5月21日 憲法審査会
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
まず、安倍政権が進める集団的自衛権行使容認への解釈改憲と憲法九十六条の関係について、特に発議者の船田議員にお尋ねをしたいと思います。
船田議員は、この間、時間が掛かるから解釈改憲でやむを得ないと、そういった趣旨の御発言をしてこられたと思います。つまり、憲法改正の手続を九十六条に沿って行うということが時間が掛かると、先ほどは将来になるというような御発言でありましたけれども、だから解釈改憲がやむを得ないというのは、これ、どういうお考えになるのか。つまり、時間が掛かったら、なぜ解釈改憲なのか。これ、どういうお考えなんでしょうか。
○衆議院議員(船田元君) 今御指摘をいただいた点でございますが、時間が掛かるというのは、ちょっと言葉に語弊があったかもしれません。
ただ、民主主義の手続として、そして特に憲法改正の手続、今まさに手続法を動かせるようにしようということで議論しているわけでございますが、実際にそれが仕上がりまして、そして具体的に憲法の中身の議論をしていく、そして衆議院、参議院両方で三分の二以上の議員の賛成により国会が発議をする、その発議の内容につきましても、いきなり憲法九条の改正のことが発議できるのか、そういう問題を考えますと、やはりそこには一定の時間を掛けざるを得ないというふうに思っております。掛かるというのは客観的な他人事みたいなものですが、やはり主観的に考えても、どうしても掛けざるを得ないのではないかというふうに思っております。
しかし、一方で、やはり我が国を取り巻く国際環境、とりわけ安全保障の環境が極めて厳しい状況になってきております。不測の事態も生じかねないということが言われている状況でございます。そういう中において、やはり我々は、今できること、憲法の改正ができれば、これはそれが一番良いのでございますけれども、憲法の解釈を変更することによって、集団的自衛権の行使についても一定程度、これは相当な制限を加えるべきだと私は思っておりますけれども、そういうことについてやはり行使のできる環境をつくる、これが大事である。そのことによって不測の事態を防ぐ、抑止力を高めるという意味では、極めてこれは重要なことであると、このように思っております。
私自身、憲法の自民党の責任者として仕事をしております。そういう中で、今この憲法改正によってこのような事態が前に進められないということは大変残念に思っておりますが、しかし現状においてはそのような解釈の変更を行うことによって対応せざるを得ない、そういう認識、国際情勢、そういったものを総合的に勘案をするとそうならざるを得ないというふうに私自身は考えた次第でございます。
○仁比聡平君 時間が掛かるからにせよ、一定の時間を掛けざるを得ないにせよ、そうした内閣ないし政治家の判断を憲法の上に置くのかということがこの解釈改憲の是非をめぐって問われているわけです、鋭く。つまり、憲法改正手続を厳格に定めた憲法九十六条を無視するのかという議論なわけですね。
船田議員に確認をしたいと思いますけれども、そもそもこの厳格な改正手続を定めた憲法九十六条の意味、憲法の最高法規性や、あるいは硬性憲法というふうに我が国の憲法が性格付けられている、このことの中での改正の意義についてはどのようにお考えですか。
○衆議院議員(船田元君) 九十六条の意義、極めて私も大きいと、重大であるというふうに思っております。やはり、憲法改正の手続として国民投票というのは、これは我々が発議する以上に、国民の主権、とりわけ憲法に関する主権の行使であります。したがって、それを尊重する、これを最大限のものに考えるということは当然のことであると思っております。
