○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
私は、離婚後共同親権と民事法律扶助制度の拡充についてお尋ねしたいと思います。
まず、司法法制部長に御確認をしたいと思うんですけれども、お手元に日弁連の、これは全ての会派に同じ要請をいただいていると思いますけれども、ペーパーをお配りしました。
法テラスが司法改革の議論の中で発足して今年で二十年になると。ああ、そうだったかと改めて思います。その二十年、それからその前身の民事法律扶助の協会の時代から続いて約二十五年、報酬本体がそのままになっているという指摘なんですが、それはそのとおりでしょうか。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
民事法律扶助における弁護士の報酬につきましては、その間、消費税の増額に伴う改定がございましたが、それ以外については御指摘のとおりでございます。
○仁比聡平君 つまり、四半世紀の間、様々な事件の弁護士報酬というのは、これは変わらない、ずっと低水準のままということなんですね。
そこで、特に離婚事件の関係、改正民法の施行を来年五月にというふうに想定されている中での課題をちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、資料の一番最後に法案成立の際のこの委員会の附帯決議を改めてちょっとお配りをいたしました。一々申し上げませんけれども、真摯な合意という問題、あるいは親権者の定め、そして子供の居どころ、居所をどう指定するのかの問題。それらにも関わって、DV、虐待、あるいはそのおそれをどう捉えるのかの問題。それから、子供自身の意見、意思が手続に適切に反映されるようにするにはどうするか。あるいは、親子交流、養育費、婚姻費用の問題、財産分与の関係のこと。それから、税制、社会保障に関わる問題などなど、この法改正も踏まえてこの後の家族法というのは、とても様々な論点を、私たち国会でも様々な議論を行ってきたわけですよね。
これ、民事局長にお尋ねしたいと思うんですが、当事者、つまり国民の皆さんの課題ですから、この家族という問題は。これをしっかり理解していく、あるいは周知していく、理解していただくというのは容易なことではないだろうと思うわけです。
大臣に、度々私、繰り返して、子連れ別居が適法であるということについてお尋ねしてきたじゃないですか。先週の大臣の御答弁でやっと分かったという声が私のところには届いています。法務省パンフレットの解説パンフレットが必要じゃないかというような声もあるぐらい難しいんですよね。難しいというのをそのままにしておいたらどうにもならないわけですけれども、私はそういう法的な問題だからこそ弁護士の支援というのはとても大事だと思うんですけれども、その辺りも含めて、民事局長、いかがですか。
○政府参考人(竹内努君) お答えいたします。
委員が今御指摘なされた答弁におきまして、法務大臣から、DVや児童虐待から避難をする必要がある場合には、父母の一方が他の親に無断で子供を転居させたとしても、人格尊重、協力義務に違反することはないこと、当該義務違反の有無等は総合的に判断されるべきもので、当事者の一方に何らかの立証責任を負わせるものではないこと、DVに関しては、加害者、被害者の双方がDVの認識を欠いている場合があることも勘案をした上で適切な判断がされることになると考えていることを申し上げたところでございます。
委員が御指摘になった今の法務大臣の答弁の趣旨ですとか、あるいは委員がその際にその答弁に対して述べられた、むしろDVこそが父母相互間の人格尊重、協力義務違反の最たるものだということは、令和六年民法等改正法のパンフレットの文言によっても十分御理解いただけるものと考えてはおりますが、改正法の施行を控えまして、種々の不安を抱いている方がいることは承知をしておりまして、また、改正法がDVや児童虐待からの避難をちゅうちょさせることがあってはならないと考えていることから、御紹介いただいた声は真摯に受け止めたいと考えております。
法務省では、関係府省庁等とも連携して、改正法に係るQアンドA形式の解説資料を作成しているところでございますが、委員の問題意識も踏まえて検討を進めるとともに、同資料が完成した際には、関係府省庁等と連携しながら、同資料を活用した更なる周知、広報に取り組んでまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 そうした理解をきちんと個々の事件、相談で真っ当ならしめていくために、弁護士はとっても大きな役割を果たさなきゃいけないかなと思うんですよね。
附帯決議に、法テラスによる民事法律扶助、あるいはDV等被害者法律相談援助などの充実をという附帯決議も上げているわけですけれども、司法法制部長に確認をしますが、日弁連の原田直子弁護士がこんな紹介をしています。近時の民事法律扶助は、離婚や一人親家庭への養育費請求などの家事事件、それから生活困窮などによる債務整理が多くを占めるようになっていて、自己破産と多重債務、離婚とその他の家事事件という、この四つの分野で代理援助決定数の約八割を占めると。社会福祉的な側面が強いセーフティーネットとして機能する制度に変容しているというふうにおっしゃっているんですが、そういう実情ですか。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
今御指摘のような御見解もあるかもしれません。民事法律扶助については、資力の恵まれない方について、司法に対するアクセスをより容易にするために、国が立て替えて弁護士費用を出すというものと理解をしているところでございます。
なお、先ほど申し上げた民事法律扶助の報酬の推移について、手元に資料がなかったために正確なところまではちょっとお答えできなかったんですが、先ほど申し上げたのは、着手金については消費税の変更に伴う改正を除き、平成十八年の法テラスの設立時から金額の変更がされていないということでございまして、その余については、手元に資料がないため、ちょっとお答えが難しいということを御了承ください。
○仁比聡平君 というようなことなんですけれども、お手元の資料をちょっとめくっていただくと、この民事法律扶助制度を利用した離婚関連事件に関する業務量調査報告書という日弁連の紙があると思います。
