○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
改めて、DV被害と共同親権についてお尋ねをしたいと思います。
私は、別居や離婚の後も父母間で親としての責任を共同して果たすんだということが真摯に合意をされる、それが子供の利益にかなうという場合は離婚後も親としての責任を共同していくということはあり得ると申し上げてきました。
ところが、昨年、可決成立をして、施行が来年という民法改正においては、共同行使の真摯な合意ができない場合、父母間にそうした合意がない場合、その場合も裁判所が定め得るということになっていて、大論争になってきたわけですね。
この点で、法制審の部会委員をお務めになった戒能民江委員が、二〇〇一年に成立したDV防止法、その後、二十年余り掛けて蓄積して、ようやく被害者の安全を守ることができつつあるという状況をつくり出してきたのに、それを後戻りさせてしまうような民法改正になってしまわないか強い懸念を持っていると、これ、朝日新聞のインタビューで当時お述べになっていたことなんですね。
こうした議論の中で、昨年のこの委員会も含めて、子供の権利と福祉、そしてそのためには同居親の安心と安全というのがどうしたって必要で、これを全うしようじゃないかという議論で与野党様々な議論があって、政府、法務省、法務大臣もそうした方向での答弁を積み重ねてこられたと思います。先ほどお話のあったガイドラインなどというお話も、そうした議論の積み重ねを周知徹底していこうという御趣旨だと思います。
ところがなんですよ、そうした議論を経てきたにもかかわらず、今日も、残念ながらこの国会でこのDV被害者支援の様々な施策に対する執拗な非難がされていると。これは一体どうなのかと、そんな問題意識で、まず総務省にお尋ねしたいと思うんですけれども、昨年も、それからその前からもなんですが、DV等支援措置という施策が、これは虚偽DVであるという攻撃の対象にされてきました。裁判所が保護命令を出すものがDVなのであって、市町村による支援措置は一方的だとかあるいはでっち上げだとかというみたいな論難まで行われているわけですね。そうした支援措置も活用してDV被害者の相談支援に当たる弁護士に対しては、実子誘拐ビジネスだというような非難まで国会で行われていると。とんでもないと私は思いますけれども。
総務省、このDV等支援措置の意義とその必要性をどのように判断、確認をしていかれるのかという点について、御説明をお願いします。
○政府参考人(新田一郎君) お答え申し上げます。
今御指摘いただきました支援措置についてでありますが、住民基本台帳事務において、DVやストーカー行為、児童虐待などに対する被害者の相手方が住民票の写しの交付を不当に利用して被害者の住所を探索することを防止し、支援措置対象者の保護を図るために行っているものでございます。
なお、具体的には、DVなどを受けた者が申出があった場合に、その相手方が当該申出者の住所を探索する目的で住民票の写しの交付を請求を行うおそれがあると認められる場合に交付をしないということができることとするものであります。
なお、本措置の実施に当たりましては、市町村長のみの判断ということではございませんで、市町村長の判断の客観性を担保するため、専門的知見を有する警察でありますとか配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などの相談機関の意見を聴取することなどにより、支援の必要性を丁寧に確認することをいたしております。
○仁比聡平君 そのような意義を持つ大事な取組が始まって、昨年お尋ねをした時点で、令和五年で八万三千九百十六件の実施件数で、対象者数は十七万三千八百七十五人に上っているということでしたが、直近の数字ではいかがでしょうか。
○政府参考人(新田一郎君) お答え申し上げます。
令和六年度のDV等支援措置の実施件数及び申出者の子供なども合わせて支援を受ける者を含めた対象者の数でありますが、令和六年十二月一日時点でそれぞれ八万八千百八十四件、十八万二千百二十三人となってございます。
○仁比聡平君 そうしたDV被害者と、それから子供たちの置かれている状況と、ここに寄り添って必要性を確認し実施をしてきているというその行政の活動そのものを、あるいはそれ全体を否定するような議論というのは、これは全く道理がないと私は思うんです。
お配りしている資料の三枚目のところを御覧いただきたいと思うんですけれども、この新聞記事は、鈴木大臣には三月の予算委員会の私の質問のときにも御紹介をしたものなんですね。
つまり、DVの加害者は、配偶者や子供などの家族が自分の思うようにならないと、それは相手が悪い、自分は正しいと、そういう立場で干渉あるいは支配のための振る舞いを募らせていくんだと思います。つまり、加害者としての自覚がないということなんですよね。
男女共同参画局、この加害者の自覚がないという特性、あるいは、加害者プログラムの目的や意義についてどんなふうに考えておられますか。
○政府参考人(小八木大成君) お答え申し上げます。
加害者プログラム、委員御指摘の加害者プログラムは、被害者支援の一環として、加害者に働きかけることで加害者に自らの暴力を自覚してもらうものでございまして、その目的は、被害者の安全を確実なものにすること、加害者自身が加害者責任を、加害責任を自覚すること、加害者の認知、行動の変容を起こすことの大きく三点と考えております。
内閣府としましては、令和五年五月、地方公共団体が加害者プログラムを実施する上での留意事項を取りまとめまして、都道府県にお示しし、加害者プログラムの各地域における実施を推進しているところでございます。
