○参考人(長澤正隆君) よろしくお願いいたします。
私は、北関東医療相談会、AMIGOSの事務局長としてお話しします。
私たちは、二十五年以上、東京及び北関東で、困窮する外国人支援をしてきました。とりわけ、今日は仮放免の状態に置かれている外国人の生活状況についてお話しします。
まずは、私たちの活動紹介です。お手元には資料が行っていると思いますが、私たちは、一九九七年六月に群馬県伊勢崎市から活動が始まりました。きっかけは、オーバーステイのフィリピン人男性が胃がんの治療で開腹手術しましたが、手が付けられず死亡したからです。以来、六十四回、合計三千二百七人の生活困窮した外国人の健康診断と生活支援を行いました。
私たちの支援は、全ての人が健康と平和な生活ができる共生社会の実現を目指し、特に外国籍、生活困窮者のための保健、医療又は福祉の増進を図る活動とし、健康診断を中心とした支援する活動を行います。一般的な成人病の健診方法にのっとり、ふだん受診する機会の少ない貧困者に結核、成人病などの健康診断を受ける機会を提供し、胸部エックス線、検尿、血圧、血液検査、医師との診察、歯科検診、希望者には心電図、婦人科検診を行います。また、通訳者支援、弁護士相談、家賃相談、女性相談、食料支援、中古衣料の支援を行ってきました。
二、生活困窮した外国人の現状です。生活困窮した外国人の特徴は、在留資格がない、現金がない、健康保険を含めた社会的資源につながっていない、言語困窮者が多い、これは話すことができても読み書きができないんですね。ですから、皆様方がまとめていただいたようなペーパーは誰も読めないです。支援体制が整っていない。とりわけ、仮放免者は、入管から、働いてはいけない、行動の制限があることによって、これらの特徴は際立ちます。在留資格がないということは、住民票が作ることができず、住宅を借りることもはばかります。
よって、受診対象者には、受診費用の無料、交通費の全額支給、無料法律相談及び病院紹介、治療費は一部負担、上限五万円まで、食料支援、無料低額診療の病院の紹介、診療費がなくても診療可能な病院の紹介といったことをしております。
三、個別医療支援活動、これは、個別医療支援活動は、健康診断会と電話相談支援要請が来た外国人の支援を行っています。二〇二〇年からは、非正規滞在者の出産についての相談を含めました。これは、県によっては入院助産制度をしていないとホームページに明記してあったからです。
二〇二二年度は、八十人の生活困窮した外国籍住民から問合せが受けました。主たる病気を紹介します。腎臓病、ネフローゼの疑い。出産支援、母親は帝王切開。左心低形成症候群、いわゆる左心室がないという難病です。住血吸虫による心臓病、急性虫垂炎、子宮筋腫二件、狭心症、心臓のステント手術、肺がんの支援、心房細動二件、食道がん手術、三十年にわたる耳の外傷性の難聴、その他、糖尿病、高血圧、ほかです。
在留資格とがん。これは新聞にも出ていましたので記憶にある方もいると思いますが、神奈川県に在住のカメルーン人、リリンデス・マイさんは仮放免者でした。二〇一八年に乳がんと診断され、二〇二〇年十月、末期の乳がん患者となりました。家賃が払えずホームレスとなり、当会に支援要請され、十一月に修道院の礼拝会の施設へ収容されました。その後、聖ヨハネ会桜町病院で末期を迎えます。二〇二〇年十一月末に在特を申請し、数度交渉し、翌年、二一年一月七日にようやく認めるという連絡があり、一月二十一日に弁護士に在特が下りた連絡がありました。しかし、本人に在留カードが届いたのは二〇二一年一月二十三日午前十時で、亡くなったのは午前六時二十五分、死亡後三時間経過でした。
あわせて、二〇二一年二月に、南アジアの女性は卵巣がんステージ3、在特申請して都内の病院で手術することができました。手術後に在特が認められ、抗がん治療を六回受け、回復しました。
こういったことから、マイさんの事例は制度として本当にきちっとしていたのだろうか、人が死んでも制度をつくれない今の状態は何だろうというふうに思います。
出産支援として、母親帝王切開、先ほどの左心低形成症候群、難病の治療は難病申請を行いました。さらに、国会議員の方にも理解をいただき、入管に申請をしました。その結果、親子で仮滞在という厚遇を得ました。手術もうまくいきました。
振り返って、もし制度として確立していれば、このように国会議員の仲介がなくとも仮滞在の許可が得られたのではと思います。つまり、入管による在特等の申請は、国会議員の紹介など特別にしなければならないということが前提ではないかと思います。
次に、無料低額診療の病院と外国人についてお話しします。