だからこそ、私は、先日の会合におきましても、この憲法解釈でやっていくということがもし国会の中だけで、国会もこれは民意の一つの反映としてあるわけでございます。民意を集約をするという点での機能を強く持っている国権の最高機関であります。そこでの議論はもちろん大事なことでありますけれども、やはり憲法解釈の、しかもとりわけ平和主義に関わる重大な事項において大きな変更があるというときに、果たして国会の中だけで議論してそれでよろしいのかどうかという点においてはやはり私はある程度の疑問を感じている。だからこそ、この憲法改正という手続はすぐにできないのだとしたら、衆議院の解散を行うことによって国民の信を問うということも選択肢の一つとして考えておくべきではないかということを自民党内の会合で申し上げた次第でございます。
九十六条そのものに従ったものではございませんけれども、国民に信を問うというその手続というのが大事であるということを私は強調したかったので、そのような発言になりました。
○仁比聡平君 船田議員がお一人の政治家としてそのような認識をお持ちになろうがなるまいが、総選挙と憲法九十六条に言う改正手続、中でも国民投票というのは全く別物でございます。それを同じように扱うなど、これ、できるはずもありません。この背理は、解釈改憲において私は乗り越えようがないと思うんですね。
政治権力の暴走が最も危惧され、政府の手を、政治権力の手を縛るという立憲主義の働きが最も鋭く問われるのが私は戦争だと思います。軍事力、武力の行使、その武力の行使及び武力による威嚇を禁じ、更に進んで戦力の不保持、交戦権の否認という国際社会において先駆的な我が国憲法九条は、そうした意味で、これを是とする人も、非とする方があるのかもしれませんが、これは日本国憲法の根幹でしょう。現行憲法の根幹ですね。その九条を、時間が掛かるからとか、あるいは一定の時間が掛けざるを得ないからとか、そういった形で九十六条の改正手続さえ行わずに変えようとなれば、もはや何でも解釈改憲できるということになるんですか。
○衆議院議員(船田元君) 今の御質問に直接お答えすることにならないと思いますけれども、先ほどの私の、民意を問う方法というのを申し上げました。確かに、国政選挙、とりわけ衆議院選挙、参議院選挙も同じでございますけれども、これは間接民主制ということでその政権を選ぶということにつながっていくわけであります。そのときには、各政党がアジェンダあるいはマニフェスト、公約を出して、幾つかの観点において選挙を行うと、こういうことにもなると思いますが、例えば、ちょっと例としては余り良くないのかもしれませんが、小泉総理のときのあの郵政解散ですね、あれはワンイシューということでかなり議論が集中されて選挙が行われました。
今回、今回といいますか、今度私どもが、私自身としてもしやるのであればということを考えた場合には、例えば、集団的自衛権行使における憲法改正ではなく、憲法の解釈によってそれをやるということについてのその是非を問うという点では、ワンイシューとしてこれを国民投票に代わる形として採用するということは決して荒唐無稽なことではないというふうに思っております。そういうこともあるということを指摘をしておきたいと思います。
○仁比聡平君 今の御発言は、国民が今、政権あるいは政治に対して期待をするもの、求めるものという例えば世論調査を行ったときに、憲法改定という問題というのは全く下位に置かれている。そうした民意そのものを国会の側、あるいは政治の側、あるいは改憲の立場から踏みにじるものですよね。
国民投票というのは、憲法九十六条における国民投票というのは、国会が発議をして、それをテーマに賛成か反対か、そうした形で行われるのであって、あらゆる政策分野についての国民的審判が問われる総選挙とはまるで意味が違うでしょう。それはそうでしょう。
○衆議院議員(船田元君) 今の私の発言もちょっと行き過ぎた部分があったかと思いますが、これにつきましては、やはり国政選挙というものとそれから国民投票というものは問題の提起の仕方も全く違うものでございますので、それを同一視するというわけにはいかないと思っております。
ただ、気持ちとして、やはりそのような、国民に信を問うという、そういうことまで考えながら真剣な議論を行うということが大事であると、そういった心構えの問題、姿勢の問題、そういうことで私としては提起をしたものと、こう考えておりますので、その点は誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