弁護士の業務量というアプローチというか、その物の見方というのは余りやらないものなんですけど、民事法律扶助の水準がいかに厳しいかと、この業務量に合った適正な立替え基準になっているかを検証しようということで取り組まれた真摯なものなんですね。
右下の方、御覧いただくと、結果、この離婚関連事件において扶助の立替え基準は、私選の基準額の三〇・五%から六五・三%と。特に調停のみの場合、私選との差が大きくて、三〇・五%から五一・三%と。つまり、半額ということなんですよ、せいぜい。多くの弁護士が法テラスを通さずにじかに受任するという場合の標準報酬として考える額の三割で受任し、活動しているということなんですね。
この実情について、六月号の法律時報で、離婚事件の現場から見た現状と問題点というある弁護士さんの詳しい論考が出ておりまして、DV事件で見たときに、大臣もちょっとゆっくりお聞きいただいたらと思うんですけど、DV事件の依頼者って不安感が強くて精神疾患を抱えていることも少なくないので、話が要領を得なかったり、あるいは理路整然と話せないということが時にあると。弁護士にとってみると、ポジティブな声掛けも含めた感情労働というような側面もある。もちろん、DVなので緊急な対応が必要な場合も少なくなくて、夜、昼、もう昼はもちろんですが、深夜問わないというような対応を迫られることだってあるわけですよね。行政、警察、医療機関との連携だったり、それから経済的に困窮しているということで福祉機関との対応があると。
相手方とのやり取りというのはなお大変で、まず、その健康保険証の切替えどうするかとか、携帯電話のファミリーパックを解約どうしますかとか、それから自宅の前に置かれた旗当番の旗はどうすればいいかみたいな問合せも弁護士が窓口になるんだけど、それは民事法律扶助からは費用が払われることはないわけです。完全にボランティア、手弁当になるんですけれども、常態化しているために、裁判所の方からそういう活動をお願いしますというふうに期待されてしまうということだってあると。ところが、弁護士がそれをボランティアでやっているということを裁判所も調停委員も知らないと。そういう実情の中で、ですから、若手の中からは、やりがい搾取だというみたいな声も出ているわけですよ。
一方で、相手方の中にはコミュニケーションがとても困難な場合も少なからずあって、どなられる、あるいは独自の理屈をとうとうと述べて電話を切ってもらえない、ささいなミスがあるとそれを執拗に責め立てられるということで、結果、長時間の対応を必要とするわけですね。挙げ句に、不合理な懲戒請求を受けたり、民事裁判を起こされたり、誹謗中傷をネットに書き込まれたりするという、これは前にお伺いしましたけど、こういう弁護士に対する業務妨害というような事案が極めて厳しく存在しているというのがこのDV含む離婚関係の事件の現場の姿なんだと思うんですね。
ところが、報酬は、民事扶助で、私選の場合の半額あるいは三割と。これでは事務所の運営もやっていけないということになりますので、その調査の下の方にあるように、ボランティアと考えてやっているが、法テラスとの契約をやめることを検討しているというような回答も出てきているわけですね。
これ、若手弁護士の法テラス離れというふうに弁護士仲間の中では言われるんですけれども、まず、司法法制部長、こういう状況というのは、法テラスの設立によってあまねく法的支援をと、それが公共性だという理念を掘り崩していってしまうということになりませんか。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
日弁連の業務量調査報告書には御指摘のような記載があるということは承知をしております。他方、法テラスとの契約弁護士の数といたしましては、今直近で、令和五年の資料ございますけれども、二万四千四百十八名となっておりまして、全弁護士約四万五千人のうち五三%程度となっているところでございます。
法テラスでは、御指摘のように、様々な支援を行う弁護士を十分確保できるようにする必要がある、また、報酬について、その業務内容や事件の困難性等が適切かつ公平に反映されたものとすることを考慮する必要があるというふうに考えておりますが、他方で、先ほども述べたような立替え償還制を取っていることや、民事法律扶助における報酬が資力に乏しい国民等を広く援助するものであるということを考慮した上で考えられるべきものというふうに思っております。
○仁比聡平君 大臣、最後にお尋ねしたいと思うんですけれども、ということで、弁護士の半分くらいしかこの契約弁護士としての活動ができていないんですよね。若手の中からはこの法テラスではもう実際上生活ができないという声が上がって、特に修習中の給付金が受けられなかった谷間世代始めとしたもう今や中堅になっている皆さんのところで一体どうするのかという混迷もあるわけです。
だからこそ、こうやって支援に当たることのできる弁護士の活動もちゃんと業務量に見合ったものの報酬を確保するし、当事者に一方で負担を掛けないということを両立するためには、償還免除を含めたこの制度そのものをやっぱり見直す必要があると思うんですよ。あるいは、離婚後も父母の関係が続いていくということになって、ちょっと先ほど紹介した窓口的な業務ですよね。これ、今、民事扶助の対象じゃありませんけれども、こういうことも考えていかないとこれからやっていけないんじゃないかという中で、日弁連が、冒頭の資料にあるように、有識者による検討組織を速やかに設置して検討いただきたいという御要望なんですが、大臣、受け止めをお聞かせください。
○委員長(若松謙維君) 時間来ておりますので、答弁簡潔にお願いします。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 日弁連様の方からそうした形での御要望ということは承っております。そういった中で、今、部長から申し上げましたように様々な論点があるということの中で、まあ検討組織ということで申し上げれば、やはりどこかでしっかりこれはつくっていかなくてはいけないという思いはございます。そういった中で、様々な論点しっかりと整理できるように、私どもとしてもこれからも検討していきたいと思っております。
○委員長(若松謙維君) 時間過ぎておりますので。
○仁比聡平君 頑張っていただきたいと思います。
終わります。