また、課題、その後実施していく上での課題としまして、更なるその実施の推進に当たりまして、自治体における実施意義の理解促進ですとか、知見、ノウハウを有する実施団体等との連携協力、他の自治体での取組事例の把握、自治体における予算の確保などが必要と認識してございます。
こうしたことを踏まえまして、自治体の担当者等に対する研修などによりまして、加害者プログラムの必要性などについての理解の促進を図るとともに、都道府県等に対する交付金の活用の促進やウェブサイトにおける自治体での取組事例を含む関連情報の一元的な提供、発信といったことによりまして、各地域における加害者プログラムの実施を推進しており、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
○仁比聡平君 資料の五枚目に、今御紹介のあった男女共同参画局の留意事項の抜粋をお示ししていますけれども、五ページ目の真ん中の段にあるように、プログラムへの参加が必ずしも目的達成を保証するものではないと。やっぱり加害者が加害者としての自覚を獲得するというのはそんな簡単な話じゃないということだと思いますし、二枚目の方には、加害者に自身の暴力行為についての認識が全くなく再暴力のリスクが高い場合には、プログラムの参加が期待できないと。こういうふうに整理をされているとおりだと思うんですね。
この加害者更生プログラムに取り組んでおられるアウェイという一般社団法人の代表者の方の記事が先ほどのものなんですけれども、DVの加害者の男性の証言として、結婚した後、彼女が自分のものになったと思ったと、特権意識を持って接するようになったと。ある男性は四十代で、妻への身体的な暴力のほか、物を壊したり、幼い子供に向かって携帯を投げたり、妻に警察を呼ばれそうになると携帯を取り上げて壊して、泣いて見せたという。優しくすることとDVとを交互にして妻を混乱させた。
そうした特権意識が生まれた原因について、彼女が自分と同じ姓になったことが大きく影響していると思う、彼女は自分の家の人になったので、自分が過ごしやすいように取り計らってもらって当然だと考えた、自分が思うような行動をしなかったら腹を立てていいんだと、精神的なDVがエスカレートしていった。別の方は、次のページですが、僕の家の家風、しきたり、習慣などに合わせてくれるはずだと期待したと。
こういう家父長制的な観念から乗り越えていくというのが与野党超えた私たちの政治の課題だと思うんですけれども、この認識について、今日、大臣には直接お尋ねするわけじゃないんですけれども、この行政の支援措置を攻撃するとか、保護命令以外はDVじゃないんだなんというような、こうした言動というのは、この加害者としての自覚がないということの最たるあかしだと私は思うんですけれども。
そうした中で、法務省が共同親権の説明で使っているパンフレットが最後にお付けしているものです。
これまで何回かお尋ねをしてきました。ここにある、父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子供の利益のため、互いに人格を尊重し、協力しなければなりませんという義務を原則として掲げて、次のような行為はこの義務に違反する場合がありますとして、その一つに、父母の一方が特段の理由なく他方に無断で子供を転居させることという表記になっていて、これでは、原則、子連れで別居してはならない、義務違反だと。特段の理由があるというんだったらば、子供を連れて出ていく同居親、専らお母さんだと思いますが、の側がその特段の理由を証明せよと言わんばかりになっていて、だから、相手に無断の連れ去り別居は父母協力義務違反の最たるものという、そうした攻撃がされているんですね。材料に使われているわけですね。
改めて伺いますが、大臣、改めるべきではありませんか。
○国務大臣(鈴木馨祐君) 今御指摘をいただきましたこのパンフレットの記載につきましては、DVあるいはDVや児童虐待からの避難は、無断で子供を転居させることにつき特段の理由がある場合の最たるものでありますので、人格尊重、協力義務に違反をしないということを十分に御理解いただける文言であると私どもとしては考えているところであります。
その上で申し上げますと、DVや児童虐待から避難をする必要がある場合には、父母の一方が他方の親に無断で子供を転居させたとしても、人格尊重、協力義務に違反することはないと考えております。また、人格尊重、協力義務に違反をするか否かにつきましては、個別具体的な事情に基づいて総合的に判断をされるべきものであって、改正法は当事者の一方に対して何らかの立証責任を負わせているというわけではないということであります。
したがいまして、無断で子供を転居させた場合に、DVや児童虐待の事実を立証しない限り、人格尊重、協力義務違反に当たると判断されるというものではございませんし、DVに関しては、加害者、被害者の双方がDVの認識を欠いている場合があることも勘案をした上で適切な判断がされることになると考えているところであります。
改正法の施行を控え、種々の不安を抱いている方がいること、これは私どもも承知をしておりまして、関係府省庁等とも連携をしながら、QA方式の解説資料等による改正法の趣旨、内容の周知、広報を行うなど、改正法の円滑な施行に向けた取組、進めてまいりたいと考えております。
○委員長(若松謙維君) 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
○仁比聡平君 今の大臣の答弁は、言わばこのDVから避難をするための子連れ別居というのは、この父母協力義務、ごめんなさい、DVというのはこの父母協力義務違反の最たるものと、DVこそ義務違反の最たるものというような御趣旨なんだろうと思うんです。
挙証責任を問うものではないんだという御答弁と併せてしっかり周知をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。