無料低額診療事業は、社会福祉法によって、低所得者などに医療機関が無料又は低額な料金によって診療を行う事業です。厚生労働省は、低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者などの生計困難者が無料低額診療の対象と説明しています。実施者には、固定資産税や不動産取得の非課税など、税制上の優遇措置がとられています。
無料低額診療事業によって、生活困窮した外国人は随分助けられてきました。しかし、現在の日本は日本人の生活困窮者も多く、たくさん無料低額診療所に来ます。国の政策で、インバウンド活用によって、外国人には高い二〇〇%、三〇〇%の診療費を要求する大学や国立病院も現れ、そのまま仮放免者に適用されています。
先ほどからの国連の自由規約と仮放免者について、私たちは、理事の大澤優真さんと萩原芳子さんによって、昨年、国連で仮放免者のことを訴える機会を得ました。結果は、今回の国連では初めて日本語のローマ字表記、「karihomensha」となり、世界の仮放免者の中でも際立った存在となりました。しかし、国連の提言にさえ耳を貸さないという非常に冷たい事態になっております。
仮放免者とは、生きていけない人たちですので、私たちは次の要求をいたします。
日本政府から帰国すべきとされていますが、難民で、母国で生命の危機にさらされるおそれがあるから帰国できませんので、認めてください。就労を認めてほしい。仮放免者には生活する手段がなく、働いて収入得ることが一切禁止されているからです。次に、医療保険の加入を認めてください。これも、在留資格がないので全く保険に適用されません。最後に、生活保護法の活用を認めていただきたいと思います。
次に、野党案と政府案の今般の入管法の比較について、私たちの立場をお伝えします。
私たちは、独立した第三者機関、難民等保護委員会の設置を求めています。難民認定を行うには、専門家や有識者の方々に委員として入っていただき、客観性、透明性、納得性ある形で保護すべき方々を適切に判断してください。対象者を現状の制度から広げ、保護すべき難民を積極的に保護し、補完的保護として在留特別許可の在り方も取り入れてください。収容しないことを基本に、収容期間についても上限を設けてください。野党案では、長期の非正規滞在者なども救済からこぼれないようにしたことを評価したいと思います。日本が国際社会の一員として当然に果たすべき役割としての制度が提案されています。現行の延長のような監理措置制度をつくっても、何も解決とはなりません。また、私たち北関東医療相談会は、現状において監理人の引受けはできないと思います。
こういったことから、野党案を支持していきたいと思います。
私の発言は以上です。

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
四人の参考人の皆さん、本当に今日はありがとうございます。
まず、長澤参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、献身的な支援に心から敬意を申し上げたいと思います。
貴重な、仮放免者生活実態調査報告を委員の皆さんにお配りをいただきました。この中拝見しますと、医療を受けられない仮放免者という、この医療にアクセスできない、命が危険にさらされているというその仮放免者の実態が伝わってくる思いがするんですけれども。
冒頭御紹介いただいたカメルーン人のマイさんの件について、調査室が委員に配っている資料の毎日新聞の記事によりますと、このカメルーン人、マイさんは、二回目の収容中に、胸が痛い、しこりが気になるというふうに支援者に訴えておられたのに、入管ではまともな医療措置をされなかった。そのまま体調が厳しく悪化していく中で、一八年の二月に仮放免、これは二回目の仮放免になった。そこで先生方につながって、そうすると、先ほど御紹介のあったように乳がんと診断され、そのまま進行していったということのようなんですよね。
同様のケースはマイさんにとどまらないのではないかと、たくさんあるのじゃないのかと。例えば、膵炎、胆管結石から膵炎を併発して、病院では緊急手術だと、もし手当てが遅れていたら命に関わるような状態だったと言われたペルー出身の男性の件がありますけれども、この方も、その前日、仮放免をされているんですね。
入管収容の間にまともな医療を全く提供しないで、重体になって仮放免と。で、仮放免されたって、お金もないし、病院に行く当てないじゃないですか、基本は。だから、この御紹介した二人は病院にたどり着きましたけど、とても、入管の仮放免というやり方自体もとても深刻な課題持っているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(長澤正隆君) お答えします。