○仁比聡平君 今回の改定案の与党、最大与党の発議者が、気持ちとしてとおっしゃりながら、民意を問わずにこんなことやっていいのかということを心苦しく思わざるを得ないようなところにこの解釈改憲という手法の暴走ぶりが表れているわけですよ。こうしたやり方を許せば、もはや何でも解釈改憲できるというのかと、何でも解釈で変えられるというのかと。この国民的な怒りの一つは、私、皆さんに刺さっていると思うんですね。そうした暴走に世論は急速に反対の声を高めているわけです。
五月の一日に、そうした下で、あるいはその前夜にと申し上げてもいいですけれど、新憲法制定推進の大会が開かれて、議員も参加されたのではないかと思いますが、この大会決議を拝見しますと、集団的自衛権の問題を憲法解釈の変更で認める方向であることは、憲法改正に要する時間の問題からやむを得ないと認めるとしても、このことによって憲法改正の動きにブレーキが掛かってはならないことは強調する必要がある、こういうふうにおっしゃっていて、これはつまり、解釈改憲で時間が掛かるから仕方がないと、根幹である憲法九条についてのこうした解釈改憲の暴挙を認めながら、それでは明文改憲の芽がなくなってしまうから、だからそうならないようにしようと、そんなような言わば焦りというのが感じられるんですけれども。
先ほど手続法を整えるということをおっしゃいましたけれども、今回皆さんが発議をして、こうして改憲手続法の改定をやろうとしているのは、結局、ともかくも投票年齢を二十歳にするということで、これ動かせるようにしようと、それが目的なんじゃないんですか。
○衆議院議員(船田元君) 幾つかの宿題、三つの宿題と言われておりますが、我々は七年前の国民投票制度を決めたときにどうしても残ってしまった問題がある、それを今回解こうということでそれぞれ努力をしてきたわけでございます。
そういう中で、十八歳、二十歳の問題がどうしてもあるおかげで、今何歳で投票できるのかというのが非常に曖昧になっている。それをやはりきちんと交通整理をしようというのが一つの目的でございまして、結果として、いつ何どきにおいても何歳で投票できるかがはっきり分かるようにするというのが一つの方向として出されております。
もう一つは、やはり公務員の運動規制の在り方でございまして、これも、国家公務員においても地方公務員においても、要するに純粋な勧誘、そういうものについては、これはできる限り自由であるべきである、こういう切り分けもさせていただいて、公務員の運動規制についても一定の方向性を示すことができたと、こういうことで国民投票が実際に行われ得るという状況をつくった。この点では宿題の一応の解決、もちろん残っているものはありますが、大筋において解決をしたと、こういうことになると思います。そういうことで、今回この法案の提出をし、そして議論していただいている、こういう状況にあります。
○仁比聡平君 私はそうは到底思えない。そもそも、この改憲手続法は、戦後レジームからの脱却、時代に最もそぐわないのは憲法九条と唱えた第一次安倍政権の改憲スケジュールの一里塚として、二〇〇七年の五月に国民の反対を押し切って強行成立されたものです。その内容自体に、国民主権と憲法に照らしたときに数々の根本的欠陥がある。それがあの二〇〇七年、私も当時の憲法調査特別委員会で、船田議員始めとした議員の皆さんと議論をさせていただきましたけれども、国会を多くの国民の皆さんが包囲をして廃案へという大きな声を上げる中でのそうした審議の中でも次々と明らかになったと思うんですね、根本的欠陥が。
当時先送りされた投票権年齢や公務員などの運動規制、そして国民投票の対象という三つの宿題も、また我々参議院においては異例の十八項目に及ぶ附帯決議が付されましたけれども、これもそうした重大問題、当時の法案それ自体の重大問題に発したものだと思います。
こうした根本的欠陥が、先ほど最低投票率は結局問題は解決されていないじゃないかという指摘がありましたけれども、その点も含めて、結局根本的欠陥をそのままにして動かすというだけでいいのか、動かすということが許されるのか。私は徹底した審議が必要だと思うんですね。
