を受けたこと、帰国した場合、逮捕され三十年の懲役刑に処せられるおそれがあると主張していることなどは、これつまり一次審査で認識をしていたということだと思うんですけれども、難民参与員は合理的な説明をしているとは認められないというふうに考えたんだと思うんですが、これ、インタビューもせずに合理的な説明をしているとは認められないと、申立てに信憑性は認められないというふうにして不認定の処分をした。
これ、大阪地裁の判決を受けて、入管庁としてはこの判断について反省はないんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 御指摘の判決につきましては、その詳細は個別事案であることからお答えは差し控えますが、訴訟の段階で原告から新たに提供された証拠を原告の供述の信用性を裏付けるものとして難民不認定処分を取り消す判決がなされたものと承知をいたしております。すなわち、難民不認定処分時及び審査請求時と訴訟における事実審の口頭弁論終結時とでは前提となる資料等が異なるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難と考えております。
○仁比聡平君 そうおっしゃいますけどね、入管庁あるいは法務大臣の処分までの間に入手あるいは接触ができない、アクセスできなかったものなんですか、その新たな情報というのは。
○政府参考人(西山卓爾君) 個別の事案でございますので、お答えを差し控えさせていただきます。
○仁比聡平君 裁判で提出された証拠、それを新たな証拠と言うんだったらば、それはそういう、それに基づいて裁判所は判断したんでしょうけれども、それ、ウガンダ人のこの当事者が難民認定申請を申し立てている段階で、入管庁として当然把握できた情報なんじゃないんですか。私は強く疑っているんですね。
地裁判決の結論の部分は今お手元に、四枚目の、抜粋を私の方で作りました。
判決は、ウガンダにおいては、同性間の性行為については合意によるものであっても終身刑という重い刑罰を科する対象とするなどするものであり、同性愛行為そのものを違法と捉えている、すなわち同性愛者を、その性的指向に着目して、そうでない者と区別される一つの人的範疇と捉えた上で、この範疇に属する者を、上記のとおり、刑罰を科する対象とするなどしていると言える、このような事情が認められる本件においては、同性愛者であることをもって、上記の特定の社会的集団の構成員であることに該当すると解するのが相当であると。
難民該当性の難民条約上の国際基準にまず当てはまるじゃないかということを判断をした上で、続けてこう言います。
ウガンダでは、同性愛者に対する差別的意識が強く、これがウガンダの警察組織などの国家機関の内部にも残存しており、ウガンダ刑法百四十五条を適用して逮捕する場合があるほか、他の法令を適用して恣意的な身柄拘束をする可能性があったと言える、このようなウガンダの情勢は現在においても余り変わっていない、原告がレズビアンであることを理由に、E警察署の警察官らに逮捕、勾留され、棒で殴られるなどの暴行を受け、相当な傷害を負ったにもかかわらず、敗血症に至るなど重症化するまで、相当長期間にわたって、適切な医療を受けられないまま、身柄を拘束されていたことが認められることからすると、原告がウガンダに帰国すれば、同様に、原告がレズビアンであることを理由に警察官らに逮捕、勾留され、暴行を受けるおそれがあると言えるので、通常人が原告の立場に置かれた場合にも上記のような暴行を受ける恐怖を抱くような客観的事情が存在すると言えると。
当然だと思います。この判決を基礎付ける事情というのは、これは一次審あるいはこの不服申立ての手続の中で当然把握できたはずじゃありませんか、次長。
○政府参考人(西山卓爾君) 繰り返しになりますが、個別事案の詳細についてはお答えを差し控えますが、まず、一般論として、その上で申し上げますと、難民該当性は、申請者から提出された証拠資料だけを参考にするのでなく、申請者の供述等の個別的事情及び国籍国等における一般的事情の一切を総合評価して判断すべきものと考えております。
また、例えば、国籍国等においてある法令が存在し、これが適用されることにより迫害が生じ得る場合においては、当該法令の具体的な適用状況や、申請者と同様の立場に置かれた者が当該法令の適用によって迫害を受けているかどうか等の事情を検討することになります。
その上で、先ほども申し上げたように、この御指摘の判決は、訴訟の段階で原告から新たに提出された証拠、これが原告の供述の信用性を裏付けるものと評価された上でこのような判決になったというふうに承知をしております。
○仁比聡平君 原告の供述、難民認定申請者の供述は信用すべきものだったんですよ。供述に信憑性があったんですよ。それは、裁判のときも、そして難民認定申請のときから信用すべきものだったんですよ。それを口頭審理も行わずに不認定にしたと、直ちに送還すべき者だと判断したと、そのことについて何の反省もないのかと私は聞いているんです。
この判決が証拠として詳しく認定したもののうち、ウガンダ国内の人権擁護NGO、HRAPFという団体のレポートがあります。このレポートは、判決によると、英国内務省、オランダ司法・安全保障省、フィンランド移民庁、ドイツ連邦移民・難民庁、そして米国国務省などの人権レポートなり、あるいは難民認定の判断に基礎付けるような情報としてこれ共有されている情報なんですね。