先生おっしゃるとおりで、カメルーンのマイさんの件については非常に良かったと思います。その前に神奈川県の北里大学の先生が非常に熱心に支援をしていただいて、しかし、そのときでさえも、在留特別許可申請をして、二回ほどやったけれども下りなかったと。私たちの方に来てようやく、本当に末期の末期に近づいて、在特申請して下りたと。しかし、許可が出たと言ってから実際に下りるまで二週間掛かっているんですね。この二週間の時間というのは何なんだろうと私は今でも疑問に思う。
それと、胆管結石の、この人はウィシュマさんと一緒ですよ。ウィシュマさんは自分で病院連れていってくれと訴えるわけですよ。大体、そういうふうになる人は皆さん同じです。入管の中で起きているそういう医療関係の問題で、外に放り出すというんですかね、表現が悪い。しかし、そうでない限りは出てこれない。じゃ、なぜ外に出すかといったら、入管の中で死なれちゃ困るんじゃないのかというのが一般的な私たちの受け止め方です。しかし、それすらも追うことができないぐらいにたくさんの人が来ます。
ですから、そういうような問題が収容の問題に関わっているということです。
○仁比聡平君 先生、その記事のコメントの中で、入管の長期収容と並んで仮放免後の放置も深刻な問題だというふうにおっしゃっている、そうした意味だと。
○参考人(長澤正隆君) そうですね、はい。
○仁比聡平君 もう一点、先ほどのやり取りの中で、精神的な疾患、PTSDも含めた長期収容の中で受けた傷があるということのお話があったんですが、そうした方々も含めて、私は、その再収容の恐怖、あるいは収容されるんではないかという恐怖というのはこの仮放免者の皆さんの中にずっと苦しめているんじゃないのかと。定期的に、例えば毎月入管に面接に行かなきゃいけないと、その日にもう帰れなくなるんじゃないのかと、こういう恐怖というのは、昨年、東京入管でルカさんという方がむごい自殺をされましたけれども、そうした非正規滞在者の苦しみを生み出しているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○参考人(長澤正隆君) お答えします。
長期収容を含めて、精神疾患を患った人は、ほとんどの人はもう、また生きて帰ってこれないんじゃないかという、そういう不安の中に生きています。拘禁症というのはもうお聞きになったと思うんですけれども、取調べ受けているときに失禁をするわけですね。決して、本人はもうどうしようもないわけで、そうなってしまったらもうどうしようもないですよね。だけれども、若い人がそういうふうになるまでに入管の中でいじめられるというんですかね、そういうような状態がずっと続いている。最近はそういうのはないのかも分かりませんけれども、現実に起きてきたと。
ウィシュマさんの件と拘禁症の彼の件もそうなんですけれども、あとペルー人の胆管結石の人、この人たちは出てきた途端にもう倒れちゃって、電話が掛かってきて手術してくれと。たまたま無低の病院が知り合いがいて、じゃあ俺のところへ連れてこいよという話になって診てもらえて手術が受けられたと。そうでなかったら、もうたらい回しになってその時点で亡くなっているというようなケースですね。しかし、全然入管の中にいるときは誰もそれを診ようとしない。
大村の収容所で、一昨年ですか、がんじゃないかといううわさが飛んだ人がいて、私たちのところに来たのは、三月にやって六月で、そのときにはもう、ところがそこの、肺がんの状態だったんですけれども、確定診断をしてもなかなかがんの最終的なチェックができなかった、しかし、先生の方で総合的に診てこれはもう肺がんの末期に近い、三の状態だということで、ステージ三だということで、それで診断書を作ってもらって、入管の方に弁護士さんと一緒に出した。で、降りたんですけれども、降りてその後、四か月後に亡くなりましたね。
一体何のためにその処遇規定第三十条があるのか。中に入っている人と外に出ている人についても全く同じように診なきゃいけないのに、何もそれについて規定の中に取り上げられていない。これこそまさに入管らしい扱いだなと。だから、そういう非人道的な病気の扱いについては、やはりちょっと問題提起を考えていただきたいというふうに思います。
○仁比聡平君 長澤先生にもう一問だけ、できれば端的にお答えいただきたいと思うんですけど。
そうした医療を受けられない、極めて不安定だし、この調査にあるように、食料も住まいも極めて厳しい状況にあるという中でも、でも、日本で生きていくと。
例えば、日本で育った子供たちが、ここにいさせてという、何というんでしょう、横断幕で国会の前においでになったりしているんですけれども、しかも、子供だけ日本で在留特別許可が出ればいいというんじゃなくて、家族が一緒にいるということが大切というふうにおっしゃる。このここにいさせてという思いを長澤先生がどんなふうに受け止めておられるか、お聞かせください。
○参考人(長澤正隆君) お答えします。