今日は参議院における初めての質疑ですから、ちょっと主要な点について幾つか発議者の皆さんの認識を伺いたいと思っています。
まず、その宿題を解いたというふうにおっしゃる投票権年齢に関わる話なんですが、今回の改定案は、つまるところ、現行法が義務付けた選挙権年齢などの十八歳への引下げを棚上げして、これ先送りしてと申し上げてもいいですが、国民投票権の年齢だけを確定するものです。しかも、すぐにではなくて、四年間は二十歳ということにするわけですよね。
現行法の制定時に発議者は、選挙権年齢そして成年年齢を投票権年齢とともに十八歳とする、つまりつながった形で、そろえた形で十八歳とするということは大前提である、あるいは最低限の条件であると、そういう答弁を繰り返しなされておられました。まず、現行法がそうした問題についてどういう形で規定されているのか、その趣旨についてお聞かせください。
○衆議院議員(船田元君) 様々な経緯がありました。それで、私どもとしては、七年前、八年前にこの年齢の問題を解こうとしたときに、三年間、要するに憲法原案の発議ができない準備期間ということを置かせていただきました。その準備期間の三年間の間に選挙権年齢を十八に下げる努力をする、それが下げられるまでは国民投票の年齢は二十歳にする、こういうことで制度設計をいたしましたが、その三年というのを優に超えてしまったという状況が生じてしまいました。そのことで、結局、何歳から投票ができるのかということが非常に曖昧になってしまった、このことに対して今回一応の結論を出そうとしたわけでございます。
各政党の皆さんの中には、もう直ちに十八歳からに下ろすべきであると、こういうお考えの方もいらっしゃったわけでありますが、やはり我々としては選挙権年齢と国民投票年齢がそろっていることが望ましい、同じ参政権グループでありますので、ということで、それをそろえるということを主眼に置いた。しかしながら、やはり実際に選挙権年齢を下げる、これは議員立法になるんだろうと思いますけれども、一定の期間が必要になります。
また、民法の成年年齢につきましてもその延長線上にある話でございまして、これも先ほど答弁しましたように、そろえていくというのが大変重要であろうということで、一応四年間の、これは法整備期間ということで位置付けをいたしました。
そして、さらに、八党の合意によって二年以内にこの選挙権年齢は十八に下げる、そのためのプロジェクトチームをつくるということで合意をしたところでございます。これによりまして、もちろん四年間というその期間はございますけれども、それを二年以内に国民投票年齢も下げる、そういう努力はしていこうということを国会の意思として宣言をさせていただいたと、こういうふうに理解をしております。
なお、そのような状況において、八年前のあるいは七年前の非常に強行的な採決ということについて御指摘もいただきました。これは、自民、公明、当時の民主、この三党で合意を得ながら議論をしてきたわけでございますけれども、最終的に民主党さんが離脱をされて、そのことでちょっと状況が厳しい状況になりました。その中で採決をしたわけでございますが、その影響がやはりずっと続いておりました。
この憲法審査会、衆議院、参議院におきましてもなかなかそれが発足できなかったと、こういう問題にもなりましたし、また、三年間の準備期間の間に選挙権年齢を十八に下げる、こういうことも結果としてできなかった。非常に反省をしているわけでございまして、今回はやはりできるだけ多くの政党の皆さんに賛成をしていただいて、そして成案を得て国会に出すのがこれが大事であると、こういう大前提に立ちまして、結果として八党合意によって、衆議院では七党の共同提案になったと、こういう事態でありますので、その辺の経緯というものをしっかり考えながら、皆様にも真剣に御議論いただければ有り難いと、こう考えております。
○仁比聡平君 今、七年前に強行的状況になった背景について何だか弁明のようなお話がありましたけれども、それは安倍政権、第一次安倍政権が憲法九条を口にして、改憲への暴走を強行したからですよ。そうした状況について何の反省もないのかと。まして、解釈改憲でその九条を壊すという、私は憲法破壊だと思いますけれども、その大問題について全くごまかしたお話ですね。