大臣、ちょっと聞いていただきたいんですが、判決によると、そのHRAPF報告書について、被告、国ですね、これ、被告、国の代表は大臣なんですよ、齋藤健になっているんですが、この報告書におよそ証拠としての価値はないと裁判上主張しておられる。各国が難民条約に基づく、保護すべきは保護しなきゃいけないと、この義務に基づいて各国が位置付けているといいますか、このウガンダの人権擁護NGOの情報に対して国がおよそ証拠としての価値はないと裁判で主張し続けたと、これ、とんでもなくないですか。
私は、このことは、入管庁における難民認定の審査に当たっての出身国情報、これがまともに審査されていないということを示しているんじゃないかと思いますけれど、大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 済みません、ちょっと申し訳ないですけど、今初めてこの報告書の話聞きましたので、この場では事実関係を確認させてくださいとしか申し上げようがないです。
○仁比聡平君 この地裁判決が入管の判断を覆したということについての認識を問うという通告を私しておりましてね、つまり、このテーマの重さというのは、難民認定申請に対する審査が出身国情報に基づいて申請者の供述の信憑性を本当に真剣に審査できているのかと、これできていないからこうなっているじゃないかということなんですよね。だから、そういう事案に対して口頭審査を行わなかったという、そのことを渡邉参考人は驚愕の理由だと言っているんです。
判決の中身や事案の経過は改めて大臣調べていただいて、次の機会に認識をお尋ねしたいと思いますけれども、この口頭意見陳述というインタビューの重要性について、さきの参考人質疑で、小尾参考人も、そして渡邉参考人始め阿部参考人も極めて重要な問題提起をされています。その中で、渡邉参考人こうおっしゃっていまして、インタビューの際に、膨大な出身国情報、これを全て難民調査官は把握していないといけない、少なくともウガンダの同性愛者が抱えている困難というものを理解した上でそのインタビューに臨まなきゃいけない、何もないままで質問して個別事情を聞いていっても、その人の危険性は浮き彫りにできないと。
そのとおりなんですよ。世界にはいろんな国があって、レズビアンだというだけで暴行、脅迫を加えられる、敗血症になるぐらいまで残酷な拷問的なことを受ける、それを憲法やあるいは刑法がそれを支えているとか、大統領がそれ推進しているとか、日本で、どうですか、ちゃんと調べなかったら、申請者がどういう状況で迫害のおそれがある、恐怖を抱いているというその十分な理由があるかどうかって判断できないじゃないですか。その重要な情報をおよそ証拠としての価値はないなどとあくまで裁判上も主張し続けるような入管に、私は難民認定申請の適正な判断を期待するというのは私、間違いだと思いますが、大臣、もう一回、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 済みません、繰り返しになりますけど、どういう主張をどういうふうにしていたかというのを、事実関係確認させていただかないと何ともコメントしようがないので、そこは御容赦いただけたらと思います。
○仁比聡平君 是非よく調べて考えていただきたいと思うんですけれども。
そこで、難民審査参与員の事件の配点、配分が一体どんなことで行われているのかということで今日も議論が続いているわけですけれども、先ほどの牧山理事の質問に対して西山次長は、迅速な処理が可能かつ相当な事件として臨時班に配分するという、これ誰が配分するのかということについて、入管庁においてというふうに御答弁をされました。
これ、入管庁においてというのは、具体的にはどこがやるんですか、入管庁の中の。
○政府参考人(西山卓爾君) 具体的な検討は担当の課において行います。
○仁比聡平君 担当の課というのがどこですかと聞いているんです。
○政府参考人(西山卓爾君) 審判課でございます。
○仁比聡平君 それは本省の審判課ということですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 入管庁出入国管理部審判課でございます。
○仁比聡平君 その判断と、現場の入管、一次審査を担う入管、多くの事案で、例えば東京入管、東京入管はその事件の配分には関わらないんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほど御答弁したように、法務大臣の権限でございますけれども、本庁において運用を行っておりますので、本庁で判断をしているところでございます。
○仁比聡平君 もうそれが本当に、実質的な判断が、何件でしたっけ、三千六十五件でしたっけ、そういう数を本庁の審判課が逐一全部調べ直して、迅速な処理が可能かつ相当な事件という判断をしているんですか。
この振り分けの基準というのは、これ以上はないとおっしゃいましたよね、さっき。配付資料の、皆さん、九ページ、ちょっと御覧いただきたいと思うんですけれども、これは、平成二十九年に入管庁が、難民認定制度の濫用・誤用的な再申請者の帰国促進に係る措置の試行についてと称して、東京入管でそうした取組のトライアルをやると、試行をやるということの詳細な通達なんですね。
二枚目のところを御覧いただいたら分かると思いますけれども、東京入管の次長を統括者として、審理監理官、警備監理官を補助者、そして、難民調査、違反審査、審判という各首席審査官、調査第三部門、処遇部門、執行第一部門の各首席入国警備官を部門責任者とする、つまり東京入管挙げての体制をつくって、この濫用・誤用的な難民認定申請ではないかというんでしょうかね、の対象者を決めて、対象者を選択して、選定して、ごめんなさい、選定して、で、速やかな難民、じゃない、速やかな送還につなげていくというものになっていて、後でよく御検討いただければ、まるでベルトコンベヤー式のようだということがお分かりになるんじゃないかと思うんですが。