基本的には、家族は一緒でないと家族ではないですよね。お父さんだけが元に戻って子供が生き残っていくというのはちょっと考えられないですね。最終的には、きちっと家族が残れるような体制をするというのが、新しい入管法の中できちっとうたわれて、うたっていただきたいというふうに思います。
もうこの一言ですね。お時間があるので。
○仁比聡平君 残る時間が少しになって申し訳ないんですけど、小尾参考人、阿部参考人、川村参考人の順で同じ問いにお答えいただければと思うんですが、先ほど小尾参考人からも、あるいは阿部参考人からも、今の難民認定行政が供述の信憑性という意味でのインタビューという面でも、あるいはその比例性の考慮という面でも、その手続保障できていないんじゃないかという趣旨の御発言があっていたと思うんですけれども。
今、入管庁は、退去強制令書の手続の中で、難民認定の該当性もちゃんと審理できているから、退令が出たらそれに応じなければ送還忌避者だというふうに一くくりにしています。その送還について、せんだって入管庁はこの国会で、国家にとって好ましくない外国人の在留を禁止し、強制的に国外に退去させることであり、それは国家の主権に関わる問題として、本質的に行政権であるというふうに答弁をしているんですが、それぞれ参考人の皆さん、どんなふうにお感じになられるでしょうか。
○参考人(小尾尚子君) ありがとうございます。
その点に関しては、私の意見陳述でもかなり詳しく御説明させていただいたかと思いますけれども、確かに国家の主権でこの国にいてはいけない人というものを特定しその方には退去していただくということは、国家の裁量範囲なんだと思います。
ただ、それをする場合でも、国際人権条約、そして難民法、難民条約があって、こうしたときには送り返してはいけない、もし送り返すのであれば、こうした審査が必要である、手続保障もきちんとしてほしいというものが具体的に記載されているわけですね。
ですから、それときちんとバランスの取れた、そういった人権条約、難民条約を加味し、考慮した上でその裁量を行っていただくということが必要になってくるのではないかと思います。
今回のこの入管法の改正の案の中に入っている三年の禁錮ですか、を受けた人はもうそのまま、例えば難民の審査もせずに帰っていただくということは、やはり少し乱暴なのではないかなというふうに思います。
○参考人(阿部浩己君) 御質問ありがとうございます。
出入国を管理する国家の権限が強いというのは、これは二十世紀に確立した国際法の在り方です。しかし、二十世紀の後半から二十一世紀にかけて、人間の権利を実現するという、そういう価値が非常に強くなってきています。したがって、例えば在留資格がないという人であったとしても最低限の人権を保障するという義務が国に課せられるようになってきているんです。それを各国は合意しているんですね。
例えば、先ほどのお示しいただいた例などでは、子供の最善の利益、親子を分離するようなことは子供の最善の利益にかなう場合でない限りにはやってはいけないと、これは出入国の場面であっても駄目だという、こういうふうな基本的人権を擁護するという考え方が強くなってきているということからすると、先ほどお示しいただいたような国家主権よって全てを説明するということは、今は法的にはできないというふうに考えています。
○参考人(川村真理君) ありがとうございます。
基本的な考え方、国家にどういう方が入っていただき、どういう方に退去していただくかというのは、国家の権利であります。国が決めるべき権利であると、そこは変わらないことだと思います。
その上で、その退令が発付された後の送還に至るまでのプロセスのところの問題を一つ御質問いただいているのかなというふうに受け止めておりますが、これも収容・送還専門部会のときにも議論をしまして、やはりきちんと理由を示すことですね、ということ。そして、先ほど来、難調官、難民申請のところだけにその研修をとかという、その特別のスキルをという話が出たんですけれども、最終の、最初のその場面のところでやっぱりノン・ルフールマン原則をきっちりと収容に関わる職員の皆様も知っていただくというようなこと、そして、それを踏まえた上で、その本人にもきちんと説明をするという手続をしっかり取っていただきたいというようなことを部会でも述べたように記憶しておりますが、そうしたプロセスもひとつきちっと確保していくことが大切ではないかと思っております。
以上です。
○委員長(杉久武君) お時間ですので、まとめてください。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
現実にこの日本社会で生きている皆さんを国家にとって好ましくないといって一くくりにするようなことは、私はあってはならないというふうに思います。御意見を受け止めて、徹底して審議を尽くしていくべきだと思います。
終わります。