話をちょっと戻しますけれども、そうした今弁明のあったような、言わば政治の側の都合ですね、あるいは政権党の都合ですね、そういうようなことを事情にして、いざ国民投票だと、あるいは公職選挙の投票権という主権者の側の政治参加の権利を左右してしまう、そんなことは余りにも身勝手だと私は思います。
改定案、ちょっと確認したいんですが、現行法と違って、結局、国民投票権年齢と選挙権年齢と成年年齢、これについてのリンクですね、これは法律上は切り離されるということになり、二つ目に、いつまでにという法律上の期限、これは現行法では施行までにという、つまり三年間の間にという、こういう期限があったわけですが、このいつまでにという法律上の期限はなくなる、法律上はそうであると、それはそうですか。
○衆議院議員(船田元君) 今お話ありましたように、七年前の決定のときには、三年間の間に選挙権年齢も十八に引き下げるということを法律上書かせていただきました。しかし、その法律に書いたことができなかった。その最大の理由というのは、やはり、採決の際に自公民の合意の枠組みが崩れてしまった、こういうことが原因としてあったと。非常にその点を反省をしているわけであります。
今回のことにつきましては、特にリンクはさせないという形で、自動的に四年たったら二十歳から十八に下げると。そして、その手前で、選挙権年齢が十八に下がった時点で、これは国民投票年齢も四年を待たずして十八に下げる、こういう制度設計とさせていただきました。
確かに法律上の明記はございませんけれども、今回の場合には、七年前とは違いまして、八党会派の皆さんの基本的な合意をいただいた上で、そして衆議院の七党の共同提案という形を取りました。しかも、合意の文書も五項目にわたりましてできているわけでございます。これは各党のその責任者の皆さんのサインも頂戴をしておりますので、これは公党間の約束ということで、非常に国会の意思としては大変強いものがある、このように思っております。
法律以上のものはないと思いますけれども、私たちのもくろみ、あるいは私たちの考え方としては、非常にこの合意に従って淡々と作業を行っていくということについては、これは相当な勢いが出るということは期待されるものでございますので、是非その点を御理解いただきたいと思います。
○仁比聡平君 公平のために枝野議員にもお尋ねしたいと思いますけれども、民主党政権で法令解釈の御担当をされておられた頃に、この今議論になっている問題を解決するという趣旨の御発言があったかと思うんです。ですが、結果として三年三か月調わなかった。この改定案についての衆議院の対政府質疑などを伺っていますと、総務省と法務省の間にはこの関係年齢のリンクの問題については随分認識に開きがあるといいますか、深刻な亀裂なり対立なりまであるのかしらという感じもあるわけですけれども、この間できなかったと。これが皆さんが合意をされたという二年を目途にできるという保障、どこにあるとお考えですか。
○衆議院議員(枝野幸男君) 私どもが政権を、つまり国会の多数をお預かりをしているときに附則にあった三年以内のこの投票権年齢あるいは成人年齢に関する宿題を解決できなかったということに関しては、その結果の責任の一端を負っているということ、大変申し訳なく思っております。
震災のせいにすることは余り良くないことかもしれませんが、私自身は、官房長官を仰せ付かりましたときに、まさに総務省と法務省との意見の食い違いを調整をすることで、特に民法等については初めて進むと。それに当たっては官房長官がしっかりと指導力を発揮しなければならないということで、それに着手をしたところでございましたが、その着手した直後に東日本大震災がございまして、そちらの方に全力を注がざるを得ないという、この優先順位の付け方は国民の皆さんにも御理解いただけることだというふうに思いますが、そうしたことの中で結果的に実現をすることができませんでした。
