○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平です。
戦後八十年を迎えて振り返るとき、私は、幾たびも改憲の動きにさらされながら、これをはね返してきた日本国憲法の生命力を感じます。
昨年秋、日本被団協、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞翌日、私は広島の原爆ドーム前で街頭演説の機会があり、歓喜に沸く広島市民の皆さん、とりわけ若い人たちの平和を願い核兵器廃絶を求める声に接して、とても頼もしく、大きな勇気をいただきました。
オスロの授賞式と田中熙巳代表委員の講演はテレビ中継で拝見しましたが、その冒頭から、生き長らえた原爆被害者は、歴史上未曽有の非人道的な被害を再び繰り返すことのないようにと、二つの基本要求を掲げて運動を展開してきました、一つは、日本政府の戦争の被害は国民が受忍しなければならないとの主張にあらがい、原爆被害は戦争を開始し、遂行した国によって償われなければならないという運動、二つは、核兵器は極めて非人道的な殺りく兵器であり、人類と共存させてはならない、速やかに廃絶しなければならないという運動ですと、徹頭徹尾、被爆者の要求と運動の歴史を語られ、世界中の人々に対して、日本政府は一貫して国家補償を拒み、原爆で亡くなった死者に対する償いは日本政府は全くしていないという事実をお知りいただきたいと繰り返し毅然と訴えられた姿に、今も背筋が伸び、身動きもできないような思いがいたします。
政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないようにすることを決意した憲法前文、二度と戦争はしない、軍隊は持たないと定め、あの戦争の犠牲となり亡くなった方々の遺言だと言われる憲法九条の下での戦後日本社会の平和国家としての歩みに対し、自民党政治は、戦争の被害は受忍せよと誤った立場を改めず、この十年余り、自公政権は、集団的自衛権の行使容認の閣議決定、安保法制の強行、敵基地攻撃能力の保有と、五年間で四十三兆円もの大軍拡、統合司令部創設など、事実上自衛隊を米軍の指揮統制下に組み込む体制づくりまで進めています。これらは日本国憲法の平和原則を根底から覆す暴挙です。
今日、米国トランプ政権は国連憲章と国際法を無視し、各国の経済主権を侵害し、貿易協定も破り捨てる傲慢な振る舞いで信頼を失い、世界から孤立する道を進んでいます。日米同盟絶対の戦争する国づくりへの暴走は、米国とともに世界から孤立する道です。
日中友好議連の訪中に際し、両国が互いに脅威にならないという合意を生かそうという我が党の提案が注目をされました。対話と外交の力で戦争の心配のない東アジアをつくろう、日本共産党は憲法を生かす国民的な共同を心から呼びかけます。
個人の尊重、法の下の平等、家庭生活における両性の本質的平等を求める憲法の下、国際人権水準に学び、ジェンダー平等社会に向かおうとする巨大なエネルギーが政治の激動をもたらしています。同性婚の実現は喫緊の憲法問題であり、特定の家族観を押し付けて当事者を苦しめ続けることはもはや許されないことは、四月一日の当審査会で述べたとおりです。
選択的別姓問題はどうでしょうか。日本社会の夫婦の氏の動きを振り返れば、むしろ夫婦別姓が主な流れでした。それが、明治の半ばから大日本帝国憲法、教育勅語、朝鮮出兵、日清、日露戦争へと進んだ富国強兵を背景に家制度が採用され、それと不可分に、明治三十一年、明治民法によって家の呼称として同氏が法制上初めて義務化、強制されたのです。絶対的な戸主権の下、妻と子供は無権利者、無能力者とされました。
一九四七年五月、日本国憲法施行の下、家制度は廃止されました。明治民法から四十九年、日本社会の長い歴史から見れば僅かな期間です。同じ年成立した戦後民法は、氏は名と併せて夫、妻それぞれの呼称、つまり、その人がかけがえのない個人として尊重されるあかしであり、人格権の象徴、すなわち人権であることを大前提にしています。
選択的別姓を求める国会請願がなされて五十年、来年は選択的別姓をという法制審答申から三十年になります。党派を超え、根深い家父長制的な固定観念を乗り越えて、誰もがお互いを尊重し合い、ジェンダーに基づく支配や暴力、差別のない社会に変えていくことを心から呼びかけ、意見表明といたします。