その中で、この九ページのところ、今質問をしている審査請求について、難民審査参与員事務局は、難民不認定処分に対する審査請求があったときは、本省審判課と協力して、措置対象者に係る審査請求案件を優先処理することとし、措置対象者が口頭意見陳述を放棄したとき又は指名された難民審査参与員が口頭意見陳述を実施しないことを決定したときは、難民審査参与員による書面審理及び難民審査参与員からの意見書の提出を経た上で、速やかに当該案件を本省に進達するという役割を難民審査参与員事務局が担うことになっていますよね。
この難民審査参与員事務局というのは、これは一体どこにあるんですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 地方局の東京局と名古屋局と大阪局に事務局ございます。
○仁比聡平君 昨日、東京入管で視察をしたときに、この不服申立ての手続に東京入管はどのような関わり方をするのかという質問で、難民審査参与員の日程調整だったり部屋の確保だったり、そうした事務局的な仕事は東京入管がやるんですというお話でした。加えて、一次審査でどういう審査をしたのかということについても、この不服申立ての中で東京入管が関与するということでした。
この事務局は膨大な数の審査をしてきているわけですよね、事務局というか東京入管が。その材料で迅速な処理が可能かどうか、あるいは可能かつ相当かということを判断する、しているんじゃないんですか。何かそれ以外には判断のしようがないんだと思うんですけど、いかがですか。
○政府参考人(西山卓爾君) 先ほど来申し上げているように、本庁の審判課が事件配分については担当いたしますので、地方局と連絡を取り合って、判断としては審判課で行うというということでございます。
○仁比聡平君 結局、この入管が組織として難民不認定という判断をした者を迅速に送還するという全体の取組の中に、この難民審査参与員が関わる不服申立ての手続も位置付けられてしまっているんじゃないのか、その中で臨時班というものが位置付けられているのではないのか。
幾人かの参与員さんの名前が出ていますけれども、書面審理ばかりで、例えば、浅川参考人がこの間の参考人質疑の中で、難民該当性がないとぱっと見て分かるようなものなどと発言をされました。その書面、そういうのは書面審理でということなんでしょうけど、ぱっと見て分からないでしょう。ぱっと見て分かるようなものという、ちょっときつい言葉になりますけど、予断を持ってはならないんだと思います、私は、難民参与員は。適正な手続、そして出身国情報を土台にした上で申請者の供述の信憑性を判断していくというときに、そのぱっと見て分かるとか、もう一つ、浅川参考人、こうもおっしゃっているんですね。たまに、実際案件を見て、これ本国情勢どうなのかなと当てはめなきゃなんないときがある。
それ、逆でしょう。先ほどのケースであれば、ウガンダのレズビアン、LGBTに対する迫害というのがどういう状況にあるのかをちゃんと把握してインタビューをしなかったら供述の信憑性は把握できないじゃないですか。それを、ぱっと見て分かるようなもの、一日五十件でしたっけ、というような、時間を掛けずにやれるものなんだという前提の事件を、事務局の、あるいは審判課なのかもしれませんけど、それをまとめて出していく臨時班みたいなものをつくるから、インタビューをまともに行わずに、このウガンダの大阪地裁判決のような事態になってしまうんじゃないですか。
これ、デュープロセスとは言えないと、それは行政不服審査法が元々求めている適正な手続とは言えないと。大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) まず、浅川さんの発言は、御自身が担当した事案における難民認定審査の内容に照らして、出身国情報を詳細に検討して当てはめなくても、そもそも申請者の個別事情のみで難民該当性を判断できるという案件の方が多かったというのをお答えされたもので、出身国情報を検討する重要性を否定をしたものでは私はないなと思っておりますので、そこは御本人に確認をしていただくしかないんですけど、ただ、彼が言っていたのは、高利貸しに借金を返済できず本国に帰れば殺害されるとか、単に日本で稼働したいとか、そういった理由も、事例もあるということをおっしゃっていたように思います。
で、デュープロセスにつきましては、もうまず、何度も申し上げますが、三段階にわたって判断をすることになっていますし、それから同時並行的に様々な在留資格についての検討も行えるということになっていますので、デュープロセス自体がおかしいというふうには私は認識をしていませんが、一つ一つの判断についてはいろんな解釈があろうかと思います。
○委員長(杉久武君) お時間になりましたので、質疑をおまとめください。
○仁比聡平君 UNHCRのハンドブックでこういう記述があります。申請者の供述は抽象的に捉えられることはできず、関連がある背景事情の文脈の下で考察されねばならない、申請者の出身国の状況を知ることは、第一義的な目的ではないが、申請者の信憑性を評価するに当たって主要な要素となると。
こうした国際基準と、入管のこれまでの難民認定申請の実務が大きく乖離しているのではないのかということが突き付けられているんじゃないのかと。難民審査参与員の発言について、これだけ立法事実に関わる問題だ、立法事実崩れているじゃないかという問題になるのは、そうした大事な課題だからだということを指摘をし、引き続き議論を求めて、今日は質問を終わります。