今回、保障があるのかというお話でございますが、今回は間違いなく四年後には国民投票は十八歳になります、遅くとも四年後には十八歳になるということが法改正がなされない限りは確定をしております。投票権年齢と選挙権年齢が一緒であることが望ましいという立法府の意思が明確に示され、なおかつできるだけ早くそれを行うということについての意思も多くの皆さんの間で共有をされています。これに合わせて十八歳成人をどうするのかということについても、放っておけば四年後には投票権年齢と成人年齢とが食い違うということ、法改正なしにはそういった事態が生じることは、これは総務省、法務省含めて皆そのことに迫られるわけでありますから、私はこのことによる事実上の、何というんでしょう、担保の効果というのは、三年以内に法改正をします、法改正しなければ今のままですという前回の担保よりも、法的な意味はともかくとして、現実的な担保の意味は相当程度大きいというふうに思っております。
○仁比聡平君 今、枝野議員がおっしゃった点をちょっと私なりに別の角度でいいますと、今回の改定案は、つまり成年年齢と国民投票年齢については、これはリンクを切ったわけですよね。ですから、四年後、仮に成年年齢が引き下げられていなければ、未成年者が政治に参加するという国民投票の権利を行使することができるということになるわけです。未成年者の国民投票権が認められるという、仮に未成年であっても認められるという、そういう改定案を合意をしてお出しになられたわけですよね。
だったらば、なぜ選挙の年齢は別に扱わなきゃいけないのか。成年かどうかということと、憲法改定の国民投票の年齢は一致しなくていいんだというんだったら、政治に参加する、その公職選挙の年齢も同じく今回お下げになるという、そういうふうにしてよかったんじゃないですか。なぜ国民投票権年齢と選挙権年齢のリンクを切り離していいというのか。
○衆議院議員(枝野幸男君) 私あるいは私どもは、今回の機会に選挙権年齢も投票権年齢も成人年齢も一気に十八歳にしてしまうことの方が望ましいと今も思っていますし、そのことを主張をいたしましたが、まさに広範な合意形成がなければ、幾らそれが望ましい、正しいことだと叫んでも、多数決民主主義の中ではそれが実現できません。
十八歳成人や十八歳選挙権を実現をする上では、四年後には国民投票は十八歳になる、法改正しない限りは、放っておいたら選挙権年齢がずれた状態で四年後効力を発する、そして成人年齢もずれた形で四年後効力を発するということは、これはそろえるべきである。だけど、今すぐに十八歳成人はとか、今すぐに十八歳選挙権はと言うような皆さんにとっても、四年以内には少なくともそれについて整理を付けなければ少なくともずれるという現実が生じるということで、遅くとも四年以内にはこれらについて解決をせざるを得ない相当な大きな担保、政治的な担保が取れているということで、次善の策として、我々としては、やむを得ないものであるけれども、賛成をするということであります。
○仁比聡平君 改めて船田議員にお尋ねしていきたいと思いますけれども、結局、そうやって伺っていくと、改定案を提出する会派の中に結局は十八歳選挙権は認めたくないという本音があるのではないかと疑いたくまでなるんですよ。
この改定案ですと、憲法改定が提起をされたときに国民投票は行うのに、その改定を発議する議員は選べないという事態が起こり得て、これは不条理だという若者たちの声があります。あるいは、集団的自衛権の容認は解釈改憲で進めて国民投票さえ行わない。総理は、最高責任者は私だと、選挙で審判を受けると言い放たれましたけれども、その選挙にさえ将来の国の進路に重大な関係を持つ今の若者たちは参加をできない。これは背理に背理を重ねるということになりませんか、船田さん。
○衆議院議員(船田元君) 先ほど枝野議員からも話がありましたように、各政党の間では、もうすぐに国民投票年齢と選挙権年齢を合わせるべきだと、民主党始め幾つかの政党からそういう指摘がございました。
ただ、我々とすれば、やはり総務省においての検討、それから総務省が一番懸念をしておりますのが民法との関係をどうするのかということで、まだ結論が付いていない。そういう状況を見て、やはりこれは早急に国民投票年齢にそろえる、あるいは、今度の法律の施行のときにそろえてしまうというのは大変物理的に考えても手続的にも難しいということが一つ考えられました。そしてもう一つが、これはやはり周知期間というのを一定程度置かなければいけないということがあります。そのようなことで、やはり二年以内ということを我々は念頭に入れて、それで八党の合意という形で担保しているという状況にあります。
何もやらなければ食い違いが生じるではないかと、こういった問題については、我々はそのことについて非常に大きな責任を感じなければいけないと思っております。そういうことが起こってはいけないからこそ、我々はできるだけ多くの政党の皆さんの合意をいただいて、そして成案を得て国会に出していると、こういうことでございますので、私たちのその意思を是非お酌み取りをいただきまして議論していただけると有り難い、このように思っています。
○仁比聡平君 我が党は、十八歳選挙権の実現はこの改憲手続法とは全く別に早期の実現が必要だということをかねてから申し上げてまいりました。参考人質疑も改めて受けて、徹底審議がこの点でも必要だと思います。
あと残りの時間、国民投票運動の自由に関わって伺いたいと思うんですが、改定案は私はこの点ではとんでもない逆行だと思います。象徴的なのが裁判官を始めとした特定公務員四職種に対する規制を復活するということなんですが、これ、現行法での審議のプロセスで、削除されたその理由について当時の発議者は明確にそれぞれ答弁をしておられます。要点は、国民投票運動というのは自由なものでなければならないということで、公務員、教育者の地位利用については罰則を設けないことにする、そうしたことと併せて、裁判官を始めとした四職種の運動の自由を認めないというこれは削除するんだという発言をされているわけですね。
そうした現行法のプロセスがありながら、明確に、これを復活させるというのは極めて重大だと思うんですが、憲法上極めて重要な自由であるところの国民投票運動をこの人たちに制約する憲法上の根拠は、船田議員、どこにあるんですか。
○衆議院議員(船田元君) 様々な経緯があって今回の提出に至ったわけであります。私たちは、大前提としまして、公務員のこの運動につきまして二つのポイントがある。一つは、公務員も主権者の一人でありますから、できるだけ勧誘等においては自由であるべきである。しかし一方で、公務員の政治的な中立性も保たなければいけない。この二つの命題を両立をさせる、こういうことで議論が始まった次第でございます。
確かに、八年前におきましては、経緯の中で、当初、国家公務員法、それの授権を受けました人事院規則、それから地方公務員法、その適用そのままでよろしいのではないかということを自公の間では一度考えた次第でございますが、更によく調べてみると、国家公務員法と地方公務員法の間でその規制の範囲が微妙に違っている。とりわけ地方公務員におきましては公の投票というのもこれは政治的行為の対象として存在をする、国家公務員にはそれがないということから、勧誘運動においては国家公務員は自由であり地方公務員は制限される、こういうことが、アンバランスが生じる、こういうことになったわけであります。
それで宿題という形になり、そして今回の答えとしては、他の政治的目的を持った行為であればこれは許されない、しかし、純粋な勧誘行為であれば、これは国家公務員、地方公務員はいずれも許される、こういうことにしたわけであります。
そうしますと、新たに純粋な勧誘が多くなったということによって、実は新たな問題が発生をする。その問題の一つが、やはり特定公務員の運動規制の在り方であるということでございます。
確かに、七年前においては、この国家公務員、地方公務員のアンバランスがあること、そしてそれの切り分けができないということで、この特定公務員については、これはないことが望ましいとしたわけでありますが、その後の、純粋な勧誘行為はオーケーであるという一つの結論を出したおかげで、その結果として、新たな宿題とは言い過ぎかもしれませんが、宿題が深まったということで、特定公務員についての運動規制について新たに設けるというような議論に発展をしていったと、このように理解をしております。
○仁比聡平君 今の御発言は、現行法の審議過程、とりわけ参議院における当時の委員会での審議のプロセスあるいは争点と、その中での皆さんの御答弁に逆行するものだと私は言わざるを得ないと思うんです。
そうした認識で作られたとなれば、この改定案百条の二のただし書というのは、これは極めて危険なものになるのではないか。これ、ちょっと徹底した議論が必要だと思うんですね。
私、ちょっと時間がもう迫っていますから、七年前の議論の確認ができるのかお尋ねしておきたいと思うんですけれども、御発言の中にあった国公法と地公法の関係ですが、地公法の中に公の投票という、この国民投票運動の規制根拠になりかねないような規定があるというのが問題になりました。ですが、議論の結果、皆さんの答弁として、この公の投票の中に憲法改定の国民投票は当たらないという形で物を整理するのであるという答弁が私は出されたと思うんですね。これが変わったというのか。
公務員の政治的中立性の問題について、国公法と人事院規則の御発言がありましたが、この人事院規則というのは、政治的目的についても、そして、その目的下で行われる政治的行為というこの規制対象になっている行為についても極めて限定された列挙であって、もう詳細は申し上げる時間がありませんけれども、憲法改定の際の国民投票はその中には当たらないというのが七年前の認識だったはずです。それは確認できるんですか。
○衆議院議員(船田元君) 私の記憶によりますと、先ほどの地方公務員法における公の選挙又は投票という言葉がございます。公の投票という中に、これは元々は住民投票を念頭に置いたものであるというふうに解されますけれども、言葉上、やはりこれは国民投票そのものにも適用されると、こういう仕分をして、それで制度設計をしたというふうに私は記憶をしております。
○仁比聡平君 それはもう、ちょっと全然認識が違うのかもしれません。よく精査して、次の機会に議論をさせていただきたいと思いますが。
もう一点、検討規定として置かれようとしている、組織により行われる勧誘運動、署名運動及び示威運動という文言なんですが、これ、お尋ねしたいんですけれども、衆議院の審議で、組織によりという組織というのは、これ、つまりNPOなども含むという、そうした御答弁があっているかと思います。労働組合に限らずNPOも含むとなれば、この組織というのは極めて広範な概念ですから、例えば宗教団体だとか、あらゆる市民団体、そうしたものが全部含まれて、そうすると、公務員が一人で行った行為は自由だし、団体で行っても適法なんだけれども、例えばNPOが行っても適法なんだけれども、その中にいる公務員がその中心になっているとこれが違法になると。何だかそんなことを考えるわけですか。理解として、そういうことでいいんでしょうか。
○衆議院議員(船田元君) この附則に付けました組織によりという部分でございますが、この組織によりというのは、あくまで公務員がその組織の中に入っていって、そしてその運動の主宰をする、あるいは企画をする、主導する、指導する、こういう行為を行った場合というものを想定しております。その組織というものには、当然、組合の活動もありましょうし、それから町内会という場合もあるかもしれません。企業というものもありましょう。あるいは、今御指摘いただいた宗教団体というのもあるかもしれません。しかし、いずれにしても、この公務員の方がそのある組織を使って、その中で運動の主宰をする、そのような行為はやはり駄目だろうということで私たちは制度設計をしようといたしました。
しかし、この点につきましては、ほかの党の皆様からも、これはまだ熟慮が必要であるということで、これは検討課題とさせていただいたわけでありますが、やはり、その組織によりの組織がどういうものであるのか、あるいは、具体的にその企画をする、あるいは主導するという行為そのものがどういう態様をなすのかということについて、まだまだ十分な議論をしなければいけない、このように考えているところでございます。
○仁比聡平君 そのような検討課題を法律上の規定として置くこと自体が私は憲法違反なんじゃないのかと、徹底した審議が必要だということを求めて、あとは次の機会に譲りたいと思います。